No.154738

真・恋姫†無双~真・漢ルート~ 第一話:漢達、出会う

大鷲さん

名前がややこしいですが、隠しルートである『漢(かん)ルート』の再構成した『漢(おとこ)ルート』です。

ガチムチな展開は精々ネタ程度にしか出て来ないのでご安心ください。
ただし、漢女成分が多分に含まれるかもしれませんので心臓が弱い方はご注意ください。

2010-07-02 11:20:01 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5582   閲覧ユーザー数:4750

??「……ぐっ、痛てて…」

 

 

片方の流星が落ちた地点には一人の青年がいた。

 

 

??「…っ、こ、ここは……」

 

 

青年は体が痛むのか動きが鈍く、上体だけを起こして周囲を確認する。

しかし、周囲にはただ広い荒野が広がっていた。空を見れば広大な蒼、雲は長く、地平線の先には針のように山々が並んでいた。

 

 

 

第一話:漢達、出会う

 

 

??「………」

 

 

青年はしばらく唖然としていた。

こういうときは焦ってはいけない、と小さくつぶやき眼を閉じて思考を開始する。

 

 

 

一刀「俺の名前は…北郷一刀、…聖フランチェスカの二年生、…所属クラブは剣道部…」

 

 

ブツブツ呟きながら記憶をたどっていく。

 

 

一刀「学校に遅刻しそうになって……全力で走って……その後どうなった…?」

 

 

自分がここに来る前までの記憶を探り当てることまではできた様だが、どのようにしてこの地に訪れたのか思い出せないでいた。

 

 

一刀「……とりあえず、街に行ってみよう

   そうすればここがどの辺りかわかるだろ…」

 

??「おう、兄ちゃん

   珍しい服着てるな…」

 

 

いきなり背後から低い男の声が聞こえてきた。

 

 

一刀「……え?」

 

 

一刀が声のしたほうを向くと3人の男たちがいた。一刀は助かったと思った。気がつけば見知らぬ土地、少なくとも都心部ではない場所で人に出会えたのだと……。

 

しかし、恰好がおかしかった。黄色い布を頭に巻き、鎧のようなものを身にまとっていた。

顔立ちは東洋系だが、少なくとも日本では見ない格好だ。一部を除いて…

 

 

一刀「……何かの撮影現場だったりします?」

 

??「あん?何言ってんだ、兄ちゃん

   まあ、有り金全部とその服を置いていけば、命までは盗らないでおいてやるよ」

 

 

そういってリーダー格のひげを生やした男は腰に掛けてある大振りのナイフのような剣を一刀に向ける。

 

一刀は混乱した。ひげ男が持つ剣は鈍く光を反射し、本物の重量感を伝えている。

剣道部に所属しているが、練習や試合以外で人と対峙するようなことはない。

 

まして、本物の刃物を向けられるような事態など現代日本ではそう起こるものではない。

 

 

ひげ「兄ちゃん……俺は気が短い方なんだが……なっ!」

 

 

そういいながらひげ男の右腕が動く。

 

とっさに体が動く、ひげ男の振るった右手に握られた剣が先ほどまで顔のあった位置を通り過ぎる。

直後、頬に痛みを感じ、次いで液体が頬を流れる感触がする。

 

 

それほど深くはないが頬を斬られたのだ。

それはひげ男が持つ刃物が間違いなく本物である証拠であり、避けていなければ死んでいたということでもある。

 

 

ひげ「おっと、服に血がついちまうな……デク、押さえな」

 

 

ひげ男が残る二人の内、大柄な男に顎で指示を出す。

 

 

デク「ごめんなんだな……」

 

 

大柄な男が謝りながら少しずつ一刀に近づいていく。

力で抑え込まれたらまず勝てないだろう。

逃げようにも足に力が入らない。

 

 

その時だった。

 

 

??「ぶるぁああああ!!!!」

 

 

突然、何かの咆哮が響いた。

 

 

ひげ「何だ?官軍か?」

 

 

ひげ男が狼狽する。

一刀の後方より地響きと共に砂塵が近づいている。

 

 

左慈「うおおおぉぉ!!」

 

 

先頭には白と黒の変わった服を着た青年が涙目になりながら走っている。

 

問題はその後方、筋肉に覆われ凶器と化した両腕を広げながら、人と思しき物体が目を光らせながら突進してきている。

 

 

一刀&盗賊たち「「「「え?」」」」

 

 

この瞬間だけは盗賊3人組と一刀の心は一つになった。

 

