「ほう。北郷は張三姉妹の公演を見に行ってたのか」
「うん。三人とも相変わらず凄い人気だったよ。……ってこれ美味いな」
秋蘭特製の龍髭面(ロンシャオメン)を食べながら一刀は昨日の張三姉妹のコンサートについて熱く語っていた。
ちなみに流琉は秋蘭に勝つには伝説の厨具が必要だといって旅に出た。
「国士無双の麺料理だからな。それにしても張三姉妹か……」
「この前の銀河麺も美味しかったけどね。張三姉妹がどうしたの?」
「いや、なんでもない。これから少し用事があるので失礼するよ」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
日々新しい料理を創造する秋蘭には華琳も太刀打ちできない。
「秋蘭どこいったんだろう?」
その日、秋蘭が戻ることはなかった。
次の日、一刀は張三姉妹に呼ばれていた。
「今日は何の用? あっ、昨日の公演お疲れ様。すっごいよかったよ」
「ありがとー一刀♪ お姉ちゃん頑張ったんだよー?」
「当たり前じゃない! このちぃ様がいるんだから」
「今日呼んだのはこれを見てほしいの」
人和が持っていたのは瓦版。
今でいうチラシである。
そこには謎の人物がゲリラライブをする旨が書いてあった。
「一体誰がこんなことするんだろう?」
「それがわからないから一刀さんを呼んだのだけど」
「アンタは知らないの?」
「お姉ちゃんたちの好敵手ってやつなのかなー?」
そんな謎の人物に一刀は心当たりがなかった。
「悪いけどわからないよ」
シュンと謝る一刀に悶える三人。
「もう、一刀ってば可愛いー!」
「うわ!」
天和が抱きついたことにより他の二人の我慢が解かれた。
そしてその場は混沌と化した。
百聞は一見に如かず。
とういうことで一刀たちは、そのゲリラ公演を見に行くことにした。
「凄い人だな……」
「これは私たちと変わらないほどの規模だわ」
「むかつくわねー。ちぃたちに勝てるはず無いのに」
「いいなー。いきなりこんなところで歌えるなんて」
苦労した時代を乗り越えてきた天和たちはいきなりこのような大舞台で歌える謎の人物に軽い嫉妬をしていた。
「おっ、始まるみたいだぞ」
ステージがいきなり暗くなり、観客のテンションもどんどんあがっていく。
そして、スポットライトと共に謎の人物が現れた。
「やあみんな。今日は来てくれてありがとう」
『ほわあああああああああああああああああああ!』
その人物は暴走モード中の秋蘭だった。
「秋蘭!?」
「なぜあの人が!?」
「華琳様の切り札か!?」
「ほわー!」
様々な反応を見せる一刀たちを余所に公演は続く。
「みんなは私のことが好きか?」
『ほわあああああああああああああああ!』
「私のことは…………そうだな、妙才ちゃんとでも呼んでくれ」
『妙才ちゃ~~~~~~~~~~~~ん!』
マイク片手に暴走する秋蘭。
「それじゃあ歌を聞いてくれ。曲名は『幼いは正義!』だ」
『ほわあああああああああああああああああああ!』
ステージ全体がカラフルに彩られ秋蘭は歌い出す。
演出の為に五胡で妖術を覚えて来た秋蘭。
その努力にしびれる憧れる。
「みんな大好き♪」
『妙才ちゃ~ん!』
「夏侯惇の妹♪」
『妙才ちゃ~ん!』
「とっても可愛い♪」
『妙才ちゃ~ん!』
間奏中にさりげなく人気のフレーズをインスパイアする秋蘭。
「完全にちぃたちのパクリじゃない!?」
「似てないこともないわね」
「そうかなー? 全然違う気がするけどな~」
天和と人和は毒されてきたようだ。
「秋蘭ってこんなに凄かったんだ……」
一年前には気付くことが出来なかった事実だ。
「へぅ」
途中、放送事故もありながら無事公演は終了した。
そして城に戻った一刀は華琳に呼び出され、玉座の間に来ていた。
「秋蘭が見当たらないのだけど一刀は知らないかしら?」
さっきまでライブ見てましたとは言えず、知らないと答える一刀。
「そう。昨日から見当たらないのだけど秋蘭なら心配することはないわね。
心配してあげてください。割と真剣に。
「今回呼びだしたのは、あなたに呉と蜀に行って欲しいの」
「それはいいけど、なんで?」
華琳は頭を痛めていた。
「毎日毎日呉と蜀からいやがらせのように竹簡が届くのよ。私は気が狂いそうになったわ。燃やすのも勿体ないから船を作ってみたわ」
「竹簡で!?」
「ええ。意外にできるものね」
覇王様は多才だった。
船体に色々と文字が書かれている巨大船が黄河に浮かぶのはすぐのこととなる。
「それで資源の節約と私のために行って欲しいの」
「わ、わかった。ごめんな俺のせいで」
「べ、別にあなたのためじゃないんだからね!?」
「はいはいテンプレ」
華琳のツンデレを軽く流した一刀。
「そ、それでね。一つお願いがあるの」
「なんだ?」
急にモジモジとしおらしくなる華琳。
「今日は私と一緒に寝なさい」
「いいよ。あと華琳だけだったから」
「私だけ? じゃあ春蘭はおろか桂花も!?」
「うん」
「…………」
完全に出遅れていた華琳だった。
抱き枕として一刀の抱き心地は最高と評されていた。
何はともあれ一刀と寝る約束をとりつけることが出来たのでよしとする華琳だった。
「それでどっちから行けばいいの?」
「フラフラしている王とポケ~っとしている王のどっちがいいかしら?」
「それは究極の選択だな」
どちらもまともではないと一刀は悟る。
「そいじゃあ俺は――に行くよ」
「わかったわ。それじゃあ通達しておくわ」
そして夜、華琳は一刀を抱いて眠った。
「ハァハァ。手を出しちゃダメよ華琳! それだけは……!」
しかし、一晩中煩悩と戦っていた。
呉か蜀どっちが良いかな?
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