No.161257

鬼ヶ島の鬼~血染めの刃~ 第三話

紫炎さん

第四話です。ネタがポンポン出るわ出るわ。
しかし戦闘描写にはやはり手こずりました。
いやぁ、難しもんですね。精進精進。


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2010-07-28 03:41:31 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2394   閲覧ユーザー数:2130

「死ねぇ!」

 

 

 

叫びとともに放たれた首を狙った斬撃。

 

 

 

「お前が死ね」

 

 

 

それを身を屈めて回避した恋はすぐさま唐竹の一撃で持って絶命させる。

 

 

 

「ぎゃあああ!」

 

 

 

「てめぇ何してやがる!」

 

 

 

ほかの兵が戟を腰に帯びる徐晃に襲いかかる。頭を狙う刺突、それを

 

 

 

「お休み」

 

 

 

左半身になりながら背の大野太刀、山颪でその剣ごと袈裟掛けに切り伏せる。

 

 

 

「な、なんだこいつら!」

 

 

 

「強すぎる……!」

 

 

 

「一匹ずつは面倒だ」

 

 

 

「……まとめてかかってこい」

 

 

 

この言葉に黄巾兵たちは激高し、直前に感じていた恐怖を忘れてしまった。忘れなければ生きながらえることができたかもしれないのに。

 

 

 

「舐めやがってぇ!」

 

 

 

「三人一組でかかれ!いくら強かろうが二人だけだ!数にものいわせりゃ勝てる!」

 

 

 

そんな言葉にすぐさま組を作り、三組ずつ二人に襲いかかるが、

 

 

 

「……甘い」

「児戯だな」

 

 

 

恋の薙ぎ払い、徐晃の神速の刺突でもって骸に変わる。

 

 

 

「ば、バカな……一撃で九人を!」

 

 

 

「あの男も、早すぎて見えなかったぞ!!」

 

 

 

「次は誰だ?」

 

 

 

「私たちの刃の餌食になるのは」

 

 

 

すました顔でそう告げる二人は黄巾兵にとっては死神のように見えただろう。

「くっそおぉぉぉ!」

 

 

 

破れかぶれになった男が剣を振り上げて切りかかる。しかしそれを徐晃は相手の懐に入りこんでそれを封じ、

 

 

  

                ―――――春雷―――――

 

 

 

胴体から真っ二つに切り捨てる。

 

 

 

一方恋も銅を薙いでくる敵を

 

 

 

「さよなら」

 

 

 

心の臓を貫いて絶命させる。

 

 

 

「バ、バケモノめ!」

 

 

 

「だが所詮二人!しかもその一人は女だ!」

 

 

 

「そうだ!大人数で囲めばどんなバケモノだって……!」

 

 

 

「いくぞ!黄天の世のために!」

 

 

 

「蒼天既に死す!黄天まさに立つべし!」

「……蒼天は死なず」

 

 

 

「しかして駆けるは羽虫にあらず」

 

 

 

「……蒼天は龍の駆ける世界」

 

 

 

「羽虫には過ぎた世界よ」

 

 

 

『故に』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『羽虫は死ね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

「し、しにたくねえぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

「バケモノ!バケモノだぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

「前線が混乱してる!?何で!?」

 

 

 

突如混乱した前線に張宝は戸惑いを隠せない。

 

 

 

「わからない……けど!天和姉さんを守らないと!」

 

 

 

「そうね!姉さん、後ろに下がって!」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「え?じゃなくて、姉さんはもっと後ろ!本営よりも後ろに下がって!」

 

 

 

「危なくなったらすぐに逃げて!いいわね!」

 

 

 

「……やだよ!お姉ちゃんも一緒にいる!!」

 

 

 

――――――――――――――――――ズドオォォォォォン!!―――――――――――――――――――

 

 

 

そんな中、戦場に轟く轟音。まるで何かが爆発するような。

 

 

 

「今の爆発音は何!?なんなの!?」

 

 

 

「前線の千人隊が次々と吹っ飛んでいます!」

 

 

 

「吹っ飛ぶってどういうことよ!」

 

 

 

普通はありえない人が吹き飛ぶという現象にいつもは冷静な張梁も声を荒げる。

 

 

 

「まずいですよ、張梁様。あいつら、人間じゃありません!」

 

 

 

「一薙ぎで千人を屠り、獲物を振り下ろせば千人が宙を舞うんです!!」

 

 

 

「しかも一人は細い剣を使ってるのに折れる気配がありません!」

 

 

 

「やつらは人じゃねえ!!鬼神だ!!」

 

 

 

「ちょっ、バカ!そういうことを大声で言わない!!皆が動揺しちゃう……」

 

 

 

――――――――――――ドッゴォォォォォォォォォォォン!!!――――――――――――

 

 

 

「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

―――――――――――――ガオォォォォォォォォォォォォン!!!――――――――――――

 

