「よし!レベル5終了!ここまでよく頑張ったのう、一刀!」
「・・・・・・・」
「しかしお主の成長にはわし自身びっくりじゃ!この調子ならすぐ、あの技を伝授できるかもしれん」
「・・・・・・・・・」
「ま、今日はゆっくり休みなさい一刀。明日は特別に休みにするでの」
爺ちゃんのその言葉を最後に俺の意識は闇に落ちていった。
そのとき思ったことはただ一つ。
ああ、俺はここで死ぬんだな・・・・。
ん?
なんか妙に明るいな・・・・。
まさか、死んで天国に来ちゃったんじゃあ・・・。
「ご、ご主人様!!」
俺がまさかここはあの世なのか、と考えていると、隣から愛紗の声が聞こえたので隣を向いた。そこには心配そうな顔をした愛紗が座っていた。
「あ・・・愛紗・・・」
「ご、ご主人様・・・ご、ご無事でよかった・・・」
俺が愛紗の方を見るや否や、愛紗は瞳を潤ませながら、俺の頭を胸に抱きしめてきた。
ちょっ、あ、愛紗!ま、まって!!こ、これじゃあ別の意味で死ぬから!!
ああ!か、顔が愛紗の大きな胸に埋まって、い、意識が・・・・。
「はっ!ご、ご主人様!も、申し訳ありません!!」
それに気が付いたのか愛紗は急いで俺を離す。あ~、少し残念、かも・・・・。
「・・・・ま、いいか。で、愛紗、俺どうしてここで寝てるんだ?」
「お爺様の稽古の後、ご主人様が気絶なされたので私が部屋まで運んだのです」
・・・そういえば今更気が付いたけどここ俺の部屋だ。
爺ちゃんと稽古した中庭からここまで運んでくれるなんて、本当に愛紗は力あるな・・・。
そんなことを考えてしまった俺だがすぐその考えを振り払って、愛紗にお礼を言う。
「そっか、ありがとう愛紗。疲れただろ?」
「いえ!そんなことはありません!疲れなど、ご主人様のご無事な姿を見ただけで吹き飛んでしまいました!」
俺の言葉に愛紗はそう答えた。そんな愛紗の言葉を聞いていると俺は微笑ましくなってくる。
「でも俺もまだまだだな~。全力の0.0002%しか出していない爺ちゃんにも勝てない上に逆にぼこぼこにされるんだから」
「いえ!ご主人様は弱くはありません!お爺様が異常に強すぎるのです!」
愛紗がそう強く主張する。まあ確かに爺ちゃんは強いけどな~。
愛紗曰く全力出せば三国滅ぼせるほど強いらしいし・・・。
「ああ、そういえばご主人様、明日の修行は休みにしてくれるとお爺様が言っておられました」
ん?あ~確かにそんなこと言ってたな・・・。でも明日修行が休みなら・・・。
「なあ、愛紗」
「は、はい、何でしょう?」
「明日、祭りに行かないか?」
「祭り、ですか?」
俺の誘いに愛紗は不思議そうにそう返した。
明日には近くの神社で夏祭りが開かれるはずだ。
愛紗と一緒に行きたいと夏休み始まった頃から思っていたんだ。
「そうだけど・・・、駄目、かな?」
「そ、そんなことはありません!ですが・・・」
と、愛紗は深刻そうな顔で俯いた。この表情、確か海に行く前の日に見たような・・・。
「私・・・浴衣持っていませんので・・」
「ああ~、そんなこ「それなら大丈夫よ!愛紗ちゃん」か、母さん!?」
俺の言葉を遮って、いきなり母さんの声が聞こえたので、声の聞こえた方向を向くとそこにはにこにこと笑みを浮かべた母さんが立っていた。
「か、母さん!いつからそこに・・・」
「そんなことはどうでもいいわ、一刀♪それより愛紗ちゃん、浴衣のことなら心配要らないわ♪」
「そ、それはどうしてでしょうか・・・?」
俺の質問を華麗にスルーして母さんは愛紗にそう話した。
それに対して愛紗はどこか疑問そうな顔つきだ。しかしそんな顔をみても母さんは笑顔のままだった。
「ふふふ、愛紗ちゃん。浴衣なんて、無ければ作ればいいのよ」
「作るって・・・、お、お母様がですか!?」
母さんの発言に愛紗は相当びっくりしているようだ。まあ普通はそんな反応をするだろうね。でも母さんは、家事だけでなく衣服を作ることにかけても達人級だから、まあ浴衣も作れるだろう。でも、祭りは明日だからな・・・。少々不安だ。
