No.177190

真恋姫無双 おせっかいが行く 第十六話

びっくりさん

今までで最長の長さ。
でも、ネタが浮かんできたので苦痛ではなかったです。
前回のほうが苦痛でした。

今回もあとがきの後に小ネタを入れました。

続きを表示

2010-10-09 02:04:49 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:19428   閲覧ユーザー数:14090

 

 

 

 

「ここの一角に住居を建てます。こっちの大通りにはお店を出すように。職人の人たちはこっちのほうが良いでしょう」

 

テントの下に置かれた机いっぱいに竹簡を広げて、それを確認しながら指示を出しているのは管輅だ。竹簡には街の設計図が書かれていた。あの賊との戦の後、まだ生きていた賊を回収し、簡単な処置を施すと働けるものを引きつれ、街の復興に着手した。

その復興の際に、街の再建計画を任されたのは管輅なのである。

彼女の占星術の智識に基づき、街にある建物の配置などを決めてもらうのだ。

そのテントに左慈と于吉が入ってくる。

 

「管輅。こっちの材料が足りなくなった」

「そうですか。すぐに手配します」

「頼む」

「管輅さん。こちらに配属される人をもっと増やせませんか?」

「そうですね・・・ここの担当をこうすれば・・・いけますね。5人ほどですが、よろしいですか?」

「少し厳しいですが、贅沢は言えませんね。構いませんよ」

「では、そのように調整します」

 

管輅の言葉を受けて、左慈と于吉はテントを出て行く。その姿を見送ることなく、彼女は街の設計図を確認していた。手にも竹簡を持ち、なにやら書き込んで行く。今回の街の復興の総監督に選ばれた管輅。これは彼女に課せられた仕事なのだ。絶対に成功させると気合いとやる気に満ちていた。

そこに今度は一刀が入ってきた。

 

「管輅さん。材料の追加を持ってきたよ」

「白士さん。ご苦労様です。では、こちらに記入された通りに分配をお願いします」

「了解。いってくるね」

「お願いします」

 

渡された竹簡を確認しながら、一刀はテントを出て行った。

 

これは街の復興を頑張るおせっかいの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「白士さん」

「何かな?」

「以前にあなたに伝えたいことがあると言いましたよね?」

「ああ、そうだったね。ということは、今それを教えてくれるんだね?」

「はい」

 

夕暮れ時になり、街の復興作業も中断して皆帰宅する時間。一緒に帰宅していた一刀と管輅。そこで管輅は戦の前に伝えたいことがあると話したことを切り出したのだ。

 

「私の真名を・・・お伝えしたいと思います」

 

そう、この世界ではとても大切な名前を。一刀は普通に真名のことを忘れていた。もう、自分が白士と呼ばれることに違和感を感じなくなっている為、管輅のことも普通に呼んでしまっていたのだ。頭をかき苦笑を浮かべる一刀。そんな大切なことを忘れるなよと・・・。

 

「私は、姓は管、名は輅。字は公明、真名は仙花といいます。どうぞ、お受け取り下さい」

 

そう告げた管輅の顔には柔らかな笑みが浮かんでいた。一刀も断るという選択肢は元よりない為、素直に受け取ることにして自分もお返しにと名乗る。

 

「俺は、姓は白、名は士、字は北郷・・・真名は一刀。よろしくね、仙花さん」

「さんはいりません。仙花と呼んで下さい。敬語もなしですよ?」

「わかりまし・・・わかったよ。仙花。これでいい?」

「はい!よろしくお願いします。一刀様!」

「いぃ!?様付けっすか?あの~・・・出来れば、俺も呼びすてで呼んで欲しいんですけど?」

「嫌です!」

「笑顔で却下された!?」

 

このときから、二人が本当に心を通わせた瞬間であった。ただ、仙花が自分の意思を曲げない、頑固な一面があることがわかった瞬間でもあったが。

 

翌日。

復興作業の再開する前に本日に行う作業の指示と確認を行う会議を開いているときのことだ。

 

「では、一刀様は昨日に引き続き材料の調達と運搬をお願いします」

「了解だ。細かいとこはその都度、仙花が指示だしてくれるってことでいいんだよね?」

「はい。その通りです」

 

一刀と仙花の会話を聞いた左慈と于吉が二人の雰囲気が変わっていることに気付いた。それと、真名で呼び合っていることにも。ちなみに、様付けに関してはすでに折れて説得を諦めた一刀であった。

 

「北郷さん。管輅さんの真名を教えてもらったんですか?」

「ああ、昨日の晩にね」

「なら、私達の真名も教えましょうか。ね?左慈」

「そうだな」

「いいのか?真名を教えてもらって?」

「ええ、構いません」

「ああ、構わないぞ」

 

こうして、仙花に続き左慈と于吉の真名も教えてもらうことになった。

 

「姓は左、名は慈、字は元放。真名は蹴(しゅう)だ」

「姓は于、名は吉。真名は符儒(ふじゅ)です。よろしくお願いします」

「ああ、俺の真名は一刀だ。こちらこそよろしく」

 

四人は新たに心を通わせ、復興作業に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

街の復興作業は順調に進んだ。仙花が街の構成、区画や家の配置などを担当し、復興作業の総指揮を請け負う。蹴と符儒はそれぞれ建物の建設をする部隊を率いている。そして、一刀はその建設部隊に建物の資材や食糧などを補充、運搬を行っている。

その復興作業を行う労働力だが、これは村から志願した兵達と、復興した街に移住を予定している村人達、そして、あの戦で捕らえた賊達である。

あの戦の結果、半数が死亡、一割が逃亡・行方不明、残りの四割を捕らえたのだ。その内、二十五%が重症を負っていて動けない為、残りの七十五%の人材を復興作業に投入している。

 

「食糧はどう?」

「まだ、余裕はありますね。明日に村から補充もありますし。復興作業が終わるころまでは大丈夫ですよ」

 

