No.160778

真・恋姫無双二次創作 ~盲目の御遣い~ 第拾肆話『謀心』

投稿34作品目になりました。
ちょっと短かったですねぇ・・・・
色々と意見や感想や質問、
『ここはこうしたらいいんじゃねえの?』的な事がありましたらコメントして頂けると嬉しいです。
では、どうぞ。

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2010-07-26 00:32:13 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:16645   閲覧ユーザー数:12837

袁術への報告を終えた私は、連合軍の陣地を単身突っ切っていた。

 

ほんの少し俯くその表情は何処か渋く、僅かに眉間に皺が寄っている。

 

理由は、幾つかあった。

 

袁術達との話で気分が害された、というのも勿論ある。

 

あの尊大な態度や、一々癇に障る物言いを相手にしているのだ。

 

例え私じゃなかったとしても、むかっ腹が立ってもおかしくないと思う。

 

 

 

が、問題はそこじゃない。

 

 

 

思い出すのは、軍議の席。

 

反芻するのは、あの言葉。

 

『金髪と醜男は私に話しかけないように』

 

あの瞬間、私は咄嗟に我を忘れ、微かとはいえ怒りの感情を顕にした。

 

王として、それ以前に将として、あるまじき行為。

 

しかし、それが同時に意味するのは――――

 

「ふふっ・・・・ホント、何時の間にこんなに・・・・」

 

自分にとって、大きな存在になっていたのだろう。

 

自嘲気味な笑顔と、か細く小さな呟き。

 

微風にすら掻き消されるであろうそれは、薫風吹き荒ぶ今、誰の耳朶にも届く事は無い。

 

故に敢えて、口に出した。

 

面を上げ、見回す。

 

見据えるは風に波打つ、その一つ。

 

深緑の『劉』一文字。

 

曹操の言葉にも、確かに嫌悪感を覚えた。

 

しかし、

 

「・・・・・・・・」

 

細める双眸。握る拳は、関節が白く変わる程。

 

顔を逸らし、足音が刻む律動は僅かに早く。

 

「あの娘、何一つ疑っていなかった・・・・」

 

瞳に宿る光はあまりにも真っ直ぐで、

 

自らの行動に、立場に、芥子粒程の疑問も抱いてなどいないのだと、直ぐに解った。

 

噂に寄れば彼女の性格は典型的な『勧善懲悪』であるのだから、ある意味あの反応は正しいものであるし、彼女達の立場を考えれば今回の行動は決して間違っているものではない。

 

ない、のだが。

 

 

 

「今のあの娘は、好きになれそうにないわね・・・・」

 

 

 

私は、腹が立っていた。

 

何故現実に目を向け受け入れないのだ、と。

 

あの反応からして軍師達の意図なのだろうが、それでも私は腹が立つのを抑えられない。

 

だって、

 

 

 

「白夜がどれだけの決意と覚悟で、此処に来てると思ってるのよ・・・・」

 

 

 

未だ直に見た事は無い。

 

しかし、話を聞くだけでも、

 

運ばれた天幕を訪れただけでも、

 

その痛々しいまでに蒼白な表情が、彼の戦場に対する恐怖を如実に表していた。

 

力を振るうを良しとせず、敵兵の死にさえ涙を流す彼が、どれほどの想いで参戦を決意したのだろうか。

 

 

白夜は守りたいものの為に、辛くとも力を振るい『悪』となる事を受け容れたのだ。

 

 

だというのに、劉備は、

 

 

「あの娘は、自分が『正義』だと信じ切ってる。自分にとって都合の良い物事しか、考えていない」

 

 

私は、それが腹立たしくて仕方が無い。

 

 

人の上に立つ者が綺麗なままでいる事など、出来はしない。

 

 

前に進もうとする者が無傷のままでいる事など、出来はしない。

 

 

なのに、軍師達は劉備に事実を伝えなかった。

 

 

つまり、彼女達は『あのままの劉備であるべき』と思っているのだ。

 

 

現状に甘え、変わる事を恐れ、自ら歩みを止めた者に、一体何を成す事が出来るだろうか?

