No.178802

真・恋姫✝無双 虎琥の出会い 1

同人円文さん

しばらく更新できず申し訳ありません。
今後も遅々とした更新になるかもしれませんがお付き合いしていただけるとありがたく思います。
10/20郭淮の真名の呼び名を変えました!

2010-10-17 15:54:46 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6750   閲覧ユーザー数:5556

「強盗だぁ!」

 

魏の都、許昌。

治安の維持されたこの街には珍しい物騒な言葉が飛び出ていた。

 

「強盗だって!?みんな、急ぐぞ!」

「さーいえっさー!」

 

白い制服を着た少年、北郷一刀は声のした方に部下である警備兵を引き連れ向かっていた。

この日は部下の凪、沙和、真桜の三人は新兵訓練を行っており不在だった。

つまり、

 

「この人手が少ない時に~…!あぁもう!」

 

こういう事態になっていた。

一刀は人ごみをかき分け、前の十字路を声のしていた方に曲がろうとする。

その時、目の前を猛スピードで馬が駆け抜けて行った。

 

「うわ!」

「隊長、大丈夫ですか!?」

 

早馬だろうか、かなりかなり急いでいるようだ。

突然のことに一刀は思わず尻もちをついてしまう。

すると馬の走って来た方から数人の警備兵が肩で息をしながらやって来た。

 

「隊長…!今の馬に乗っていたのは例の強盗です!どうやら馬を奪って逃走しているようです!」

 

一刀は思わず目を見開く。

 

「さっきのか!ってこれじゃ間に合わない…!急いで門兵に連絡を…!」

 

一刀は馬の走って行った方を見るとすぐに指示を出す。

しかし、強盗の乗った馬はあっという間に遠くなっていく。

と、そんな時。

 

「任せてください」

「え…?」

 

という一言と共に一刀のそばを何かが風と共に吹き抜けて行った。

 

 

馬に乗る強盗は強盗を抑えに回ろうとする警備兵を尻目に走り抜けていく。

実はこの男、匈奴の出身で馬の扱いには長けていた。

男の前に城門が迫る。

連絡が伝わっていないのか、城門前の兵士は慌てた様子で門を閉めようとしている。

城門までもう少し、まだ間に合う。男はニヤリとほくそ笑んだ。

これでしばらく遊んで暮らせる、とか思っているのだろう。

だがしかし、

 

ドガシャー!!!

 

その瞬間、強盗は宙を舞い背中から地面に叩きつけられる。

強盗は城門を抜けることなく空を見上げていた。

強盗は鼻から血を流しながら、何が起こった?と言わんばかりの表情をしている。

すると、城門の方から足音か聞こえてきた。

 

「強盗さん。あなたが持っているそれは貴方のものではありませんよ」

 

足音がする方から声が聞こえる。

男はふらつく頭を動かし前を見る。

そこには髪を耳元辺りで切りそろえた一人の少女がたたずんでいた。

少女は強盗に細身の剣を向け答える。

 

「北郷隊副官見習い、孫礼。あなたを捕まえさせていただきます」

 

「いやー、虎琥助かったよ~」

「いえ、そんな…当然のことですよ」

 

城門前で孫礼こと虎琥は一刀の感謝の声に顔を赤くしていた。

あの時、一刀のそばを通って行った声は虎琥だった。

虎琥は魏軍内でも最速の足の速さを持っている。

その速度は短距離ならば馬にも追いつける速度だ。

魏の将軍の中でもこれに反応できる人間はこの城にいる面々でも凪、春蘭、霞達ぐらいだろう。

 

「いやホント助かったよ!そうだ!今日この後何かおごってやるよ」

「い、いえ!そんな…」

「遠慮しない遠慮しない!レッツゴー!」

「ごー…お?」

 

そんなこんなで一刀の意味のわからない言葉に答えを返しながら、街の中の御茶屋へと行くことになった虎琥だった。

 

席に着くと一刀はさっそく採譜を眺めだした。

 

「ほら、何食べる?俺はあんまんにするかな…」

「…えーっと、隊長いいんですか?」

「大丈夫大丈夫!」

 

一刀は満面の笑みで答えた。

虎琥はその笑顔に採譜で顔を隠しながら「…同じもので///」と答えた。

 

「しかしさっきの虎琥はすごかったな~」

 

