第二十二章「風呂場」
「おっちゃん。菜種油頂戴」
「おっ!北郷様。それで、どれくらい入れましょう」
「この器いっぱいで」
「わかりました」
店主は一刀から器を受け取り油を入れだした。
「それで、どうして北郷様が油なんかを?料理に使うのでしたら城にもありましょうに」
器を一刀に返してお金を受け取った店主が疑問をぶつけた。
「いや~~。実はある物を作ろうと思って」
「あるものですか?」
「そう。ある物」
「それでしたら。完成した時は、ぜひ私に見せてください」
「上手く出来たらですよ。それじゃ、俺はまだ行く所があるので」
「北郷様。約束ですよ」
油屋を後に、一刀は次に香料の専門店に向かった。
「すみませ~~ん」
「は~~い。・・あ、これは北郷様。ようこそいらっしゃいました。それで何を求めですか?」
「石鹸を作ろうと思いまして。この店のオススメはなんですか?」
「石鹸ですか。わたしらにとって石鹸は高価な物なので、石鹸に良い香料はわかりませんが、内で一番のオススメは金木犀の香料です」
「でわ、それを下さい」
「ありがとうございます。それにしても、何で石鹸なんかを作ろうと思いで・・・は、はぁ~~。まさか曹操様の贈り物ですか?いやはや、北郷様も隅に置けませんな」
「ち、違いますよ。これは、ただ作ってみたいなと思っただけで、べ、別に華琳にあげるとかじゃなく・・・」
「ははは。北郷様は嘘が苦手ですね。その態度だとバレバレですよ。」
「うっ・・・。頼む。華琳達には内緒にしといてくれ」
「わかりました。その代わり渡した後の結果報告はしてください」
「わかった」
一刀は香料店を出て城へと向かった。その姿を華琳と秋蘭が見ていた。
「秋蘭。あなたはどう思う?」
「香料を買ったのは間違いありませんが、どうして買ったかはわかりませんが、一刀は香料を付ける筈ありませんので」
「そうよね。・・・真実を確かめにあの店に行くわよ」
「御意」
華琳と秋蘭はその店に入った。
「店主はいる?」
「はい。・・・曹操様!!いらっしゃいませ」
「先ほど一刀が来ていたみたいだけど。何の香料を買って行ったの?」
「は、はい。金木犀の香料を」
「何の為に?」
「そこまでは聞いていませんが、大変嬉しそうな顔をしていましたよ」
「そう。なら私も金木犀の香料を貰おうかしら」
「ありがとうございます。それでは後で城の方へ届けさせてもらいます」
「そうしてもられるかしら。秋蘭、次行くわよ」
「はい」
華琳は上機嫌で店を後にした。
「え~~と、材料はこれで全てだな」
城に帰ってきた一刀はすぐさま厨房に行き石鹸作りを開始した。
「まずは、この菜種油に木の灰を混ぜて鹸化させる。次に鹸化をしているこの液体に金木犀の香料を入れて、後は日を立つのを待つのみ。こうして見るとなんだか小学校の自由工作をしている感じなだ」
一刀は石鹸が出来るのをワクワクしながら後片付けを行った。
「ん!ねぇ、流琉。厨房から良い匂いしてこない?」
「ホントだ。・・これは金木犀?」
「きっと誰かがおいしいお菓子を作っているんだよ」
「ちょっ!季衣。待ってば」
流琉は急いで季衣の後を追った。
「さ~~て、石鹸の方はどうかな~~」
片付けが終わった一刀は危険と書いた小さい箱の中身を覗いた。
「お!出来てる、出来てる。これなら今日のお風呂の時でも使おうかな」
「あ!!兄ちゃん」
「季衣。待てって言ったのに・・兄様!!」
「二人ともどうしたんだ。そんなに慌てて」
「良い匂いがしたから来て見たんだ」
「そうか。けど何も無いぞ。季衣」
「嘘だ!!きっと兄ちゃんが美味しいお菓子を独り占めしているに違いない。兄ちゃん、ボクにも頂戴」
「頂戴と言われても、本当に何も無いぞ」
「だったらこの良い匂いは何?美味しいお菓子を作っていたんでしょう。だから頂戴」
「季衣。兄様は知らないんだし諦めようよ」
「嫌だ。ねぇ、兄ちゃん本当の事言ってよ。どこかに隠しているのでしょう?」
「季衣が本当に俺は知らないんだ。確かにこの匂いは俺のせいだが、これは石鹸を作っていただけなんだ」
「石鹸??」
「そう。石鹸」
「しかし、兄様。石鹸はなかなか手に入らないものなのでは、まして手作りなど」
「俺のいた世界では、石鹸なんて簡単に作れる品だよ。作り方さえ知っていれば子供にだって作れる品さ」
「へぇ~~~」
「天の世界はすごいですね」
「そういう訳で季衣、ごめんな」
「いいよ。その代わり兄ちゃん。これからボク達とご飯食べに行こう」