しかし、その直後にその数は半減した。

青年がすばやく横に転がったことにより、後方の『何か』がひげ男と大柄な男を弾き飛ばしながら一刀の横を通り過ぎていったのだ。

 

通り過ぎた『何か』はスピードを落とさず、地面に対して水平に近づくように身を傾けてUターンして戻ってきた。

 

 

貂蝉「ご主人様あぁああぁ!!!」

 

咆哮と共に戻ってきた『何か』は残る小柄な男を弾き飛ばして一刀の前で止まった。

 

その姿は光るスキンヘッドにもみ上げ部分のみおさげが残る髪形、走っていた所為かテカる筋骨隆々の体、唯一の良心である面積の狭いピンクのビキニ。

控えめに言ってもキモイ男(?)だった。

 

 

ちび「う、うわぁあ!化け物!!」

 

貂蝉「だぁれが出会えばすぐにSAN値が-(マイナス)になってから0に戻るほどの化け物ですって!!」

 

ちび「な、何を…ぎゃあぁぁあぁ!!」

 

 

化け物と言う言葉にキモイ男(?)が反応して残る小柄な男に拳を振るう。

恐ろしい音と共に小柄な男の断末魔が響く。

 

事実一刀は発狂してもおかしくないが、そこでキモイ男(?)の前を走っていた青年が庇うように一刀の前に出る。

 

 

左慈「化け物が!突然だったから逃げてしまったが、視覚への攻撃なら師匠で慣れてるんだよ!」

 

貂蝉「あらあら、左慈ちゃん

   こんなに早くあなたと戦うことになるとはね……」

 

 

左慈と呼ばれた青年は化け物の顔を直視しない様に足元のみに目を向ける。

対して化け物は両腕を鳥のように広げる様な構えを見せる。

 

華佗「むっ!これは…!」

 

 

一触即発の状態に新たな声が響く。

燃えるように赤い癖のある髪、両腕にグローブをし、黒いタンクトップに袖のない外套の青年だった。

 

 

貂蝉「あらん、わたし好みのいい男!」

 

 

化け物の言葉を華麗に無視しながら青年はボロボロになった盗賊たちのもとへ歩みを進める。

 

 

華佗「どうしたんだ!この人たちは!………息をしていない!?

   なあ、あんたたち、この人たちはさっき落ちた流れ星に巻き込まれたのか!?」

 

一刀「ある意味では災害に巻き込まれたんだよ」

 

 

一刀はそういいながら化け物の方を見る。

 

 

貂蝉「いやね…わたしの色香に当てられたのかしら?」

 

一刀&左慈「「ねーよ!」」

 

 

左慈と一刀の鋭い突っ込みに赤い髪の青年が苦笑する。

 

 

華佗「…まあ、何となく察したよ

   しかし、急いで治療したほうがいいな」

 

 

そういうと青年は荷物から一本の細長いものを出す。

 

 

貂蝉「……あら?治療針?」

 

華佗「ああ、……はあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

その治療針を構えると鋭い眼光で男たちは見る。

 

 

華佗「こいつか?いや…違う、……ッ見えた!

   貴様ら病魔など、俺の鍼で蹴散らしてやる!!はああぁぁぁぁ!!!」

 

 

そう叫ぶと赤い髪の青年の周囲を赤い靄が覆い、それが鍼に集中し、金色に光り輝く。

 

 

華佗「我が身、我が鍼と一つとなり!一鍼同体(いっしんどうたい)!全力全快(ぜんりょくぜんかい)!

   必察必治癒(ひっさつひっちゅう)……病魔覆滅!げ・ん・き・に・な・れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!

 

 

気合とともに鍼が男たちに刺さる。

 

 

ひげ「がはっ、ごほっごほっ!」

デク「かはっ!!」

ちび「がああぁあ!」

 

 

それと同時に男たちの傷が癒え、息を吹き返す(心停止から蘇生)。

そして、意識を取り戻した男たちは一目散に逃げて行った。

 

 

一刀「……すげぇ…」

 

 

一刀は知らずにつぶやいた。

華佗の体が光を纏ったかと思ったらその手に持つ針を突き立てるだけで盗賊たちが息を吹き返す風景に感動していた。

 

 

華佗「……ふぅ、何だあいつら?礼もなしに……まぁ、あれだけ元気なら問題ないだろ

   次はお前だ、頬の傷を見せてみろ」

 

 

そういって青年は一刀の頬の傷を診始める。

軽く見た後に荷物から小さめの壷を取り出す。

 