一刀があんまんを口にしながらつぶやいた。

 

「さっきのですか?」

「うん、遠目で見てたけど…馬に追いついたと思ったら飛び上がって相手の顔に回し蹴り。あれはかなりキツイ一撃だっただろうね。思わず強盗に同情しちゃったよ」

「あはは…」

 

強盗はあの後仰向けに倒れ気絶してしまった。今頃牢に放り込まれているだろう。

 

「虎琥って体術もすごいんだね」

「凪さんに比べれば…まだまだです。今も教わっている最中なんですから」

「そっか。でも、虎琥が来てから警備隊の仕事が楽になったなぁ…」

「私、お役に立ててますか…?」

 

虎琥は恥ずかしそうに一刀に尋ねた。

 

「大助かりだよ!この街広いし人手が多いほうがいいのは当然として…何より虎琥の仕事に対する姿勢がいいね。真桜と沙和に見習わせたいくらいだよ」

「あはは…ありがとうございます///」

 

一刀の答えに虎琥は顔を明るくさせる。一刀もその笑顔に頬を緩ませる。

最初に出会ったころから考えると今とは大違いだった。

なにせ昔は…。

 

「隊長、どうしたんですか?」

「ん?いや、ちょっとね…」

 

昔のことを思い出したのが顔に出ていたようだ。

 

「少し、昔のことを思い出していただけだよ」

「そっそうですか…///」

 

一刀がそう言うと虎琥は顔を赤くする。

虎琥も一刀と出会ったころを思い出す。

出会ったころは色々あった。

今、あの頃のことを考えれば恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまうだろう。

だが、あの時だけは違った。

きっと隊長の体にもあの時のそれが残っているだろう。

自分の体にも…。

そう、今とは大違いなのだ。今、この状況とは。

 

 

 

「鄴へ警備状況の視察?」

「そうよ。凪も連れて行くわ。後駐屯している軍の視察もするから私に春蘭、秋蘭も行くわよ」

 

ある日、一刀は華琳に呼び出されてこう言われていた。

一刀の立案した警備方法が上手く他の都市でも上手く機能しているか。

領土の増える中、その確認も必要な仕事になりつつあった。

 

「領地が増えればくまなく全体を見なければいけないわよ…特に北方は匈奴と接しているんだから治安維持には気を配らないといけないわ」

 

華琳は一刀の顔を見ながらそう答えた。

 

「出発は明後日よ。それまでに必要な準備は終わらせておくように」

 

 

「たいちょー!お土産よろしゅうなー!」

「お願いなのー!」

 

という部下二人の声を背に一行は許昌を出発した。

遊びに行くわけじゃないのに、と一刀がぼやいていると隣を行く華琳から声が掛けられる。

 

「あら?いいじゃないお土産くらい。少しぐらいご褒美がないとあの娘達も仕事のやりがいが無いのではないかしら?」

 

華琳は笑顔でそう問いかける。

現在、前軍に春蘭の部隊。中軍に一刀、華琳、凪。後軍に秋蘭の部隊となっている。

戦争に行くわけではないので少数の兵力で行軍している。

 

「甘やかすとあの二人すぐにサボるからな…」

 

一刀の脇に控えていた凪が同意するようにうなずく。

 

「そうです。あの二人にはもっと厳しいくらいがちょうどいいんです」

「あら、凪は厳しいのね」

「隊長が甘いんです」

「うっ、ごめん…」

 

一刀は凪の一言に申し訳なさそうに頭を下げた。

そんな二人を華琳は楽しそうに眺めている。

 

「って華琳、笑うなよ!」

「情けない姿をさらす一刀を眺めるのは楽しいものよ。ねぇ、凪?」

「わ、私は…そんな…///」

 

まぁ、凪は一刀を見ているだけで満足なんでしょうけど。と華琳は心の中で思う。

やれやれと言った苦笑めいた笑顔に羨望の思いを隠しながら。

 

それから数日後。黄河を渡ってしばらくたった時。

 

「曹操様、この先に徐晃、張郃両将軍の旗を確認しました」

「そう、御苦労さま。下がっていいわよ」

「ハッ!」

「二人が来ているってことはもうすぐか」

 

一刀がそう言うと隣にいた凪が答える。

 

