No.150307

新・外史伝『希望』編 第四話『劉備、姉妹の義を結ぶ』

なんとか夜までにあげることができて何よりです。昨日の続きを投稿いたします。
今回の話はついに桃園の誓いを書いてしまいました…。
皆様に少しでも楽しんでいただけたら幸いです!
それでは、どうぞ!!

2010-06-13 16:37:16 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3899   閲覧ユーザー数:3202

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新・外史伝『希望』編 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『劉備、姉妹の義を結ぶ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は謎の男と力を合わせ、村を救った

 

…その日の晩

 

男は村の外れにある丘の上に大きな穴を掘っていた

 

「「「「それ掘れさっさ…やれ掘れさっさっ」」」」

 

数十人の白い服をまとった兵士たちがそれに続く

 

数メートル掘り進んだところで男は腕を止めた

 

 

「これぐらいでいいだろう…

 

みんな、彼らをここに」

 

「「「御意!」」」

 

男たちは穴から這い出す

 

男は、ゆっくりと後ろを振り向く

 

そこには今日の戦いで自分たちが殺めた盗賊たちの屍が綺麗に洗われた状態で並べられていた

 

白装束達は一人ひとりに白い服をかけてやりながら念仏を唱え始めた

 

「それでは、始めよう」

 

一人ひとりを穴に運んで行き、丁寧にその穴の中に横たえていく。

 

十人近くの盗賊を横たえ、その上に土をかけていく

 

 

そこに…

 

「ごめん…」

 

関羽、張飛そして、劉備がやってきた

 

男はゆっくりと振り返る

 

「なんだ?」

 

「何をされているんですか?」

 

「見てわからないかい?

 

盗賊たちの墓を作ってやっているのさ」

 

その一言に関羽と張飛が声を荒げた

 

「これはどういうことか、ご説明いただけるか?

 

このような者たちに墓を造るなど…!」

 

「悪い奴らなのになんでそんなことをしているのだ!?」

 

男の体がピクリと動く

 

そして、その体から静かな怒りが放たれる…

 

それが彼女たちにプレッシャーとなって襲いかかる

 

「(な、なんだ!?)」

 

「(う、動けないのだぁ~!こ、怖いのだぁ!)」

 

二人を恐怖に陥れるその無言の圧力はゆっくりと溶けて行った

 

男はため息を吐きながらつづけた

 

「はぁ~。

 

正直、がっかりしたぞ。劉備玄徳、関羽雲長、張飛翼徳。

 

劉備玄徳、君が救おうとしていたのは何だ?」

 

「こ、この乱世に苦しむ全ての人です。」

 

「では、関羽雲長。

 

彼らはどうだ?」

 

男は墓穴の中に消えた盗賊たちに顔を向ける

 

 

「この者たちは外道!

 

人を殺し、女を奪い、金を奪う…人間の道を踏み外した者たちです!」

 

男はそうだ、っと頷きながらこう続けた

 

「だが…彼らの多くは元々無害な農民だった。

 

守るべき家族や恋人もいた

 

だが、乱世にあえぐ人は他の人から物を女を金を奪う。

 

そして全てを奪われた人もまた道を踏み外し、外道に落ちる。

 

これが、この乱世の拡大を招く人間とやらの悲しい連鎖だ。

 

彼らもまた、乱世の被害者だからだ。」

 

「で、ですが!

 

この者たちは、多くの人の命を!!」

 

奪ってきた…確かにそうかもしれない

 

「そうかもな…。

 

だが、俺も…彼らの命を奪い去った」

 

「!?」

 

「理由はどうあれ、人の命を奪うは外道。

 

生まれ来るのは、苦しみや憎しみの連鎖しかあり得ない。

 

だから、彼らを根絶やしにしたところで…何にも変わらんのだ。」

 

関羽は声を絞り出す

 

「な、ならば!ならば貴方様が…天の御遣いとして我々を率いてください!

 

貴方様ならば…この乱世を!」

 

関羽の言葉を男は遮る

 

「俺は、その苦しみの連鎖を断ち切ることはできない。

 

俺に出来ることは彼らの命を全て背負って生きていくことだけだ。」

 

関羽は男を茫然と見つめる。

 

男はさらに続けた

 

「君たちの言う、天の御遣いはあくまでも導く者…世界を平和にするのはその世界に生きているものに他ならない。

 

地を這っている竜であろうとも、育て上げればやがて大きな空を天かける竜へとなる

 

 ・・

 この 俺は、その竜を育てるもの」

 

男はそう言いながら彼女たちに背を向ける

 

「もう少しで墓も完成する。

 

君たちは戻りなさい。」

 

男は、彼の部下らしき者たちのもとに歩いていく

 

「御遣い様!」

 

劉備が声をあげた

 

「なんだい?劉備ちゃん」

 

振り向きながら声をかける

 

「お願いします!どうか、私にお力を貸してください!

