「そこはもっと長くお願いします」
「うっす!」
「そこは、もっと強度を高めて」
「はい!」
「期日はもうすぐです。みなさん。頑張りましょう!」
「「「「「おう!!」」」」」
于吉の策により、最後方での準備を行っている管輅隊。そこで、状況を見て指示を出しているのは隊長の管輅。自身も作業をしながら、状況を見て指示を出す。そんな彼女はふと、顔を上げて、ある方向を見る。
「大丈夫でしょうか・・・」
その方向とは今、賊と戦っているだろう左慈や于吉、なにより、自分の恩人であり同居人である一刀のことを思っての言葉であった。
「大丈夫です。長達ならやってくれますよ」
「そうですね・・・私達も頑張らないと」
「ええ!」
彼女の呟きを聞いてしまったのだろう。兵の一人が答えてくれた。それに少し元気をもらった管輅は顔に笑顔を取り戻し、作業に集中するのであった。
これはそんな心配を受けているおせっかいの物語である。
「矢を放て!放て!」
「・・・気付かれぬように少しづつ後退しろ」
「「「「「御意!」」」」」
大声で指示を出す左慈。だが、二言目は小声で言う。賊に気付かれないように。兵達も作戦を知っているが故、まるで放ての指示に呼応するように返答を返した。
「みなさん。次の陣が最後です。気を抜かぬように」
そう、ここはすでに第四陣。後、陣は一つしか残ってない。それを過ぎれば、最後の管輅隊の場所になる。いよいよ、于吉の策もこの戦の行方も大詰めになってきたということである。
「よし。矢を放ち続けろ」
「「「「「御意!」」」」」
再び、おにぎり一つを残して撤退を開始した。しかしである。いくら空腹により頭の回転が遅くなったといっても、何回も同じ策をしかけられればそれなりに対応してくるもの。おにぎりに近い賊達はそのままおにぎりに群がったが、遠い者達はおにぎりを得るのは無理と悟ると撤退を開始した左慈達を追い始めたのだ。
「みなさん。火を用意してください」
いつまでも同じ戦法が効くわけがないと考えていた于吉はさらなる打開策を用意していた。それが、火である。
「左慈!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
なんと、于吉は今まで壁としていた陣に火を放ったのだ。そして、于吉から指示を受けた左慈が全力で壁を蹴る。左慈に蹴られた壁は砕け、破片が火を伴って飛び散る。
「みなさん。煙を炊いて全力で撤退します!」
火に煙の立ちやすい物を被せた後、今度こそ全力で撤退する。
火と煙によって賊の追走を鈍らせる目的だ。
左慈によって飛び散った火を纏った破片が賊達に降り注ぐ。
「あっちぃ!」
「ぐわ!推すな!」
降り注ぐ火に足をとめてしまう前線の賊だが、後ろにいる賊はとまらない為押しつぶされる。後ろの者も、押しつぶした人を踏んでしまいバランスを崩して転んで、その後ろの人に踏まれ、と連鎖していく。
「よし。撤退だ」
左慈達はそれを見ることなく、全速力でその場を後にした。一見、上手く進んでいるように見える現状。しかし、左慈と于吉の表情はとてもそんな余裕は見て取れない。
「于吉・・・」
「ええ、限界が近いですね」
その理由は、兵達の体力が限界に近づいているからである。戦経験のない者達である為、初の戦という緊張、ここまで来るまでの戦闘と慣れないことと、命を脅かす緊張により体力はすでに限界に近づいているのだ。その上、同じ戦いをあと一回は行わなければならない為、不安が大きくなっていく。
「ですが、ここまできたからにはやめることは出来ません」
「ああ、やりきるしかない」
二人は不安を覚えながらも、それを振り切り自分達の仕事に集中するのであった。
そして、最後の陣にたどり着く。
「左慈、于吉」
「北郷!」
「策は順調に進んでますよ」
「お疲れ様・・・って言いたいとこだが、もうひと踏ん張り頼むわ」
「ああ」
最後の陣で一刀隊と合流を果たす。が、彼らに再会を喜ぶ余裕などなかった。合流して会話もそこそこに後ろから追ってくる賊に対応すべく、動くのである。
「火矢構え!!」
一刀達は待機している間に火矢を放てるように火種を大量に用意していた。左慈達の手間を減らす為。
「てぇ!」
合図と共に火矢が放たれる。
「最後だ!きばれ~!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
