乱世の終結を宣言したあの戦いの日から丸一年が経ち、朔国では平和記念のお祭りが開かれることになった
その祭りは他の五国……魏、呉、蜀、幽州、涼州の武官、文官も招いた大規模なものになり、開催を明日に控えた朔国では武官、文官、ひいては民に至るまでその準備に追われていたのだった
……そんな中、俺と月は城を抜け出しある場所を訪れていた
「少帝弁、劉弁様。陳留王、劉協様。お久しぶりでございます。漢王朝が大師、董仲頴ここに参りましてございます」
そういって碑石に向かい臣下の礼をとる月
その、ある場所とは……少帝陛下と劉協様の陵墓だった
二人の死後、直ぐに諸侯連合との戦いで洛陽を手放さないといけなくなってしまったため、長安へ撤退する時に二人の陵墓も長安へと移されていたのだ
ちなみにお忍びできた理由は忙しい中を何とか抜け出す為でもあったが、月が二人の墓を訪れるのなら朔の国主ではなく、漢王朝の臣として参りたいと言う理由もあってのことだった
「……あの時、私を信頼し、大師に任じていただいたと言うのに、張譲の魔の手からお二人をお守りできなかった事、今でも悔いております」
ただ、と月は続ける
「許されるならば、と、お二人が心から望まれた、民の、大陸の平穏の大望をかなえたいと思い、ここまで進んで参りました。多くの血を流し、時には間違いも犯してしまいましたが、多くの友に、仲間に支えられてここまで来ました。……聞こえますでしょうか?」
そういって長安の都の方を振り返る月
ここからでは少し離れている為、大分小さくしか見えないのだが、その活気はここまで響いてくるのではないかというほどであった
「大陸に平穏が戻り、民が笑顔で過ごすことが出来るようになって参りました。明日には、大陸の王を、……私を支えてくれた友達が集い、平和を祈るお祭りが開催されるんです」
月は再び碑石に向き直る
「私は、お二人のように天子ではありません。なので帝位につく事もありません。ですが、私は一人の王として、私なりのやり方で、これからの天下の平和を、民の笑顔を守っていこうと思っています。許されるならば、お二人には民の平和を天から見守っていただけますよう、お願い申し上げます」
そういって頭を下げる月
俺もそんな月に倣って横に並び、頭を下げるのだった……
「さあ、早く帰らないと。詠ちゃんには話してるけど皆に心配かけるといけないですからね」
墓参りからの帰り道、月がそういって馬を急がせる
そんな月に俺が叫ぶ
「おいおい!?そんな急ぐと危ないだろ!?」
そういって月の横に並ぶと手綱を押さえスピードを落とす
「そんなに急いで無いでしょう?」
そんな俺の慌てぶりに月が苦笑するが、俺は気が気ではなかった
「心配するに越した事は無いだろ?もちろん月も心配だし、
……もう、一人の体じゃないんだから」
「……ふふっ、そうでしたね」
そういってお腹をさする月
……まだ膨らみこそないが、そこには俺と月の子供が宿っていた
暫く前に調子が悪いと言い出した月がお医者様に見てもらったところ妊娠が発覚したのだ
「この子が生まれたら、また陛下に挨拶にいきましょうね」
「その前に華琳達にも伝えなきゃな。これからお祭りだし、おめでたい事だからちょうどいいよ」
そんな事を話し、お互い笑いながらゆっくりと馬を進める
そうして俺達は、どちらからとも無くお互いを見つめ、笑顔でこう言葉を交わしたのだった
「一刀さん、大好きです。この平和を、これからも守っていきましょうね」
「月、大好きだよ。みんなの笑顔を、これからも守っていこうな」
「「これからも、ずっと、一緒に……」」
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董卓√おまけ物語最終話です
本編、おまけと書かせて頂きましたが、この作品をもちまして董卓√完結となります
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