No.153651

真恋姫無双 おせっかいが行く 第十一話

びっくりさん

皆さんアンケートの回答、ありがとうございました。やっぱり風は人気者ですね。当たり前の事実を見せられて納得しました。

さて、今回は誰が出るんでしょうか?

2010-06-27 10:51:49 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:20422   閲覧ユーザー数:15090

 

 

 

管輅の予言から数日。一刀の家に村人が走りこんできた。

 

「長~!!大変だ~!」

「大変です。長~!」

「どうしたんだ?そんなに慌てて」

 

大変だと駆け込んできた村人に水を渡し、事情を聞く一刀。渡された水を一気に飲み干すと村人は少し落ち着いたようで一刀に説明を始めるのだった。その説明に一刀は予想通りのことが起こったと納得してしまうのである。それは、管輅の予言通りの事態が起こったことを知らせる報告であったからだ。

 

「隣町が賊によって襲われて陥落・・・」

 

村人が街についた頃は、すでに賊によって襲われた後であったらしい。家は焼かれ、道端には殺された人達が転がっていて、死臭が漂う場所になっていたらしい。そこで辛うじてまだ息をしている人を発見して助けようと思ったが、間に合わなかったらしい。その人は最後の力を振り絞り何があったのかを伝えると、自分達の街のようになるなと忠告して逝ったとのこと。

 

「賊は黄色の布を頭に巻いていたか・・・」

 

そう、俗に言う黄巾賊が現れたという報告だったのだ。これは隣町に限ったことではなく、各地で起こっている出来事であった。これは黄巾の乱が勃発したことを知らせるものであった。

 

「わかった。俺もその街に行くよ」

「(クイクイ)」

「ん?どうしたの?」

「私も行く・・・」

 

襲われた街へ行くことを決めた一刀、その服を引っ張る感触に振り返ると管輅が自分も一緒に行くと意思を示す。一刀は力強く頷くと。

 

「わかった。一緒に行こう」

 

と返すのであった。こうして、一刀と管輅、それから数人の村人と共に賊に襲われた街に向かうことになる。そこで、一刀は新たな出会いをすることに。その出会いは今後の一刀に影響を及ぼす出会いであった。

 

これは、襲われた街の様子を見に行くおせっかいの物語である。

 

 

 

 

 

 

「これは・・・ひどいな」

 

一刀は管輅と数人の村人を伴って襲われた街へとやってきた。実はここ、音々と張々を助けて役人と騒動になったあの街である。そこには村人から伝えられた状況そのままの光景が広がっていたのだ。百聞は一見にしかず、聞くより実際に見たほうが何倍も強い衝撃を受ける。一刀は目の前の光景に言葉を失ってしまう。

 

「これは・・・」

「長。どうしましょうか?」

「そ、そうだな。まずは生存者がいるか確認しよう。みんな、手分けして探して。それから何人かは外の見張り。賊とかいないかを確認して」

「「「「おう!」」」」

 

村人の言葉にはっと気づき、頭が回転し始めた一刀。簡単に指示を飛ばすと自分も管輅を引きつれ、生存者がいないかを探し始めた。半刻ほど探し回った結果。

 

「全滅か・・・」

「長・・・」

「いや、仕方ない。みんな、先に引き上げてくれ」

「長はどうするんですか?」

「俺は、まだ見て回るよ」

「俺たちも付き合いますよ?」

「いや、大丈夫だ。みんなは戻ったら休んでいいよ」

「わかりました。では、お気をつけて」

 

村人を帰らせ、一人残って探そうとする一刀の袖をくいくいと引っ張る誰か。振り合えるとまたも管輅が。当然、いわれる言葉は。

 

「私も行く」

 

というわけで管輅も一緒に探すことになった。

 

「とりあえず、大通りとかは探したから今度は裏道とかを探してみよう」

「(コクリ)」

 

一刀は管輅を引きつれ探索を続行する。しかし、さきほども村人と数人がかりで探索していた為、やはり成果らしきものもないまま時間が経過。

 

「やっぱり、さっきも探したし。もう、帰ろうか?・・・って、あれ?」

 

さすがに帰ろうとしたときである。一刀は不自然な壁を見つける。普段なら見過ごしてしまいそうな変哲もない壁なのだが、その壁の色と両隣にある壁の色が若干おかしかった。それでも、一刀の脳には「あれは自然だ。不自然ではない」という考えが浮かぶ。まるで、押し付けられるような感覚で。

一刀は自分の頬を思いっきり叩いた。

 

バチーン!