疲労が溜まっているも、気力を振り絞り矢を射る。そこをまだ疲労が軽い一刀達が中心になり、時には支え、戦場を維持するのであった。ここまでくると、賊の数も目に見えて減っているように見える。実際、賊の数は減っているのだ。最初は1000人に達するかというくらいの大人数だった賊達。しかし、今回の于吉の策によってその数は今や四割に届くかどうかというくらいにまで減っているのだ。いまだに数では負けているものの、みんながここまで頑張れたのも、その目に見えた戦果があったことも大きいのだ。みんな気付いている。この戦いもそろそろ終焉に向かっていることに。そのときは、自分達が勝利して勝ち鬨を挙げる為。気力を振り絞り攻撃を続ける一刀達だった。
「よし!撤退!!」
最後の防衛線だと奮闘した一刀達は速やかに撤退を開始。炎と煙の時間稼ぎをしつつ、疲れた体に鞭打って駆ける。これが終われば自分達の勝ちだ。彼らは確信と共に信じて走る。戦の終わりを告げる為。
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」
後ろから雄たけびを上げ追ってくる賊ども。一刀達はそれに臆することなく、一心不乱に荒野を駆け抜ける。
「みんな、あそこだ!」
一刀が示した先には森が。この森に入り、追手を振り切るのだ。
まず飛び込んだのは于吉、左慈隊の面々。これは今まで激戦を繰り広げ体力の限界に達しているであろう隊員だからだ。その後に一刀隊が続き、最後に賊を確認した一刀、左慈、于吉の三人が入る。ここからが于吉の最後の策の本番である。
一刀は走りながらも、後ろから追ってくる賊を確認していた。最後の策は発動のタイミングが大事なのである。そのタイミングとは、賊達が完全に森の中に入った時である。
そして・・・
「管輅さん!」
一刀の上げた声に。
「みなさん、今です!!」
「そおれぇええええええええ!」
「うわあああああああああああああああ」
「逃げろおおおおおおおおおお」
「助けてくれええええええええええええ」
最後の罠が発動する。それは前から横から襲ってくる太い丸太であった。
森の木々の上から縄で吊るし振り子の原理によって運動エネルギーいっぱいに襲ってくる丸太、一刀達を追わせることに集中していた賊達は、不意打ち気味に叩きつけられ、吹き飛ばされるのであった。
「やったか!?」
止まった丸太を縄で手繰り寄せ、再び投下することを数回繰り返したのを見届けた後。木の上に上ってきて状況を確認する一刀。
「うぅ・・・」
「ぐっ!」
そこには死んではいないものの、戦うことは出来そうにない人が多数いた。しかも、無事なものは一人もおらず、残っているのは重傷をおった賊達のみ。これ以上ない戦果である。
「俺達、勝ったのか?」
「そう判断してもよさそうですね」
「ああ、これでは戦闘は続けられまい」
状況を確認した一刀から零れた言葉を肯定する左慈と于吉。その答えを理解するとふつふつと喜びが沸きあがってくる。一刀は一緒に戦ってくれた仲間達に俺達の勝ちだと伝え、喜びを分かち合おうとしたところ。
「おい・・・あれなんだ?」
「どうかしたの・・・あれは!!」
「どうやら、まだ終わりではなかったようです」
左慈が何かに気がつき、一刀達に指し示した場所。森から数理程はなれた荒野に下に転がっている賊達と同じ格好の集団を見つけたのだ。その数、約200人。これは疲労困憊の一刀達にしてみたら絶望的な数であった。
「さて、そろそろ動きましょう」
「「「「「おう!」」」」」
「いや~見事な戦略でしたね。いくら思考能力がない無能達が相手とは言え、まさに完勝といっていい結果だ。正直、感服します。ですが、ここまでですよ」
丁寧な言葉使いだが、それとは裏腹に見下すように言葉を発する男。後ろに200人程の兵を連れて。この男こそ、敗走した賊を集め、立て直した人物である。
「ふふ。どうして私達がいるのか不思議そうに、それでいて絶望的な顔で呆然とする奴らの顔が目に浮かぶようですよ」
突然の出来事に理解できず、呆然とする一刀、左慈、于吉を前にしてあざ笑う未来に思いを馳せて笑う男。もう、この男には勝利して余韻に浸る未来しか想像できなかった。もう終わったと思っていたら、実はまだ終わっておらず、窮地に陥るという精神的ダメージが大きい状況に立たされた場合、そこから立ち直るのは非常に困難だろう。一刀達は後一歩でその状況になってしまう。だが、今なら距離がある為逃げることも可能なのだ。
「再起を図るのはいいのですがね。どうも頼りない奴らばっかりで。信用できませんでしたからね。信頼のおける部下だけに、常に携帯食を与えていて正解でした。そのおかげで私達は今、完全に優位に立てているのですから」