「もうそんな時間か。俺も腹減ったし行くか」
「うん」
「流琉も行くだろう?」
「あ!!はい」
「なら、季衣。オススメの店に」
「うん。案内するよ」
三人は街へと繰り出した。
「華琳様。ここが、季衣が言っていた拉麵店です」
「そうここが・・・季衣達もいるようね。入るわよ。秋蘭」
「御意」
華琳と秋蘭が中に入ると丁度一刀達が注文を頼んでいるときだった。
「いらっしゃいませ。曹操様」
「二人なのだけど。空いているかしら?」
「はい、空いていますが。よろしければ北郷様達と同じ席にした方が宜しいでしょうか?」
「えぇ。そうしてもらえる」
「わかりました。こちらへどうぞ」
華琳達は店員に付いて行き一刀達の真横に座った。
「あ!!華琳様と秋蘭様もここでご飯ですか?」
「あぁ。前に季衣に聞いてな」
「でしたら、ここのチャーシュー麵を頼んでください。ここのチャーシューは他と違って分厚くて美味しいですよ」
「季衣が言うなら本当でしょう。チャーシュー麵を二人前お願い」
「わかりました。料理は北郷様達と一緒で構わないでしょうか?」
「えぇ。お願い」
店員は厨房の方へ報告しに行った。
「そういえば、一刀。貴方今日までに出さないといけない報告書があったわよね。それは、もう終わったのかしら?」
「あぁ。その報告書なら昨日の晩に終わらせて朝に見せようと思ったのだけど、桂花が『今日は、華琳様は非番です』と言っていたから、怒られるのを覚悟で明日の回そうと思っていたんだ」
「そう。なら、明日提出しなさい。けど、それ以外にも仕事はあるはずよ」
「それなら午後からやり始めるよ。それより華琳」
「なに?」
「今日、一緒にお風呂入らないか?」
「「「「!?」」」」
・・・一刀と一緒に!!
「ど、ど、どうしてかしら?」
「実は、渡したい物があって」
・・・わ、渡したい物。もしかして、大分前に一刀が話してくれた結婚指輪
「わ、わかったわ。秋蘭、話し聞いてでしょう。私と一刀が一番に入るからそれまで誰も入れないで頂戴。もし、誰か入って来たら、わかっているはね・・・」
「わかりました」
料理が来た跡。一刀以外の四人。得に華琳はその時の料理の味を全く覚えていなかった。
食後、一刀は残りの仕事をしに執務室へと向かい季衣と流琉はそのまま街の探索へ向かった。
「・・・」
「どうかしましたか?華琳様」
「ねぇ、秋蘭。もし、私が一刀と結婚すると言ったらあなたはどうする?」
「もちろん歓迎します。しかし、私も一刀を愛しているので少しばかりは嫉妬するかもしれません」
「それは、春蘭も同じかしら?」
「姉者の場合はそれを聞いた途端に一刀に斬りかかるかと」
「それもそうね。けど、今日のお風呂と閨は・・・」
「わかっています。姉者も桂花も入れやしませんよ」
「頼んだわよ」
華琳の言葉に秋蘭は無言で頷いた後、華琳と秋蘭は夕方まで街をぶらついた。
「ふぅ~~~。これで終わりと」
「お疲れ様です(コトン)」
一刀が机にあった全ての竹間を終わらせると稟が机にお茶を置き月が手作りのお菓子を置いた。
「ありがとう。二人とも」
一刀は二人にお礼を言うと出されたお茶とお菓子を飲み食いしながら机の下においていた箱を開けた。
「ご主人様。それは?」
「ん。これは・・」
「金木犀の香りですね。香水かなにかですか?」
「違うよ、稟。これは石鹸だよ」
「石鹸ですか。ですが普通の石鹸でしたらこんな香りはしませんけど」
「これは俺が作った特製だよ。よかったら今度二人にも作ってあげるよ。そうだな~~、稟には梅で、月には桃の香りかな」
「へぅ~~。私は桃ですか?」
「そうだよ。月は優しいから、優しい桃香りが一番だよ」
「それで、私は梅ですか。それはいいとして、この事を風達に知られたら彼女達怒りますよ」
「そこは、二人が黙っていてくれたら大丈夫だよ」
「しかしですね」
「もし黙っていてくれたら、二人を今度閨に誘ってあげるよ」
「ね、閨ですか」
「へぅ~~~」
一刀の条件に稟と月は顔を紅くして戸惑い数分間二人は黙り続けた。しかしその均衡を恥ずかしがりやの月が打ち砕いた。
「私は詠ちゃんも幸せになって欲しいので、私だけというのは・・・。それに詠ちゃんもご主人様の事好きなので」
「・・・わかった。皆の分作ろう。けど、風達には内緒だよ。驚かせたいから」
「はい。その時は私も手伝いますので」
「一刀様。私も手伝います」
「頼むよ。稟、月」
「「はい」」
一刀の言葉に二人は面々の笑みを見せた。