「なあ、母さん、作るって言っても祭りは・・・」
「明日でしょ?大丈夫よ。寸法さえ分かれば明日には間に合うわ」
母さんは事も無げにそう答える。・・・そう言い切るとは流石と言うべきか、何と言うべきか・・・。
「じゃあ今から寸法測るから愛紗ちゃん、ちょっと来てくれるかしら?」
「え、あ、ちょ、ちょっとお母様!?」
「さあさあ、善は急げよ、うふふふふ♪」
いきなりのことに愛紗は驚いていたけど、笑顔の母さんにそのまま引きずられていった。・・・愛紗、ご愁傷様。
でも愛紗の浴衣、楽しみだな~。
俺は布団の上でそんなことを考えていた。
その後、俺は動けるようになったので、家族と夕食を食べたんだが、どうやら母さんは寸法を測っただけでまだ浴衣製作には取り掛かっていないらしい。
なんでも夕食が終わったら取り掛かるらしいけど・・・。
本当に間に合うのかな・・・。
愛紗side
お母様は私のために浴衣を作ってくださると言っておられたが、本当に間に合うのだろうか・・・。
実際浴衣の寸法を測った後はすぐに夕食を作りに行かれたし、その夕食が終わった後はのんびりとお茶の間でテレビドラマを見ていらっしゃる。
ご主人様は大丈夫と言っておられたがやはり不安だ。
「あの、お母様・・・」
「さて!それじゃあ浴衣を作りますか!」
私がお母様に話しかけようとすると突然お母様はそう言って立ち上がった。
よくよく見るとテレビドラマはすでに終わっていた。
「あの・・・」
「ああ愛紗ちゃん、どうしたの?」
私の声に気が付いたのかお母様は私のほうを向く。
・・・いまさらだがお母様は今いくつなのだ?
お爺様と父上曰くもう30代後半のはずだが・・・。
外見だけみるとせいぜい20代にしか見えない。
どうやったらここまで若さを保てるのやら・・・。
「あの、浴衣の件なのですが・・・」
「ああ、大丈夫よ。今からやれば10時くらいには終わってるわ♪」
じゅっ、十時!?今は7時50分位だから、約二時間程度で終わらせるつもりなのですか!?確か浴衣を作るのはかなり大変なはずでは・・・。
「それじゃあ作ってくるわね」
お母様はそう言ってお茶の間から出て行った。その背中を、私は呆然と見送った。
その後、お母様は浴衣を自身の予想を上回る速さの一時間で作り上げてしまった。
その出来映えは、服に興味の無い私でもかなり素晴らしいものと分かる出来だった。
お母様は大した事は無いと笑っておられたが・・・。
あとでご主人様に聞いたところによると、ずっと前にお母様が作った着物を、1000万で買いたいと言った人が居たとか・・・。
と、言うことはこの浴衣はどれだけの値打ちがあるというのか・・・。私はそう考えて少し震えてきた。そんな私を見ながらお母様はなおもにこにこと笑っておられた。
ご主人様・・・。ご主人様のご家族は、とんでもない方ばかりですね・・・。
私は心の中でそう呟いた。
一刀side
「・・・愛紗遅いな~。やっぱり女の子の着替えは遅いのかな」
俺はそう呟きながら玄関で愛紗を待っていた。まあまだ祭りは始まったばかりだろうし、終わるまでまだ時間があるだろうけどせっかくのデートなんだ。気が急いてしまう。
ちなみに爺ちゃんと父さんと母さんは後で行くとのことらしい。一菜は風邪を引いて休むとかなんとか・・・。本当かな・・・。
なんでも浴衣は母さん曰く一時間で仕上がったとか。さすがというかなんというか・・・。
もう母さんその分野で十分食っていけると思うんだけど・・・。
「か、一刀様、お待たせしました」
と、後ろから愛紗の声がしたので俺は後ろを振り向いた。
そこには、浴衣を着た愛紗が顔を赤らめて立っていた。
着ている浴衣の色は緑色で、色とりどりの花や鳥を模した模様が装飾されており、愛紗によく似合っている。
また、帯にも様々な装飾がされており、とても美しい、・・・というかこれ本当に一時間で仕上げたのか?帯だけでも完成させるのに丸一日かかりそうだぞ・・・?