「そうですね。あの二人とはしばらく会っていませんでしたから…早く会いたいですね」

「そうだな」

 

ちなみに張郃は元袁紹の部下で先日行われた官渡での戦の際に華琳達に降って来ていた。

徐晃は董卓包囲戦の後、仲間になった大斧使いの武将だ。

武力においては凪達に引けを取らない豪傑と言えるだろう。

無論一刀は元いた世界の知識もあるため、元の世界の二人がどんなだったかはよく知っている。

 

「本当に久しぶりですからね…。また手合わせがしたいです」

 

凪はそう言うと腕に力を込める。うっすらと気が浮かんでいるようにも思える。

早くもその気になっている凪に一刀は思わず笑みをこぼす。

すると後方から誰かが声を掛けてきた。

 

「何を笑っているのだ、北郷?」

 

そこに現れたのは後軍にいた秋蘭だった。

 

「秋蘭か。いや、凪がね…」

 

そう一刀が答えると秋蘭は凪の方を見る。

凪の様子を見て理解したのか、秋蘭も一刀と同じように笑みを浮かべる。

 

「成程な。確かにあの二人と会うのも久々だからな…きっと姉者も同じことを考えているだろう」

 

秋蘭はそう言うと少し離れた場所にいる春蘭を見つめる。

隣にいる兵士に何か話しているのか、時折兵士の肩を叩いては大笑いをしている。

 

「ありゃ…暴れたくてうずうずしているみたいだな」

 

春蘭に話しかけられている兵士が大変そうだ、と一刀は思う。

話しかけられている兵士も肩を叩かれては痛そうにさすっている。

 

「あら、秋蘭。来ていたのね。」

「ハッ。後方に異変はありません」

「そう、わかったわ。…見えてきたわね」

 

華琳がそう言うと一刀達も前を向く。そこには張と徐の旗が風に靡いていた。

華琳達は兵をその場に止め前へと進む。

旗の前に二人の女性が立っていた。

 

 

「おう。久しぶりだな、大将!」

「お待ちしておりました。華琳様」

「出迎え御苦労。久しぶりね…悠、菖蒲」

 

華琳に対して敬語を使わずサバサバとした物言いをする女性。張郃こと真名を悠。

それと反対に敬語で話しかける銀の長髪の女性。徐晃こと真名を菖蒲(あやめ)。

悠は手に槍を、菖蒲は大斧を持ち華琳の出迎えに来ていた。

 

「悠!貴様、華琳様に向かってその言葉づかいは何だ!いい加減に治せ!」

 

と、春蘭が悠の言葉づかいに対して怒鳴る。対して悠はヘラヘラと笑いながら、

 

「いーじゃんいーじゃん!大将、何も言わないんだからさー」

「そんなわけないでしょう、もう…。春蘭様、申し訳ありません…華琳様も無礼をお許しください」

 

と隣にいる菖蒲が代わりに頭を下げる。

 

「かまわないわ。悠が突然敬語を使っても気味が悪いだけよ」

「大将わかってるねぇ。そーゆーことだ、しゅ・ん・ら・ん♪」

 

そう言うと悠はニヤニヤと意地の悪い楽しそうな笑みを浮かべて春蘭を見る。

そんな態度を見せる悠に春蘭は、

 

「キサマ~…!その笑い方やめろー!」

 

馬を下りてすぐさま悠に向かって駆け出した。

 

「おおっと!春蘭が怒った!♪っと一刀達も久しぶり!」

 

悠は追い掛けてくる春蘭をからかうようにして逃げ回る。

しかも余裕なのか一刀達に手を振りながら。

春蘭が追い掛けるも悠はすばしっこく、捕まりそうになってもするりと逃げてしまう。

そんなやり取りを見て一刀は苦笑してしまう。

 

「また始まったな、あの二人。っと挨拶が遅れたな。お久しぶり、菖蒲」

「は、はい…。おっお久しぶりです…」

 

一刀が挨拶をすると菖蒲はびくびくしながら答える。

実のところ、彼女は少しばかり男性恐怖症なところがあった。

最初にあった頃はこれより酷く、握手した瞬間殴り飛ばされたことを一刀は思い出す。

 

「…まだ苦手なんですね、菖蒲様…」

「申し訳ありません…。凪さん、お久しぶりです」

「菖蒲も変わらんな。今回はよろしく頼む」

「少しは良くなったんですが…。秋蘭様もお変わりなくてうれしいです」

 