 

「っつう・・・。管輅さん。あの壁、何かおかしくない?」

「(コクリ)認識改変の術が施されてる。・・・・何かある」

「術?」

「法術・・・」

 

その強烈な刺激により、押し付けられる感覚がなくなり思考も元に戻ったので、管輅の言葉を考え始めることが出来た。

管輅曰く、これは認識の改変をする術だという。認識改変ということは、さきほどから壁は自然だと訴えかけてくるような思考がそれであると理解できた。わざわざそんな術を使うということはこの壁の奥に何か見つかってはいけないもの、見つけて欲しくない何かがあるに違いない。そう考えた一刀は壁を壊す決意をする。だが、管輅が言うことが事実なれば法師がいるということになる為、用心の為近くに落ちている棒と石を拾っておいた。

 

「じゃ・・・やるよ?」

「(コクリ)」

「おりゃ!」

 

一刀は手に棒と石を持ち、壁を蹴破った。

 

「何者です!!」

「・・・」

 

壁の向こうには二人の白い法師がいた。

 

 

 

 

 

 

~???サイド~

 

「ふぅ・・・食べ物を探すのも楽ではありませんね」

 

私達がここに流れ着いたのは随分前のことだ。人通りが以外に少なかった路地裏に法術で隠蔽工作を行いひっそりと過ごしていました。そのおかげで、街が賊に襲われても私達は無事にやり過ごすことが出来たのです。しかし、賊に全て物資を持っていかれたせいで、食料の調達やら補修材料の調達が難しくなってしまったのはいたいですね。やれやれ・・・。

 

「ただいま戻りました」

「・・・」

 

私達の住居・・・と呼ぶには無理がありますね。路地裏に屋根代わりの板を取り付けただけの空間ですから。に戻った私の言葉に反応はありません。一人だったら当然なのですが、私にはもう一人仲間がいます。

 

「左慈、帰りましたよ」

「・・・・」

「今日も反応がありませんか。やはりあの衝撃は大きかったですね」

 

あの衝撃の事件から、私の仲間である左慈は言葉を発することがなくなり、それどころか全ての気力をなくしてしまったかのように虚空を見つめ続けています。そういえば、管輅も同じ状態になったとか聞きましたが、ここにいない人のことを考えても仕方ないことです。私は左慈が元に戻ってくれるように話しかけ続けるだけしか出来ないのですから。

 

「さぁ、食事を作りましょうかね。もう少し待っていて下さい」

 

と、私が食事の用意をしようと動いたときでした。外でなにやら動きがあったようです。しかし、ここには私が張った隠蔽の法術がありますので、見つかることはないだろうと考えていたことが甘かったようです。

 

「おりゃ!」

 

掛け声とともにあっさりと法術が破られてしまいました。

 

「何者です!!」

 

私の法術を破ることはこの外史の人間には不可能なはず、それを破ったということは彼は私達管理者の関係の者であるとしか考えられない。管理者が今更私達に会いに来る、つまりは私達を抹殺しにきたということでしょうね。

私に武術の心得はないのですが、このままむざむざ殺されるなんてまっぴらです。何より、左慈を殺させるなんてさせません!

 

「左慈は殺させませんよ!」

 

懐に入れていた符を構えて初めて相手を見据えた私の目に入ったものは・・・。

 

「へ?殺す?」

「あなたは・・・左慈、于吉」

 

知らない少年と見知った同僚でした。

 

 

 

 

 

 

「久しぶりですね。于吉」

「そうですね。あの事件以来ですか」

「「・・・・」」

 

あの少年は食事の為に料理を作るといって今、調理中です。たぶん、本人としては旧知の仲である私達に気を使ってくれたのでしょうが、今の私達は重苦しい空気に包まれています。お互いにあの事件はあまりにも衝撃が大きすぎましたからね。おかげで左慈はあの状態になってしまった。そういえば、管輅も同じ状態になったと聞いていたのですが、それほど深刻な状態に見えません。やはり、あの話は出鱈目だったのか、それとも・・・。

 

「はい。出来ましたよ~。食べましょう」

 

この少年に変えられたか、ですかね。

 

「俺は、姓は白、名は士、字は北郷って言います。この近くにある村の長をしてます」

「私は、姓は于、名は吉、字はありません。管輅さんとは元同僚です。それと、彼は左慈といいます」

「・・・・」

「ある事件がきっかけであのような状態になってしまいましたが・・・」

「そうか、彼も管輅さんと同じ・・・」

 