 

 

「ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

「ひっ!!ま、またぁ!!」

 

 

 

「しかもさっきよりも近い!ちぃ姉さん!天和姉さんを連れて後方に!!」

 

 

 

「うん、わかってるけど……!あんただけここに残るとかなしだからね!」

 

 

 

「私だってそんなこと言いたくないけど、誰かが残って足止めしないと……!」

 

 

 

「その役目は俺たちがします!」

 

 

 

「お三方は早くお逃げください!」

 

 

 

「黄天の世を!俺たちの大好きなお三方の世界を作るために!!」

 

 

 

「俺たちを救ってくれたあなたたちの歌のために、命を賭して守ります!」

 

 

 

「くっ……、ごめん、お願い!」

 

 

 

「はい!涙をこらえて我らに託してくださった、あなた方のために!!」

 

 

 

「お三方、ご無事で!!」

 

 

 

「いくよ天和姉さん!」

 

 

 

「でも!」

 

 

 

「二人ともはやく!!」

 

 

 

「見つけた」

 

 

 

「そこにいたか」

 

 

 

「来た……!」

 

 

 

「張梁様、お早く!!」

 

 

 

「兵を捨て駒にする気か?」

 

 

 

「違う!俺たちが自分の意思で残ったんだ!」

 

 

 

「お三方のために命をかけると決めた!」

 

 

 

「抜けるもんならぬいてみろ!!」

 

 

 

彼らの目に淀みはない。澄み切った、命を捨てる覚悟を決めたものの目であった。

「いい目をしている……。だが!」

 

 

 

刹那の間に徐晃は張三姉妹に接近し、山颪できりかかる。

 

 

 

「させるかぁぁぁ!」

 

 

 

本来なら迎撃は不可能だった。しかし命を捨てる覚悟を決めた死兵の意地か、その不可能を可能へと変えていた。

 

 

 

「チッ」

 

 

 

体をその兵士の方へと向け、斬撃を受け流すと、

 

 

 

「シャァ!」

 

 

 

すぐさま逆風に切り上げる。相手は股間から両断され絶命する。

 

 

 

そのまま刃についた血糊を拭って鞘におさめると、大身槍を抜き、構えた。

 

 

 

「やっぱつえぇ……。てめぇら、お三方が逃げ切るまで俺たちが壁になるぞ!」

 

 

 

「応!」

 

 

 

「かかれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

「うおおおおおおおお!」

 

 

 

乾坤一擲の斬撃。恋を三人で囲み、唐竹に左右の薙ぎ払いを仕掛ける。斬撃の牢獄。全員が槍をはじめとした長物である以上、回避すれば攻撃は届かない。

 

 

 

「邪魔」

 

 

 

だがそれすらも飛将軍には通用しなかった。単純明快。かわせないならばそこで殺せばいい。彼らよりも早い斬撃でもって容易く屠られた。

 

 

 

徐晃も多数の敵を相手取っていた。無言で振り下ろしてくる戦斧の一撃を半身になって交わし、すぐさま刺突、右薙ぎ、左切り上げとつなげる。くず折れる男には目もくれず石突の打撃で近くの男の頭蓋を砕き、背後の槍持ちの心臓を貫き、そのまま振り回して周囲を蹴散らす。しかし相手は死兵。恐れることなく襲いかかる彼らに徐晃は張三姉妹を追う機会を見いだせなかった。彼は飛びずさって恋の横に付くと

 

 

 

「こいつらは引き受ける。早く張三姉妹を追ってくれ」

 

 

 

これが最上だろう。彼らは錬度が低くても数が多く、また死を恐れずに切りかかってくるのだ。すべて倒すには時間がかかる。その間に逃げられてしまっては元も子もない。

 

 

 

「……わかった。その代り約束」

 

 

 

それが最上だと恋も野生のカンで察知している。だからこそ彼女はこう言った。

 

 

 

「絶対に死なない。生きて帰る」

 

 

 

「ククッ、了解。意地でも生きて帰る。」

 

 

 

「ん。……援護お願い」

 

 

 

「まかせな」

 

 

 

そんな短いやり取りで意思を疎通させた二人。まず徐晃が飛び出し敵中に突貫。突貫の勢いを乗せた刺突で盾持ちをその盾ごと突き殺し、その場で腕をのばして一回転して敵をまとめて吹き飛ばし、腰の太刀を右手で抜いて進路の兵士を四人一気に切り伏せる。左の槍を回転させて敵を蹴散らし、道を作りだした。その道を恋が突き進み、立ちはだかるものを無造作に振るった戟で打ち倒して突破。張三姉妹を追跡する。

 

 

 

「恋の仕事が終わるまで、私の相手をしてもらう。お前たちの覚悟に敬意を表し、全力で相手しよう。かかってこい」


 
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