男はにやけるのを抑えることができなかった。
賊達はゆっくりと一刀達が潜む森に近づいていく。一刀に決断の時が迫ろうとしていた。
「白士さん!」
木から降りてきた一刀に管輅が駆け寄ってくる。他の人達は族の手当、または捕獲作業に移っており、何かあったときの為に手をあけているのはほんの数人である。そんな管輅に一刀は先ほどのことを語った。
「そ、そんな・・・」
「普通なら撤退することを選ぶんだけどね」
「私達はそれを選んだが最後。村は廃墟に戻るだけです」
「だから、俺達は全力で戦うしか道はない」
最後の左慈の言葉はどれだけ難しいことであるか、この場にいる誰もがわかっていた。それでも、自分達はやらねばならないのだ。自分達の村を守る為に。
「この状況を打開する方法が一つだけあります」
そう発したのは于吉。彼の中にはこの状況を打開する方法が浮かんでいるらしい。しかし、その言葉とは裏腹に表情は険しいままである。
「本当に?」
「ええ、ですがどうやって良いのやらと言ったところです」
「どういうことだ?」
「言うのは簡単。実行は難しいということですよ」
于吉が言うには説明するのは一言で事足りてしまうほど簡単なことらしい。だが、それを実行するにはどうすればいいのかが難しいのだという。果たして、于吉が言うこの状況を打開する方法とはどのような方法なのであろうか?
「敵の中心格、つまりは率いている将を倒せば、後は統率を無くして自然と消滅しますよ」
今、あの賊達は統率者がいる為、纏まっている状態であり、その統率者を倒せば纏まりがなくなって賊は抵抗する意思を無くして逃亡し、自然と消滅するだろうとのこと。確かに言葉にすれば簡単なことであった。問題はどうやってその統率者を倒すかである。
「現在、我々の戦力では太刀打ちすることは難しいでしょう。対して、統率者が率先して戦闘に参加することはないでしょうから、難しいところなのです」
相手は予備の食糧を信頼できるものに渡しておくほど用心深い人物だ。死ぬ危険の高い前線に出てくることは考えられない。その場は沈黙に支配されるのであった。
今、それぞれの頭ではこの状況を打開する案がないか頭を全力で回し考えている。左慈はどのように戦えば相手の大将の首を取れ、自軍の被害を抑えられるかを考え。于吉はどんな策を使えば大将を討ち取り、相手を壊滅させることが出来るかを考え、管輅はどうにかこの状況を打開できないかを考える。その中でただ一人、一刀だけは少し違ったことを考えていた。否、覚悟を決めていたというべきか。
「(じいちゃん・・・)」
于吉の方法を聞いた瞬間。一刀にこの状況を打開する方法を成し遂げられる策が一つだけ存在していたのだ。ただし、それを行うには現代――この時代からは1800年程未来になるのだが――の社会の常識、価値観等を振り払わねばならなかった。一刀は静かに目を瞑る。
『嘆くだけで何もしないだけなら文句を言うな!足掻くだけ足掻け、自分が胸を張って生きたと言えるようにせんかい!』
『そうしたら、死んだ者も報われるというものじゃ・・・』
思い出すのは祖父の言葉。今の自分の原点になった言葉。その言葉を、意味をしっかりとかみ締め、胸に刻む・・・。
「俺はやるよ。それが、俺が精一杯足掻いて、胸を張って生きられる道だと思うから」
一刀の覚悟は決まった。後は・・・実行するだけだ。
「于吉、左慈、管輅さん。聞いてくれ」
「左慈。見つけました。奥の微笑を浮かべてる青年です」
「あれか・・・没落した家のお坊ちゃんに見えるな」
「どうでもいいでしょう。それより、私は北郷に伝えます。左慈もちゃんと計って下さいよ?」
「わかってる」
先ほどの丸太を吊るしていた木の上から、賊を見張っている左慈と于吉。彼ら二人の役目は敵の統率者の割り出しと賊と自軍の距離の見極めである。
「北郷。敵将はあの奥にいる青年です」
「わかった・・・じゃ、後は左慈の合図を待つか」
「では、後は任せますね」
「ああ」
于吉は伝えるべきことを伝えると左慈の元へと戻る。一刀はそれを見送らず、賊のほうをただじっと見つめていた。隣には管輅が黙って一刀のことを見つめていた。その管輅の手には一本の長槍が握られている。何の装飾もなく、塗装もされていない鉄色の槍である。これは、正面からぶつかったときの為に一人一本持ってきていた護身用の槍である。
「ふぅ・・・よし!」