 

 

「いつまでも仲良しごっこのままじゃ、この先生き残る事なんて出来ないわよ?・・・・失望させないでよね」

 

 

俯いていた碧眼は猛禽のように正面を見据え、肩で風切るその姿は、小覇王の通り名の如く。

 

 

小さく開く唇から、小さく漏れたその言葉。

 

 

『白夜と同じ願いを持つ貴女が消えるなんて、許さないんだから』

 

 

 

「お帰りなさいませ、華琳様」

 

「ただいま、桂花。抜かりは無いかしら?」

 

「はい。汜水関、虎牢関は勿論、各諸侯にも細作を放っておきました」

 

「宜しい」

 

自陣の天幕の中、私は確認の後、椅子に腰を落とし軽く嘆息する。

 

ちなみに春蘭と秋蘭は行軍準備に向かわせた為、現在天幕には私と桂花しかいない。

 

「どうかされましたか、華琳様?」

 

「・・・・呆れてるのよ。これを見なさい」

 

差し出したのは、先程の軍議での決定事項の書簡。当然、中にはあの袁紹の馬鹿げた命令も含まれている訳で、

 

「これは・・・・・・・・」

 

心底呆れたように表情を歪める桂花。

 

でしょうね、そういう反応するだろうと思ったわ。

 

「総大将が麗羽に決まったのよ。ま、あんな面倒事やりたい奴がやれば良いわ。私達は実を取る。でしょう?」

 

「そうですね。それに、この命令も逆に言えば『有る程度自由に振舞って構わない』ともとれますし。それで華琳様、軍議の方は如何でしたか?」

 

その問いに私は再度溜息を吐く。

 

「正直、期待した程では無かったわね。馬騰は娘を名代として送ってきていたし、劉備は相変わらず甘さが抜けてないわ。多少は成長したようだけど、この戦次第では早々に潰して関羽を頂く事にするわ。麗羽は・・・・言わなくても解るでしょ?」

 

「そのようですね。それに、細作によれば袁家はどちらも兵達の質も高くありません。新兵中心に編成されているようです」

 

「・・・・成程。腐り切った老人達か」

 

「恐らく。護身の為かと」

 

「胸糞悪くなる話ね・・・・ま、全くの無駄足という訳では無かったわ」

 

思わず唇の端が吊り上ってしまう。

 

「孫策伯符。『江東の小覇王』の二つ名に違わぬ人物ね。天幕に同席したのは諸葛瑾。あの諸葛亮の姉よ。それと・・・・あの男、確か『北条』だったかしら?」

 

聞いた途端、桂花は眉を顰める。

 

私が男の名を口にしたのに驚いたんでしょうね。

 

「一体どのような奴だったのですか?」

 

「そうねぇ・・・・風貌は、何処にでもいる庶民だったわ」

 

私の答えに桂花は軽く呆けてしまう。

 

私は笑いを噛み殺しながら、あの男の姿を思い返す。

 

「病で生まれつき盲目らしくてね、目を閉じたまま諸葛瑾に手を引かれて天幕に入って来たのだけれど・・・・ふふっ。あの男、良い暇潰しになりそうね」

 

「・・・・それは、どのような意味ですか?」

 

「口頭で軽く挑発してみたのよ、『醜男』ってね。でも、全くの無反応。むしろ孫策と諸葛瑾に睨まれちゃったわ」

 

私の返答に桂花は先程とは違う意味で呆ける。気付いたようね。

 

「私の挑発に無反応なのは、多少頭の回る者なら当然の事。それだけなら別段不思議は無いわ。でも・・・・他の二人が反応した。どういう事か解るでしょ?」

 

それは、それだけの信用を得ているという事。

 

軍師見習いとして同席させたと言う事は、あの男に相応の期待があるという事。

 

「桂花、あの男について調べておいて頂戴。それと、劉備の補助も考えておいて。そう簡単にやられはしないとは思うけれど、劉備と共に潰れるには惜しい娘達ばかりだからね」

 

「・・・・・・・・はい、解りました」

 

男について調べろ、というのが気に食わないのだろう、桂花は多少渋ってはいたが、最後には頷いて天幕を去って行った。

 

 

 

―――――さて、どうなるかしらね?