菖蒲はにこりと穏やかに二人に笑顔を向ける。

 

「それでは華琳様、城まではもうすぐですので…ここからは私達がご案内いたします。…悠さん?そろそろ行きますよ?」

「おー!わかった!しゅーんらん♪続きはまた後でな!」

「おーう!上等だ、コノヤロー!!」

 

どうやら春蘭はとことんからかわれていたようだった。

そんなやり取りをする二人を見て一同は苦笑した。(一人満面の笑み)

そんな時、

 

「…ん?」

「隊長?どうしたんですか?」

「ん~…。誰かに見られていたような…まぁいいか」

「はぁ…」

 

こうして一同は鄴の城に向かった。

 

 

鄴。

かつては袁紹の統治下にあった城だ。

官渡の戦いの後、敗北した袁紹は領地から逃げ出しそのまま華琳達が占拠。かつて袁紹の統治下だったということから元袁紹軍の張郃こと悠が中心となって治めていた。

 

「ふうん、街の雰囲気はいいみたいね。疲弊している様子もないし市は賑やかで物も多い…いい感じに治めているわね、二人とも」

「ありがとうございます」

「とーぜんだろ。私がやってんだから」

 

街を見回す華琳は菖蒲と悠に褒め言葉を贈る。

菖蒲は嬉しそうに頭を下げ、悠はふふん、と言いながら偉そうに胸を張る。

そんな三人のやり取りを見ながら一刀も街の状態に目を配る。街は人々の笑顔に満ち、近くで子供たちが遊んでいるのが見える。民家の軒先では大人たちが碁を打ち、市では繁盛しているのだろう威勢のいい声が飛んでいる。

いい街だ、と一刀は心の中で思う。

凪の方を見ると同じことを思っているのか、微笑んでいるように見えた。

 

「凪も思うか?」

「えっ?」

「いい街だって」

 

一刀はにっこりと微笑みながら凪に問いかけた。

図星だったのか、凪は少し顔を赤らめて頷く。

 

「…ハイ、いい街ですね///」

「一刀、なに道端で凪口説いてんだ~?」

 

と、そんな時。一刀の前にいた悠が声を掛けてきた。

 

「ゆっ悠!?別に俺はそんなつもりじゃ…!」

「照れるなって!なぁ凪!?」

「…」←不機嫌そうに一刀を見つめる凪。

「凪…?怒ってる?」

「…怒ってません」

 

凪は明らかに不機嫌そうな表情でそっぽを向いてしまう。

突然そんな態度になってしまった凪を一刀は慌ててなだめる。

 

「いやー相変わらず凪は可愛いなぁ♪」

「ホントですね♪」

 

悠と菖蒲はそんな二人のやり取りを楽しそうに見ている。

悠は単純に悪戯が好きな人間でたんに反応を見て楽しんでいた。

対して菖蒲は恋バナ好きでこう言ったことには率先して首を突っ込む方だった。

 

「凪が可愛いのは認めるけど…悠、貴方も相変わらずね」

「私が変わるわけないじゃん!大丈夫、華琳も可愛いから!」

「そうだろう!華琳様は可愛く!そしてお美しいのだ、わかってるではないか!悠!」

「姉者…きっと悠はそう言うことを言おうとしているわけでは…」

 

そうこうしているうちに一行は鄴の行政府に到着。

今日一日は旅の疲れを取るということで休みを取ることになった。

 

 

その夜。

悠達の計らいで酒宴が催された。

 

「なぁ華琳、こんなんで良かったのか~?もっと騒がしく出来たのに…」

「悠…貴方、少しは落ち着いて酒が飲めないの?将として必要なことよ」

「だって~みんなでどんちゃんやりたいじゃん!」

「もう、悠ったら…申し訳ありません、華琳様」

 

酒宴は華琳が「少しは落ち着いて酒が飲みたいわ」ということで城にいた全員とはいかない人数で行われた。

 

「というわけで新しく私達の部隊に入った新人の二人だ」

 

結局、菖蒲と悠の他にしばらく前に部隊に入ったという二人の少女が呼ばれた。

年齢的には季衣や流琉より年上と言った感じだろうか。

 