貂蝉「……そこのかっこいいあなた

   ……一体何者なの?」

 

華佗「俺か?俺は華佗

   五斗米道の教えを受けた、流れの医者さ」

 

 

化け物の問いに一刀の怪我に軟膏を塗りながら答える青年、改め華佗。

一刀は、この化け物を直視してもビクともしない華佗に驚いていた。

 

 

貂蝉「華佗……わたしは貂蝉

   都の踊り子よん」

 

 

華佗、そして貂蝉。

一刀はこの二人の名に覚えがあった。

華佗と言えば、三国志で有名な医者で麻酔を開発した人間だ。

同じく、貂蝉も三国志で登場する絶世の美女のはずだ。

 

 

華佗「あんたたちは?」

 

左慈「……俺は左慈だ

   峨眉山で修行中の道士だ」

 

 

華佗の言葉に左慈が反応し、3人の視線が一刀に集まる。

 

 

一刀「…え?俺?俺は…

卑弥呼「見つけたぞ!貂蝉!!」

 

 

一刀の声を遮り、貂蝉に劣らぬ野太い声が響いた。

直後に上空から何かが飛来する。

 

砂埃が起こり、治まった後には貂蝉に負けず劣らずの筋肉達磨が立っていた。

 

 

卑弥呼「イイオノコの匂いを辿ってくれば…まさかこのような形で出会うとはな!」

 

貂蝉「その目映いばかりの白い褌!美しく輝く白い胸当て……!あ、あなたは!…」

 

 

華佗「なあ?都ではこういう服が流行ってるのか?(ボソッ」

 

左慈「俺が知るわけないだろ、お前は分かるか?(ボソボソッ」

 

一刀「俺に聞かれても…あと俺、北郷一刀ね(ボソボソ」

 

 

筋肉妖怪が二人に増えている間に一刀は華佗と左慈に自分の名を教えておく。

 

卑弥呼「がはははははっ!」

 

貂蝉「ひ、卑弥呼!」

 

 

卑弥呼。弥生時代において昔の日本、倭国にて邪馬台国を治めていたとされる女王である。

魏志倭人伝にてその名は記されている。

 

くどいようだが『女王』である。

 

 

卑弥呼「久しいな!貂蝉!でえええええいっ!」

 

 

跳躍、そして着地までの間に3度もの蹴りを貂蝉に放つ。

すさまじい音とともに貂蝉がうめく。

 

 

貂蝉「ぐぅっ!何年ぶりに会ったかと思ったら、ずいぶんな挨拶じゃな~い?」

 

卑弥呼「何年ぶりかだとぉ?そんな小さいことにこだわるなど、まだまだ精進が足りんようだな!

    漢女は永遠の漢女!そんなことすら忘れたか!」

 

貂蝉「卑弥呼!あなたこそ、東の果ての島国に渡ったと聞いていたけれど、腕は錆び付いていなようね」

 

 

次第に二人の争いは大きくなっていく。

 

 

華佗「おい…北郷、だったか?止めなくていいのか?」

 

 

眼前で繰り広げられる戦い。

やれフラれて弱くなっただの、やれ力を貸してくれだの言っている。

 

 

一刀「俺にどうこうできるレベルじゃないよ……」

 

 

冗談のような外見の割に二人の戦いはとても一刀が間に入れるようなものではなかった。

踏みしめる大地はひび割れ、拳が振るわれるたびに風を穿つ音が聞こえる。

 

いろいろな意味で自分とは次元が違っていた。

 

 

卑弥呼「でええぇぇぇいいぃっ!」

 

貂蝉「きゃあああぁぁぁ!」

 

 

どうやら貂蝉の負けのようだ。

卑弥呼の気合の籠った一撃は貂蝉のガードを無視するように貂蝉を弾き飛ばしていた。

 

 

華佗「貂蝉!大丈夫か!」

 

貂蝉「だ、大丈夫よん……

   心配してくれてありがと、華佗ちゃん…くぅぅっ!(チラッ」

 

 

大丈夫だという貂蝉だが、体は地面に掠れたのか傷だらけだった。

 

しかし、一刀は大丈夫なのだろうと思っていた。

さっきから期待の籠った眼でこちらをちらちら見ているし、ロードローラーにも劣らぬタックルを見ているからである。

 

華佗「こんな傷だらけで、大丈夫なわけないだろう!」

 

貂蝉「あん、どさくさにまぎれて服を脱がそうなんて、華佗ちゃんってばとっても…だ・い・た・ん☆」

 

