No.180460

真恋姫無双~ありえたかもしれない外史AF~ 第12話 詠×対局

ちいたさん

投稿です。生暖かく見守ってください。

2010-10-26 01:28:04 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:13961   閲覧ユーザー数:10602

この作品は原作のキャラの性格が変化したり時代背景が変わったりします。またオリジナルな展開などもいれようと思っています。

なので原作好きの方また特定のキャラが好きな方はスルーしてください

 

雪蓮との激闘から明けて次の日。街では祭りが行われていたが一刀は城の中庭で美羽達と一緒にいた。

美羽「これで……どうじゃ!!」

  「……じゃあ…これで」

一刀と美羽の間の机の上には将棋の盤面みたいなものが置かれていた。美羽の後ろには七乃が控えており、月・詠・恋・音々音の四人もその対決を見ていた。

美羽「むっ……なら…これでどうじゃ!!」

  「……これで」

大声を出しながら駒を動かす美羽とは対照的に落ち着いた様子で駒を動かす一刀。一刀を見る美羽の顔には余裕の表情が浮かんでいた。

美羽「ふふん…どうしたのじゃ?一刀…それでも我が国の筆頭文官なのかの~」

  「やれやれ……参ったね」

美羽の言葉を聞き頭をかく一刀。盤面を見ると圧倒的に美羽が一刀を攻めていた。七乃はいつもの笑顔で美羽の後ろに控えていた。詠や音々音はどこか呆れたように盤面を見ていた。月も苦笑をしており、恋もいつもの無表情で盤面をじっと見ていた。

一刀はしばらく盤面を見ていたがやがて両手を挙げた。

  「降参だ」

一刀があっさりと敗北宣言をすると、美羽が笑顔になる。

美羽「あっはっは!!妾の勝利なのじゃ!!」

七乃「さすがです~美羽様~」

大喜びする美羽を見て、一刀は苦笑しながら盤面の駒を片付ける。

 

美羽「我が国の筆頭文官を倒した妾がこの国で一番なのじゃ!!」

一刀を倒した美羽はよっぽど嬉しいのかテンションがかなり上がっていた。そんな美羽を見て詠が一言。

詠 「美羽……あんたねぇ…一刀があからさまに手を抜いたのがわからなかったの?」

音々音「そうなのですよ」

詠の一言に音々音も同意した。詠の言葉に美羽が反応する。

美羽「……どういうことなのじゃ?」

詠 「言葉の通りよ。一刀はわざと負けたのよ」

音々音「一刀はこの対局でわざと美羽が有利になるように打ち続けていたのですよ」

軍師二人の言葉を聞いて美羽は一刀を見る。一刀は美羽とは視線を合わせない。

美羽「……本当なのか?一刀?」

  「ソンナコトハナイヨ~」

美羽の質問に一刀は目を泳がせながら答える。さらに美羽は七乃の方に視線を向ける。

美羽「……七乃」

七乃「何ですか~美羽様~」

美羽「今の言葉は本当なのかの?」

七乃「そうですよ~」

七乃の言葉を聞いた美羽は机を強く叩く。

美羽「一刀!!」

  「な、何だ……美羽」

美羽の迫力に思わずどもる一刀。そんな一刀に美羽は顔を近づけて一言。

美羽「もう一回妾と勝負するのじゃ!!」

 

盤面に再び駒を並べ終えた一刀は詠と音々音を見る。

  「空気読めよ……なんで言ったんだ」

音々音「あの程度で調子に乗られても困るのです」

詠 「大体あんたは美羽に甘過ぎるのよ」

  「だからって……」

二人の言葉を聞いた後に、美羽を見る。美羽は今にも一刀に噛みつかんばかりに睨んでいた。

月 「美羽ちゃん……お、抑えて」

美羽「がるるるるるる……」

恋 「……美羽……どうどう」

七乃「あらあら…困りましたね~」

美羽をなだめる七乃達。そして、互いに向かい合う一刀と美羽。

美羽「一刀!!手を抜いたら許さないからの!!」

  「……了解」

  (美羽がここまでむきになるなんて…。まあ…これもいい傾向かな)

美羽の言葉を聞きため息をつく一刀。先攻の美羽が駒を動かす

美羽「行くぞ!!一刀!!」

 

