No.157628

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第二十話

狭乃 狼さん

第二十話。

恋と再会した一刀と桃香。

彼女に連れられ、訪れた場所は・・・。

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2010-07-14 11:45:53 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:18580   閲覧ユーザー数:15890

 「ご無沙汰してます、丁原さん。お体のほうはもうよろしいようですね」

 

 一刀が主座に座る女性に、拱手して言う。

 

 「劉翔殿も劉備殿も、ご無事で何よりです」

 

 座したまま答える女性。

 

 ここ、荊州は宛城の城主で、荊州刺史である丁原、字を建陽という。

 

体の治った丁原は、長安太守である櫨植の勧めで、現役復帰。呂布と陳宮を伴い、この地に赴任していたのである。

 

 「改めて御礼を。私たちを保護していただき、感謝いたします」

 

 深々と頭を下げる劉備。

 

 「いえ、お気になさらず。お二人はいわば私の命の恩人。礼には礼を以って尽くすのが、人として当然のことですわ」

 

 「・・・ん」

 

 丁原の言葉に同調し、うなずく恋。

 

 「それにしても、お二人ともよくご無事だったのです。徐州軍は黒い鎧の軍勢に壊滅させられたと、聞きましたのですぞ」

 

 「ねね!!」

 

 陳宮の発言を諌める丁原。

 

 「あ」

 

 陳宮は丁原にしかられ、はたと気づく。

 

 一刀と劉備が、無念の表情でうつむいていることに。

 

 「申し訳ありません、お二人とも」

 

 頭を下げ、謝る丁原。

 

 「・・・いえ。予想は出来ていたことです。・・・ですが」

 

 「私たちは信じています。・・・みんな、無事であると」

 

 顔を上げ、一刀と桃香が言う。

 

 「とりあえず、お仲間のことはこちらで探させます。お二人は、しばらくここでごゆっくりなされませ」

 

 「「ありがとうございます」」

 

 

 

 一刀と劉備が丁原に保護され、その客将となってから、瞬く間に時は一月ほど過ぎた。

 

 その間、いくつかの知らせがもたらされた。

 

 洛陽では、元十常待の張譲が乱を起こし、劉弁皇帝、董卓、賈駆の三人が死亡し、劉協は曹操の手で脱出し、陳留へ逃れた。

 

 涼州では、馬騰と一刀たちの恩師である慮植が、匈奴に討たれ、馬超・馬岱の二人も行方不明になった。

 

 冀州では、どういうわけか、袁紹がその勢力を大きく回復し、幽州の公孫賛に宣戦を布告した。

 

 揚州では孫堅が、州全体をその統治下に置き、今度は荊州を狙って動いているという。

 

 また、陳留に逃れた劉協が十四代皇帝への即位を宣し、兗州・曹家における一族同士の争いも、曹操が戻ったことであっさりと収まり、曹操は劉協の後ろ盾を得て、勢力拡大に動き始めた。

 

 大陸は、まさに群雄割拠の様相を呈してきたのである。

 

 そんな情勢の中、一刀たちはというと。

 

 

 

 「せりゃあああああ!!!」

 

 「・・・!!」

 

 ガキィッッッ!!!

 

 一刀の靖王伝家と、呂布の方天画戟が激しくぶつかる。

 

 一刀は今、宛城の練武場で、呂布と練武の最中だった。

 

 言い出したのは一刀のほうである。

 

 「・・・一刀、すごく強い。でも、恋はもっと強い」

 

 そう言って、戟を次々に繰り出す恋。

 

 一刀は受けるのが精一杯といったところである。

 

 「恋ちゃん、すごい。お兄ちゃんをあんなに圧倒できる人、あたし見たことない」

 

 そう感想を漏らす劉備。

 

 「劉翔どのもなかなかのものですよ。あの子があんなに楽しそうなのは、久々に見ましたわ」

 

 劉備の感想に、そう答える丁原。

 

 「あ!!」

 

 「・・・終わり」

 

 「くっ!!・・・うわっっっ!!」

 

 呂布の戟を靖王で受け止める一刀。だが、そのまま吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

 「おにいちゃん!!」

 

 練武場の中へと入っていく劉備。

 

 「・・・あいててて。・・・やっぱ、恋は強いな」

 

 頭を振りながら言う一刀。

 

 「大丈夫?お兄ちゃん」

 

 手を差し伸べる劉備。

 

 「ああ。・・・よっと」

 

 劉備の手を借り、何とか立ち上がる一刀。

 

