蜀 成都
「…以上が南蛮平定における我が軍の戦果です。もし董卓さん達と戦いになった時の後顧の憂いを絶つ為、そして少しでも国力及び兵力を増強する為が主たる目的だった今回の戦いなのですが…」
諸葛亮はそこまで説明すると一拍間を置き、龐統が後に続く
「南蛮王孟獲…美以さん達を降伏させ、憂いを除くことには成功しましたがそのために七度の戦いを要した為、兵力に関しては予想していたよりも投降兵が少ない結果となりました…。」
「そのため、現状の兵力は守備兵も含め、総力で二十万ほどです。…ただ、董卓さんの陣営は董卓さん直属の軍ですら我々と同じく二十万、同盟国涼州の馬騰さん、馬超さんの軍が十万、属国である曹操さんの魏が二十五万、白蓮さんの軍が五万、降伏した呉の軍が七万…総勢で六十七万。我々
の三倍強の軍勢という報告が入っています」
「三倍以上もいるの!?」
諸葛亮の報告に驚く劉備
一緒に軍議に参加している蜀の将たちも態度にこそ出さなかったがその報告を聞き、驚愕していた
「…数だけではありません。董卓軍は呂布さんを筆頭に華雄さん、張遼さん。魏の夏候姉妹に涼州の馬超さん。孫呉からも孫策さんという英傑ぞろい。軍師も賈詡さん、陳宮さん含め多数の鬼才を抱えています。我々も、愛紗さんや朱里ちゃんを筆頭に精鋭ぞろいとはいえ、この戦力差は歴然といっていほどだと思われます…」
二人の説明に軍議の空気が重たくなる…そのタイミングで「そこで」と諸葛亮が話を振る
「以前から度々受けていた董卓軍からの勧告…我々の降伏も視野に含める必要があると思われま…「何だと!!軍師殿達は桃香様に敵軍へ下れと申されるのか!!」ひゃう!!」
諸葛亮の説明に旧蜀軍からの降将である魏延―真名を焔耶―が物凄い剣幕で食ってかかる
その勢いに圧され、諸葛亮と龐統がはわあわと慌てていると魏延の横から大声が上がる
「黙れぃ焔耶!!軍師殿とて考えがあっての事。それを聞かずに突っ走るではないわ!!」
そういって厳顔―魏延と同じく降将であり、真名を桔梗―が魏延の頭に拳骨を落とす
「ぎゃ!!…す、すみません。ですが桔梗様…」
拳骨を喰らい、涙目になりながらも食い下がる魏延
そんな部下の姿を見て嘆息しつつ厳顔が言う
「おぬしの気持ちも分かっておる。…軍師殿、降伏するにしても一度も矛を交えんのはいかがかと
思いまするが、説明いただけますかな?」
そういって二人を見る厳顔…対する軍師二人はその眼差しに真っ向から対立して答える
「先ほども言ったように戦力差、国力差が歴然である事もありますが、他にも理由があります。一つ目は対孫呉の時の前例からです」
「降伏勧告を断り侵略した孫呉に対し、曹操さん達がいなかったとはいえ董卓さんは総力で討伐をしました。…いざ戦となったら、途中で退く事はできないでしょう」
「それについては同感だけれど…降伏ではなく盟を結ぶ事はできないのかしら?」
今度は荊州で臣となった黄忠―真名を紫苑―が疑問をぶつける
「残念ながら我々は反董卓連合に参加して争った経験がありますし、今まで勧告を無視し続けている為今更盟を結ぶといっても了承はされないでしょう」
「ですが蜀を手に入れてからの外交の結果、孫呉のように軍備の縮小を求められていますが、代わりに援軍以外の軍事不介入に加え蜀、漢中、荊州の自治権を認めるそうです。これは同盟と比べても差し支えない待遇かと思われますが…」
そこまで言って二人は劉備に視線を送る
「朱里ちゃん達の話は分かった。…ただ、一つだけ聞いてもいい?」
そういって二人に真剣な眼差しを送りつつ、劉備が言う
「外交の対応や民達の様子…何より二人の考えから、董卓さんは信用できる人だと思う?」
その問いに二人も真剣な眼差しで答える
