はじめに
この作品の主人公はチート性能です。
キャラ崩壊、セリフ崩壊、世界観崩壊な部分があることも
あるとは思いますが、ご了承ください。
一刃side
何が起こったのか一瞬分からなかった。だが次の瞬間、腹に激痛が走る。
視線をやると腹には小刀が突き刺さっていた。
「ぐっ・・・・・。」
思いっきり深く突き刺さっているので、下手に抜くと大量出血の可能性があるので迂闊には抜けない。目線をあげてみると、左慈と名乗る少女は俺を睨みつけながら見下ろしていた。そして、
「・・・・・・・兄さまの仇・・・・・・・・・・」
そう叫んだ彼女の瞳には涙が溢れていた。
(あぁ、そうか・・・・、この少女にとって俺は大切な何かを奪った怨敵なんだなぁ・・・・・。)
薄れゆく意識の中でそう思った俺は目の前の少女に笑顔を向け小さな声で、しかしはっきりと
「・・・・・・・ゴメンな・・・・・・・。」
そう言って意識を手放した。
舞華side
私は、目の前の光景に驚いた。介抱しようとしていた左慈と名乗る少女が突然、一刃に小刀を突き刺した。彼女の行動が分からなくて狼狽してしまったが、彼女の
「・・・・・・・・兄さまの仇・・・・・・・・・・」
と叫ぶその声と、その後の彼女の涙を見て私は理解した。
(この娘はきっと私と一緒で大切な何かを彼に奪われてしまったのだ、と。)
そんな彼女を止めようという感情は湧かなかった。今思えば動転していたのかもしれないがそれと同時にほんの少しだけ、彼女が(羨ましい)という気持ちがあったのかもしれない。
私の愛しい、一生共に生きていこうと誓った人を手にかけた一刃。自分の信じる正義を過信し、その思いで、誰も悲しまない世界を作るといって剣を振るう人。私は矛盾した考えだと思った。でも彼と一緒に過ごす中で、ほんの少しだけど分かった事があった。賊を斬り伏せたあの夜、人知れず悲しそうな瞳をして泣いていた姿を見てしまった。きっと愛紗さんや鈴々ちゃんも知らないであろうもう一人の『彼』の姿を。そこで見たのは戦場での闘神・一刃将軍ではない、年相応の少年『一(かず)』の姿だったのかもしれない。
彼の生い立ちは北郷様に聞いた。彼もまた、大切な何かを奪われた経験があるからかもしれない。それ故に真剣に、この理不尽が罷り通る世の中を、世界を変えたいと強く思っている、実現できると真剣に思いながら戦っている。そんな彼が今、目の前で血を流して動かなくなっている。そこで私は正気に戻る。すぐに近くにいた警邏兵に指示を出し、彼を城へと運んでもらうように頼んだ。少女は、一刃に何か言われたのか、呆然と立ち尽くしながら涙を流していた。今の行いを後悔しているかのようにも見えた。彼女も放っておく訳にはいかない。私は、彼女を連れて城へ戻ることにした。
左慈side
――――――――――――――――ただいま。礪(れい)いい子にしてたか?
そういって優しい笑顔で頭を撫でてくれるのは、兄さまだ。
「はい、兄さま。母さまの言うことをちゃんと聞いて家のお手伝いもしてますよ。」
えっへん、と胸を張って近況の報告をする。私の兄さまは洛陽に出稼ぎに出ていたので年に一度しか幽州・玄菟郡にある家には帰ってこなかった。もともと母さまは体が弱く、近年になって体調を崩され働き手がいなくなったため喰うに困る状況が出てきたから、兄さまが私たちを養うために洛陽へ仕事に出て行っていたのだ。昔は、兄さまがなかなか帰ってきてくれないことに腹を立てて駄々をこねたこともあったが、今では私たちのために遠い洛陽まで働きに行って私たちを養ってくれているんだって分かったから我が侭言わないようにしていた。だから年に一度、兄さまが帰ってきてくれる冬の時期は楽しみで仕方なかった。兄さまは洛陽でのことをたくさんお話してくれた。そんな兄さまが帰ってきているときは、遠慮せずに思いっきり甘えることにしていた。
そんなある日、兄さまが軍の兵隊になったと聞いた。それを聞いて私は兄さまが帰ってきたときに、
「兵隊にはならないでください。そんな危ない仕事しないでください。兄さまに何かあったら・・・」
そう泣いて兄さまに懇願した。でも兄さまは優しい笑顔で、
――――――――――――――――礪、俺はね・・・・礪たちがこれから先安全で安心して暮らせるような平和な時代を、世界を作りたいと思ったんだ。それに、礪たちのように力なく弱い者たちを守れるようになるための強さを手に入れたいとも思ってる。これは、他人任せでは出来ない。自分たちが行動してこそ成しえる事なんだ。父さんだってそうだったろう?礪を賊から守って死んだけれど、父さんはきっとそうしたことを後悔はしてないと思う。だって大切な礪を守れたんだから。だから俺も礪たちを守れるような強さを手にするために、今の仕事を選んだ。この選択に後悔はしていない。だから礪も俺を応援してくれると嬉しいな。
そういって笑顔で私を抱き寄せて頭を撫でてくれる。こんな優しい兄さまには武器を持って戦いに出向くなどして欲しくはないのが本心だが、兄さまを止めることが出来なかった。きっと兄さまは私だけじゃなく、この世界に住んでいる人たちすべてのために働いているんだ。それは妹として誇らしく思うことではないか、そう自分に言い聞かせた。
そんな兄さまは洛陽に戻る前に
――――――――――――――――そうだ、礪。今度帰ってきた時に紹介したい人がいるんだ。礪の『お義姉さん』になる人。まぁつまり俺のお嫁さんってことなんだけど、会ってくれるかい?