彼は白士と言うらしいですね。管輅との出会いも要約すると、街で占いをやっていた彼女が倒れそうになったので、心配になって家に連れて帰り介抱して現在に至るってわけですか。何か特別な出来事があったわけではなさそうですね。じゃ、何が彼女をここまで取り戻させたのでしょうか?それが解かれば左慈も・・・。

気づいたら、彼が左慈の前に立っていました。私としたことが考えに没頭していたようです。

 

「なぁ、君が何に衝撃を受けて絶望してるかわからないが・・・元気出して」

「・・・き、と」

「左慈?」

 

私は驚きました。いくら私が話しかけても言葉を発しようとはしなかった左慈が、彼に話しかけられたことに反応したからです。

 

「元気出せ・・・だと?」

「ああ、君の友達も心配し「見ず知らずの貴様がわかったように諭そうとしてんじゃねぇ!」ガッ!?」

「「!?」」

 

突然、激昂したと思ったら左慈が彼を思い切り殴りつけていました。

 

「貴様に何がわかる!俺は・・・俺達は永きに渡り外史を管理してきた。それこそ、己の全てを賭してな!それが俺が生まれた存在意義だと信じて!それが・・・それが!」

 

今までの溜めていた鬱憤を全てぶつけるように叫びながら、左慈は彼を殴り続けます。

一発、二発と連続で殴る左慈。その一撃一撃がとても重く強烈です。

 

「上の単なる暇つぶしの一部でしかなかったと知った俺達の絶望を・・・貴様なぞにわかるわけがない!!」

 

最後に渾身の一撃を叩き込まれ、彼は膝をつきました。

 

 

 

 

 

「ぐはっ!」

「白士さん!!」

「左慈!それ以上はいけません!」

「うるさい!!」

 

ああ、彼の腹部に左慈の得意とする蹴りがまるで斬りつけるように決まった。彼の体が一瞬宙に浮かんだ後、すぐ下に膝をついた状態で蹲る。それに構わず、左慈は足を高くあげて踵落としで追撃をしようとしています。さすがにまずいと思った私の制止の言葉は左慈に一喝されて遮られてしまいました。思わず、悲鳴のような叫びを上げる管輅。

 

ガシッ

 

「!!」

 

踵落としが決まると思った私達にさらに驚く光景が目に入りました。蹲っていた彼が片手で左慈の足を掴んでとめていたからです。私達以上に驚いたのは蹴りを放った左慈でしょう。驚愕に目を見開いて体の動きが止まってしまいましたから。

 

「わからねぇよ。ああ、わからねぇさ。てめぇの悩みなんてな!俺は神でもなんでもない、ただの人間だ。そんな俺に拗ねたガキみたいなてめぇの考えなんてわかるわけねぇだろ!」

「がぁ!!」

 

今度は左慈が彼に殴られて吹っ飛ばされました。もう、私にはどうしていいかわかりません。

 

「お前は・・・自分のしてきたことが正しいと信じてやってきたんだろうが!それを上司の暇つぶしだったと知って絶望だぁ?そんなことで、自分の信じてやってきたことを否定すんのか?あぁ?」

 

「うるさい!俺は外史を守る為に時には人を騙し、殺し、暗躍してきた。それが暇つぶしの一環の片棒を担いでいたんだ。俺は何のために今まで外史を守ってきたのか、それを一瞬で全否定された・・・その気持ちをお前みたいなガキにはわかるまい!」

 

「だから、わからねぇって言ってるだろうが!だがなぁ・・・絶望して何もしねぇなんておこがましいぜ!一番、可哀想なのはお前に殺されてきた外史の人々だろうが!!」

 

「!?」

 

「確かにお前のしてきたことが全否定されたのは絶望するだろうさ・・・でもな。絶望したからってそこで考えることをやめちゃいけねぇ。大事なのは、それから自分はどうすればいいのかを考えることだ!」

 

「・・・・」

 

「お前が今までの行動が無意味だったと絶望したら・・・今までお前に殺された人々も意味なく殺されたことになるんだぞ!お前はその人達を侮辱してるんだよ!」

 

「だったら・・・だったら、俺にどうしろというのだ!管理者としての行動を否定された俺は!?」

 

「お前のしたいようにすればいいじゃねぇか。もう、上の言うことなんて聞かなくていいなら、今度は自分のしたいことをすればいいだろ!!胸張って生きられる生き方をすればいいじゃねぇか。そして、自分の手で殺めた人達の分まで精一杯生きろ!そのほうが、外史の人も報われる!」

