No.153083

真・恋姫†無双 董卓軍√ 第二十九話

アボリアさん

董卓軍IF√二十九話です
前回の作品では皆様より沢山のコメントをいただきました
両陣営への賛否両論の意見を多数頂き、中には大変考えさせられる意見、作者の甘い考えを遥かに越える意見などもありました
そのコメントを読ませて頂き、お話の構想を考え直そうかとも思いましたが、せっかく皆様の応援でここまでやってきたのでこのままゴーイングマイウェイの精神で最後まで突っ走ることにしました
どうか最後までお付き合い頂けると幸いです

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2010-06-25 02:08:14 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:18903   閲覧ユーザー数:13241

夷陵 蜀軍本陣

 

 

「来たか…!!」

 

関羽が前方を見つめつつ呟く

関羽の視線の先には董の一字を掲げる二十万の大軍が到来していた

 

「桃香様。私はこれより先陣へと向かいます故、これにて…」

 

そういって退陣しようとする関羽だったが、その彼女を劉備が呼び止める

 

「まって愛紗ちゃん。私も、先陣に行かせて」

 

「な、何をいっているのですか桃香様!!駄目に決まっているでしょう!?」

 

「愛紗さんの言う通りですよ!!」

 

劉備の突飛な発言に猛反対する関羽と諸葛亮…だが、劉備は更に続ける

 

「先陣で戦おうって意味じゃないの。…ただ、戦いの前に董卓さんと話がしたい。せっかく話し合いで済むはずだったのに、戦いなんてしたくないよ」

 

「それこそ無謀です!!こちらにも非があるとはいえ、宣戦布告もなしに攻め入ってくるような連中です!!話し合いなど…!!」

 

断固として反対する関羽

それでも劉備は自分の考えを譲らなかった

 

「愛紗ちゃんの言うことも、もっともだよ。でも、私達に非があるのも事実。…だから、お願い愛紗ちゃん」

 

そういって関羽を見つめる劉備…その眼差しに、関羽はとうとう折れてしまった

 

「…分かりました。一緒に先陣へと向かいましょう。…ですが!!話し合いが失敗に終わった時は直ちに本陣へと戻っていただきますからね!!」

 

「うん、分かってる。…じゃあ朱里ちゃん、いってくるね」

 

「…分かりました。どうかご無事で…!!」

 

そうして劉備と関羽は、諸葛亮に見送られつつ軍の先頭へと向かっていくのだった…

「董卓さん!!出てきていただけますか!!」

 

劉備が軍の先頭に立ち叫ぶ

だが、対する董卓軍はその叫びに対し沈黙を保っていた

 

「お話があるんです!!出てきてください!!」

 

それでも必死に劉備は叫ぶ…すると叫びが通じたのか、董卓軍の中から月が一騎で出てくる

 

「私が董卓です。…お話とは」

 

そう問いかける月…ただ、その声はどこか硬く、俯いたままだった

 

「董卓さん。…どうして、宣戦布告もなく攻め入ってきたかを聞いてもいいですか?」

 

「……」

 

「貴女も、平和を望んでたんじゃないんですか…?」

 

「……」

 

劉備が問いかけるが、月は俯いたまま無言を貫く

 

「張任さんの件、でしょうか?」

 

「……」

 

「もしそうだったなら謝罪します!彼を送ってしまったのは私の責任です!ですから…!!」

 

 

 

「…を、謝るというんですか…」

 

 

 

「え?」

 

 

 

ボソッと何かを呟いた月だったが、それを聞き取れなかった劉備は聞き返す

すると月はバッと顔を上げて叫ぶ

 

 

 

 

 

「一体何を謝るって言うんですか!?張任さんを送った事ですか!?手違いだったと謝るんですか!?…一刀さんを、私たちの大事な人を傷つけた事も、手違いだと言うんですか…?」

 

 

 

 

 

そう叫ぶ彼女は…その目からは大粒の涙が流れていた

「……え?」

 

月の言葉を聞き、絶句してしまう劉備

だが月は構わず続ける

 

「私の行動を非難するのは構いません!!和平の道を潰したのは、軍を動かしたのは私ですから…。でも、どんな理由があろうと、一刀さんを傷つけた…その理由を作った貴女は…貴女だけは許せません!!許せないんです!!」

 

そういって月は手を振り上げ、軍に号令を下す

 

「全軍!!私達の友を、恩人を、大切な人を傷つけた蜀を討ちます!!かかれぇーー!!!」

 

 

 

 

「「「「「うをををおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」

 

 

 

 

その号令と共に、董卓軍の全軍が蜀軍に向かい怒涛の如く攻め寄せる

 

「そんな…!!」

 