五分後

  「これで終わり」

そう言って駒を動かす一刀。美羽は盤面をじっと見つめたまま動かない。

  「どうする?」

美羽「………じゃ」

  「美羽?」

美羽「……参ったのじゃ」

聞き取りづらい声で敗北宣言をする美羽。

美羽「ななの~~」

七乃「あらあら~」

ほぼ半泣きで七乃の胸に顔を埋めて抱きつく美羽。そんな美羽の頭を撫でながら一刀を見る七乃。

七乃「一刀さ~ん、駄目ですよ~。本気をだしたら美羽様と一刀さんではもともと勝負にはなりませんよ~」

  「……でも手加減したら美羽が怒るだろ」

七乃「それはそうですね~。でもそれを何とかするのが一刀さんの役目ですよ~」

  「そんな無茶苦茶な……」

本気を出して美羽を瞬殺した一刀だったが今度は七乃に怒られてしまった一刀。勝っても負けても踏んだり蹴ったりであった。

美羽「一刀!!」

  「な、何だ…美羽」

落ち込んでいた美羽が突然大声を出して一刀の名前を呼ぶ。

美羽「もう一度勝負じゃ!!」

  「はっ?」

美羽「だからもう一度勝負なのじゃ!!」

  「いや……その……悪いけど美羽じゃ俺に勝てないぞ」

先程完膚なきまでに叩きのめされたのに懲りずに言う美羽に指摘する一刀。

美羽「いつ妾がやると言ったのじゃ」

  「はっ?」

すると美羽はおもむろにとある人物に指を差す。

美羽「一刀と戦うのは詠なのじゃ!!」

詠 「はっ?ボ、ボク~~!!」

美羽の突然の指名に詠は大声をあげるのであった。

 

しばらくして中庭に女中や文官など大勢の人間が集まっていた。その中心にいるのは一刀と詠である。

詠 「何でボクがこんなことをしないといけないのよ」

  「その…何だ…ごめん」

駒を並べながら愚痴をこぼす詠。ちなみに大勢の人間がいるのは筆頭文官の一刀と次席文官の詠が象棋をすると言うのを聞き集合したのであった。

月 「詠ちゃんも一刀さんも頑張ってください!!」

美羽「詠!!一刀を叩きのめすのじゃ!!」

七乃「楽しみですね~」

音々音「何でここはねねが相手じゃないのですか!!」

恋 「ねね……どうどう」

音々音「恋殿~~」

それぞれ応援を送る者や自分が選ばれず不平不満を言う者もいた。

稟 「何やら…興味深い催しが始まるようですね」

風 「そうですね~」

七乃「あら~二人ともどうしたのですか?」

七乃が振り返るとそこには魏の軍師である稟と風がいた。

稟 「はい…詠殿とお話をしたいと思い来たのですが…」

風 「そうしたら城内の皆さんからこのお話を聞いたので~…見にきました~。」

七乃「あら~そうですか~。ならどうぞ特等席でご覧下さい~」

稟 「ありがとうございます」

風 「どうもです~」

七乃に勧められて最前席に座る二人であった。

 

一刀と詠の試合が始まった。しかし、先攻を取った詠は先程から駒を動かすことなくじっと盤面を見ていた。一刀も何も言わずに詠が駒を動かすのを待っていた。

美羽「何で詠は動かないのじゃ?」

何もしない詠に美羽が疑問を口にする。

稟 「それは違いますよ…美羽殿」

美羽「へっ…どういうことなのじゃ?」

風 「あれはですね~詠ちゃんは勝つための筋道を立てているのですよ~。美羽ちゃん」

美羽「そうなのか?」

風 「はい~。詠ちゃんは頭の中で莫大な数の戦術の中から勝率が高くなるものを選んでいるのですよ~」

美羽の質問に近くにいた稟と風が答える。

風 「多分始まったら目を離せないのでしっかりと見ていたほうがいいですよ~」

月 「あっ…詠ちゃんが駒を動かした」

月の言葉に美羽達も一斉に盤面を見ると、詠が駒を動かそうとしていた。

 

カッカッカッ……

両者の駒を動かす音が聞こえる。しかし、その動かす速度は互いに尋常ではなかった。

美羽「な、なんじゃ~」

七乃「ほへ~」

高速の打ち合いに美羽と七乃がまぬけな声を出す。両者打ち合わせをしていたかのように間を置かずに駒を動かしていく。この試合を現在、理解しているのはごく一部の人間であろう。

  「………」

美羽「一刀の手が止まったのじゃ」

七乃「そうですね~。あっ…また動かしました」

手を止めた一刀はじっと盤面を見ていたが、再び駒を動かした。しかし、徐々に一刀の打つ速度は遅くなってきた。やがて、完全に一刀の手が止まった。盤面を見ると、詠が着実に一刀を押していた。一刀はその盤面をじっと見ていた。

  (……厳しいな。このままいくと確実に不利だな…)