 

お話を…聞いてください!」

 

男は劉備に近づき、その目を見つめる

 

「澄み切ったいい目をしているね。

 

分かった、いいだろう。

 

明日の朝、君の家にお邪魔するとしよう。」

 

 

翌朝。

 

男は約束道理、彼女の家を訪れた

 

その姿は、昨日の導子服ではなく、白くきらきらした光を放つ服だった

 

三人は男に自分たちの決意を語り協力を仰ぐ

 

だが、そんな三人に白き衣の男は語る

 

「俺が導くべきものかどうか…これから少し試させてもらう。

 

まずは聞かせてくれ、劉備ちゃん。君の理想を…」

 

彼女の理想をおとなしく聞く

 

誰もが泣くことのないやさしい世界

 

みんなが笑っていられる世界

 

争いのない世界

 

「そいつは非常に難しいな…

 

正直、そいつは夢物語だ。

 

実現は無理だろう。

 

関羽ちゃんたちは彼女の理想をどう捕らえた?」

 

男の質問に関羽は答えた

 

「確かに…子供じみた理想です。

 

ですが、この方ならば…それができそうな気がする」

 

張飛が言った

 

「にゃ~…難しいことは知らないのだ…

 

でも、弱いものいじめをする奴らは鈴々がぶっ飛ばすのだ!!」

 

劉備は言った

 

「私は…強くないし、頭だって良くない。

 

でも、この乱世を救いたいって気持ちは…誰にも負けません!

 

だから、御遣い様…力を貸して!」

 

真剣に涙を流しながら言う劉備

 

「俺の力を貸すのは良い。だが、これから時代は乱世を極めていく…これだけは止められないだろう。」

 

そんな予言にも似た言葉に、劉備は泣きながらも…

 

「止める方法があるはずです。」

 

 

もしかしたら…この娘達なら本当に止められるかもしれない

 

だから、男は再び劉備に問うた

 

「最後の質問だ。

 

もし、その手を血で汚すようなことになっても、後悔せずに突き進めると誓えるか?

 

味方だけでなく、敵の死をも背負えるか?

 

力に溺れることなく、仁を貫けるか?」

 

三人を見つめる

 

劉備は男の放つ覇気に蹴落されかけたが、二人に支えられ踏みとどまる

 

「せ、背負います。背負って見せます!

 

それが、私の…けじめのつけ方です!!!」

 

 

「いいだろう。

 

だが、これだけは覚えておいてくれ。

 

どんなに悪人であろうと、命は命…たった一つだ。

 

それを奪った時点で人は心に傷を負う。

 

人を斬ったという逃れようのない事実は…時として人を狂気に駆り立てる。

 

それは、良くも悪くも…な。

 

決して兵の、民の命を軽んずることのないように。

 

その狂気を止められるのも、加速させるのも君たち次第だ。

 

だから、奪った命に見合うだけの成果を残せ…

 

それらを冒涜するようでは…只の外道になり下がるのだからな。」

 

言い終わると、男は笑顔を作る

 

 

 

「劉備・関羽・張飛。

 

君達がその理想に溺れる事の無い限り、僕の全力を持って…君達を導こう。

 

 

 

俺の名は、北郷一刀。

 

 

 

一刀が真名にあたる…そう呼んでくれ」

 

 

「「「はい…!」なのだ!!」!」

 

 

 

一刀「(ようやく出会えたな…乱世の希望に。

 

心やさしき竜に…

 

 

 

 

にしても、このキャラしんどいなぁ~…

 

葛厳さんには、まずは形からって言われたが、もう止めた。

 

似合わなすぎる…)」

 

 

 

そして、翌日

 

一刀と三人の少女たちは村はずれにある桃の木が生い茂る森に来ていた

 

劉備こと桃香は殻の杯を持ち二人の少女に向き合った

 

「私の力では…きっと何もできない。

 

だから、二人の力を貸してください!」

 

杯を持つ二人の少女に懇願する

 

「もちろんです!桃香殿…いえ、桃香様!」

 

「鈴々達がお姉ちゃんを守って見せえるのだぁ!」

 

「ありがとう…愛紗ちゃん、鈴々ちゃん。」

 

昨晩真名を交換し合い、この乱世を駆け抜ける誓いを立てた三人はここに義姉妹の誓いを結ぼうとしていた

 

一刀は酒の入った容器を持って三人に近づく

 

「さぁ…準備はいいかい?」

 

「「「はい!」」なのだ!」

 

一刀は頷くと三人の杯に酒を均等に注いだ

 

「では…ゴホン!

 

汝らに問わん…。汝ら劉玄徳を長女とし、関雲長を次女とし、張翼徳を三女とする姉妹の契りを結ばんとする者に相違ないか?」

 

苦笑いしながらも台本通りに言霊を紡ぐ一刀に、桃香が答える

 

「はい!違いありません」

 

一刀は頷くと、次のページをめくる

 

「汝ら、いかなる時も互いに助け合い。いかなる時もあきらめず、いかなる時も信じあい、同年同日同時刻に死することを誓うか?」

 

「「「誓います!」」のだ!」

 

「うん。

 

では、誓いの酒を持って三人を義姉妹と認めん。

 

誓いの杯を!」

 

一刀の言葉を受けて、三人はお互いの杯を打ち付ける

 

「「「我ら…ここに義姉妹の契りを結ばん!」」のだ!」

 

 

三人の龍が今、羽ばたく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく


 
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