第二話「陳留の刺史」
巴郡を出て数日。一刀は陳留の近くまで来ていた。
「もうすぐ陳留だぞ。飛電」
一刀は跨っている馬に話しかけた。馬はただ小さくうなずいただけだったが、目の前に三人の男が来ると静かに止まった。
「おい、アンちゃん。旅人かい?」
「そうだけど。なにか?」
「馬から下りて、金目の物すべて置いてけ」
「なんで?」
「貴様。アニキの言う事が聞けないのか」
「そうなんだな。言うこと聞いた方がいいんだな」
男の横にいた部下らしき二人が一刀に近寄ってきた。その手には剣を待っていた。
・・・しかたない。一朝相手するか
一刀は飛電から降りて、両手を挙げた。
「へ、へ、へ。素直じゃねえか、どれ何か良い物はねえかな?」
男はなんのためらいも無く一刀に寄って来た。すると一刀は男のアソコに向かって強烈な蹴りを食らわせた。
「うぉ・・・・(バタン)」
「ア、アニキ!!」
男は口から泡を吐きチビが近寄ってきた。一刀はそれを見逃さず、チビに膝蹴りを食らわせ腰に差していた小刀琥珀を抜きデブに向けた。
「こいつらを連れて、さっさと行きな」
「わ、わかったんだな」
デブは二人を抱えてその場を立ち去った。
「ふぅ~~。・・・そろそろ出てきたらどうだ」
一刀は大岩の方を向き答えると三人の女性が出てきた。
「いやはや。まさか気付かれていたとは、思いもしませんでしたぞ」
「そんなことないよ。俺が馬から降りた時に少しだけ殺気を出したでしょう。それでだよ」
「なんと!!あれだけで私がいるとわかったのですか?」
「そうだけど」
「いやはや、大陸は広いですな。これほどの強者に会えるとは」
「そんなことないよ。俺の名前は北郷。巴郡から来た」
「我が名は超雲、字を子竜と申す」
「私は戯志才です。こっちが・・」
「ぐぅ~~~」
「起きなさい!!」
「おぉ・・。星ちゃんが余りにも長く話していましたので、ついつい眠ってしまいました。風は程立と申します」
「それで、三人はどうしてこの場所に?」
「我々は誰に仕官するかの旅をしている途中なのですが、どうやら陳留の刺史が来たようですね」
戯志才が向いている方へ一刀が向くと、大きな砂煙と共に曹の旗を持った騎馬隊が此方にやって来るのが見えた。
「それでは私達はこれで、捕まると厄介ですので」
「そうですか、それではお気をつけて」
「お兄さんは逃げないのですか?」
「別に逃げる理由も無いし。陳留には用事があるから」
「そうですか」
「それでは、北郷殿。また会いましょう」
「もし、巴郡来る事があったら俺酒屋をしているから来てくれ。良い酒出すよ」
「それは、ぜひ行かせて貰いましょう」
超雲達は走ってその場からいなくなった。
「あなた、ここで何しているの?」
「俺は巴郡で酒屋をしている者です。陳留で良い米が出来たと聞いて、此方まで買い付けに来たのですが」
「そう。あなた、ここらで三人組の男を見なかったかしら?」
「でしたら、あちらの方へ逃げていきましたが」
「春蘭。今すぐ兵を向かわせなさい」
「はっ」
一刀が指刺した方に黒髪の女の子が兵を向かわせた。
「商人がどうして武器を持っているのかしら?」
「これは護身用です。この時代、いつ賊に襲われるかわかりませんので」
「それにしては変わった武器ね。悪いけど陳留まで一緒に来てもらうわよ」
「構いませんよ」
一刀はそのまま陳留に入った。
「・・・」
「稟ちゃん、稟ちゃん。いつまでお兄さんの事考え入るのですか?」
「私は別に北郷殿の事など!!」
「風はお兄さんと言っただけですよ。どうしてそれがさっき会った北郷さんになるのですか?」
「鎌掛けましね。風」
「おや、図星でしたか。そんなに気になるのでしたら、今からでもお兄さんの所に向かえばいいじゃないですか」
「そ、そ、そ、そんな事出来ますか」
「どうしたんだ、風?稟の顔が紅いようだが」
「稟ちゃんも恋する乙女になったのですよ。」
「北郷殿の事か。確かに、あのお方が旗挙をしたら私とて配下にしてもらいたいものだ」
「おや。星ちゃんもお兄さんの事を気に入りました。稟ちゃん、敵は強敵ですよ~~」
「だから~~~」
「それで、あなた名前は?」
「俺の名前は北郷。巴郡で酒屋をしている」
陳留の刺史に捕まった一刀は、街にある店の中に連れて込また。
「なら北郷。あなたが会った三人組の特徴を話して」
「頭みたいな男と、チビとデブの大男だけど」
「聞いている情報と外見は一致するわね。その顔は覚えているかしら?」
「特徴ある顔だったから、見れば一目でわかるけど・・」
「なら、私の下で働きなさい」
「はっ?」