「あ、あの・・・一刀様、どうでしょうか?」
じっと見ている俺に対して愛紗は不安そうに尋ねる。
感想はたった一つ、すごくきれいだ。
浴衣の色も装飾も愛紗にすごく良く似合っていて、誰もが振り向く魅力を引き出しいた。
かく言う俺も今どきどきしてるし。
「すごく・・・似合ってるよ、愛紗」
「ほ、本当ですか!?」
「うん、俺、すごくどきどきしてる」
俺は愛紗の顔を見つめながらそう言った。愛紗は、まだ顔を赤くしていたけど、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「じゃあ、行こうか!愛紗」
「はい!ご主人様!」
俺は愛紗の手を握って、祭りの行われている神社に向かった。
「へえ、今年も賑わってるな」
「これがこの世界の祭りですか・・・。前の世界よりも賑やかですね」
15分ほど歩くと、俺達は祭りの会場である神社に到着した。
さすがに年に一度というだけあって結構賑わっていた。
愛紗はやっぱり物珍しいのかあちこちの屋台を興味深そうに眺めていた。
それを見ていると俺もほほえましくなってくる。
途中、綿菓子の屋台を愛紗がじっと眺めていた。
「愛紗、欲しいんなら買おうか?」
「なっ!?か、一刀様!私は別に欲しいわけでは・・・「おっちゃーん!綿菓子2つくださーい!」・・・もう」
愛紗が顔を赤らめて抗議するのを無視して俺は綿菓子を二つ買った。
で、代金を払った後、一つを愛紗に渡した。
「どう愛紗、美味しい?」
「む、少々甘ったるいですが、まあまずくはありません」
俺の質問に愛紗は綿菓子を食べながら答えた。どうやら気に入ってくれたみたいだな。
不覚にも綿菓子を食べている愛紗に胸がキュンとしちまったぜ・・・。
それから俺達はあちこちの屋台を見て回った。
愛紗と一緒に金魚掬いやったり(愛紗が最初やって一匹も取れなかったからムキになって3 回目のトライでようやく一匹取れた)、射的をやったり(ここでも愛紗が一発も景品に当てられ なかったため、4回付き合わされた)一緒にたこ焼き食べたり(たこ焼きをふうふうしながら食 べる姿には不覚にも萌えた)と、楽しく過ごしていた。
それにしても今年の祭りも大規模になったな。少子化って言ってるけど小さい子供も結構居 るし。なんか遊戯王の大会もやってるな。
あ~しまった!俺もデッキ持ってくれば良かったかな?
でもま、今日は愛紗とのデートだし関係ないか!
