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真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第十五話

狭乃 狼さん

刀香譚、十五話です。

が!これははっきり言って、華雄応援作品です!!

公式投票は残念な結果でしたが、

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2010-07-02 16:45:23 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:23300   閲覧ユーザー数:19852

 徐州にて、輝里が一刀達の下を訪れていたころ。

 

 漢都・洛陽にて。

 

 「おー、孟ちゃんやないか。警邏ご苦労さん」

 

 二人の少女と、数人の兵を引き連れた金髪の少女、曹操-華琳に声をかける女性。

 

 「あら、霞じゃない。・・・そういうあなたは散策中かしら?」

 

 「ああ、そんなとこや。けど、ほんまよう働くなあ、孟ちゃん。たった半年で禁軍の一隊を預けらられるんも、わかるっちゅうもんやわ」

 

 そう。先の一件で洛陽の警備隊の長に任じられた華琳は、この半年の間にしっかりと結果を出し、その働きを評価した皇帝劉弁から禁軍-つまり、皇帝直属の近衛軍の一席を与えられた。

 

 「陛下が華琳さまを、正しく評価してくださってくれていますから」

 

 「華琳さまならとーぜんの結果だね」

 

 華琳に従う二人の少女が言う。

 

 「典韋に許褚やったか。二人ともちっこいのにようがんばっとるらしいな。それに武のほうもなかなかのもんやと聞いたで?なあ、孟ちゃん、いっぺんこの二人とやらせてくれへんか?」

 

 華琳にそう問う霞。

 

 「あら、あなたはそっちの趣味はないんじゃなかったかしら、霞」

 

 ニヤニヤしながら答える華琳。

 

 「そっちの意味やのうて!・・・わかってて言うとるやろ、自分」

 

 「さあ?なんのことかしら?」

 

 クスクスと笑う華琳。

 

 「はあ。まあええわ。ほな、うちはこれで。警邏の邪魔して悪かったな」

 

 頭をかきながら、その場を立ち去ろうとする霞。

 

 「・・・あら?あそこにいるの、華雄じゃない?」

 

 「へ?」

 

 

 

 華琳が示すその先には一軒の本屋があり、そこから、何冊かの本を待った女性が出てきたところだった。

 

 「ほんまや。お~い!かゆう~!!」

 

 「ん?・・・おお、霞か。それに曹操殿も」

 

 華琳たちに気づき、その傍へとやってくる華雄。

 

 「なんや、ぎょーさん本なんぞ持って。・・・艶本か?」

 

 二ヒヒと笑う霞。

 

 「馬鹿を言うな。これが艶本に見えるのか?」

 

 「・・・ん~?『孫子』に、『六韜』?って、なんや兵法書か。つまらんなあ」

 

 「何を期待してたの、貴女は」

 

 がっかりする霞に、華琳が突っ込む。

 

 「せやけど華雄、あんたが兵法を?」

 

 「・・・似合わんとでも言いたそうだな」

 

 「そうはいわへんけど、意外なんは確かやな」

 

 「私だってそれは判ってるさ。けど、劉翔にも言われたしな。将としての武を身に着けてこそ、真の武人だとな。・・・せめてこれ位はせねば、次にあったときに顔向けが出来ん」

 

 そう言う華雄。その表情は何故か、心なしか紅くなっていた。

 

 「ふぅん。将としての武ねぇ。・・・うちの誰かさんにも聞かせてやりたい言葉だわ。・・・あら?華雄、そっちの袋は何?」

 

 華琳が、華雄の左手に握られている袋を、目ざとく見つける。

 

 「こ、これか?そ、そのだ、な。これは、そう!私の部屋着だ!!」

 

 何故かあわてて言いつくろう華雄。

 

 

 

 「(ぴ---ん!)部屋着か。なあ、華ゆ「見せんぞ!!」・・・そう言われると見とうなるんが人っちゅうもんや。うりゃ!!」

 

 華雄から袋を奪おうと、飛びつく霞。

 

 「!?なんの!!」

 

 とっさに飛びのいて霞をかわす華雄。が。

 

 「あ」

 

 飛びのいた拍子に、袋が華雄の手から離れる。

 

 「おっと」

 

 そしてそれは華琳の手の中に。そして。

 

 「(にやり)・・・ごめんなさい!!手が滑ったわ!!(笑)」

 

 「あーーーーーっ!!」

 

 袋から中身が出て(出されて)、その場に広がる。

 