この人材を維持する食料はどうしたのか?それは、あの戦で符儒が隠した食糧を使っているのだ。隠した食料に、半数以上の欠員を出した賊達という条件の為、十分に余裕があった。復興作業の労働力に賊を使うということに、賊達が暴動を起こすのでは?と予想したのだが、意外にも素直に応じてくれたものが大半であった。中には反抗してきた者もいたのだが、その者達は蹴によって叩きのめされている。何故、反抗するものが少なかったのか?それは、賊のほとんどが一刀の村にいる人達と似たような人達、つまり食べるのもままならなかった人達だったのだ。そんな彼らが食が保障された環境での労働、それも無理がない時間帯と条件という現状に反対することはなかったのだ。そんな彼らの頑張りもあり、復興は着実に進められるのであった。

 

「県令?」

 

ある日のこと。この日も復興作業を行おうとしていた矢先、テントの中に村人数人がやってきたのだ。何か問題があったのか?と思いながら対応した仙花だが、彼らは話があるのは一刀にだということもあり、復興作業の話という可能性が消えた。では、何の話だろうか?一刀には全く、心当たりがなかったのでかえってそれが心配になった。そこに出たのが、一刀に県令になって欲しいという嘆願だったのだ。

 

「長。あの村とここの街。街の復興が完了すればそれなりに大きな規模になるんです。今までは規模が小さかったから、明確な県令を立てなくても長が仲裁すればなんとかなったんですが」

「この街の規模ではそうもいきません。長もいちいち問題が起こったときに引っ張り出すわけにはいきませんから」

「それに、経済、警備、貿易、防衛、法律など明確に決めておかなければならないことが増えます。これからはちゃんと県令など、この街の問題専門の職をおかねばなりません」

 

規模が大きく、今まで以上に問題が発生する可能性がある。否、確実に発生する。その為に県令を決める。しかし、この村人しかり街人のほとんどが役人を信じていない。彼らに任せた結果、自分達は生活苦に陥り、飢餓に苦しみ、賊に身を堕とすことになった者もいたのだ。そんな彼らだから、中央に報告し県令が派遣されるのを待つという選択肢はない。もう、この村、街は自分達の街であり、目の前にいる白士が建てた街なのだ。県令になるのはそんな街人達が信頼している白士以外ありえない。

 

「だから、あなたにここの県令になってほしいのです。これは、村の・・・街の人、みんなの意見です」

「どうか、県令になって下さいませ」

「「「「「お願いします」」」」」

 

そういうと、皆一斉に頭を下げた。これには一刀も困った。こう言われては断ることが出来ない。正直に言うと一刀も中央から県令を派遣してもらうといいうことは考えていなかった。音々のこともあったからだ。だから、街の復興が終わった後は、街の住人中から適任者を選出して県令になってもらい、自分は村に戻っていままで通りに生活すると考えていたのである。それと、ここに来るまではただの学生であった一刀には自分が県令になるという考えが浮かばなかった。浮かんでも荷が重いと思い却下していただろう。それを、こういう形で頼まれては断れなくなってしまう。一刀は困り果てるしかなかった。

 

「でもなぁ。俺にそんな大役が務まるかな・・・」

「俺らを纏め上げるのは長しか務まらないぜ?」

「そうです。あの村に住んでいる者の全員が長なら・・・と思ってます」

 

自分に県令という重責が務められるかと心配が口に出たが、最早村人達の中では自分達を纏め上げるのは一刀以外に考えられないのである。必死に懇願する。

それでも、悩む一刀の背中をそっと押す者がいた。

 

「やってみてはどうですか?」

「仙花?」

「皆さん、一刀様が務めることを望んでいますし、それ以外は不満を抱いてしまいます。なれば、一刀様がなさるのが一番よろしいかと・・・。初めてのことでご心配なさるのはわかりますが、はじめは誰でもそうです。私も全力で支えますので、やってみてはどうでしょう?」

 

そっと背中を押した者は仙花であった。いや、仙花だけではない。

 

「俺達も協力しよう」

「そうですね。やってみてはどうですか?一刀さん」

 

蹴や符儒までもが村人達の意見に賛成したのである。こうなってしまっては断ることは不可能だ。一刀はようやく決断した。

 

「わかった・・・至らないことも多いけど。こんな俺でよければ、県令をやらせてもらうよ」

 

こうして、ひっそりと汝南郡の街に新たな県令が誕生したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

復興作業を始めてから一月が経過した。街の様子は大分変わり、少し活気が出てきた。街の建物は最低限建ち並び、いくつかの店が開いている。その全てが飲食店なのが特徴的である。復興作業の合間、終わり頃にお腹を空かせて立ち寄る人達が多いからだ。ちなみに復興作業に携わっているものはお金を払うことが免除されている。元手は賊達の保有していた食糧を使うのでただも同然である為問題ない。逆に復興作業者には、給金は発生していない。元賊なのでそこまですることもないという判断だ。ただし、復興が完了すれば普通に街人として生活は出来るよう許可はされていた。

賊達以外の、この街に移住する予定の者達はどうなっているのかというと、村で仕事を持っているので、普段はそっちに専念し、時間が空いたときに手伝いにくるというスタンスだ。彼らの生活もあるし、この復興作業は賊達の贖罪という意味合いも持たせていたのであった。また、飲食店をしている者は、賊にいた女性達である。彼女らは大工のような力仕事では十分に力を出せない為、こうして食事を作ることで協力しているのだ。こうすることで、少ないお金で上手くやりくりし、復興作業を進めていたのである。

さて、復興作業に携わっている者は免除と言った。つまり、それ以外の人もいるというわけだ。では、それ以外の人とはどういう人かというと。

 

「いらっしゃいませ~」

「ここも大分綺麗になってきたな」

「ああ。廃墟だったなんてな。信じられねぇよ」

 

そう、復興が進んだおかげで、他の街から移動中に腹を満たしていく者達が出てきたのだ。村から買出しに行く者達に街の復興が進んでいるという話を買出し先の街でしてもらい、少しづつ噂を広めていったのである。その効果が徐々に現れた結果だった。提案したのは符儒である。

 

「順調にいけば、この街の商業が復活し、街の資金源になります。また、他の街との交流も復活するでしょう」

 