 

二人はお互いを殴り合って叫び続けています。痣を作り、血を出して、拳と言葉でぶつかり合って会話を。私達は間に入ることが出来ず、ただただ見守ることしか出来ませんでした。そして、時がたつにつれ、優勢になっていくのは白士殿の方でした。

 

「だが、俺には・・・俺にはどうしたらいいかわからない!外史を管理する以外の生き方など!!」

 

「誰もお前一人で考えろとは言ってねぇ・・・お前は一人じゃねぇんだぞ。見ろよ。お前のことを案じてた奴がいるじゃねぇか」

 

そういって彼は私に目線を向けました。それにつられて左慈の視線も私へと向けられます。

 

「お前をずっと案じて支えてくれてた奴が、于吉さんがいるだろ。お前と一緒にこれからどうやって生きて行くのか一緒になって考えてくれるさ。な?」

「もちろんです」

 

彼の問いに私は即答で返した。そう、もう答えなど一つしかないのだ。私は左慈を支えると決めているのだから。

 

「于吉・・・」

「一緒に探しましょう」

「・・・ああ」

 

 

 

 

 

 

~一刀サイド~

 

「・・・ああ」

 

二人が笑みを浮かべながら頷き合ってる。思えば、左慈さんと目が合った瞬間から思うことがあった。

 

―俺と似ている―

 

だから、元気だせと言った。その後に殴られたけど・・・全く、ここまで同じ展開だとは思わなかったな。思い出すのは数年前のこと。両親が死んでしまって、親戚からも疎まれていた俺は荒れた生活を送っていた。そこに現れたのがじいちゃんだった。

 

「元気だせ・・・」

「ふいにぽっと出てきただけの奴に何がわかる!!」

 

と左慈と同じようにじいちゃんを殴ったっけ。だけど、じいちゃんにはあまり効いていなかった。逆に殴った俺を睨み返して。

 

「人間は分かり合う為に言葉があるんじゃろうが!何でも言葉を、自分の意思を発さないでわかってもらおうとは甘いわ!」

 

って、木刀で思いっきり殴られたんだよな。

 

「親が死んでしまったなら、親の分まで強く生きろ!嘆くだけで何もしないだけなら文句を言うな!足掻くだけ足掻け、自分が胸を張って生きたと言えるようにせんかい!」

 

と、説教された後。

 

「そうしたら、死んだ者も報われるというものじゃ・・・」

 

そう優しく微笑まれ、頭を撫でられた。あのときのことは今でも鮮明に思い出せる。あの言葉があって俺は変わった。灰色だった世界に色が戻った。そして、農業に出会えた。全てはあのじいちゃんの言葉からだ。それを、今度は俺に似ているこいつにぶつける。じいちゃんが俺に伝えたように左慈に伝わるかわからない・・・けど、俺の思いをぶつけるだけぶつけてみるしかない。

その結果が目の前の光景だ。俺の思いが伝わったと思いたい。これなら、この二人はもう大丈夫かな・・・後は、もう一つ。

 

「管輅さん。君にも同じことが言えるよ」

「・・・・」

「自分の生きたい生き方を探してみたらどうかな?」

「でも・・・私は一人「そんなことないさ」え?」

「君のことを案じている人はちゃんといるんだ。俺はその人に頼まれた。君のことを助けてくれってね」

「・・・・」

「だから、俺も一緒に探すよ。それが俺の誓った生き方だしね」

 

そういうと彼女は笑みを浮かべて。

 

「はい!」

 

と返事をしてくれた。これが俺たちの始まりだった。

 

 

 

 

 

 

「私の予想以上だわ。さっすがご主人様ねん♪」

「「「!?」」」

「その声は・・・・」

 

一刀達が振り返るとそこには筋骨隆々のヒモパン一丁姿のおっさ・・・げふんげふん、自称乙女の貂蝉がいた。

 

「久しぶりだな。貂蝉」

「様子を見にちょこっとよったんだけど、元気そうで何よりだわん。まぁ、こんなところで会うとは思わなかったんだけど・・・それと、久しいわね三人とも」

 

一刀と軽く挨拶を交わした貂蝉は、真剣な顔で残りの三人に挨拶をする。その三人は挨拶に対して無言を貫いた。

 

「あら、寂しいわね。せっかく旧友が会いにきたっていうのに・・・。久しぶりとか会いたかったわ~とか抱きつくなりなんなりないのかしら?」

「・・・何故、彼とあなたが知り合いなのですか?」

 