深呼吸を一回。大きく息を吐くと集中力と気合いを入れる。管輅はそっと一刀に槍を差し出した。
「ありがとう・・・」
「いえ・・・あ、あの「北郷!射程内に入るぞ!」!?」
「・・・わかった」
管輅が何かを言おうとしたとき、タイミング悪く左慈からの合図がきてしまった。
一刀は管輅から槍を受け取るとゆっくりと前を見据えて歩き出す。「あっ」と小さな声を漏らす管輅だが、意を決して声をかけた。
「白士さん!」
「ん?何かな?」
「あ、あの・・・」
声をかけたが、何と言っていいかわからなくなってしまった管輅。暫く「あの・・・えと・・・」とあたふたしたが、なんとか。
「ご、ご武運を!」
とだけ、言えたのである。そんな管輅に一刀は笑顔を浮かべ。
「ああ、いってくるよ」
と答えてくれたのであった。
「いってらっしゃい」
果たして、最後の言葉は一刀に届いたのか?それはわからないが、最早管輅に出来ることは無事に作戦が成功し、一刀が戻ってくるのを祈ることしか出来ないのである。管輅は手を組み、ぎゅっと目を瞑って一刀の無事を祈る。
「(無事に戻ってきて下さい)」
ォォォォォオオオオオオオオオオオオ!!!!
砂煙を上げながら、こちらに進行を続ける賊群を見やりそっと息を吐く。目を瞑り集中力を高める。
トクン・・・トクン・・・
この策は失敗出来ない一発勝負だという緊張からか?はたまた、これから行おうとしていることへの不安か、本人にもわからない。
「よし!」
槍を強く握り、賊群を睨みつける。
狙うは大将の首一つ。槍を持っている右腕を頭上に伸ばし、穂先を意識する。
タッ・・・タッタッタッタッ
軽いステップからの走り出しから、徐徐に加速し腕を振りかぶる。
その間も一刀は賊から目を逸らさない。むしろ、睨みつけているくらいだ。
タッ・・・タタッ・・・ダン!
「ぃやああああああああああああああああああ!」
最高速から力強く地面を踏み込み、咆哮とともに腕を振りぬき槍が放たれた。
一刀から放たれた槍は空高く舞い上がり、綺麗な放物線を描く。
その槍の行方を見送ることはなく、一刀は槍を投げた勢いを踏ん張って殺し、大声で賊達に向かって吼える。
「とまれ!賊ども!!」
「とまれ!賊ども!!」
一刀の咆哮に賊達の足が止まる。
「何事だ?」
「いえ、前方に人影が現れたもので」
「さきほどの奴らですか」
賊達は森の入り口にただ一人立っている一刀の姿を見つけた。が、森の中に人が隠れているかもしれないと警戒し、すぐに突撃することはしない。先ほどの攻防で人数はもっといたことを確認しているからだ。森から奇襲をかける策なのかもしれないと思うのは当然のことだった。しかし・・・。
「お頭!森の後方に・・・」
「ん?あれは・・・なるほど」
賊の一人が森の後方に砂煙が上がっているのを確認する。目を凝らすと、集団が移動しているのが見て取れた。たった一人で森の前に立つ男と、後ろで移動を始めた集団、この二つの要素からお頭と呼ばれた男は一つの考えにたどり着く。
「時間稼ぎですね」
仲間を逃がす為の時間稼ぎ。一刀のことをそう見たのだ。
敵はたった一人だと確認すると賊達に笑みが浮かぶ。なんだ、たった一人の正義感持った馬鹿かと、思ったのだろう。
「それ以上こちら側に来るというのなら容赦はしない!首から上をなくしたくなければとっとと去れ!そして、二度とこの地へ来るな!」
嘲りを見て取れ、賊達が何を考えているのかなんとなくわかった一刀だが、構わずに主張を言い切る。すでに自分の役割は果たしたのだから。そんな一刀の言葉をただの戯言だと流し聞きした賊。自分の状況をわかっていないような一刀の発言に呆れを通り越して怒りが沸いてくる。
「一人で俺達を相手する気か?しかも、勝つ気でいやがるぜ」
「おいおい・・・状況をわかっていない馬鹿なのか、それとも自分は最強、負けないって思ってる自信過剰の馬鹿なのか?」
「どっちにしても馬鹿にゃかわりねぇだろ」
「ちげぇねぇ」
「お頭。あんな馬鹿構うだけ無駄ですぜ。進んじゃって構わねぇっすか?」
「・・・・」
賊の一人がそう聞いたが、その答えは返ってこなかった。
「お頭?」
不審に思った賊は振り返ると、そこにあるはずの姿が見られない。
「お頭?どこに・・・!?」
自分の頭の姿を探してキョロキョロと周りを見回したが、見当たらない。おかしいな、どこに行ったのだろうと、ふと視線を落とした時。その賊は頭の姿を見つけることが出来た。
「うわあああああああああああああああああああああああ!!」
