「はぁ……どうすれば、もっと目立つ事が出来るのかな?」
別に麗羽みたいに派手になりたいわけじゃないけど、もう少し皆の視界に収まりたいよなぁ。
最近じゃ、影が薄いどころの問題じゃなくなってるし、ほんとただの空気だよな。
高望みはしないから、少し……ほんの少しでいいから自分の個性が欲しい。
「ほぅ。そこまで個性を望むのでしたら、一ついい方法がありますぞ」
「せ、星!? 何処から湧いて出てきてるんだよ?」
「むっ。その言い方はまるで私が虫のように聞こえるのですが……」
「あ、いや、そういう意味で言ったわけじゃないんだ。ちょっと驚いて……」
急に自分の部屋に出てきたら、誰だって驚くだろ。
まぁ、そんな事よりも今は――
「それで星。いい方法があるって言ってたけど、それは一体どんな方法なんだ?」
星の提案なのが少し怖いところだけど、そんなのを気にしてる場合じゃないよな。
「個性が付く方法。それは――」
「それは……?」
「これを着る事です!」
星が自信満々で差し出した物。それは――
「せ、星……それは一体なんだ?」
初めて見る服? のような物だった。
「これは天の国に存在する夏の定番の服で、主の説明では、すく~るみずぎというやつらしい」
「すく~るみずぎ?」
何だ? 変な名前の服だな。というより、見た目がエロイ気がする……
「本来は紺色が主流らしいが主いわく、白のすく~るみずぎは至高らしい」
「全然意味が分からないな。それよりも若干嫌な予感がするんだけど、私がそれを着るのか?」
北郷の煩悩が詰まってそうな服を……
「その通りですが、何か問題でもありますかな?」
「あるに決まってるだろ!」
そんな恥ずかしい物、着るなんて出来るわけがないだろ!
「だがこれを着れば、間違いなく個性が出ると思いますぞ」
「ぐ……っ」
確かにそれを着れば個性は出るかもしれないけど、その代わり何か大切な物を失うような気がするんだ。
「更にこれを着れば主も喜ばれると思いますが?」
「北郷が……」
「そう。白蓮殿も主が喜ぶところを見たくはありませんか?」
「北郷が喜ぶところ……」
私が北郷を喜ばせる……私の個性で北郷が喜ぶ。
私の姿で北郷が――
「白蓮殿。この、すく~るみずぎ。着る気になりましたかな?」
「あ、ああ。その、すく~るみずぎを着よう!」
すく~るみずぎを着て私だけの個性を。
「それでこそ白蓮殿。だが一つだけ注意して欲しい事があります」
「ん? 注意?」
「その白のすく~るみずぎは、濡れると透けるらしい」
「す、透けるのか!?」
やっぱり着るの止めようかなぁ。
「そうみたいですが、それでも着られるのでしょう?」
「…………」
これも全て自分の個性を出すためと、北郷のためなんだ。
そうだ。北郷が喜んでくれるのなら私は――
「ど、どうだ北郷。似合うかな?」
「あ、ああ。白蓮の白スク姿。完璧すぎる」
「そ、そうか。それはよかった」
恥ずかしい想いをした甲斐があるってもんだ。
「きっと白スクは白蓮が着るためにあるんだろうな」
「北郷♪」
ああ。今の私は今までで一番輝いてるよ。
ここまで輝いているのは初めてだよ。
すく~るみずぎを着て本当によかった。
そして、北郷が喜んでくれて本当によかった。
すく~るみずぎ。これはもう影の薄い人間にとっては、一つの神器だな。
Tweet |
|
|
31
|
1
|
追加するフォルダを選択
皆大好きハムこと、白蓮さんです。
あまりに不憫なこの子に光を!
テーマに沿ってるか微妙かもしれませんが、夏といえば水着。水着といえばスク水ですよね。……ね?
少し祭に参加しすぎな気がするけど自重はしない。
続きを表示