「あなた、最近噂になっている巴郡の鈴の三人集の一人でしょう」
「・・・それがどうした」
「貴方達の武はこの陳留までも届いているの。そんな武人が私の邑に来てるのに、私が見逃すと思う?」
「それもそうだが、お断りだ」
「貴様。華琳様の誘いを蹴ろうとなど「春蘭。黙りなさい!!」・・・はい」
「理由を聞かせてもらいましょうか」
「理由は二つ。一つ目は、俺は名を名乗ったのにあなたは名乗っていない。そんな者に行き成り部下になりなさいと言われても信頼できない。二つ目は、俺は巴郡に出る時、思春。あなたで言う鈴の三人集の二人に必ず帰ると約束した。それを裏切るつもりは無い」
「そう、それは失礼したわ。私の名は曹孟徳。彼女達は夏候惇と夏候淵。まぁ、今回はいいわ。けど覚えときさい。私は欲しいと思ったものは必ず手に入れるから」
「そうですか」
「そうよ。今日は私が無礼な事をしたお詫びに何か一つだけ願いを叶えるわよ」
「でしたら、こちらでいいお米が出来たと聞いたので、米商人を紹介してくれたら」
「わかったわ。秋蘭、案内してあげて」
「御意」
「春蘭。城に帰るわよ」
「はっ」
曹操と夏候惇は店を出て城へと向かった。
「それでは、案内をお願いします。夏候淵さん」
「あぁ。こっちだ」
一刀は夏候淵に付いて行った。
米商人との交渉の後、一刀は夏候淵と一緒に食事をしていた。
「いや~~。今日は本当にありがとうございます。まさかこんなに安く手には入るとは思ってもいませんでした」
「別に構わんさ。私はただ華琳様に言われて君を商人の所まで案内したまでだ」
「そんなことありませんよ。あ、そうだ。これ内で作って販売しているお酒なんですけど、良かったらどうぞ」
「ありがたく頂くよ」
一刀は夏候淵に日本酒の入った器を渡した。
「北郷はいつまでここにいる予定なんだ?」
「そうですね。この街を色々回りたいので二,三日はいる予定です」
「なら、その間の街の案内は私がしよう」
「え!!いいのですか?」
「華琳様が気に入った男だ。私とて少し気になるからな」
「そうですか・・・。なら、お願いします」
「うむ」
「それでは、俺は宿に戻ります」
「あぁ。また明日な」
「はい。」
一刀は店から出ると、そのまま宿へ向かった。夏候淵はその後姿を見た後、城へと戻った。
「華琳様。ただ今戻りました」
「お帰り、秋蘭。随分北郷と一緒にいたようね」
「はい。北郷に食事に誘われましたので。それと北郷からお酒を貰いましたので、華琳様と一緒に」
「あら、いいわね。なら、秋蘭。早く私に酌をしなさい」
「わかりました」
夏候淵は持ってきた盃にお酒を注いだ。
「んっ・・・。あら、美味しいわね」
「そうですね」
「秋蘭。あなたから見て、北郷はどう思う?」
「仕合をしてないのでわかりませんが、恐らく武は姉者より上だと思います。知識に関しては、その辺の軍師以上かと。敵にしたらこれ以上無い強敵かと」
「そう。あなたがそう思うのなら彼は本物ね」
「はい」
夏候淵は盃に入っていたお酒を一気に飲み干し、夜空に輝く満月を眺めていた。
第二話 完
「第二話完了です~~」
「一つ聞いていいか」
「なんですか?一刀」
「馬の飛電はどこから取ったんだ」
「飛電とは、曹孟徳の愛馬のひとつ『爪黄飛電』から取りました。一般的に曹操愛馬は『絶影』ですが、爪黄飛電も名前はかっこいいので、ここで使わせてもらいました」
「なるほどな」
「納得してもらえましたか?」
「あぁ、十分に」
「それはよかった」
「それで、私と一刀の関係はこの後どうなるのだ」
「それはワタシも知りたいぞ」
「え~~と、思春さん。焔耶さん。とりあえず自分の得物をなおすことから始めませんか?」
「「ことわる」」
「えぇぇぇぇぇ!!」
「それでどうなんだ。私と焔耶は一刀とどうゆう関係になるのだ?」
「そ、それは」
「「それは」」
「ごめんなさい。それはまだ言えません!!」
「「あ!!またんか~~~~」」
「え~~~と・・・・黒龍がいなくなったので、ここは天の御使い北郷一刀がここを終わらせていただきます。それでは皆さんまた会いましょう。BY」
「「こくりゅ~~~う」」ドドドドド
「ごめんなさ~~~~い」ドドドドドドドド
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米を仕入れに陳留まで行く一刀。しかし、乱世のせいか賊に襲われる一刀だか、逆に返り討ちにする。その後、曹孟徳と出会う。彼女は鈴の三人集の事を知っており一刀を仕官させようとするが、一刀はどうする?