 「・・・けが、してない?」

 

 一刀の傍に近寄り、心配そうに言う呂布。

 

 「ああ。大丈夫だよ。ありがとな、恋。稽古に付き合ってくれて」

 

 「・・・ん。じゃあ、恋はセキトたちのご飯の時間だから、行く」

 

 「うん。また頼むね、恋」

 

 にこりと微笑む一刀。

 

 その笑顔を見て、ぼっ!と、一瞬で真っ赤になる恋。

 

 そしてそのまま走り去る。

 

 「どうしたんだ?恋は」

 

 「・・・おにいちゃん。ほんと、ちょっとは自覚もとうよ」

 

 一刀の発言に、嫉妬を通り越して、思わずため息をつく劉備だった。

 

 

 

 「ははうえどのー!一刀どのー!よい知らせですぞー!!」

 

 「ねね?」

 

 手を振りながら、一刀たちの下へ走ってくる陳宮。

 

 「どうしました、ねね。よい知らせとは?」

 

 丁原がはあはあと息をする陳宮に問う。

 

 「たった今、この城に流れ着いた一団がいるのですが、聞いて驚くなかれ、それがなんと!愛紗どのたちなのです!!」

 

 「「なんだって!?」」

 

 驚きの声を上げる一刀と劉備。

 

 「今、こっちに案内させているので、もう・・・あ、来たのです!!」

 

 陳宮の示すほうを見る一刀と劉備。

 

 そこにいたのは。

 

 「愛紗!鈴々!星!華雄!輝里!」

 

 「五月さん!藍ちゃん!蘭ちゃん!柊さんに、琥珀さん、翡翠さん!!」

 

 徐州軍、全員の、無事な姿だった。

 

 そしてその夜、全員の無事を祝う宴が催され、一同は再会を喜び合った。

 

 そして、ここにいたるまでの事も聞いた。

 

 関羽と張飛は周倉・陳到と輝里とともに、生き残りの兵たちとともに、揚州方面を抜け、荊州を北上。襄陽で一刀たちの消息を聞き、ここにいたった。

 

 趙雲と華雄は孫乾、糜姉妹を守りながら、洛陽へと一旦は逃れたものの、張譲の反乱劇によって逃亡を余儀なくされ、何とか洛陽を脱出し、現在に至るというわけである。

 

 そして、趙雲たちは、予想外の人物たちを伴っていた。

 

 「よくご無事でした・・・陛下」

 

 「陛下は寄せ。朕・・・いや、妾はもう皇帝ではない。陳留にいる協が今の皇帝じゃ。・・・ゆえに、今ここにいるのはただの死人。・・・劉封と言う名のな」

 

 そう。洛陽で死んだはずの劉弁、いや、いまはその名を変え、劉封と名乗っているその人物と、そして、

 

 「月も詠も本当によかった」

 

 「ありがとうございます。一刀さん」

 

 「・・・あ、ありがと」

 

 劉封とともに死んだとされていた、董卓と、その軍師・賈駆も、無事生きてこの場にいた。

 

 

 「ところで一刀よ。これからどうする?洛陽の謀反人を討伐するにしても、兵はぜんぜん足りるまい?」

 

 劉封が一刀に問う。

 

 「そうですね。・・・兵もそうですけど、ほかにもうひとつ、手に入れたいものがあるんです」

 

 「ほかに・・・ですか?なんです?」

 

 関羽が問う。

 

 「・・・軍師」

 

 「お兄ちゃん、軍師ならここに輝里ちゃんがいるじゃない?」

 

 劉備がその場にいる徐庶の方を見て言う。

 

 「確かに、輝里は優秀な軍師だよ。戦術家としてね。けど、俺が欲しいと思ってるのは戦術家じゃない。十年、二十年、さらにその先を見据えることの出来る、戦略家、そして、政略家なんだ」

 

 一刀の視線は、はるか遠くを見ていた。

 

 自分と同じ、もしくはそれを超える、大局を見ることの出来る眼を持つ人物。

 

 それこそ、一刀がいま、求めてやまない人材だった。

 

 「・・・あの二人なら、その希望に応えられるかも」

 

 「え?」

 

 ポツリとつぶやく徐庶の言葉に、一刀が反応する。

 

 「いるのか、輝里?そんな人物が、本当に?」

 

 「うん。その二人、あたしと同じ水鏡塾の門弟で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「伏竜こと、諸葛亮孔明、そして、鳳雛こと、龐統士元。だよ」

 

 

 

 

 

 

 


 
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