月の言葉にショックを隠しきれない劉備が呟く

 

「桃香様!!お早く本陣へ!!」

 

関羽はそんな呆然自失の劉備を無理やり抱え、本陣へと連れ帰るのだった…

「進めぇーー!!狙うは劉備の首一つだ!!邪魔立てするものはなぎ払えぇ!!」

 

 

 

彼とは天水に居たときからの仲だった

 

 

最初の出会いの時こそ賊と間違え殴りかかってしまったものの、印象は悪くない奴だと思っていた

 

 

思えば彼からは色々なことを教わった

 

 

武人の誇り、自分の真名、…そして、初めての恋心

 

 

何時だったか、彼とは月様を守ると誓い合った事があった

 

 

だからこそ、彼が刺されたとき自分の中をさまざまな思いが駆け巡った

 

 

彼を刺した男への怒り

 

 

自分には無茶をするなと言っておきながらあんな無茶をした一刀への怒り

 

 

そして何より…天下統一に気が逸り、慢心していたせいで月様を…一刀を助けることができなかった自分への怒り

 

 

 

(一刀が居たならば、そんな怒りの全てを蜀にぶつける自分を止めてくれただろうか…)

 

 

 

そんな詮無いことを考えつつ、私は戦場を駆ける

 

 

「奴等に、蜀に!!自分のやった罪の重さを思い知らしめてやれぇーー!!」

 

「邪魔や!邪魔や!!邪魔やぁーーー!」

 

 

 

初めて会ったときは武こそ無いが気持ちだけは強い奴だと思っとった

 

 

ただ、月や恋はぞっこんやったけどうちはそういうものに疎かったせいか、いい奴程度にしかおもっとらんかった

 

 

けど、曹操に水攻めを受けた時自分を助けてくれて、傷の手当てをしてくれて…初めて女の子扱いされて、自分は彼に惹かれていった

 

 

彼とのやりとり、他愛無い会話、ふとした時に微笑む笑顔…世界が変わったような日々やった

 

 

ある時、月を見ながら彼が元の世界に帰りたいといった時は胸が締め付けられる想いやった

 

 

だけどその後、それが自分の早とちりで、彼がこちらの世界を…自分達と生きていくといってくれた時は涙が出てしもた

 

 

これからも、彼と過ごしていけることが嬉しかった

 

 

なのに蜀の、奴等はそんな彼を…!!!

 

 

 

「お前等だけは許さへん!!誰も彼も生きて帰れると思うなやぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

深紅の驍騎校尉と紺碧の驍将は戦場を縦横無尽に駆け巡る

 

その猛攻は蜀軍の先陣を瞬く間に蹴散らしていった

「お前等ぁ!!お前等許さない!!」

 

 

 

一刀は一人ぼっちだった恋を助けてくれた

 

 

もう無理しないでいいっていって、抱きしめてくれた

 

 

月と一緒に、恋に居場所を作ってくれた

 

 

ねねも、霞も、セキト達の…皆の居場所を作ってくれた

 

 

一緒にお昼寝もした

 

 

ねねと一緒に料理も作った

 

 

彼と居るといつもあったかい気持ちになった

 

 

彼の笑い顔を見ると、頭を撫でてもらうと、とってもあったかくなった

 

 

…一刀が刺された時、そのあったかかった気持ちが一気に冷たくなった

 

 

一刀を刺した奴を、その原因を作った奴を許せなかった…!!

 

 

 

 

「絶対許さない!!お前等、殺す!!!」

 

「高順は恋殿に続くのです!!臧覇は逃げる兵を蹴散らし、本隊の為に道を広げるです!!」

 

 

 

奴は変な男だった

 

 

ねねに蹴られても罵られても、少し怒るだけでいつでも笑って許してくれた

 

 

なにより…そんなねねの、友達になってくれた

 

 

初めて友達ができたねねは、とても嬉しかった

 

 

奴とは一緒に敵とも戦った

 

 

恋殿と一緒にほっとけえきも作った

 

 

将棋では二人で特訓もして、ついには詠をギャフンといわせるほどになった

 

 

これからも、いろんなことがあると思っていた

 

 

恋殿と三人で、いろんなところに行こうと思っていた

 

 

なのに、彼を…ねねの、友達を…!!

