No.181053

一刀の記憶喪失物語~袁家√PART5~

戯言使いさん

どうも、戯言使いです。

今回は、一刀たちが呉についた、という話です


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2010-10-29 11:30:14 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8964   閲覧ユーザー数:6590

 

 

 

 

雪蓮たちと出会って5日後、一刀は呉の都、建業に着いた。

 

 

 

 

 

 

雪蓮たちはあの戦の後に「一緒に行こう」と言っていたが、取りあえず世話になった礼を村人たちにしたいため、雪蓮たちとは別行動をして、そして3人だけで建業へ行くことへとなった。

 

 

 

 

 

村人たちは一刀たちが去ってしまうことを、涙を流して悲しみ、そしてある者は部下に雇ってほしいと言ってきたりなど、色々とあったが、結局は一刀と斗詩、そして猪々子の3人で旅をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、でけーな」

 

 

一刀の何度目になるか分からない、感嘆の声を漏らした。さきほどから一刀は「すげー」とか「でけー」と何回も繰り返している。

 

それに対して斗詩は何度も同じ説明をする。

 

 

 

「そりゃあ、そうですよ。大陸を統べる3国の内の一つ『呉』の都なんですから」

 

 

「お、兄貴!あそこに肉まんがあるぜ!食べよう!」

 

 

「待て待て、どうせ雪蓮が豪華な食事を準備してくれてるだろうから、我慢しとけ。もししてなくても、頼めば何か作ってくれるだろ」

 

 

「もぅ!さっき食べたばかりじゃないですか!早くお城に行って、雪蓮さんに会いましょうよ!」

 

 

「「へーい」」

 

 

 

見た目は相変わらず怖い一刀だが、少し気分が高揚しているのが斗詩には伝わっていた。何だかんだ言いながら、一刀は新しい街に興奮しているのだ。

 

 

 

 

そんな子供っぽところも素敵・・・・と、斗詩は赤くなった頬を恥ずかしそうに両手で隠した。

 

 

 

 

 

「雪蓮の話では、俺たちが来る前に天の使いが来ることを呉の武将たちには説明するらしいな」

 

 

「そりゃあ、そうですよ。いきなり「天の使いです」なんて言っても信じてくれませんから。だから、雪蓮さんと冥琳さんが先に色々と説明してくれるんですよ」

 

 

「ふーん、なんつーか、天の使いってのも面倒だな」

 

 

「何を言っているんですか!一刀さんは間違いなく大陸を平和にしてくれる人です!そんなことを言ってどうするんですか!?」

 

 

「わ、悪かったって・・・・何か斗詩、前と違くないか?」

 

 

「とーぜんです!だって、私の一刀さんがようやく日の当たる場所に出れたんですから!

拾われたのがあの麗羽さまでなかったら、もっと早くに知れ渡っていたと思いますが・・・でも、今の私はとっても誇らしいのです!」

 

 

「お前が誇ってもしかたがないと思うけど・・・・」

 

 

と、雑談をしながら、また出店を冷やかしながら城への道を歩いた。

 

 

大きい街なだけあって、人の数も多く、そして賑わっていたが、それと同時に裏路地には浮浪者のような、つまりはあまり人柄のよくなさそうな輩も多数いた。

 

 

 

 

 

 

 

一刀が順調に足を進めていると、目の前で不自然に人が避けている場所があった。

 

 

近づいてみると、数人の男と、一人の女の子がいた。

 

 

「おい!なんとか言えよ!お前の持っていた食い物のせいで、俺の服が汚れたんだよ!金を差し出すってのが礼儀じゃねーのか!?」

 

 

「あぅ・・・あの・・・・・・」

 

 

「あぁん!?はっきり言えよ!」

 

 

その光景を見て、斗詩はすぐに分かった。

 

なるほど、女の子が男にぶつかって、それで何かといちゃもんをつけられているらしい。そして、その言い争いが道の真ん中で行われているので、通行人は関わりたくないがために避けていたのだ。

 

 

どうしようか、助けに行こうか、と斗詩が一刀の様子を見ると、一刀はまるでその喧嘩が見えないかのように、真っ正面を歩いて行った。

 

 

 

 

そして当然、男たちと衝突することになった。

 

 

 

 

「なんだてめぇは!?」

 

 

「・・・・・」

 

 

「おぃ!何か言ってみろ!」

 

 

「・・・あぁん?黙れや。死にてぇのか?」

 

 

「!?」

 

 

「なぁ・・・・俺は道の真ん中を普通に歩きてぇだけなんだよ。てめぇらみてぇに服の汚れとか小さいことに、女に怒鳴るような糞野郎のために、わざわざ避けて通らないといけねぇってのが気にくわねぇ」

 

 

「あ、いえ、その・・・・」

 

 

「服の汚れ、見せてみろ」

 

 

一刀は強引に男の服を引っ張った。

 

確かに、太もも辺りにあんこが付いていた。もちろん、怒鳴り散らすほど汚れているわけではない。一刀はそのあんこを強引に叩いて落とす。するとあっと言う間に汚れなんて分からなくなってしまった。

 

 

「ほら、これで綺麗になった」

 

 

「は・・・はい・・・・」

 

 

「もし汚れが気になるってんなら、汚れたズボンが履けねぇよう、俺が上半身と下半身を叩き斬って、ズボンのいらねぇ体にしてやるけど・・・・・どうする?」

 

 

「い、いいです!失礼しました!」

 

 

 

男たちはまるで殺人鬼と対面したかのように、脇目を振らずに去って行った。

 

 

 

もし喧嘩になっていたら、おそらく一刀は負けていただろう。だが、そこら辺に居るゴロツキ程度に恐れるほど、精神力は弱くはなく、そして殺気だけなら武将たちとも並ぶほどだ。

 

 