つまり、少しでも早く街を機能させようとの考えからの策であった。こうして、街の復興を仙花が、経済を符儒がそれぞれ回復させようと頑張っていたのであった。

 

 

 

 

「大分復興してきたんじゃないか?」

「ああ。前と比べるとまだまだだがな。街としては機能してると言ってもいいな」

「ええ。早急にと進めてきましたからね。ここからはそれほど手を施すこともないでしょう」

「それでも、こちらから少しは指示を出すことがありますけどね」

 

大通りのみだが、建物が建ち並んだ様子を眺めながら一刀達は会話している。街として最低限の経済機能を満たすようになった現状。もう少し復興が進めば、後は街人に任せて自然に発展していくようにする予定だった。

建物の建設の次は一早く外交を復活させることだ。

 

「まずは近郊の街の役人に挨拶周りに行きましょう」

「だな。ここに街があるって認識させないと」

「手分けして行くか」

「そうですね。では、誰がどこに行くか決めてしまいましょう」

 

こうして、近郊の街に手分けして挨拶に向かうことになった。各担当は北の陳留に蹴が、東の寿春に符儒が、西の許昌に仙花が、そして、南の江夏に一刀に決まった。

翌日から、それぞれ担当の街へ出発する。

 

「よし。江夏へ出発だ」

 

荊州へと出発した一刀。出発前に言われた仙花の予言について考える。

 

「子猫に迫る犬の群れ。親猫と離れ離れ。親猫、子猫を思い身動きとれず。犬の群れの餌食になるか・・・」

 

一刀の中で役人に挨拶するよりも、この予言のことが気になり、優先順位が上にきていたのであった。

 

「うわぁ・・・やっぱ、俺達の街と比べると大きいよな~。まだまだ頑張らないと」

 

江夏に到着し、街の様子を眺めての一刀の感想である。ここ、江夏は大都市とは程遠い、良く言って中規模の街であったが、復興したばかりの汝南の街と比べると格段に大きいといえた。

 

「ん~、挨拶行く前にここを見て回るかな」

 

着いたのが昼頃であった為、まずは腹を満たすべく行動するついでに、この街の情報を得て汝南の復興の参考にしようと考えた。一刀は早速行動に移すのであった。

 

「う~・・・たいくつだよ~」

 

一刀が江夏の街を探索し始めた同時刻。とある家の中で一人の少女が退屈な時間に不満を漏らしていた。

 

「でも、おかあさんとのやくそくだし・・・」

 

どうやら、母親と家にいると約束したらしい。だが、やんちゃ盛りの年の子供におとなしくしていろというのは酷なことである。

 

「うぅ~、ちょっとくらいなら・・・だいじょうぶだよね。うん。だいじょうぶ!ちょっとだけだから」

 

やはり我慢できなかったのだろう。少女は外へと出て行ってしまった。しかし、これが幸運にも彼女と母親を救うことになるとは思いもしなかった。

彼女が外に出て行ったすぐ後。この家に侵入した者達がいた。

 

「おい!ガキはいたか?」

「いえ・・・どこにも」

「ちっ。出かけてやがるのか・・・おい!手分けして探せ!」

「はっ!」

 

なんとも怪しい会話である。男達は少女を捜しているらしいのだが、家の中にいないとわかると手分けして探し始めるのであった。一体彼らはどうして少女を探しているのか?目的とは何なのであろうか?

 

「なんなの?あのおじさんたちは・・・こわいよ。おかあさ~ん!たすけて~!!」

 

少女は泣きながら走っている。退屈な時間から抜け出すように外へ出て、何しようかと街を歩いているところに、武装した男達が自分を捕まえようと走ってきたのだ。

 

「黄忠の娘だな。おとなしくついてきてもらおうか?」

 

この瞬間、黄忠の娘―璃々―は怖くなって逃げ出したのである。が、いくら逃げ出しても大人と子供の追いかけっこだ。璃々が勝てるはずもないのだが、彼女は自分の小さな体を活かし、人ごみの中を駆け抜けていったのである。人ごみに遮られ、思うように進むことが出来ない男達は彼女に追いつくことが出来なかった。これは、狙ったわけではなく、必死に逃げている最中に偶然起こったことであるのだが。それでも、振り切るまでには至らず、璃々と男達の差も開かないのであった。

それどころか、駆け抜ける内に人通りが少なくなってきた。人が少なくなったことで、遮る物も少なくなり、自然に足が速くなる男達。璃々との距離が急速に縮まり始めてしまう。

 

 

 

 

 

 

バフッ!

 

「おっと!」

「わぷっ!?」

 

璃々は恐怖から必死に逃げようと走ったが、突然横道から現れた人影を避けることが出来ず某番組のトランポリンを使って壁に張り付く競技の如く、その人影にぶつかってしまうのであった。

 

「君、どうしたの?」

 

ぶつかった人影―一刀―は結構な勢いでつっこんできた女の子をそのまま受け止めた後、不安にさせないように体を屈めて目線を合わせると、笑顔を浮かべて優しく語り掛ける。それが、功を奏したのか璃々は泣き顔ながらもわけを話してくれるのであった。

 

「あのね。しらないおじさんが璃々をつかまえようとするの」

「なんだって!?」

「こわいの!おにいちゃん、たすけて!!」

「おっと。そうはいかねぇな!」

 

璃々の願いと共に、璃々を追いかけてきた男達も追いついたようで道を塞ぐように前後から一刀と璃々を挟むように立っていた。

 

「おい、兄ちゃん。悪いことはいわねぇ。痛い目みない内にそのガキを置いてうせな」

 

男の言葉に怯えて璃々は一刀の足をしがみついた。そんな璃々に一刀は優しく頭を撫でてあげると、男に対してこう返答を返す。

 

「俺には、こんな幼い子供に襲い掛かろうとしているお前達が目に痛いんだがな。これって、すでに痛い目にあってないか?」

「んだと!てめぇ」

 

小馬鹿にしたような態度の一刀に男達が怒り吼える。そんな男達を前にしてもなおも、小馬鹿にした態度を崩さず一刀は男達に向かって言い放つ。

 