 

 

 

「精々、楽しませて頂戴」

 

 

 

 

 

 

―――――韓胤がこの場に来ていなくて良かった。

 

 

 

美羽様に『留守は任せて下さい』とかほざいていたけれど、ただ単に戦場に出るのが億劫だったのだろう。

 

奴はまともな戦場を知らない。

 

ただ袁家の糞爺共に媚び諂い、持ち上げて貰っただけの『なんちゃって将軍』だ。

 

まともに戦場に立った経験など無く、遥か後曲に設置された堅実な守備の本陣でただ采配を振るうだけの何処が『戦場の経験』なんだろうか。

 

兎に角だ。

 

そんな狡猾な手でのし上がって来た奴でも糞爺共の犬なのだから色々と面倒事が付き纏う。

 

こと孫策さんの事においては耳が腐り落ちる程に薄汚い声で何度も何度もネチネチ聞いて来るもんだから不愉快極まりない。

 

本当に、いい加減にして欲しい。

 

 

 

思い出すのは、その孫策さんの隣にいた、あの男性。

 

 

 

北条さんだったか、不思議な雰囲気の男性だった。

 

お嬢様も終始気にしてらっしゃったなぁ。

 

病で盲目だって聞いた後は余計に気にしてましたし。

 

普段は尊大な態度だけれど、根は優しい子ですからねぇ。

 

・・・・おっと、一度お嬢様の事になるとそればかり考えてしまいますね。いけないいけない。

 

さて、その北条さんですが。

 

見習いの身でありながら軍議の場に連れてくると言う事は、少なからずの期待の表れ。

 

普通の男性を登用するほど、孫呉の皆さんは愚かじゃない。

 

曹操さんの挑発にも無反応でしたし、むしろ反応した御二人の方を宥めていた程だった。

 

不機嫌な表情など、欠片も見せずに。

 

 

 

そんな彼の存在を、私はこの軍議で初めて知った。

 

 

 

孫呉には定期的に細作を放ち、情報を持ち帰らせている。

 

その細作の情報には、彼の存在は一切無かった。

 

それはつまり、彼の存在は私達に隠匿されていたという事。

 

そして、彼の加入が極めて最近である事。

 

 

 

だというのに、彼は孫策さんから、咄嗟の軽口に反応してしまう程の信頼を得ていた。

 

 

 

あの孫策さん達の傍に立ち、尚『普通だ』と思わせる彼の存在。

 

 

 

気になる。

 

 

 

彼はどんな人物なのか?

 

 

 

孫策さん達にとってどんな人物なのか?

 

 

 

果たして、彼は、

 

 

 

 

 

 

 

彼は私にとっての『突破口』と成り得るのか?

 

 

 

 

 

 

 

「見極めさせて貰いますよ、北条さん」

 

 

 

 

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ

 

萌将伝、発売しましたねぇ・・・・

 

即日徹夜でプレイしたら眠い眠いwwww

 

公式サイトは物凄いオーバーヒートしてますが、俺はそこまで酷いとは思わなかったけどなぁ。

 

確かに特定キャラのファンにはアレかもしれんけど、普通に面白かった。

 

・・・・まぁ、あの人の扱いには納得いかなかったけれども。

 

 

で、

 

 

次回からやっと汜水関に突入です。長かった・・・・

 

華雄の扱い、決めました。

 

どうなったかは、続きをお楽しみに。

 

今週末から期末試験なので、次の更新も何時になるか解りません。

 

留年はしたくないんでね・・・・

 

課題レポートも盛り沢山だし、猫どころかミジンコの手だって借りたいよ・・・・

 

 

 

駄菓子菓子、俺は諦めない。

 

 

 

小説も勉強も筋トレも、全部両立してやらあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

 

 

 

では、次回の更新でお会いしましょう。

 

でわでわノシ

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・友人に借りた『Angel Beats!』のDVDのおまけで大爆笑してるのはここだけの秘密だぜ。


 
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