No.154508

真・恋姫†無双 董卓軍√最終話

アボリアさん

董卓√最終話です
最終話と銘打っていますが、この後エピローグへと続きます
そちらも宜しければご覧になっていただきたいです
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けるとありがたいです

2010-07-01 02:29:18 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:18045   閲覧ユーザー数:13382

 

「私を止めに…ですか」

 

「ええ、そうよ。貴女と、貴女の言う仲間たちをね」

 

月の問いかけに華琳が答える

現在、戦場は突然の第三勢力の出現により完全に静まり返っていた

月と劉備の元に駆けつけた華琳達との会話はそんな状況も相まってか、広く戦場に響いていた

 

「私が華琳の所について直ぐ長安から早馬が来たの。城に残った兵達が貴女の出陣を知らせるために、ね。それから急いで皆にこの事を伝えて、強行軍でここに向かったって訳」

 

大変だったのよ~、と孫策が愚痴りながら言う

 

「そんなことはどうでもいいでしょう?雪蓮。…さて、月。今回の一件、もちろん劉備及び蜀の責任は多大なるものよ。それでも、私たちは貴女のした事は間違っていると思うわ。…貴女には、自分の間違いが分かっているかしら?」

 

そういって月に厳しい眼差しを向ける華琳

その眼差しを受け、月は答える

 

「…分かっています。私情で軍を動かして兵達の、いえ、皆の望む平和を乱した事は、私の間違いです。でも…」

 

そういって月が続けようとするが、そこに華琳は割って入る

 

「そうね。私情で戦を起こす事、民達の平和を乱す事は王として許されないこと。それは間違いないわ。…でも、貴女は分かっていないようね」

 

「え?」

 

「私が間違いと言ったのはその事だけでは無いわ。臣を、友を傷つけられて黙っているのも王の振る舞いではないし、それ以前に人として間違っている。自分の気持ちだけで、怒りに任せ戦をした事は間違いとしても、戦自体を否定する気は無いもの」

 

そう平然と言ってのける華琳に戸惑いながら月が問いかける

 

「じゃ、じゃあ、何だというんですか?」

 

その問いに、華琳は肩をすくめて答える

 

「貴女は自分の志も忘れたと言うのかしら?…あら、やっと着たみたいね」

 

ふと華琳が遠方を見ながら呟く

その視線の先には砂塵が上がっており、月たちの方へと向かってきていた

 

「あの馬鹿、目が覚めて直ぐに貴女の心配をしていたのよ?それに、今だって動いてはいけないって言うのに無理して…話が逸れたわね。私が言うよりも、あいつが言った方が貴女も納得するでしょう。あなたの間違いは、あいつに聞きなさい」

 

「あいつって…」

 

そう問いかけようとする月に、後方から思いもよらない声がかかる

 

 

「月、詠、華雄、霞、恋、ねね…もう、こんな戦は、終わりにしよう」

 

 

 

 

 

その声に月を始め、皆が一斉に振り向く

 

 

その視線の先には

 

 

足をふら付かせながら

 

 

兵達に支えられながら

 

 

傷を痛々しそうに押さえながら

 

 

それでも、それを悟らせないように必死に平然とした顔を作って此方に向かって歩いてくる

 

 

 

 

 

 

 

「一刀さん…!!」

 

 

 

 

 

 

彼女達の、最愛の人の姿があった

「一刀さん!!」

 

「一刀!!」

 

月達が俺に向かって泣きそうな顔をしながら叫ぶ

そんな彼女達に向かって歩きながら、俺は諭すように声をかける

 

「月…、俺は大丈夫だから。こんな悲しい戦いは、もう止めよう…?」

 

俺の言葉に、月は悲しい顔をして首を振りながら答える

 

「…駄目です。私は、自分でこの戦を起こしてしまったんです…!!兵を、皆を傷つけて置きながら、今更自分勝手なことを言うわけには…!!」

 

そういって悲しげにしている彼女に俺は支えてくれていた兵達から離れ、一歩ずつ近づいていく

 

「駄目です。私は、一刀さんに合わせる顔なんて…!!」

 

そういって俺を拒絶するように縮こまってしまう月

 

 

俺はそんな月の前まで行くと、あの時のように…初陣の時、月が俺にしてくれたように、優しく彼女を抱きしめる

 

 

 

「月は、俺の為に、怒ってくれたんだろ…?俺の為に、傷つきながらも、戦ってくれたんだろ?…だったら、俺が月を責める事なんて出来ないよ」

 

 

 

震える彼女の背中を優しく撫でながら、俺は続ける

 

 

 

「俺は大丈夫だから、もう劉備さん達を責めるのはやめよう?それに、これ以上こんな悲しい戦いを続けたら、月は、心から笑えなくなっちゃうから」

 

 

「え…?」

 

 

「月の夢は、大陸の皆が笑顔になる事だろう?それなのに、月が、詠が、華雄が、霞が、恋が、ねねが…笑えないなんて、本末転倒じゃないか。そんなの、間違ってる」

 