「孫礼、字徳達と申します」

「郭淮っす!字伯済っす!」

 

孫礼と名乗った少女は無駄な装飾の無い動きやすそうな服装に長い髪を後ろで簡単に纏めている。言動から見ると礼儀のいいしっかりした子だろう。

そして郭淮と名乗った活発そうな少女は前の辺りに切れ目の入った長めのスカートの様なものを穿き、一刀の世界的に言えばベリーショートの髪に鉢がねを巻いている。

 

「官渡の後、しばらくしてこの二人が士官してきまして…今はまだ見習い、と言ったところですけど武芸、兵法にも通じています。経験を積めば必ずやお役に立てるかと」

 

菖蒲が二人のことを簡単に紹介した。

菖蒲の言葉を聞いた華琳は二人のことをしばらく見つめる。

 

「…」

「あの…私達に何か?」

「そんなに見られると恥ずかしいっすよ~///」

 

見つめてくる華琳に孫礼は何事かと思い、郭淮は恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。

華琳は、ふむ、と一言言うと、

 

「可愛い子達じゃない♪そうだわ、今夜でも閨に…」

「「「ええええっ!」」」

 

思わず声をあげる孫礼、郭淮に…

 

「…何で春蘭までビックリしてるんだ?」

「う、うるさい!黙れ北郷!///」

ゴス!

「理不尽っ!!!」

 

とそんな華琳達のやり取りを見ていた悠が、

 

「華琳、それはしばらく待っててくれ。…まだガキだから」

「あら?残念ね」

 

と華琳が残念そうに肩をすくめる。

 

 

「なんすかー!悠様、私は大人っすよ!」

 

ガキ、と言われたのが嫌だったのか。郭淮が悠に食ってかかりだした。

郭淮は子供っぽく見られることを嫌っているらしい。

 

「春美、そんな言い方だと子供っぽく聞こえるよ」

 

そんな郭淮を孫礼がやれやれと言った感じで注意する。

どうやら春美(シュンメイ)と言うのは真名のようだ。

 

「なんだよー!虎琥は私より発育がいいからって自慢してんじゃねー!」

「なッ!?自慢してるわけじゃないわよ!勝手に大きくなってるんだから!///」

 

虎琥と呼ばれた少女、孫礼は顔を赤らめて反論する。

が、残念ながら反論になっていないらしく、

 

「どっから聞いても自慢じゃー!!」

「おおー!いいぞいいぞ!もっとやれー!」

 

言い争いを始める郭淮と孫礼を囃し立てるように悠が声をあげた。

そんな三人に菖蒲が声をかける。

 

「はい、二人とも華琳様の前よ。静かにしなさい。悠もふざけないで」

「何だよ、酒の席だからいーじゃん!」

「し・ず・か・に・ね(ニッコリ)」

「…はい。静かにします」

「「…すいません」」

 

三人は菖蒲の笑顔(?)を見て小さくなるように黙ってしまった。

 

「ならいいですよ。…華琳様申し訳ありません」

「あら、もう終りなの?せっかく楽しかったのに」

 

華琳の一言に凪、秋蘭、一刀は苦笑いを浮かべた。

 

「まぁそれはいいとして…郭淮に孫礼と言ったかしら、今後の働きを期待するわ。あなたたちに私の真名を預けるわ…私の真名は華琳。覚えておくように」

「初めてお会いしたのに真名を…。私の真名は虎琥と言います」

「春美って言います!期待にこたえられるよう頑張るっす!」

 

孫礼…虎琥はいきなり真名を預けられたことに感激したのか少し声が震えている。

郭淮こと春美は虎琥とは違い、緊張もなく元気よく答えた。

 

「華琳様が預けたとなると私達も預けなければなるまい…秋蘭だ。よろしく頼むぞ」

「春蘭だ。華琳様の期待にこたえられるよう励むことだ!」

「私は凪と言う。よろしく頼む」

「お願いするっす!」

「はっはい!///よろしくお願いします!///」

 

秋蘭、春蘭、凪達も華琳にならい真名を伝えた。

虎琥は最後に声を掛けてきた凪に声を掛けられると顔を赤らめ少し慌てたように返事を返す。

その隣にいる春美は虎琥の方を楽しそうに眺めている。

 

 

「…///(じー)」

「…私の顔に何か着いているか?」

 