于吉は貂蝉の言葉をさくっと無視して質問をする。管輅はさきほどの一刀の言葉からなんとなくは察しがついているが、ここは黙って本人から聞く姿勢であった。

 

「何故って、もちろん。彼を連れてきたのは私だからよ」

「連れてきた?」

「ええ、彼はこの外史の人間ではないわ。正史にいた人間だもの」

「「「!?」」」

 

これにはさすがに管輅も驚いた。いや、管輅だけじゃない。于吉も左慈も全員が驚いた。

貂蝉の知り合いだけではなく、正史からの人間だったから。だが、これで于吉の法術が破られたことには納得出来る。

 

「なるほど、私の法術が破られたのは彼が正史の人間だったからですね」

「あら?そんなことがあったの?正史と外史では波長が違うのかしらね?」

「貂蝉・・・」

「ごきげんよう、管輅。ご主人様は私の頼みをちゃんと果たしてくれたようね」

「あなたが彼を?」

「ええ、あなたのあの様子をとても見てられなかったから」

「・・・・」

「彼も納得してきてくれたのよ。私は事情を話してただお願いしただけ。それを真剣に聞いてくれて、助けると言ってくれた。感謝してもし足りないわね」

「ええ・・・そうですね。でも、何故彼は・・・」

「それは本人に直接聞きなさい。私から聞くのもおかしいでしょ」

「そうですね。そうします」

 

管輅は自然と笑みが浮かべられるようになっていた。それに気づいた貂蝉は内心で一刀に感謝の念を深める。彼女が戻してくれてありがとう、と。

 

「さて、そろそろ戻らないとな・・・貂蝉、お前はどうするんだ?」

「残念だけど、まだやることが残ってるのよねん。だから、ここでお別れよん」

「そうか」

「私がいなくて寂しいからって泣かないでねん♪」

「泣くか!!」

 

貂蝉と一通り漫才のような会話をした後、一刀は管輅に向き直り。

 

「じゃ、俺たちは家に帰ろうか」

「はい!」

 

笑顔でそうのたまうと、管輅も笑顔で返事を返した。その笑顔を見た一刀は管輅の雰囲気がさっきまでと違うことに気付き、自分の言葉が心に届いたのだと悟った。そこで再び、一刀は思い出す。祖父の言葉を。

 

「わしは死んでしまったあやつらの分までお前を立派に育てる。それがあやつらに胸を張って生きられるわしの余生じゃわい」

 

と言っていた一刀の祖父は、言葉通り親となって一刀に時に厳しく、時に優しく接し育てあげた。そんな祖父を一刀も尊敬し、いつかそんな祖父のようになりたいと思うまでになっていたのだ。そして、祖父の亡くなる前に、誓った。

 

「俺もじいちゃんのように精一杯、胸を張って生きられる生き方をするよ」

 

そんな一刀の言葉を祖父は笑顔で受け止め。

 

「おう。あの世で見てるぞ」

 

と返してくれたのだった。それを思い出し、一刀は内心で呟く。

 

「(これが俺の生き方だよ。じいちゃんに少しは近づけたかな?)」

 

答えは返ってこないが、一刀にはなんとなく。「まだまだじゃな」といたずらっぽい笑顔でのたまう祖父の姿が思い浮かぶのであった。

 

 

 

 

「左慈さん、于吉さん。俺達はもう行くよ。元気でな」

「待ってください・・・」

 

管輅を連れて帰ろうとしたところ、于吉が一刀を呼び止める。

 

「なんですか?于吉さん」

「白士殿・・・私達をあなたの村に入村させてもらえませんか?」

「于吉!?何を言っている?」

「左慈、私達には路銀を手に入れる手段も睡眠をとる家もないのですよ。生きていく上で必要なことが欠けてしまっては、生き方を見つける前に死んでしまう。それでは意味がないでしょう?」

「それはそうだが・・・」

「まずは彼の村で職を得る。それが第一目標ですね。この外史の人を知るのもいいではありませんか」

 

左慈はもう返す言葉が見つからなかった。元から于吉に口では勝てないのであるが。于吉は一刀のおかげで立ち直った左慈の為に、すでに頭を回転させてどうするかを考えていたのである。今回のそれも左慈の為の一環であった。

 

「そういうことだったら・・・ちょうど、人手が欲しいことがあってね。是非、手伝ってもらいたい」

「ありがとうございます。これから、お世話になります」

「世話になる」

 