 「・・・何これ」「・・・着物か?」「着物ですね」「着物だー」

 

 「あうあう」

 

 それは、白い上着と、赤色の履き物。

 

 「でも見たことない着物ね。・・・あら?こっちは霞の袴にそっくりね」

 

 「せやな」

 

 赤色の履き物を見てそう言う、華琳と霞。

 

 「華雄。これは何?」

 

 「こ、これはだな、その、ようするに、あ~~~~」

 

 「・・・白状しい。なんやのこれは。言わんのやったら、この場で引き裂くで?」

 

 霞が袴を手に、華雄に迫る。

 

 

 

 「・・・い、衣装屋の親父がな、その、わ、私に似合うと言って、無理やり押し付けてきたのだ。・・・試し物だから、銭もいいといってな」

 

 「ふ~ん。・・・はは~ん。さてはあなた、これで”誰かさん”を・・・」

 

 「そ!!そんなことするわけないだろう!!大体、こんなものを着たからといって、劉翔が私なんかを・・・あ」

 

 自身で墓穴を掘った華雄。

 

 そして、みるみるうちに顔を真っ赤にしていく華雄を、にやにや見る華琳たち。

 

 「う、う、う、う、うあ~~~~~~~!!!」

 

 衣装を霞の手からひったくって、走り去る華雄。

 

 「・・・うぶやなあ、華雄のやつ」

 

 「そうね。いい物を見せてもらったわ。・・・ふむ。わたしもあれ、作らせて見ようかしら」

 

 「孟ちゃんがあれ着るんか?・・・・・・・・・ぷっ」

 

 「・・・霞。最後のはどういう意味かしら?」

 

 絶を構える華琳。

 

 「あ。うちそろそろ行かんと。ほな!!」

 

 ピューーーーン。

 

 と、一目散に霞は逃亡した。

 

 「・・・逃げ足の速い。・・・さてと、季衣、流琉。早いところ警邏を終わらせるわよ?」

 

 「「はい、華琳さま」」

 

 (あとで、あの衣装を作った店を探さないと)

 

 何故か笑顔の華琳であった。

 

 

 その夜。

 

 洛陽城内の一室。

 

 「・・・これが、わたしの、素性を示す、か」

 

 自身の部屋で、それを見つめる華雄。

 

 「こんなものがなぜ、私の素性につながるのだ。こんな、”巫女服”とやらが」

 

 (しかし、あいつは確かにそう言った。この着物が、私の失われた記憶に繋がると)

 

 昼間、華琳たちに出会う前、本屋で兵法書を物色していた華雄に、一人の男が声をかけてきた。

 

 その男は言った。

 

 「私は貴女の出自を知っている。その証に、これを渡そう。あなたにゆかりのあるものだ」

 

 と言って、男が華雄に手渡したものが、先ほどの着物だった。

 

 華琳たちには、とっさに嘘をついてしまった。

 

 何故かは判らないが、言ってはいけないような気がしたからだ。

 

 「・・・袖を通してみるか。もしあの男が言ったことが本当なら、何か思い出せるかも知れんし」

 

 不審ではある。その男を問い詰めようとしたが、すでにその姿はなかった。

 

 だが、手にとって見ると、何故か、懐かしさのようなものを感じたのは確かだった。

 

 華雄は寝着を脱ぎ、その着物を身に着ける。

 

 そして、姿見に自身の姿を映す。

 

 だが。

 

 「・・・しっくりはくる。不思議と。・・・しかし、何も思い出せそうもないな。ふ、私ともあろうものが、馬鹿馬鹿しい」

 

 巫女服を脱ごうとする華雄。

 

 だが、ふとその動きを止める。

 

 「・・・この姿なら、少しは女らしく見えるだろうか。だとすればあいつもわたしを・・・」

 

 そこまでつぶやいたところで、はたと、われに返る。

 

 「な、何を言ってるんだ私は!!」

 

 巫女服を脱ぎ捨てる。

 

 すると今度は、当然、生まれたままの姿の自分が、姿見に写る。

 

 「・・・われながら、およそ女の体とは思えんな。ふ」

 

 そうひとりごち、寝台に潜り込む。

 

 「勅使として徐州に発つのは、三日後だったな。・・・劉翔たちは元気でいるだろうか」

 

 華雄の脳裏に、一刀達の姿が浮かぶ。

 

 その彼らとの再会を楽しみにしつつ、華雄は夢の世界へと入っていった。

 


 
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