「知ってるか?図星をつかれると一番怒るらしいぞ」

「うっせぇ!ぶっ殺すぞ!!」

「やれやれ・・・痛い奴らを相手にするなんて。俺も君もついてないね」

 

殺気だって狂気を手に持ち掲げ上げる男達に、肩をすくめると。璃々に視線を戻し抱き上げながら、愚痴を零す。

 

「しっかり掴まっててね」

「うん!」

 

いつの間に一刀は璃々の信頼を勝ち取っていたようである。一刀の言葉に元気一杯に答えてぎゅっと抱きつく。

 

「うわぁ・・・この感覚、久しぶりだなぁ」

 

一刀が思い出すのはまだ自分が祖父に会う前のこと。両親が死んでヤケになっていたときである。あのときは喧嘩三昧で、一対多数という状況になることが多々あった。そんなとき、勝てるときは挑むが、勝てないとわかったときは全力で逃げたものだった。今と似たような状況だった為思い出してしまったのだ。ただ、あのときと違うのは今は本当に命のやりとりをする可能性が高いということだ。それでも、落ち着いているのは先日の賊との戦いのときに命のやりとりを経験しているからだろう。あのときは自分達の数倍以上の数との戦いだった。そのときに比べれば今はなんと少ないことか。

 

ダッ!

 

「あっ、野郎!逃げやがった・・・追え!」

「おう!」

 

一刀は横に走り出す。前後に挟まれていたが、一刀が歩いてきた横道には人がいなかったからだ。男達も慌てて一刀を追い始める。一刀の背中を追いかけていると、また大通りに出たらしく、急に曲がったのが見えた。また、人ごみにまぎれて逃げられるのは面倒だと思ったが、道を曲がった瞬間。彼らの予想とは大きく違った光景を見ることになった。

 

「い・・・いねぇ」

「どこに行きやがった!?」

「わからねぇよ!ぐだぐだいってねぇで探すぞ」

「お、おう!」

 

 

 

 

道を曲がった男達の目の前には大通りを通る人の姿は見えど、肝心の璃々を抱き上げた一刀の姿が見えなかったのだ。それも人ごみにまぎれていると思ったが、人の合間を走り去る人影も見えないし、歩いている人に違和感はなく普通に歩いている。まさに、完全に姿を見失っていた。狐に抓まれたような気分になった男達は、動揺しながら一刀達の姿を探しに動き始めるのであった。

一方、その姿が見えなくなった一刀達はというと。

 

「ふぅ・・・なんとか撒けたかな?」

 

なんと。建物の上に飛び上がっていたのである。追っ手を振り切ろうと道に曲がった目の前に大きな蓋付の桶がおいてあったのだ。丁度、曲がった先にあったのが商店で、その桶の中に品物を入れていたらしい。一応、中の物を壊さないようにと、蓋の強度が心配だった一刀は飛び上がると桶の淵を踏み台にさらに高く飛び上がり屋根の上へと上がったのである。ぶっちゃけ、自分がこんなことが出来るとは思っていなかったが、咄嗟の判断、半ば勢いでやってしまったことだが、成功したので結果オーライである。休むことなく、屋根の上を走り続けた。一応、体を屈め、出来るだけ真ん中を走るようにする。下から見られないようにする為に。

どうして、まだ走り続けているのか?それは、仙花の予言のことがあったからだ。

 

「(子猫に迫る犬の群れ。子猫がこの娘のことを指してるなら、親猫、子猫を思い身動きとれずって、この娘の親が危険ってことになるじゃないか)」

 

そうこの娘は自分が助けたらいいが、今度は親のピンチだと考えられるからだ。親に何かあったら、この娘が悲しむことになる。それはなんとしても阻止したい。その想いから一刀の足は止まることはなかったのである。

 

「ねぇ。君の親御さんはどこにいるの?」

「おかあさん?きょうはあたらしいおしごとをもらうために、いってくるっていってたよ」

「お母さんのお仕事の場所わかる?」

「うん。あそこのおおきなたてものだよ」

「ありがとう。あそこまで行くからね」

「うん!」

 

どうか間に合ってくれ。そんな心を表に出さないように笑顔を浮かべて璃々に返すのであった。

 

 

 

 

彼女―黄忠―は本日、自身の仕えている荊州を統治している劉表の義理の甥、劉磐と共に新しい赴任先を聞きにきていた。新しい赴任先は長沙に決まり、退席した後は引っ越す為の準備に取り掛かるはずであった。

 

「黄忠。少し話しがあるのだが、俺の部屋に来てくれ」

「はい。用件はなんでしょうか?」

「いや、ここでは話せない。二人きりで話しがしたいのだ」

「はぁ、わかりました」

 

怪訝に思いながらも了承する黄忠。若干の警戒を持って。黄忠を誘った男、劉磐は勇猛果敢な将として他国では恐れられている。だが、身内から見ると、大変な女好きとしての側面の方が強い。英雄色を好むというが、彼は気に入った女性がいると自分の物にしないと気がすまないのである。そして、飽きたら捨てるのだ。今までも劉表の甥ということもあり、権力も持っている為、強引に女性を手に入れてきた。捨てられた方も文句を言おうにも言えず、泣き寝入りするしかなかったのである。そんな彼である為、黄忠はどうしても警戒せざるを得なかったのだ。嫌な予感もしたのだがしかし、逆らうことも出来ない為了承するしかなかった。

 

バタン・・・

 

「黄忠!」

「きゃっ!何をするのです!!」

 

バシッ!!