「敗戦国の孫呉への厚遇。斥候からもたらされる善政及び治安の良さ。なにより外交においてここまで譲歩することから見える一刻も早く乱世を終わらせるという意志。…これらからも信用できる人物だと思います」
その言葉を聞き少し考える劉備だったが、唐突にパッと笑顔になり言う
「じゃあ、降伏しよっか」
「お、お待ちください桃香様!!そのように簡単に…!!」
突然の決定に慌てて異議を挟む関羽…だが劉備は笑顔の中に真剣味を感じさせる眼差しをしつつ答える
「簡単じゃないよ、愛紗ちゃん。私だって今まで頑張ってきた皆を知ってるから、戦わない内から降参するのは辛いよ」
でも、と劉備は続ける
「董卓さんも平和を目指して頑張ってる。それに戦わないで、話し合いで乱世を終わらせようとしてる。民の、国の皆のことを考えたら、私達が意地を張っても仕方ないでしょ?」
そういって将全体に笑いかける
その姿を見て、関羽が言う
「…すみません、桃香様。いかなる場合においても降伏は苦渋の決断。そう分かっていながら差し出がましい事を申しました」
そういって平伏する関羽…そんな関羽を見て、劉備が慌てる
「謝る必要なんてないよ!!愛紗ちゃんは私の事を考えてくれたんでしょ!?」
そういってワタワタと慌てる劉備…その姿を見て、将達全員が笑い出す
「え?み、皆笑うなんて酷いよ~!!」
「す、すみません桃香様」
そういいながらも笑い続ける皆に劉備は膨れて抗議していたが、暫くした後劉備が諸葛亮たちに言う
「じゃあ、董卓さんには降伏するって伝えて欲しいんだけど…誰が伝えに行ってくれるの?」
「私と雛里ちゃん、それに紫苑さんは蜀及び南蛮の事後処理があるので向かえませんし、桃香様や武官の方々に行ってもらうわけにも行きません。…ですので今回は簡雍さんに向かってもらおうと思っています」
簡雍とは劉備たちが義勇軍をあげた時からの臣であり、蜀軍でも信用の置ける人物だった
「うん、簡雍さんなら安心だよ。じゃあお願いね」
「「御意です」」
二人が答える
こうして蜀軍の軍議はお開きとなったのだった
軍議が終わって暫くした後、劉備が一人自室で政務をしていると、それを訪ねる一人の将があった
「劉備殿、実はこの度のことで少々お話が…」
「はい?なんでしょうか」
実は…、とその人物は懐から書簡を取り出しつつ話す
「簡雍殿が具合が優れぬらしく、私に董卓殿への使者の件を頼みたいと申されまして。これが簡雍殿より預かった諸葛亮様の書かれた親書でございます」
劉備が見ると、確かに諸葛亮が書いた物であるらしい印が押されていた
「そのため、私が代わりに董卓殿の下へ向かいますゆえ、劉備殿の確認を取りたく訪れた次第でございます」
「あ、そうだったんですか~」
そういって親書に自分の印を押しその人物に渡す
「じゃあ、お願いしますね。…え~と」
そこでその人物の名前をど忘れしてしまった劉備が言葉を詰まらせる
「…未だ劉備殿に降って日が浅い故、名前を憶えてもらえませんでしたか。我が名は…」
そう言ってその人物は自分の名前を告げた
「厳顔と同じく蜀の将、張任でございます」
Tweet |
|
|
153
|
17
|
追加するフォルダを選択
董卓IF√二十六話です
久しぶりの本編ですが、ここからはクライマックスに向けて真っ直ぐ進んでいけると思います
ただ、話の展開がワンパターンな気がしますがここから少し違う展開になっていく予定なのでご了承ください
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けるとありがたいです
追記 ここからの展開上、キャラクターに批判的な意見が上がるかも知れませんがそれは作者の力不足であり原作キャラの責任ではございませんので、「作者の書く〇〇が嫌い、おかしい」などはいいですが「〇〇がうざい」などのコメントは控えていただけますと幸いです