こうしてまた新たな住人が誕生したのであった。

 

 

 

 

「あ、長。おかえりなさい」

「おさ~、おねえちゃ~ん。おかえり~」

 

村に戻ると村人が一刀達を出迎える。管輅も村に馴染み、一刀と同じく迎えられる

その後をついていく左慈と于吉。最初のスズメバチの群れには驚いたが、今は落ち着きを取り戻し村人と話す一刀の様子を見ていた。

 

「どうやら、かなりの人望があるようですね」

「そのようだな」

 

村人と接する一刀に人望の高さを見てとった二人の一刀の信頼度が少し上昇する。

この後、于吉達を空き家に案内し、彼らの住居を決めてもらう予定である。その道すがら、村のことも紹介することになった。

 

「ここは農業が盛んのようですね」

「ああ、つい先日までは農業のみだったからね」

「商人達がいなかったのですか?」

「ここ、元廃村なんだよ。で、俺が最初に住み始めて人がだんだんと増えてって。ようやく今の形になったんだ。だから、商人達が着てから日が浅くてね。まだ、農業が目立ってるってわけ」

「廃村からここまで立て直したのですか・・・」

「文字通り一から始まったけど、苦労とは感じなかったな。それなりに楽しかったよ」

 

何気ない会話だが、于吉達はまた一つ一刀に驚かされるのであった。

 

「ここにある家のどれかを選んでくれ」

 

そこに立っていたのは同じ形の家が3軒。ただし、場所によって日当たりなどが違っているので、同じ形だからといってどれも一緒ではない。于吉達は実際に家の中に入ってじっくりと見比べ、家を決めるのであった。

 

「君達にやってもらう仕事は大工なんだ」

「大工ですか・・・」

 

家を決めた于吉達に一刀はお茶を振舞い、彼らの仕事について話を切り出した。実は今この村では深刻な問題が浮上しつつある。その問題とは・・・住居不足である。管輅の占いによって人を助け、住民を増やしてきたまではよかったのだが、ここは村である。大きさには限度があって、もうそろそろその限度を越えそうな勢いなのだ。だからといって単純に村を拡大すればいいというわけでもない。この村は森に囲まれているおかげで木の実や動物など様々な恩恵を得ているのだ。村を拡大するにはどうしてもその森を切り開かねばならない。すると、今まで受けてきた恩恵が受けられなくなってしまう。どうしたものかと頭を悩ませていた一刀に、この問題を打開出来る案が浮かんだのはついさきほど。その解決策とは・・・。

 

「あの街を復興するんだよ」

 

そう、賊に襲われ壊滅したあの街を利用するのだ。廃村を今の村に立て直したように。考えたまではよかったのだが、この後また問題が浮上する。そう、大工不足である。今、村は復興してそれぞれが基板を作っている状態である。農場やるなり、商業やるなりと・・・。今までは家が1、2軒建てればよかったが、今回は街である為、それでは到底間に合わないのだ。賊に襲われてしまう可能性もある為、なるべく早く復興をさせたかった。

その為には出来るだけ多くの大工を雇い、建ててもらわねばないない。というわけで、于吉と左慈にやってくれないかと頼んでいるのである。

 

「わかりました。お受けしましょう」

「俺も異論はない」

「ありがとう。とりあえず、人が集まるまで畑仕事になるけどよろしく」

「「ああ(ええ)」」

 

こうして二人の仕事も無事に決まったのである。こうして、彼らの村での生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

お久しぶりです。今回はなんと男女比が逆転した回でした。

珍しいこともあるもんですね。

 

そして、再び登場・・・

 

みんな大好きー!!

「t「ちょうーせんちゃーん」」

 

「どぅふふ。もうすっかりみんな私の虜ね。ああ、私ったらなんて罪づくりな、お☆ん☆な☆」

 

 

というわけで再び彼女?彼?に登場してもらいました。

 

元気でましたか?

 

私ですか?笑いしかでませんでしたが、何か?

 

 

さて、本編で一刀君の口調が変わっていたところについてちょっとした補則を。

あの口調は一刀君が荒れていたときの口調です。

本編でもいずれ書こうと思っていますが、彼がキレたりすると口調が昔に戻って荒々しくなります。詳しいエピソードはいつか書く本編にて。

 

それと、近々この作品には何の関係もない短編を投下予定。

あまり深く考えないで読んで頂きたい。突発的に浮かんだネタです。

では、また次回。

 


 
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