「おい、デュエルしろよ」
「キングのデュエルはエンターテインメントで無ければならない!!」
「満足させてくれよ?」
・・・変な声が聞こえてくるし。
なんか主に頭が蟹みたいな人や、転倒ばかりする元キングや「元キングだと!!??」ああもう うっさい!!あと満足同盟の元リーダーとかが居るし、近づかないほうがいいな、ありゃ。
「覚悟しろよ、この虫野郎!!!」
「粉砕!玉砕!!大喝采!!!ワハハハハハハハハ!!!」
「グォレンダァ!!!」
「イヤッホオオオオオオオオオオオ!!!!」
・・・もう行くか。
「ふう、なんか少し疲れたな」
「はい、さすがに私も少し疲れました」
神社の前に着いた俺と愛紗は神社の近くに設置してあるベンチに腰掛けた。
さすがにすごい熱気だったな。おもにデュエル場で・・・。
「やれやれ全く愛紗も困ったもんだよ。金魚釣りでも射的でもムキになってお小遣い全部使っちゃうんだから」
「うっ・・・そ、それは自分でも軽率であったと思います・・・。で、ですがこのように戦利品は手に入れました!」
そう言って愛紗は金魚掬いで捕まえた金魚が入った袋と、射的で手に入れたクマのぬいぐるみを俺に見せ付けた。
・・・というか愛紗、金魚はともかくぬいぐるみはただ自分が欲しかっただけじゃないの?言わないでおくけど。
そんなことを考えていると空から大きな音が響き渡った。
俺と愛紗が空を見上げると、空に打ち上げ花火の大輪の花が咲いていた。
「うお~~!いつ見ても花火は凄いな~~!!」
「これが天界の花火ですか!なんと美しい!!」
俺の隣で愛紗も興奮しているようだ。俺がその横顔を見ると、花火の光で照らされた愛紗の顔 は、とてもきれいで、おもわず見とれてしまった。
「?ご主人様、どうなされたのですか?」
愛紗が俺の視線に気付いたのか、こっちを向いてくる。
俺はそんな愛紗の肩を抱いて引き寄せて、愛紗の唇に、俺の唇を押し当てた。
「んん!?!?」
突然のキスにビックリした愛紗は目を白黒させていた。俺はゆっくりと唇を離すと愛紗に向か って微笑んだ。
「愛紗、愛してる」
俺の言葉に愛紗はボンッと赤くなったが、しばらくすると小さい声で
「わ、私も、愛しています・・・」
と、答えてくれた。俺はそんな愛紗が面白くて笑いながら見ていた。
と、突然愛紗が俺に抱きつくと、いきなりキスをした。
「ん・・・、ん・・・・」
10秒ほどキスをすると、愛紗はゆっくりと唇を離して
「さっきのおかえしですよ♪」
と言ってペロっと舌を出した。
その姿があまりにも可愛すぎて、俺は愛紗を強く抱きしめた。
空では花火が、まるで俺達を祝福しているかのように次々と大輪の花を咲かせていた。
「う~ん、やっぱり熱いね~、二人とも」
「本当ね、あなた。あの子達、昔の私たちにそっくりね♪」
「ああ、一刀と愛紗ちゃんなら、いい夫婦になれるよ」
「そうね♪ああ~早く二人の子供の顔がみたいわ~♪」
「気が早いな~由美は。そういえばお父さんと一菜は?」
「お父様はデュエル会場に、一菜は、まあどこかにいるでしょ♪」
「楽観的だなあ・・・。本当に大丈夫なの?」
「大丈夫♪失恋した女の子は怖いものだからね♪」
「??どう言う事?」
「ウフフフフ♪」
「むっき~~!!!おのれ~~愛紗めええええええ!!!よりにもよって兄さんとき、ききき、キスなんて~~~~~!!!なんてうらやましいことを~~~~~!!!!
ちくしょ~~~~今夜は飲んでやる~~~~!!!!」
「お、お嬢さん・・・・。もうラムネはそれくらいにして・・・・
ぎろっ
い、いえ、何でもありません~~~~!!!」
あとがき
どうもみなさん、外伝第4章更新しました。
最近どうも更新速度が遅れ気味で・・・。もうしわけありません・・・。
でも更新は止めたりしませんので!!
さて、今回は出来るだけ甘甘にしてみたんですけど・・・。そうでもないか・・。
一刀の母親の由美は家事全般が得意なだけでなく、料理はプロより上、服製作も達人並
みの凄いお母さんです。
ついでに40近いのに大学生に間違われるほど若い容姿もしています。
初めて知ったとき愛紗もびっくりしたとか・・・・。
では今回はこんなところで。
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おまたせしました。外伝第四章更新しました!
今回の外伝は一刀と愛紗が夏祭りでデートする話です。
キングの外史は、常にエンターテイメントでなければなら ない!