 

 

月はハッとした顔をして俺を見る

 

 

 

「月達が間違っているのは、そこだと思う。だからもう、戦はやめてくれ。もう、悲しむのはやめてくれよ」

 

 

「でも、私は…!!私のせいで…!!」

 

 

 

そういって首を振る月

 

 

 

「それでも自分のせいだと、責任を感じるなら…犠牲になってしまった人達の、何倍も、何十倍も…それこそ、大陸全土の人が笑顔になれるよう、これから二人で、いや、皆で頑張っていこう?俺は、これからもずっと、月達の傍にいるから」

 

 

「かずと、さん……!!」

 

 

そういって俺の胸で泣き始めてしまう月

 

 

「華雄…ウチ等も、間違っとったんやな…」

 

「ああ、そうだな…」 

 

月だけでなく、霞達も武器を置いて泣き始めてしまうのだった

そんな月達を見ながら華琳が口を開く

 

「月…董卓達はもう戦う気は無いようだけど、貴女はどうなのかしら?劉備」

 

劉備もその光景を見て涙ぐんでいたが、華琳に向き直って答える

 

「私も、これ以上の戦いは望みません。それに原因は私にあるんですから、何か言う権利があるとも思っていません」

 

「そう…ならばよし。でも、これだけは言わせなさい」

 

そういって厳しい目つきで劉備を睨みつつ、華琳が言う

 

「貴女と月の舌戦…というより言い合いを聞かせてもらったけど、あなたの考えは甘すぎるわ。奇麗事もいえないよりは良いと貴女は言ったけど、何でも話し合いで済むと思ったら大間違いよ。」

 

「私からも言わせてもらうわよ、桃香。貴女を守るために命を賭ける将兵がいるのに、自分が悪い、自分を責めろなんて絶対に言ってはいけない。それは命を落として、それでも貴女の為に戦った兵に対する冒涜よ」

 

「…そうですね。ごめんなさい」

 

華琳、雪蓮の言葉に落ち込みながら謝罪する劉備

そんな劉備に苦笑しつつ、雪蓮が言う

 

「私達に謝ったって仕方ないでしょ?本当に悪いと思うのなら、後で将兵に向かって謝ることね。…ただ、いくら甘いって言っても貴女の言葉で、貴女が行動したことで私達が間に合ったし、それで命を救われた兵もいるわ。それだけは誇っても良い事よ」

 

 

「…はい、ありがとうございます、雪蓮さん」

 

 

雪蓮の言葉に、劉備は泣きながらも微笑むのだった

暫くして月、劉備共に落ち着いてきたタイミングを見計らって華琳が言う

 

「さて、いい雰囲気の所ではあるけれど、二人には言わせて貰うわ」

 

目の前に並ばされた月と劉備を睨みつけ、華琳が続ける

 

「今回の一件、両者共に許されることではない。董卓、貴女は私情で大勢の兵を戦に巻き込み、大陸の平和を乱した事。劉備、貴女は部下の統率も出来ず、和平を望む国の重臣を死の一歩手前まで追い詰めた事。両方共、大罪よ」

 

「はい、分かっています」

 

「私も、どんな罰でも受けます」

 

華琳の言葉に二人は神妙な面持ちで答える

 

「…本来なら、董卓は国主の座を追放、劉備は打ち首が妥当ではあるけれど…今回は一番の被害者である北郷が二人を責めるつもりは無いそうよ。従って、罰は追々決めることにするわ」

 

華琳の言葉に続き、雪蓮が言う

 

「とりあえず一つ目の罰ってことで…月、桃香。貴方達が起したこの戦、貴女達の言葉で兵達に決着を伝えなさい。それが王の、戦を起した者の責務よ」

 

二人の言葉に死罪を覚悟していた劉備は驚き、月は泣きそうな顔で苦笑しつつ、二人に返す

 

 

「二人共、厳しいです…」

 

 

「ふっ、そんなこと当然じゃない。友相手なんだから」

 

 

「それに二人共…甘すぎます…」

 

 

「それは誰かさんに似たからよ~」

 

 

そんな二人の言葉に更に涙がこみ上げてくるのを我慢して、月と劉備は声を高らかに宣言した

 

 

 

「蜀の、そして董卓軍の皆さん!!この戦いは曹操さん、孫策さん、馬超さんに公孫瓚さんの、そして天の御使い北郷一刀さんの仲介の元、私劉備と、董卓さんの和解を持って、終戦とします!!」

 

 

 

「そして、この和解を持ち、この大陸の!!乱世の!!終結をここに宣言します!!!」

 

 

 

二人の言葉に一拍の静寂が訪れ

 

 

 

うをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

 

 

 

両軍だけでなく、周りを取り囲む兵達からも勝鬨が上がった

 

 

 

ここに、長らく続いた乱世が終結を迎えたのだった……

 


 
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