華佗「いや、傷口をたしかめたいだけだから」

 

一刀&左慈「「(そもそも衣類がビキニだけだろっ!)」」

 

 

そう言いながら、華佗は貂蝉を甲斐甲斐しく治療する。

貂蝉のその顔は敗者の浮かべる顔ではなく、むしろ勝者の浮かべる顔であった。

 

 

卑弥呼「むぅっ!き、貴様…まさか!」

 

貂蝉「…うふふ

   ようやく気付いたようね、卑弥呼」

 

 

卑弥呼が貂蝉の思惑に気付き顔を歪める。

 

 

卑弥呼「ぬぅぅ…っ

    わざと傷つき倒れることで、意中のオノコを心配させ、こちらへの気持ちを強く抱かせる

    ……これぞまさに、漢女道の奥義が一つ!」

 

貂蝉「どう?これでもまだ、力不足とでも?」

 

 

貂蝉は余裕の表情のまま卑弥呼を見る。

その言葉に卑弥呼はうめいたかと思うと次の瞬間笑い始めた。

 

 

卑弥呼「……がーっはっはっはっ!こやつめ、なかなかやりおるわ!

    私としたことが一本取られたぞ!」

 

 

そして、笑うのをやめたかと思うと真面目な表情になり真剣な声で問う。

 

 

卑弥呼「…しかし、なぜおぬしほどの漢女がそれほど腑抜けた?

    …よもや、あの漢女心も解さぬ小童どもに、出し抜かれたわけではあるまい?」

 

貂蝉「…あのコたちなら、当分はこっちには手を出せないはずよん

   どうやらこの左慈ちゃんは元々この世界にいた子みたいね

   それにぃ……ご主人様はすでにこちらにいるわ」

 

 

左慈のほうを見ながら話していたかと思うと一刀の方を見ながらご主人様と言っている。

 

一刀「……さっきから思ってたけどさ……なんで『ご主人様』呼ばわりしてるんだ?」

 

貂蝉「だって、『天の御遣い』にして、私のお・も・い・び・となんだからん」

 

 

そう言いながら一刀にウインクをする貂蝉。

左慈もさり気無く一刀から一歩離れる。

 

 

一刀「……気色悪いこと言うなっ!!」

 

 

考えるより先に言葉と拳が出ていた。

かわいい女の子ならまだしも、控えめに言ってもキモいこの筋肉妖怪に想い人と言われても気持ちが悪いだけだった。

 

 

卑弥呼「むぅ、…流石、われらのご主人様だな

    なかなかの気迫だ」

 

華佗「……北郷が『天の御遣い』と言うのはどういうことなんだ?」

 

 

一刀の(本能が)放った拳を褒める卑弥呼に華佗は疑問に思ったことを問う。

 

流れの医者をしている華佗だが、天の御遣いの噂は知らなかった。

 

 

卑弥呼「うむ、『蒼天より飛来する一筋の流星、その流星は天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静す』管輅という占い師の占いのことだ」

 

華佗「いや、俺は二筋の流星が飛来したのを見たんだが…」

 

左慈「俺もだ、落下地点に行ってみたんだが……」

 

貂蝉「わ・た・しだったわけね

   私はご主人さまを追いかけてたから私は違うわよ?」

 

華佗「……つまり、北郷が『天の御遣い』で乱世を治めるために飛来したのか?」

 

 

『天の御遣い』。

 

いきなりそんなことを言われて、はいそうですなんていえるはずもなく、一刀は否定しようと声を出そうする。

 

 

一刀「……いや、違うt

ひげ「お頭!あいつらです!」

 

 

またも一刀の言葉が遮られる。

 

声の先には先ほどの三人組とその後ろにさらに三人の女の子がいた…

 

 

 

 

あとがき

 

皆様、おはようござました。

 

大鷲です。

 

コメントを下さった皆様、本当にありがとうございました。

 

 

満を持して、僕らの主人公・北郷一刀君の降臨です。

 

左慈は『外史の管理者』ではなく、『その世界にいる道士』になっていますが、基本的な性格は変わらない予定です。

 

プロローグで出た干吉は後ほど出てきますが、左慈と同じく主だった変更はありません。

 

今回は出会い、と言っても主要人物がそろってないわけですが……

 

とりあえず、出会い方は漢ルート+α程度です、旅の順番も漢ルートに準じますが多少変わります。

 

 

また、何か思うことがあればコメントをいただけると幸いです。


 
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