 

 

その怖くも勇ましく、そして勇敢な一刀を、助けられた女の子は、ぽぉっと熱に浮かされたように見ていた。彼女には太陽の光のせいか、一刀がとても輝いている。

 

 

 

「あ、あの・・・・」

 

 

 

 

一刀の後ろで女の子が小さな声で呟いた。

 

 

腕には袋一杯のゴマ団子、頭には帽子、そして片目だけの眼鏡をしていた。

 

 

 

「あぁん?あんた、誰だ?」

 

 

「えっと・・・」

 

 

と、女の子が答えようとした時。

 

 

 

 

 

「おい」

 

 

 

 

 

後から声が聞こえてきた。

 

一刀が振り向いてみると、そこには妙齢の女性が立っていた。

 

 

「祭さん!」

 

と女の子は一刀をすり抜けて、その祭と呼ばれた女性に駆け寄って行った。

 

 

「いつも通りに、屋根の上で酒でもと思っておったら、亞莎がゴロツキに絡まれていてな、面白そうだから酒のつまみに見ていたのだが」

 

 

「そ、そんなぁ・・・助けてくださいよぉ」

 

 

「しかし、予想以上に面白い物が見れた。なぁ、そこの小僧」

 

 

「なんだ?ババァ・・・・・・いや、すまん。ごめん。お姉さんでした。はい、何処からどう見てもお姉さんです。・・・・・んで、何かようか?」

 

 

「いやいや、こいつを助けてくれた礼をと思ってな。ほら、亞莎も」

 

 

「は、はい。ありがとうございました」

 

 

祭に促されるまま、亞莎は緊張したように礼を言った。それを一刀は対して興味なさそうに見て、ふん、と鼻を鳴らした。

 

 

「別に助けたわけじゃない。俺がただあんな奴らのために周り道をしないといけないのがムカついたからだ」

 

 

「しかし、真正面から対峙する男気は確かによかったぞ。取り立てて武芸に優れているわけでもなさそうだしな」

 

 

「何だよ。別に誰かと対峙するのに、必ずしも力がねーと駄目ってわけじゃねーだろ」

 

 

「ほほぉ、なかなか言うではないか。お主は見ない顔だが、何処に行くのだ?よかったら、このわしが案内してやろう」

 

 

「さ、祭さま!今日は雪蓮さまがおっしゃっていた、天の使いがお城にやってくる日ではありませんか!」

 

 

と亞莎がこっそりと祭に耳打ちをするが、祭は全く気にしていないように言い放つ。

 

 

「何を言う。そんな得体の知れぬ者など気にせんでよい。どうせ大した男ではないであろう。そんな男よりも、こやつの方が面白い。それで、何処に行くのだ?見たところ、後の女二人も仲間のようだが・・・・」

 

 

 

 

祭はちらりと斗詩と猪々子を見た。

 

お互いに名前だけであれば知っているであろうが、こうして顔を合わせるのは初めてであったため、互いのことは分からず、祭にとってはただの旅人、そして斗詩たちにとっては親切な人、としか思わなかった。

 

 

「私たちはお城に向かう途中でして・・・」

 

 

「城?・・・・なるほど、確か最近は武官と文官を募集しておったな。それで来たのか。よし、わしらについてこい、わしが特別に便宜をはかってやろう」

 

 

「あ、あの、そうじゃなくて・・・・」

 

 

「なーに、遠慮するでない。ほら、亞莎、行くぞ!」

と、祭は元気よく歩きだした。

 

 

斗詩は誤解を解かないでいいのだろうか、と少し心配していたが、隣で

 

 

 

「あ、あの・・・お礼に、お一つどうぞ」

 

 

「ん?悪いな・・・・お、なかなか美味いじゃないか」

 

 

「で、ですよね!?実はこのお菓子のお店、裏路地になる小さなお店なんですが、表通りのよりも美味しいんです!でも、他の人はみんな大きなお菓子屋に行って、誰も来ないんです。こんなにも美味しいのに・・・」

 

 

「なら今度案内してくれよ。俺が買いに行くから」

 

 

「は、はい!よろこんで!」

 

 

と、亞莎と一刀が和やかに会話していたので、斗詩はすぐに祭のことを忘れて

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、一刀さん!」

 

 

 

 

 

 

と、強引に亞莎と一刀の間に入り、腕を掴んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・は?もう一度言ってくれぬか」

 

 

「だから、この子が北郷一刀で、そして後ろが元袁家の武将、顔良と文醜。つまりは、私が言っていた、天の使い御一行ってことよ」

 

 

「な、なんじゃと!?おい!お主らなぜ黙っていた!」

 

 

「別にいいじゃねーかよ。どうせ、天の使いは大した男じゃねーんだろ?」

 

 

「うぅ、あれは勢いと言うか・・・・」

 

 

と、少し落ち込み気味の祭に

 

 

 

「あなた様が天の使いさまですか!どうりで初めてあった時から輝いておりました!」

 

と、亞莎は一刀と運命を感じており、早くも尊敬の眼差しで一刀を見ている。

 

 

 

天の使い、という嘘のような存在だったが、雪蓮や祭たちのお陰で、初めから排他的ではなかったが、玉座の近くには、一刀をまるで邪魔者のように睨む蓮華、そして思春が居た。

 

 

「あれは孫権。私の妹で、そして次期王よ」

 

と雪蓮が小さな声で教えてくれた。

 

一刀は「ふーん」と軽く下から上へと視線を動かすと、蓮華と視線があった。

 

そして視線があうと同時にすさまじい殺気が伝わってくる。

 

だが、一刀はそれぐらいでは怯むことなく

 

 

 

 

「っち」

 

 

 

 

と舌うちをして睨み返した。

 

 

 

 

 

次回に続く

 

 

 


 
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