じっと凪を見つめる虎琥。

凪は顔に何か着いていないか確認しながら尋ねた。

虎琥は慌てたように、

 

「いっいえ!なんでもないです!///」

「そうか。まぁこれからよろしく頼む」

 

 

その光景を見ていた一刀は何だろう、と思いつつも自分も自己紹介をしようと二人の前に出る。

 

「北郷一刀だ。真名は無いけど…まぁ一刀が真名だと思ってくれ。よろしく虎琥、春美」

「よろしくっす!へぇ~…あなたが天の種馬っすか?」

 

突然の春美の発言に思わずコケそうになる一刀。

 

「壮絶に勘違いをしているようだけど…天の御使いってことになってる。断じて種馬ではないぞ!てか悠!変な風に教えてるだろう!」

「ん~何のこと?知らないなぁ~(ニヤニヤ)」

「その顔、絶対嘘ついているだろう…」

「まぁ良いじゃん♪ほら、虎琥も挨拶しとけ」

「全く…。虎琥って言うんだっけ?よろしくね」

「…よろしくお願いします」

 

虎琥はそう一言言って頭を下げるとすぐに自分の席に戻っていった。

一刀はどうしたんだろうと首をかしげていると、

 

「なんて呼べばいいかな…まぁ一刀さんでいいっすね。一刀さん、色々と聞きたいことあるっすけど良いっすか!?」

 

と、春美が突然一刀の腕に抱きついてきた。

一刀は少し困った顔を浮かべながら、

 

「わかったから、とりあえず離れて…」

「えー!いーじゃないっすか!」

「さっそく可愛い子を侍らすなんて、さすがね。か・ず・と?」

「北郷!キサマ何をヘラヘラしている!」

「まぁまぁ姉者。…いつものことだ」

「隊長…不潔です」

「ひゅーひゅー!さすが一刀じゃん!♪」

「あ、あの子ったら、あんなに抱きついて…。羨ましい…///」

「俺はそんなつもりないぞ!って春美、離れて…視線が痛い…」

 

とそんな感じで酒宴が進んでいく中(結局騒がしくなった)。

一刀はずっと気になっていることがあった。

 

(…昼間と同じ視線だ)

 

そう、昼間にあった視線をここでも感じていた。

一刀は悠に絡み酒を受けている中でその視線がする方に目を向ける。

その方向には、

 

虎琥がいた。

 

(確かに俺の方を見ているような気がする…。何となくだけど、あんまり良く思われていないような…)

 

虎琥の視線は好奇でも親愛でもない何かもっとドロドロしたものを感じていた。

一番近いのは…出会ったばかりの桂花だろう。しかし今日初めて会ったのに何か恨まれるようなこともしてはいないはずだ。

埒が明かないな、と思った一刀は、

 

「なぁ、悠「一刀!ほら!飲めぇ~!!」」

「っていきなり飲ますな!ゴボぉ!!?」

 

結局、一刀は詳しい話も出来ないままこの日は記憶を失った。

 

 

 

久々の本格的な更新です。

前回は後日談をいじったものを作りましたが今回はちゃんとした形で作ってます。

というわけで虎琥…もとい孫礼のお話です。

知らない方のために簡単な紹介…孫礼、字徳達は演技では孔明の北伐時に登場します。

勇猛で知られ曹叡を襲った虎を切り殺したことが語られる武将です。

正史では北伐に登場した描写は無いみたいですがその後司空まで上り詰めたとあります。

と言った人物ですが恋姫的には簡単に言えば真面目後輩キャラと言ったところでしょうか…。

イメージとしては蜀の蒲公英を真面目にした感じです。

凪を若干かたぶつ真面目キャラとすれば虎琥は明るい真面目キャラと言ったところです。

真名の由来は先ほどありましたように虎を切り殺したところから…です。

ちょっと安直な気もしますがご了承ください。

ともう一人新キャラがいますがここでの紹介はやめときます。

ちなみに張郊、徐晃の二人は郁さんの物を拝借させていただきました。

ここでお礼を述べさせていただきます。ありがとうございます。

 

今後ですがおそらくゆっくりと更新していくことになります。

卒業論文等が控えていますので時間を見て更新していきます。

それではここまでお読みくださった方々、ありがとうござます。


 
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