「それじゃ、俺は風呂に行ってくるから」
「はい。片付けは、私と稟さんでやっておきますので」
「一刀様はごゆっくり入ってきてください」
「ありがとうな。二人とも」
一刀は手作りの石鹸を持って風呂場へ直行した。
「華琳。いる?」
一刀は服を脱ぎ広い風呂場を覗いた。しかし、そこには誰もいなく一刀は華琳が来るまで風呂に入って待つことにした。
「ふぅ~~~。しかし、何時見ても広い風呂だよな~~」
一刀の言うとおりこの城の風呂は大人が十人入ってもまだ余裕がある広さだ。
「しかし、華琳も遅いな~~。うわぁ!!」
一刀が風呂の中央に行くと行き成り誰かに抱きつかれた。
「か、華琳。いきなりどうしたんだ?」
「『どうした?』ですって、貴方がなかなか来ないから、ここで待っていたのだけれど」
「すると。俺が来る前に入っていたんだな」
「えぇ、そうよ」
「ならどうして言ってくれなかったんだ」
「一刀から誘ったのだから普通ならわかるでしょう」
「まぁ~~。いた事はわかっていたけどな」
「ちょっ。それはどう結う事?」
「華琳がなかなか来ないからこっちに来た」
「それじゃ、さっきの喚き声も・・」
「うん。演技」
「かず~~と~~」
「ごめん、ごめん。ほら、一緒に入ろう」
「きゃ!!ちょっ。一刀、恥ずかしいわよ」
一刀は華琳をお姫様抱っこし湯船に浸かった。華琳は声では嫌がっていたが体は嫌がらずむしろ離そうとする方が嫌がった。
「大丈夫だよ。今は俺と華琳だけなんだから」
「・・・もう」
「しかし、こうして華琳と一緒に風呂に入るのは初めてだな」
「そうね。しかし、まさか私が貴方の事を好きになるとは思わなかったは」
「そうか。俺は初めて会った時から好きだったぞ」
「え!!」
「森で華琳が襲われて俺が助けた時感じたんだ。〔この子を守らないといけない。〕って」
「そ、そう」
華琳が顔を紅くしていると、一刀は石鹸の入った箱を華琳に渡した。
「これは?」
「開けてみて」
華琳は一刀の言われるまま箱を開けた。
「・・・これは?」
「石鹸。俺が作ったんだ。華琳、今日は何の日か知っている」
「?」
「今日は華琳と俺が初めて会った日だよ」
「!?」
「もしかして、忘れていた?」
一刀の質問に華琳は湯の中に紅くなった顔を半分入れた。それは、一刀との初めて会った日の事を忘れていた事と一刀と結婚すると思い込んだ事からできた赤面だった。
「本当なら結婚指輪にしたかったんだけど時間がなくて・・・華琳?」
「・・・がよかったわよ」
「え??」
「指輪が良かったわよ!!莫迦一刀・・・んっ・・」
「・・ん・・はぁ・・ごめん」
「本当・・・んっ・・ちゅ・・こうゆう事は・・・ちゅっ・・鈍いんだから・・」
「けど・・・ちゅっ・・華琳を愛している事は・・・ん・・ちゅっ・・本当だよ・・」
「莫迦・・あっ・・した・はいって・・レロ・・はむ・・」
「華琳・・レロ・・・」
「一刀・・・・・え?」
一刀と華琳のリズムが合って来た途端に一刀は華琳から離れた。
「続きは部屋で」
「もう・・・」
一刀と華琳は、一刀が作った石鹸を使って体を洗い合い。華琳の部屋に向かった。
「華琳・・ん・・ちゅっ・・」
「一刀・・・あっ・・・」
「遅い。一刀様・・・・私は寂しいです」
第二十二章 完
「第二十二章。終了で~~~す。いやはや、久しぶりの投降で疲れました」
「お疲れ。それで、どうしてお風呂なんだ?」
「お風呂は心の洗濯。お風呂に浸かっていたら、このアイディアが浮びましたので」
「そうなのか」
「そうなのです。あと次からは戦闘を少し入れますから頑張ってください」
「どうしてなんだ」
「そろそろしておかないと、皆さん退屈かと思いまして」
「そうか。それで、次の相手は?」
「な・い・しょ」
「てめぇ~~~~」
「おっと、危ないよ。行き成り斬月なんて振り回したら。俺じゃなかったらどうするつもりだったんだよ」
「知るか!!」
「そんな~~~。しかたがありませんね。ここは一朝一刀と戦いますか。なので、ここで、皆さんとはお別れです。それではまた合う日まで。BY]
「「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」
ガチン!!
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戦前の静けさなのか。今日も一刀達は平和な日を過ごしていた。そして今日は一刀にとってとても大事な日。その大事な日とはなんなのか