兄さまのその言葉には酷く吃驚したが、それ以上に嬉しかった。
(私に『お義姉さん』が出来るのか・・・・)
そう思うと、次に兄さまが帰ってくる日がいつにもまして楽しみでたまらなかった。
だけどそんな思いは打ち砕かれた。3ヶ月前に届いた書簡、そこには兄さまは先の連合軍との戦いで戦死したということが書かれていた。その事実を受け入れるのにどのくらいの時間がかかったのだろう?その間の私は魂の抜けた人形のようなものだったのかもしれない。
そして、兄さまが亡くなったことで問題も出て来た。それはお金の問題である。身体の弱い母さまは仕事をすることが出来ない。だから私が何とかしないと、と思い立っていたのだが世間は予想以上に冷たい。私のような子供にさせてくれる仕事はなく、とうとう喰うに困るようになってしまった。そのせいで母さまは病に倒れてそのまま亡くなってしまった。兄さまが死んでしまったことで、私は『家族』を失ってしまった。
その後、私は幽州内を浮浪することになった。食べるために盗みもたくさんやった。そんな時、幽州に北郷軍がやってきたという話を聞いた。先の連合戦では敵将を討ち取り、難攻不落の汜水関、虎牢関を攻略したという北郷軍。私の兄さまたちを討ち取った北郷軍、私が家族を失う原因となった北郷軍。そんな怨嗟の気持ちを抱いた私は北郷軍に近付くために彼らの治める土地に行くことに決めた。
そして数日前、この町に北郷軍の将が来ていると聞いてやって来た。ただ、道中ほとんど食にありつけなかったため、近くの店で盗みを働いたが運悪く捕まってしまった。そんな時に近づいてきたのは、左頬に傷があったから武官の人なんだろうと思ってたけど、兄さまのように優しい顔で
「大丈夫かい?」「どうして盗みなんかしたの?」
そう尋ねてきた。そんな問いかけに私はどうしたらいいのか分からなかったから黙っていた。
すると彼は手を差し出してきて
「とりあえず俺たちについておいで、傷の手当をしてあげるから。」
そう言ってきたから、私は彼の手を掴んで立ち上がった。
まだ痛みが残っているため少しフラついたがなんとか堪えて彼を見上げる。
「ねぇ、君名前なんていうの?」
突然そう聞かれたので、小さな声で
「・・・・・・・・・・・・・・・・左慈。」
そう答えた。すると彼は
「俺は北郷の一刃って言うんだ。」
と言った。その言葉を聞いた途端、頭の中に巣食っている『憎悪』がメラメラと燃え上がるのを感じた。気がつくと持っていた小刀で彼の腹を刺していた。力を入れて強く、強く。そして思っていたことを思いっきり叫ぶ。
「・・・・・・・・・・・・・・・兄さまの仇・・・・・・・・・・・・・」
ドクドクと流れ出る血を見て、私は正気に戻った。目の前の男は蹲っている。
だが、顔を上げて痛みを堪えながら小さな微笑を浮かべて
「・・・・・・・・・ゴメンな・・・・・・。」
そう言った。その微笑はあの日に失った兄さまを思い出させた。全然違う顔つきなのに、兄さまの
顔に見えた。その瞬間、私は何も考えられなくなってただただ泣いた。声を出さずに静かに・・・・。
冀州・鄴
「北郷様ぁ~。」
そう言いながら玉座の間に飛び込んできたのは関靖だ。息を切らしながら物凄い勢いで突っ込んできた。
「ぬぉっ!」
関靖は止まれずに一刀に突っ込む。一刀は苦笑しながらそれを受け止める。
「どうしたんだ関靖?そんなに慌てて・・・・。」
「大変なんです、一刃殿が襲撃にあったらしいです。短刀でザックリやられちゃって意識が戻らないとか。」
その報告に一刀は驚く。
「あいつが、そんな手傷を負ったのか?相手は?」
「なんでも窃盗を働いた少女に事情を聞いていたときにやられたらしいです。」