 

部屋に入るなり、黄忠に抱きついてきた劉磐。一瞬驚いて小さな悲鳴を上げてしまったものの、黄忠も歴戦の勇将である。体は反応しており、片側の腕を平手で払うと、自身の体を入れ替えるように回転させ、扉の前に陣取った。

黄忠に上手く避けられた劉磐は寝台につっこむように倒れたが、すぐに起き上がり黄忠を見据える。黄忠の悪い予感が的中したらしい。彼の目は欲望でギラギラと輝いており、吐く吐息は荒い呼吸を繰り返している。

 

「ふっ、照れずとも良いではないか」

「何を言っているのです?」

「とぼけたことを。そんな挑発的な服装をして、俺を誘っているくせに」

 

ちなみに彼女の服装は深いスリットのチャイナ服である。確かに刺激的な服装であるのは否めない。が、決して男を誘っているわけではない。ないのだが、豊満な肉体と妖艶な色香を持つ黄忠がそれを着ていては普通の男なら反応してしまうのは無理のないことであった。そんな彼女を女好きで知られる劉磐が黙ってみているはずがない。彼は入念に準備をし、彼女を手に入れる為に動き出したのである。ここまで、言えばもうお分かりだろう。先ほどの璃々を追っていた男達。それは劉磐が仕向けた刺客であった。彼らを使い璃々を人質に取り、彼女を言いなりにしようと考えたのだ、絶対に上手くいくと考えていた劉磐。そんな彼も、現在、件の璃々が一刀という異分子の乱入により、助け出されこちらに向かっていることを知ることはなかったのである。

 

「誘ってるわけないでしょう!」

「まぁ、いいさ。嫌がっている相手を無理やりというのも嫌いではないしな」

「私がそう簡単に許すとでも?弓がなくてもそれなりには出来ますわよ」

 

黄忠の精神が戦闘態勢に切り替わる。現状では、本来の得物である弓はないが、それ以外の戦法もそれなりに出来る。それは劉磐も認めることである。弓兵だからとて侮れないとは、正史の史実黄忠と違わぬところであった。が、そんな姿勢も次の言葉で崩されてしまう。

 

「別にお前がどうこうできなくても・・・娘ならどうだろうな?」

「なんですって?」

「お前の娘。名前なんてどうでもいいが。今、家にいるんだろ?そこに俺の部下を向かわせた。ここに連れてくるようにとな。まぁ、無傷でとは言わなかったから、どんなことになってここにくるかわからんがなぁ」

「なんて下劣な・・・」

 

言葉は怒りで煮えくり返っている心情を表しているが、表情は真っ青な様子の黄忠。劉磐は今まで感じていた黄忠からの圧迫感が消えたことに気付く。体の力も抜けたらしく、両腕がだらんと下げられた。

 

「(これならヤれる!!)」

 

劉磐は己の欲望を満たそうと黄忠に覆いかぶさろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと!」

「おにいちゃん、すご~い!」

「ありがと」

 

あれから一刀と璃々は屋根の上を渡り、劉磐のいる屋敷までやってきた。さすがに要人の屋敷だけあって、高い塀に囲まれていたが、そこを登って越えたのである。璃々を背負うと周りに人がいないかを見張ってもらい、自分は腰に下げていた小刀で壁を傷つけとっかかりを作り、そこに手をかけることで登ったのである。

幸いなことに、塀の内側には誰もおらず。悠々と進入に成功したのである。が、すぐに人がくるかもわからないので気が抜けない。ちょうど、大きな木が立っていたのでそこに上って中の様子を見てみることにした。

 

「たかいね~」

「だね~。人はいない?」

「うん~。だれもいないみたいだよ~」

「人がきたら教えてね」

「わかった~」

 

一刀は偉いねと璃々の頭を撫でながら中の様子を伺った。が、伺ってすぐに。

 

「あっ、おかあさん!」

 

璃々の声で母親ー黄忠―の姿を見つけることが出来たのだった。それも、襲われそうになっている場面で。

 

「おいおい・・・タイミングがいいんだか、悪いんだか・・・」

「たいみんぐ?」

「なんでもないよ。それより、君はここで少し待っててね。ちょ~っと、危ないことするから」

「うん。わかった」

「本当、いい子だねぇ」

 

「じゃ、他の人に見つからないように静かにね」と言って頭を撫でると、枝先えと移動する。枝先に行くほどに枝のしなりが強くなり、そのしなりを利用して・・・。

 

「ほっ!」

 

高く舞い上がる。

屋根の淵を掴むと、ブランコのように体を振り、中に向かって飛び込んだ。

 

「さぁ、大人しく俺に殻をあず・・・げぼはっ!!」

 

両手をわきわきさせて黄忠に近づこうとしていた劉磐だったが、窓から侵入した一刀のとび蹴りによって前のめりに転倒してしまう。そんな蹴りをお見舞いした一刀も足場が劉磐だった為、人間の柔らかい体を踏んでしまいバランスを保てず転がってしまう。

 

「ぐっ・・・何が起こったんだ?」

「っとと、大丈夫ですか?」

「えっ?あ~・・・」

 

転んだ二人はすぐさま立ち上がると、一方は何が起こったか確認し、一方は後ろにいる女性を気遣う。一部始終を見ていた女性ー黄忠-はどっちに反応すればいいか迷うところだった。

 

「誰だ、貴様は!!」

「おいおい・・・素直に言うと思うのか?まぁ、いいや」

「えっ?あの、あなたは?」

「それは後で説明します。今はここを脱出することを考えて下さい」

 

そういうと一刀は劉磐に向かって駆け出す。

 

「武器持っての戦いは弱いが、喧嘩だったらなかなかやるんだぜ!せぁ!!」

「ぶばっ!?」

 

一刀は勢いに任せてのとび蹴りを劉磐相手にくらわすと黄忠を促し窓へと駆け寄る。

 

「さあ。逃げますよ」

「で、ですが・・・」

「そうだぜ。お前が逃げたら娘がどうなるか?」

「!?」

 

一刀の呼びかけに戸惑い動こうとしない黄忠、それにまだ起き上がれないでいる劉磐が似たりと笑いながら答える。娘がどうと言っているあたり、さきほどの子が襲われていたのはこいつのせいか!!と推測した。となると、ここにいる女性はその子のことで脅されている為、動けないということになる。ってことは?

