No.153164

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第十二話

狭乃 狼さん

刀香譚、十二話です。

短いです。すいません。

洛陽にて、皇帝による反西涼軍への裁きはどうなるのか。

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2010-06-25 17:10:11 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:26772   閲覧ユーザー数:22378

 「では、曹操よ。すべての罪は自身にある、そういうのだな?」

 

 「御意」

 

 洛陽の謁見の間にて、皇帝・劉弁の前に跪く曹操。

 

 「いかに偽の勅に踊らされたとはいえ、それを利用し、己が名声を得ようとしたことは罪以外の何物でもありません。いかようにもお裁きください。されど、袁本初をはじめ、他の諸侯には寛大なるご処置を」

 

 「・・・ふむ。相国は如何に思う?」

 

 劉弁はそばに立つ少女、相国である董卓に意見を求める。

 

 「曹操どのも張譲に利用されたということを鑑みれば、被害者であるとも言えなくもありません。ですが、先ほどの本人の言葉どおり、罪は罪です。官位の剥奪あたりが妥当かと」

 

 そう答える董卓。

 

 「わかった。ならば曹操よ、本日を以ってそなたの地位はすべて剥奪する」

 

 「御意」

 

 「しかし、その才をこのまま捨て置くのも損失。よって、曹孟徳にはこの洛陽にて、警備部隊の長として働くことを命じる」

 

 「・・・御意に、御座います」

 

 頭を下げる曹操。その頬に光るものがあったことは、誰も気づかなかった。

 

 

 

 皇帝から直接、偽勅の出所を聞かれた曹操は、張譲の名を告げた。

 

 もと十常待筆頭で、前大将軍、何進を殺害した首謀者。

 

 その男が偽勅を持って曹操の下を訪れた。そして、それを渡すとすぐにその場を立ち去った。本人いわく、各地に同じ勅書を届ける為と言っていたが、実際にはそのまままた雲隠れしてしまった。

 

 例のうわさが流れたのが同じ頃であった事から、流したのも張譲であろうとの、結論だった。

 

 曹操に対する処罰が決した後、袁紹、袁術、陶謙に対する通達も行われた。

 

 袁紹は噂を利用しようとした点では、曹操と同じであったが、民が苦しんでいるのを見過ごせなかったのも、また事実であろうということで、州牧から南皮太守への降格とされた。

 

 袁術は、実際は何も考えていなかったらしい。旨い蜂蜜をかなりの量袁紹から送られて、それで参画を決めただけだった。しかし、仮にも一郡を預かるものとしては軽率な行動であるとして、南陽太守の地位は剥奪。長沙城・城主に格下げとなった。

 

 陶謙は、処罰が言い渡される前に、自ら徐州牧の位を返上。野に下ることになった。

 

 

 

 続いては論功である。

 

 今回の戦で最も功のあった一刀は、徐州の牧に封じられた。

 

 そして、同時に、左将軍の位までも賜ることになった。

 

 一刀自身は、

 

 「あまりにも身に余りすぎる賜り物。臣はそこまでの功は為しておりません」

 

 と、最初は断ろうとしたのだが、白蓮から、

 

 「これは勅命だぞ?受けなきゃだめじゃないか」

 

 と、いつぞやの意趣返しをされ、最終的に受けることとなった。

 

 次に、途中から西涼側についた孫堅だが、揚州の刺史の位だけを望んだ。

 

 「なんと欲のない」

 

 と、劉弁は褒めたが、刺史であれば自身の判断で、州内を自由に兵を動かせる。

 

 そのことを一部のものは理解していた。

 

 最後に白蓮だが、本人の希望もあって、領地は現状維持。官位のみ、鎮北将軍を賜った。

 

 他の者も何がしかの褒美や、昇格を受けた。

 

 以上で、論功行賞は終了である。

 

 

 

 「じゃあ、華琳もはっきり記憶は無いと?」

 

 「ええ。張譲が来たことは確実よ。けど、どんなことを話したのかと言われると、ぜんぜん思い出せないのよ」

 

 論功行賞が終わったあと、一刀は中庭で桃香、白蓮、そして曹操-華琳を交えて、茶会をしていた。

 

 「何か術でもかけられた?」

 

 桃香が華琳に問う。

 

 「わからないわ。張譲がいなくなった後、わたしは、なんて言っていいのかしら、自分のすることは全てがうまく行くものだと、疑いもしなくなっていたわ。今思うと自分が情けなくなってくるけどね」

 

 「・・・張譲か。そんな術が使えるような奴だったのかな?」

 

 白蓮が疑問を呈する。

 

 「さあね。・・・確かなのはまだ張譲はどこかで生きていて、何かを画策してる。それは間違いないだろうな」

 

 「・・・そうね」

 

 沈黙する一同。

 

 「・・・いまは考えても仕方ないでしょう。ところで、話は変わるんだけど」

 

 「なに?」

 

 「桃香。お兄ちゃん病は直った?」

 

 ぶっ!!

 

 お茶を思わず吐き出す桃香。

 

 「な、なに言い出すの、華琳ちゃん!!」

 

 「・・・どうやらまだみたいね」

 

 「華琳、何の話だ?」

 

 一刀が首をかしげて問う。

 

 「な!なんでもないの!!あ、あたし、愛紗ちゃんたちの様子を見てくる!!」

 

 走り去る桃香。

 

 (・・・そ。まだなんだ。ならまだ諦めなくて良さそうね)

 

 走り去っていく桃香を見ながら、ほくそえむ華琳。

 

 「????」

 

 頭の中に疑問符を大量に浮かべる一刀。

 

 そして、肩をすくめる白蓮であった。

 

 

 

 中庭を走り去った桃香は、自分にあてがわれた部屋に戻っていた。

 

 「・・・華琳ちゃん、なんて事言い出すかな、もう・・・」

 

 ふう、と。ため息を一つつく。

 

 「・・・やっぱり、まだ諦めていないんだ」

 

 桃香は昔のことを思い出す。

 

 まだ兄とともに私塾に通っていた頃の事を。

 

 世の中のことなど何も知らず、勉学に、遊びに夢中になっていたあのころを。

 

 「・・・白蓮ちゃんも、たぶんお兄ちゃんが好きなんだろうな・・・。蓮華ちゃんも・・・・」

 

 白蓮と、久しくあっていない、もう一人の親友の顔が頭によぎる。

 

 (・・・あたしは、お兄ちゃんが好き。愛してる。その腕に抱いてもらいたい。愛してるって、言って貰いたい。たとえ禁忌だとしても)

 

 寝台に倒れこむ桃香。

 

 「お兄ちゃん・・・。一刀・・・。ふ、う、く、~~~~~~っつ」

 

 声が漏れないよう、布団をかぶり、思い切り、泣く。

 

 その感情を、心の中に押し込めるために。

 

 愛する人の顔を、思い描きながら。

 

 その日一晩を、泣いて過ごしたのであった。

 


 
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