関靖の報告に少し首をかしげる。
「その少女のことを詳しく教えろ。」
「えぇっと舞華様の話では名前しか分かっていなくて、『左慈』という少女だということだけです。
その言葉に一刀は驚愕する。
「左慈だと!」
一刀の大声に関靖は吃驚してしまった。
(左慈ってあの左慈なのか?でも少女だって言ってたな・・・・。もしかするとこの外史での左慈は女なのか?まぁ、この世界の俺が存在しているってことは左慈や于吉が存在していてもおかしくはないが・・・・。一体どういうことなんだ・・・・。)
そう考えていると、別の伝令兵が飛び込んできた。
「北郷様、洛陽方面から荊州の劉表の軍が我が国境へ向けて進軍してきたそうです。」
(ちっ、こんな時に・・・・)
そう思って指示を出そうとすると、別の伝令が飛び込む。
「じょ、徐州国境に曹操軍が・・・。すでに国境の兵と交戦に入ったそうですが、数が圧倒的に多く徐州侵攻は時間の問題かと。」
その報告に一つの疑問が浮かぶ。
(劉表と曹操の進軍のタイミングがあまりにも良すぎる。これは曹操陣営の計略か・・・・。まったく正反対からの2点攻撃でこちらの戦力を分散させる気か・・・。それに今は一刃が離脱。少々分が悪いな・・。)
そう考えながらも、それらに対処するために召集をかける。
その後の軍議で、比較的ここから近い劉表へは愛紗、鈴々、恋、軍師に朱里を。徐州へは移動速度の速い騎馬構成の霞、白蓮、関靖、馬超、馬休、馬鉄、軍師に詠を向かわせることに決まった。
冀州国境付近
「北郷めに目にもの言わせてやるぞ!全軍、前進!」
冀州に向けて進軍するは劉表軍およそ5万。
「ふふふ、待っておれよ北郷・・・。」
劉表は不敵に笑う。その先に何が待っているのか彼は知らない。
徐州国境付近
「皆のもの、華琳様の期待に答えるために北郷軍に一泡吹かせようではないか!!」
春蘭の檄に兵たちは「応!」と高らかに答える。
徐州へ向かう曹操軍およそ3万。
「我が魏武の大剣は華琳様を勝利へ導くための矛。北郷軍に必ず勝ってみせる。」
そう決意を胸に徐州へ向かう。
??
「華琳様、劉表軍が進軍を開始しました。」
「そう、予定通りね。さて、桂花。あなたの友人とやらと考えた策で行くわよ。」
「はい、華琳様。かならずや勝利を捧げましょう。やるわよ、雛里」
「はひっ、お任せくだしゃい。」
期を見るは曹操率いる曹操軍、
その数は6万。
あとがき
群雄割拠編です。
無印ベースで作っていたのですが、真からまた出してしまいました。
雛里ちゃん!
他の方のSSでも大人気の彼女をこちらでも登場させました。
どうしても曹操軍にもう一人軍師を付けたかったもんで・・・・。
でも稟や風だとありきたりな感じがするので、まさかの雛里さまを曹操軍へ。
桂花と雛里のコンビで北郷軍へ挑みます。
左慈の真名は「礪(れい)」にしました。あまり使われない漢字を使ったので
読めない方が多いとは思います。ごめんなさい。やっぱりありきたりな漢字では
ちょっと面白みが無かったもので・・・・。
さて、そうなると『関靖』にもいい加減真名を付けてやらんといけませんね。
このままでは華雄姉さんの二の舞に・・・・。
拙い未熟な文章ですが、少しでも楽しんでもらえれば
幸いです。感想、コメントも大歓迎です。
Tweet |
|
|
39
|
3
|
追加するフォルダを選択
恋姫†無双の二次創作です。
一刃を襲った左慈とは何者なのか?
曹操たちの陰謀が動き出す。
拙い未熟な文章ですが、
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
続きを表示