一刀の頭の中でどんどんパズルが組み合わさっていく。そして、出た結論が。

 

「なんだ・・・気にすることないじゃん」

 

である。何故なら。

 

「おかあさ~ん」

 

窓の向こう側の木に笑顔で手を振る女の子がいるのだから。

 

「璃々!!」

「なんだと!?」

 

思いがけない件の娘の登場に驚愕を隠せない黄忠と劉磐。そんな二人に一刀は笑って問いかける。

 

「さぁ、逃げますか?」

 

その問いに応える答えは彼女には一つしかない。

 

「はい!」

 

改めて、黄忠は窓側へと走り出したのである。それを阻止せんと劉磐が立ちふさが・・・。

 

「お前は寝てろ!!」

「ぶへっ・・・」

 

黄忠に集中していた為、一刀の後ろからの攻撃に対し無防備であった。

 

 

 

 

 

「ありがとうございます」

「いえ、たまたま通りかかっただけです。それよりも早くここから出ますよ」

「ええ、ですがどうやって?・・・きゃっ」

「少し強引ですが・・・しっかり掴まってて下さい」

 

一刀は説明もしないで黄忠をお姫様抱っこで抱き上げる。黄忠にしっかりと掴まってくれと言い、自分の首に腕を絡めるのを確認すると片手で黄忠を支え、もう片手で木の枝を引っつかみ、そのまま落下した。

 

「きゃぁあああ!!」

 

ググググ・・・バキッ!

 

木の枝が二人分の体重を支えることでしなるが、耐え切れず折れる。それでも落下の勢いを多少減少させることが出来たようで、一刀はすぐさま両腕で黄忠を抱えるように手を直すと地面に着地した。

 

「ふぅ・・・成功。今回は自分でも驚きの動きだな。もう二度と出来ないよなぁ」

 

今日、璃々を助けるところから思い出し、自分がいかに驚くようなことをしていたかを呟く。そんな一刀にためらいがちに口を開く黄忠。

 

「あ、あの・・・」

「あっ!すいません。すぐに降ろしますから」

 

物思いから現実に戻ってきた一刀はすぐに黄忠を降ろすと、今度は上を向いた。

 

「おにいちゃ~ん」

 

まだ、木の上に璃々がいたからだ。一刀は木の下で手を広げると。

 

「俺が受け止めるから、そこから飛び降りて」

「ま、待ってください。危ないです!!」

「わかった~!」

「ま、待ちなさい!璃々!!あぶな・・・あっ!」

「っとと!本当にいい子だな。この子は・・・」

 

木の上から飛び降りろという一刀を制止しようとした黄忠だが、璃々は躊躇うことなく、飛び降りる。一刀も一刀で、それを楽々受け止めるのだった。一刀の言うことを素直に聞いた璃々の中では、一刀の信頼度はかなり高かった。自分を助けてくれ、母に会わせてくれた。それだけなのだが、幼い璃々の中では、大事なことなのだ。それだけに、一刀への信頼度は高かったのだ。

 

「えっと、あなたはここの人ですよね?なら、正門からこの子と堂々と出て下さい。俺は別のとこから出ますんで」

 

バシッ!

この屋敷の関係者であるなら、まだ詳しい事情が広まっていない今なら堂々と出れると判断した一刀はそう言うが、そんな一刀に黄忠は平手を撃ったのである。

 

「娘と私を助けてくれたことはありがたいです。ですが、璃々を、娘を危険に晒さないで!」

 

璃々をここに連れてきてくれたことは感謝してもし足りない。だが、さきほどの木の上から跳び降ろさせたことについては別だ。わざわざあんな危険なことをさせなくてもよかった。暗にそういっていたのである。これは一刀も素直に反省した。言われてみればその通りであんな幼い子を飛び下ろさせることなんてなかったからだ。自分が登って抱えてくれば済むことだったから。

 

「その通りですね。すいません・・・」

「おかあさん!おにいちゃんはりりをたすけてくれたんだよ。たたいちゃ、めっ!!」

「璃々・・・」

「いいんだよ。俺が悪かったんだから。庇ってくれてありがとね。それでは、早くしないと出れなくなってしまいますから。俺はこのへんで」

 

一刀はそう言うと、木から塀の上へと飛び乗り出て行った。黄忠もそのまま璃々を連れて、正門から堂々と出て行く。途中、兵とすれ違ったが「劉磐が何者かに襲撃を受けた様子。将軍は現場に向かって下さい。私は他の者に連絡してきます」と慌てて走りさっていった。黄忠はまだ正確な情報が伝わっていなかった為、自分達も捕獲対象にされていなかったことに安堵し、いそいそと外へと出て行ったのである。

 

「おかあさん。いえにかえるんだよね?」

「ええ、そうよ。帰ったら、引越ししなきゃね。ここにいるとまた変なおじさん達が来ちゃうから」

「それはいやだよ~。はやくおひっこししよ~」

 

さきほどのが相当堪えたようで、積極的に引越しをしようと言う璃々。黄忠も黄忠で、自分の娘を誘拐しようとした街にいつまでもいる気はない、それに加えてそんな命令を出す上司に仕える気もないのだ。家に帰って必要最低限の者を持って早々に出て行こうと思うのであった。ところが、そんな親子の家の前で若い男達がたむろっていた。

黄忠はその男達に見覚えがある。劉磐の子飼いの男達であった。

 

 

 

 

 

 

「あ、あの者達は・・・」

「おや?やっとご帰宅なされたようで」

「へへへ。ここで張ってればいずれ帰ってくると思ってたぜ」

 

どうやら、さきほどの劉磐の命令がまだ解かれていない為、ずっと探していたようである。その中の一人が家の前で待ってれば帰ってくると提案し、待ち伏せしていたとのこと。自分の迂闊さを嘆く黄忠。武器は家の中であり、現在は素手で傍らには璃々がいる。武器もない現状で璃々を守りきる自信はなかった。ならば、道は一つ。逃げるである。

 

「璃々!掴まって!」

 

黄忠は璃々を抱き上げて一目散に逃げ出した。

 

「あっ!待て!!」

「追いかけるぞ。ガキを抱いている今なら追いつける」

「「「「おお!!」」」」

 

