高校野球

三郎　「あっけない幕切れでしたな」

勘一　「まさかスクイズ失敗でゲームセットとは意外でしたなぁ」

三郎　「てゆーか１５点も差がついてたらスクイズなんか意味ない気がするんですが」

勘一　「そりゃ監督の思い出采配というヤツですよ」

三郎　「思い出代打は聞いたことあるけど……思い出采配ッスか」

勘一　「監督だって人の子、なにかしら目立って故郷のとーちゃんかーちゃん友達その他にネタを提供したいってもんです」

三郎　「まぁ確かに、スクイズっていかにも仕掛けました！　って印象あるもんなぁ」

乃千絵「うるさいわねぇ！　眠れないじゃない」

三郎　「うわ、いたのかよ……お前はなんで夏休みに学校来て寝てるんだ？」

乃千絵「アンタたちだってなんでわざわざ学校来てテレビ見てるのよ！」

三郎　「うちにはクーラー無いんだよ！」

乃千絵「うちにだって無いわよ！」

三郎　「なんだ、仲間じゃん」

乃千絵「あら奇遇ね、雑司ヶ谷君も？」

勘一　「独りで野球見てたら寂しいんで……てゆーか今時クーラー無い家ってあったんだ！」

乃千絵「聞きましたか？　裏切り者ですよ彼、ブルジョアジーですよ」

三郎　「いや別に、勘一ンとこ金持ちなの知ってるし」

乃千絵「なにそれ？　二人だけの秘密？　アンタたち出来てんの！？」

三郎　「なんだその飛躍の仕方は！」

勘一　「ポッ……」

三郎　「おめーもポッ、じゃねーっつーの」

勘一　「エアコンの話だけに空気を読んで流れに乗ってみました」

乃千絵「うわ、寒っ」

三郎　「お前ら待て、お題は高校野球だろ」

勘一　「高校野球でどうオチつけんだよ？」

三郎　「えーっと、父母に感謝の気持ちを……」

乃千絵「まさか孝行野球とか言わないわよね？」

三郎　「ぬぐぐ……じゃあウェイターのバイトでも……」

乃千絵「高校給仕かしら？」

三郎　「むむむ……じゃあ動物の赤ちゃんと触れ合い広場を……」

乃千絵「仔牛園なんて、まさかねぇ」

三郎　「ふがが……」

勘一　「球種完全に読まれてますよ！」

乃千絵「ふっふっふ、負けを認めるなら許してあげてもよくてよ」

三郎　「何を許すんだ、てゆーか何の勝負なんだ……？？」

乃千絵「福地君がこちらを裏切ってブルジョアの手先になって……あまつさえ雑司ヶ谷君とそんな関係に……という許されざる事実をよ！」

勘一　「ポッ……」

三郎　「んなわけねーだろ、ってお前も紛らわしい反応すんじゃねーよ！」

乃千絵「ムキになって否定するところが怪しい……」

三郎　「誤解だっつーの！」

乃千絵「どうなの？　負けを認める？」

勘一　「そういえばこの部屋、クーラー効きすぎてねぇ？」

三郎　「わかった、誤解コールド負けでいいよ、もう」