『海の唄がきこえる』vol.1 プロローグ
きこえる 波の音
静かに よせては かえす
耳の奥で いつも はなれない 音
ぼくは 歩きなれた海辺を 歩いてる
いつも人で にぎわう岸辺は 今日はもう 誰もいない
夕やみに つつまれて 波の音だけが 寂しくひびく
まるで 世界中に ぼく ひとり
はやく 行かなくっちゃ・・・・・・・・・・・
どこへ?
ぼくは どこへ 向かっていたんだろう
波の音にまじって なにかが きこえてくる
きれいなしらべ
やさしい はかない 歌声
ぼくは ホッとする
涙が出そうなくらい うれしい
声のするほうへ 歩いていった
――――― 浜辺にいたのは 女の子たち
同じ顔をした 小さな 6人の 女の子たち
うすべに色の うろこの足
伝説の中の 人魚
ぼくは その中の1人に 手をさしのべる
その女の子は 泣いていた
サンゴのような 赤い瞳
ぼくは 悲しくなって 心がさわぐ
歌声は とうに消えて 波の音だけがする
岩に座った 女の子の足に 波がかかる
ぼくは それを 見おろす
ふいに 波が激しくなる
岩にうちよせる 荒波・・・・・・ 潮さい・・・・・・・・
バシャッと 何かが 波打ちぎわで はねた
ぼくは ふりかえる
赤い・・・・・・・・波・・・・・・・・・?
浜辺を 埋めつくすように 横たわる
魚?・・・・・・ 人?・・・・・・・・
むせかえるような 血のにおい
赤い海・・・・・・・・・
緋色に 染め上げられた 水たまり
みんな 心が空っぽで うつろな目をして 死んでいる
ぼくは あとずさりする
うちよせる波が 岩でくだけて ぼくの体にかかる
顔も 手も 足も 緋色のしぶき
まるで ぼくが 殺したみたい・・・・・・・・
・・・・・・ぼくが・・・・・・・・?
ノドが痛い
焼けつくような 痛み
あたりを見まわすと 空気中に 光の粒子が ただよっている
じっと光を見ていると それは 帯のような 流れをつくる
海面の波が きらきらと 光をはなつように それは美しい
遠のいていく 意識
波の音だけが いつまでも 耳からはなれない
ぼくも・・・うつろになって・・・・いくのかな・・・・・・・
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オリジナルビジュアルノベルゲーム
『海の唄がきこえる』です。
「とらのあな」「COMIC ZIN」など、
同人ショップで販売しています。
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