詠 (ここまでは予定通り…でも一刀相手に油断はできないわ)

  「さすがだな…詠。俺の代わりに筆頭文官にならないか?」

詠 「冗談は口だけにして……それにあんたの代わりはもうこりごりよ」

  「結構本気だけどな…」

詠の言葉にため息をつく一刀。そして、再び一刀は盤面をじっと見る。

 

それから数分程考えていた一刀だがおもむろに駒を動かした。一刀の一手を見て軍師達の顔が変わる。

稟 「何と…」

風 「……ぐぅ~」

稟 「寝るな!!」

風 「おおっ!!今のおにいさんの一手があまりにもダメダメだったのでつい~」

稟 「むっ……それはたしかに」

風の言葉に稟も口をつむぐ。それだけ先程の一手は予想外であった。

稟 「北郷殿は勝負を捨てた……という顔ではないな」

風 「そうですね~。詠ちゃんもかなり警戒していますしね~」

詠は一刀が動かした駒を見て警戒の色を浮かべていた。

 

 

詠 (どういうことかしら……これは)

盤面をじっと見ていた詠は視線を一刀に動かす。

  「……どうした…詠?」

詠 「あんた…試合を捨てたの?」

  「ははっ…詠…それは愚問だな」

詠の言葉に笑う一刀。そして、真っ直ぐに詠を見つめる一刀。

  「俺はどんな時でも勝負は捨てない。例え勝ちが限りなく低くても…僅かな勝ち目があるなら俺は絶対に諦めない」

悠然とそう詠に言い放った一刀。そんな一刀を見て詠が笑みを浮かべる。

詠 「そう……だったらボクが潰してあげるわ」

 

美羽「何か二人とも楽しそうなのじゃ~」

月 「そうですね…詠ちゃんのあんな楽しそうな顔久しぶりに見ました」

黙々と象棋をしている二人の顔は楽しそうであった。盤面を見れば誰が見ても詠が押していた。

美羽「ん…?あそこに駒を動かしたら詠は勝てるのじゃないか?」

美羽がある場所を見てそう言った。そこは誰が見ても隙だらけであった。

風 「それは中々できませんね~」

美羽「ん?どうしてなのじゃ?あそこを攻めれば詠は勝てるのじゃろ?」

風 「普通はそうですね~。でも相手はお兄さんですから~」

稟 「北郷殿は仲の国最強の将であると同時に最高の軍師ですからね…一見悪手に見える先程の一手も罠である可能性が非常に高いのです。だから下手にあそこを攻められないのです」

美羽「つまり一刀が凄いから詠はそれを警戒していると?」

風 「そういうことですね~。これもお兄さんのという存在のせいですね。」

風が呆れたように言うと稟も同意するかのように頷く

美羽「ほ~…一刀は凄いのじゃな~」

七乃「そうみたいですね~」

稟 「いや……二人とも北郷殿という将がいることを感謝したほうがいいですよ」

美羽と七乃の言葉に稟は思わずツッコミを入れるのであった。

 

盤面を見つめる詠もまた先程の一刀の一手が頭から離れなかった。

詠 (くっ……あそこを攻めれば確実に勝てる…でも)

詠は先程から攻めていたが一刀はそれを冷静に対処して凌いでいく。盤面をみれば徐々にではあるが一刀も盛り返している。

詠 (罠である確率が高いわ…あの一刀が何も考えずにあんな一手を打たないわ)

一刀の顔を見る詠。一刀の顔は先程からずっと変わらず淡々と駒を動かしていた。

詠 (どうする?……行くべきか)

詠がそのことに迷っていて打った何気ない一手。すると一刀がすかさずある場所に駒を動かす。詠は一刀のその一手を見て顔色を変える。

詠 「えっ…うそ…しまった!!」

  「悪いな…詠…俺の勝ちだ」

詠の言葉を聞き一刀はそう宣言した。しかし、詠はすぐさま駒を動かして対応する。

詠 「まだ終わってないわ!!」

両者がそのまま駒を動かしていくがやがて詠の手が止まる。そして、ゆっくりと口を開いた。

詠 「……ボクの負けよ」

こうして一刀と詠の対局は僅かな差で一刀が勝ちを得た。

 

後書き

久しぶりのAFです。この詠との象棋は萌将伝をやっていてどうしても書きたいと思い書きました。しかし、実力不足ゆえに大した描写が書けませんでした…すみません。

現在は愚者の方で書いているベナ一刀がなかなか弾けれないキャラなのでこっちの一刀はもうすこし弾けるようにしていけたらと思います。

ではみなさんまた

 


 
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