 

 

 

「恋殿の、ねね達の友を殺そうとした怒りを!!龍の怒りを!!奴等に思い知らせてやるのです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

深紅の龍と、それに付き従う龍佐の才は雄叫びを上げつつ怒涛の猛攻を繰り出す

 

蜀の破れた先陣を更にこじ開け、その猛威は敵の中軸をも食い破っていった

「徐栄!!張済!!あんた達は先陣に加わって!!北郷隊の怒りを思い知らせてやりなさい!!」

 

 

 

最初は天の御使いとして利用価値がある、程度にしか考えていなかった

 

 

でも、あいつの初陣の時…月を、助けてくれた時から少しずつ認識が変わっていった

 

 

時には華雄と一緒になって暴走する事もあったけど、将の少ない僕達にとっては結構頼りになったりもした

 

 

それに、あいつは天の知識を使って、いつだって僕達を助けてくれた

 

 

それに知識だけでなくだけでなく、僕や月が危ない時は体を張って助けてもくれた

 

 

…今回だって

 

 

 

(本当なら、僕が月を止めないといけないのにね…)

 

 

 

そう頭では分かっていた

 

 

でもあいつが刺されて、月が兵を上げるといった時、僕は反論できなかった

 

 

僕も、一刀を刺された怒りは一緒だったから…!!!

 

 

 

 

「張繍は本隊と共に突撃!!一刀に、天に弓引いた蜀を叩き潰すわ!!」

 

「董卓軍本隊、賈詡隊と共に突撃します!!かかれぇー!!」

 

 

 

一刀さんはいつだって私を、私たちを助けてくれていた

 

 

思えば初めて会った時だって、熊に襲われていた私を助けてくれたのがきっかけだった

 

 

一刀さんの初陣の時、諸侯連合、張譲の部下の反乱…私が危ない時はいつだって助けてくれた

 

 

戦だけじゃなく政治だって助けてもらったし、何より…一刀さんの存在自体が私の助けとなってくれていた

 

 

 

(こんな戦を起こした事を知ったら…一刀さんは悲しむでしょうね)

 

 

 

そう思いつつ胸に下げた首飾りを握り締める

 

 

これは一刀さんから貰った、二つで対になる首飾りだった

 

 

彼はこれを渡した時、どんな目に遭っても絶対に私の元へ戻ってきてくれると約束してくれていた

 

 

首飾りに一刀さんの無事を祈りつつ、それでも私は前を見据える

 

 

いくら一刀さんが望んでいなくても…平和を祈った彼を傷つけたことは許せなかった

 

 

私を守ると、支えるといって笑ってくれた彼を奪ったことだけは許せなかった!!

 

 

 

「一刀さんを!!いつだって私たちを守ってくれた彼を!!傷つけた蜀を!!私は絶対に許しません!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

正史で暴君と称された王と、その頭脳は敵軍を蹴散らしつつ、敵本陣へと向かっていく

 

董卓軍の猛攻の前に、蜀軍は戦が始まって暫くする頃には多大なる損害を受けていたのだった

「桃香様!!これ以上戦線を維持するのは不可能です!!ここは桃香様だけでも…!!」

 

諸葛亮が悲痛な叫びを上げる

 

劉備は、目の前で起こる惨劇にただただ呆然としていた

それは、自軍が一方的にやられている事、舌戦での衝撃的な事実も関係していたが…何より、兵達の戦いが一番の衝撃を与えていた

 

董卓軍の兵は蜀軍の攻撃に全くひるまず、いくら傷ついても向かってきていた

そうして傷だらけになって倒れる兵達を見て、劉備は呟く

 

 

「間違ってる…」

 

 

「桃香様!!ここはわれらに任せ、お引きください!!」

 

そんな劉備の呟きは聞こえなかったのか、関羽が叫ぶ

本陣には、最初に劉備をつれて帰った為先陣に加われなかった関羽、護衛の為に本陣に詰めていた張飛、趙雲がいた

 

「お姉ちゃん!!ここにいたら危険なのだ!!お姉ちゃんだけでも逃げるのだ!!」

 

関羽に続き、張飛が叫ぶ…すると、やっと反応した劉備は首を振って答える

 

 

 

「私は、逃げるわけにはいかないよ…!!」

 

 

 

「何を…「だって!!」っ!!」

 

関羽が説得しようと話すのだが、それを遮り劉備が言う

 

「この戦いは、私の責任だもの!!兵の皆だけが傷ついて、私だけ逃げるなんてできない!!」

 

そう叫ぶ劉備…関羽たちは強い気持ちのこもったその言葉に、一瞬ひるんでしまう

 

「…それに、こんな戦、間違ってるよ…!!私が許せないなら、兵を!!皆を巻き込む必要はないじゃない!!」

 

そういって関羽たちに向き直り、劉備が言う

 

「朱里ちゃん、撤退の準備を始めて」

 

「は、はい!ですが、桃香様は…!?」

 

 

 

 

 

「董卓さんともう一回話して、この戦いを終わらせる…!!愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、星ちゃん。お願い、力を貸して…!!」

 

 

 


 
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