男達も逃げた黄忠を追い始めた。男達の言った言葉通り、黄忠は武将であるものの、後方支援を主としており、さらには璃々を抱いている状態では複数の男達から逃げ切ることは出来ず、どんどん距離を縮められてしまう。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「おかあさん?」

「大丈夫よ。璃々は絶対にお母さんが守ってあげるから」

 

息切れしている母を気遣う璃々に、気丈に振舞う黄忠。優しげな笑顔の裏では絶対に娘を守ってみせるという強い覚悟があった。だが、覚悟だけでは状況をひっくり返すことは出来ない。やがて、先ほどのことが伝わったのか、屋敷の兵達も合わさり黄忠を追う人数が増加した。そして、とうとう取り囲まれてしまうのである。

 

「やっと捕まえたぜ。梃子摺らせやがって」

「全くだ。ただで済むと思うなよ?」

「くっ・・・」

 

もはや逃げることは不可能。黄忠は、ただ璃々だけは守る。その思いだけでまるで、璃々を包み込むように抱き地面に座り込んだ。そこに観念したと判断した男達が群がっていく。

 

ベチョッ

 

「うわ!!なんだこりゃ!?」

 

今まさに黄忠に襲いかかろうとしていた男達の顔にべとついた液状の何かが付着する。黄土色の甘い匂いを発する液体ー蜂蜜ーである。

さらに、その場にぶ~んという虫の羽音が響き渡るのであった。

 

「なんの音だ?・・・!?」

 

羽音に気付いた男達が上空を見上げた時、黄色いモヤのような物が見えた。否!モヤではない。数百匹はいるであろうスズメバチの大群である。

 

ピーーーーーーー!!

 

ブブブブブブブブブブブ!!

 

「いてぇええええ」

「ぎゃあああああ」

「来るな!来るなぁああああ」

 

そこに響く甲高い音。その音に呼応するようにスズメバチが次々に男達に襲いかかった。その中でたった二人だけスズメバチの被害に合わない人物がいる。襲われそうになっていた黄忠と娘の璃々である。彼女達も今の状況に困惑していた。自分達を襲ってきた男達が今、突然現れた蜂の大群に襲われている。だが、自分達に向かってはこない蜂。困惑してしまうのも無理はない状況であった。そんな蜂達が生み出した阿鼻驚嘆の宴の中、優しげな声が黄忠達にかけられる。

 

「あなたは、さきほどの・・・」

「無事でよかった。さっきから大勢の男達が街を動き回っていたので。なにやら、あなた達を探しているようだったので」

 

そう、声をかけたのは一刀であった。

黄忠達と別れた後。

 

「あちゃ~、これじゃ、この街での交渉は無理だな」

 

当初の復興した街の経済の話をしようときていたことを思い出し、問題を起こしてしまった今ではそれが無理だということを悟ったので、がっくりと肩を落としていた。そんな中、妙に駆け回っている男達がいることに気付く。

 

「おい、そっちはいたか?」

「いや、いねぇよ。全く。あの女、ガキを抱いた状態だってのに逃げ足の速いこって」

「おら、愚痴ってる暇ないぞ。劉磐様に怒られちまう」

「おう。そうだな。いくか」

 

という男達の会話を盗み聞きしてしまったのだ。これはもしや、さっきの親子のことでは?そう思った一刀はいてもたってもいられず。

奥の手を使うのであった。

 

「というわけで、あの蜂は俺の友達です」

「蜂を操るとは、妖術ですか?」

「いや、俺にも良くわからないんですよ。でも、あの子達は頭がいいので、人間の言葉がわかるみたいですね。それよりも、早く逃げますよ」

「そうですね」

「あなたの娘さんは俺が受け持ちます。疲れているでしょ?」

「・・・はい。お願いします」

 

こうして、蜂に襲われている男達を尻目に一刀達は無事に脱出するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

黄忠の家に戻り、必要最低限の物を持つとすぐに街を出る。

 

「それで、あなた達はこれからどこに行くんですか?」

「特に決めてませんね。何分突然のことでしたので、街を出ることだけしか考えてませんでしたわ」

「良かったら、俺と一緒に来ますか?次の家が決まるまでは家にいてもらってもいいですし」

「よろしいんですか?今まで散々助けてもらって、さらにお世話になるなんて」

「あはは。俺がしたいから言ってるですよ。ね?俺の家にこない?」

「え?いいの?おにいちゃん?これからも一緒?」

「もちろんだよ」

「わ~い!おかあさん。いこうよ。いいでしょ?」

「もう、仕方ない子ね。では、お言葉に甘えさせてもらいますわ」

 

こうして、黄忠は一刀の街へと来ることになったのであった。すっかり一刀のことが気に入った様子の璃々。娘に押されてと言ってもいいかもしれないが。道中、一刀が乗ってきた馬に三人で乗っていく。いくら女性と子供でも、三人一緒だとさすがに馬に負担をかけてしまうので、進行速度は幾分が落としているのは仕方ないことである。その間、璃々は一刀にしきりに話かけていた。一刀も幼い子供の扱いは慣れたもので、上手い具合に会話を成り立たせていた。そんな一刀の様子に黄忠も次第に心を許していくのであった。

 

「あっ!おかあさん。まちがみえてきたよ!!」

「本当ね」

 

街の見えるところまでやってきた一刀達。そこで漸く、自分達が自己紹介をしてなかったことに気付く。

 

「私は姓は黄、名は忠、字は漢升ですわ。私達はあなた様に多大な恩があります。それに報いる為にも、あなた様に私の真名を預けます。私の真名は紫苑。どうぞ受け取ってください」

「わたしは、せいはこう、なはじょだよ。まなはりり!」

 

ここで初めて一刀はこの女性が弓の名手として、また勇猛果敢な将として有名な黄忠だと気付いたのであった。

 

「俺の名は・・・」

 

一刀の自己紹介の時に、街に旗が立った。白地に黒い文字でシンプルなデザインの旗である。それが四本。文字はそれぞれ、“左”“于”“管”そして、“白”と書かれていた。

 