顔面に槍が突き刺さり地面に倒れ付して絶命したお頭の姿を・・・。
「お頭!?」
「槍!?一体どこから!?」
「ま、まさか奴が!」
「俺達も同じ目に合うのか!?」
動揺はすぐに全体に広がる。先ほどまでの余裕などすでになくなっていた。さらにそこに追い討ちをかけることが起きる。
「全員!構え!!突撃ぃいいいいいいいいいい!」
「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」
森の中から複数の男達が槍を構えて、突撃してきたのだ。数は明らかに少ないのだが、頭を失った賊達にそんなことを考える余裕はなく、情けない悲鳴を上げて逃げるしか出来なかったのであった。
「うわあああああああああああああああああ!」
「逃げろおおおおおおおお!」
「助けてくれぇえええええええ!」
「深追いはしなくていい。確実に相手を仕留めろ!」
「みなさん。一人で相手をしないで!必ず、二人以上で戦ってください!」
「みんな!これが本当に最後だ!一緒に頑張ろう!」
「「「「「「「応!!」」」」」」」
一刀、左慈、于吉を先頭に槍を構えた集団は逃げる賊達に背後から襲いかかる。
逃げ遅れたものは討ち取られ、ある者は我先に逃げ出す為に仲間を差し出し、ある者は逃げ切ったものの、周りに仲間はいなかった。
こうして、一刀達は壊滅はさせられなかったものの、自分達よりも何倍も大きな勢力と戦って勝利を収めたのである。
「みんな!ご苦労様。俺達の勝ちだ!!」
「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」
疲労が限界に達していた彼らだが、腹の底から出すように大声で勝ち鬨を上げるのであった。
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
その声は少し離れた場所にいた管輅達にも聞こえていた。
「あの声は・・・」
「ま、まさか!!」
「勝てたようですね」
「本当ですか!!聞いたか?俺達は勝ったんだと!!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」
自分達の勝利を知った管輅が率いていた部隊も呼応して勝ち鬨をあげる。彼らは最初に左慈や于吉と一緒に戦っていた人達である。その中でもう戦うことすら出来ない程疲労している者達であり、彼らは賊の目を誤魔化す為にわざと見つかるように森の後方に移動したのであった。逃げる時間を稼ぐ策だと思わせる為に。
「それでは、皆さん。白士さん達に合流して帰りましょう」
「「「「「「応!」」」」」」
管輅の呼びかけに答え、彼らは移動を始めるのである。だが、彼女の心理は少し違った。合流して村へ帰るのは本当のことだが、早く一刀の無事を確かめたかったのだ。戦闘に勝利したのはいいが、彼が無事でいることが重要なのだ。
「私と一緒に道を探してくれると約束しました」
それに伝えたいことがあるのだから。
そして、彼女らは合流を果たし、喜びを分かち合うのだった。
「白士さん!」
「管輅さん!?」
「無事でよかった」
と、一刀の姿を認めた管輅が思わず抱きついてしまったという微笑ましい状況になったこともあったが、彼らは嬉々として自分達の村へと帰るのだった。だが、これで終わりではない。一刀達には戦後の後処理が残っているのだから。
お久しぶりです。
ようやく続編を投稿することが出来ました。
さて、今回の話の中で一刀が槍を投げるとこがありましたが、実は今まで投稿した話の中で水切りをするとこや、見張り台を作っているときの縄投げなどがありましたが、あれがこの作品の一刀は物を投げるのが得意という設定で、今回の槍投げの為の複線でした。
ようやく書きたかったシーンが書けたので個人的には満足・・・はしてませんが、それなりに納得しております。
さて、次回は戦後の後始末の話です。それから、話も少しだけ進みます。
次回はもっと早く投稿できるように頑張りますので・・・。
では、今回はこのへんで。
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遅くなりました。
ようやく、続編を投稿します。
ネタはあれど、話は纏まらず。
しかも、大筋は決まってても細かな話の構成が決まらずと・・・話がかけない状態になって。
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