「姓は白、名は士、字は北郷。真名は一刀。今度から、ここ汝南の街の県令を務めます。よろしく」

 

今度は黄忠達が驚く番であった。

 

 

 

 

 

さあ、今回は紫苑さんと璃々ちゃん親子でした。

そして、仲間にwww

 

さて、これで武官二人に文官二人というバランスの良い形になりました。

しかもです。

武官では前衛、蹴。後衛、紫苑。

文官では軍師、符儒。内政官、仙花。

とこちらもバランスがいい具合に分かれてます。

 

今回、管輅、左慈、于吉の真名が出ました。

真名の由来はそれぞれ。

 

管輅:占星術の占=せん→仙と漢字を変換し、花は女の子って意味で。

左慈:そのまま、蹴り技から蹴となりました。

于吉:こちらもそのまま符術=ふじゅつ→ゴロが悪いから”つ”は抜いて→符儒としました。

 

次回は・・・どうしましょう?

ネタはありますが、拠点で復興の話と原点に戻って村の農業の話にするか。

それとも物語を進めるかで悩みます。

 

それと、ある程度話が進んだら、ちょっと番外編をはさみたいと思っています。

何故なら・・・。

 

 

糖分が欲しいんだよ。

 

 

一刀とヒロインのイチャラブの糖分が!!

ニヤニヤでも、あめぇ!!と悶え転がるでもどっちでもいいんですが、そんな話を書きたいのです。

 

あっ、でも他の作者様がそんな話を書いてくれていれば、満足して書きませんがwww

 

そしたら、糖分ではなくネタ→ちょうs・・・げふんげふん。に走りますがwww

 

まぁ、どうでもいいですね。

では、最後にちょっとした話を思いついたのであらすじをちょこっと書きます。

反応がよければ書くかもしれません。

 

では、今回はこのへんで!

 

 

 

 

 

元ネタ:ポケットモンスター(ファイヤーレッド)

 

主人公:レッド(男)

マサラタウンに住んでいる15歳の少年。大のポケモン好きで、ベトベターやマタドガスでも平気で触れてしまう程。ポケモンにも好かれる体質で、それが野生のポケモンでも、人のポケモンでも問わないポケモンたらし。過去の事件から人間不信になるも今は軽くなった。将来はポケモン保護施設を設立して、伝説のポケモンを消すことが夢。ちなみに消すというのは伝説のポケモンを繁殖させて数を増やし、伝説ではなくさせるという意味。

 

ライバル:グリーン(男)

オーキドの孫。小さい頃からオーキドの孫ということで、周りから特別な目で見られる。そんな境遇にうんざりしながらも、ポケモントレーナーとしての高い資質と、たゆまぬ努力で一流のトレーナーになる為に日々頑張っている。そのルックスから女子からの人気が高いが男からの評価も決して低くはない。レッドは唯一、オーキドの孫としてみない人物からか信頼を寄せている。

 

ライバル:ブルー(女)

勝気でずるがしこい性格。でも、家事万能という女の子らしい一面も。一瞬のひらめきと発想力はかなり高い。レッドとグリーンを嫌っていたが、(レッドは過去の事件から、グリーンはオーキドの孫ということでいい気になっていると思っていたから)次第に認めるようになる。実は甘えん坊。ヒロイン。

 

ライバル:イエロー(女)

少し精神年齢が幼い少女。グリーンに恋心を抱き、積極的にアピールしている。逆にレッドには少し、怯えている。常にグリーンと共におり、旅にも同行している。また、グリーンも彼女のことを悪く思ってはいないので好きにさせてしまっているので、自重する気はない。

 

 

ジムリーダー:カスミ

水ポケモン使い。ポケモンバトルで、レッドに自慢の水ポケモン勝負で負けて以来、付きまとうように旅に同行。次第にレッドに惹かれていく。ジムは姉に任した(押し付けた)。ヒロイン二人目。

 

ジムリーダー:エリカ

生粋のお嬢様。ロケット団が起こした事件でレッドに助けられ、また一緒に事件を解決した。レッドのポケモンに対する愛情と、一緒に解決する中で生まれた絆から次第にレッドに惹かれていく。なお、旅には同行しない。ヒロイン三人目。

 

ジムリーダー:ナツメ

幼い頃から強力なサイキックだった為、ジムリーダーに抜擢される。よって、無知で世間知らずな面がある。ジムメンバーから外の世界を見せてあげて欲しいと頼まれ、レッドの旅に同行することに。レッドだけは未来が見えないことから興味を持ったが、次第に惹かれていく。ヒロイン四人目。

 

四天王:カンナ

レッドの恩人であり、目標の人。彼女の言葉でレッドはポケモンリーグを目指した。レッドの最初のポケモンを与えたのも彼女。ななしまの事件から弱気になったところ、レッドに励まされ惚れる。そこからレッドの夢を手伝うことを決意。実はヒロイン中1,2を争うほど寂しがり屋で甘えん坊である。レッドよりかなり年上であることを気にしていたりする。

 

 

 

あらすじ:15歳を迎えたレッド達四人はオーキドから呼び出され、ポケモン図鑑を完成させて 欲しいと頼まれる。オーキドからポケモンを一匹もらい図鑑を完成させる旅に出ることになるのであった。グリーンはフシギダネ、ブルーはゼニガメ、イエローはピカチュウをもらい、レッドもヒトカゲをもらおうとするも、オーキドの研究データを盗みにロケット団が襲撃してきてしまった。そこにロケット団を追ってきたカンナが登場し、見事追い払うことに成功したが、ヒトカゲが盗まれてしまった。レッド以外の三人は出発したが、ポケモンのないレッドは出発できなかった。オーキドもなんとかしてあげたかったが、あいにく手持ちのポケモンはあの四匹以外にいなかったので何も出来なかった。そこに事後処理を終えたカンナが帰り際に一匹のポケモンをレッドに与えた。

 

「もし、お礼がしたいならポケモンリーグにきなさい。それが、一番のお礼になるわ」

 

その言葉でレッドはポケモンリーグに挑戦することになるのであった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
129
15

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択