「じゃあ、また旅に出るんだ」
一刀が目の前の三人に問いかける。
「ええ。私と風はもともと、兗州の曹操様に仕官するつもりでしたので」
「そうか、華琳に。なるほど、彼女なら主君として申し分ないだろな」
「あの~、今のは曹操さんの真名でしょうか?」
「ああ。私塾時代の友人でね。何でか俺を気に入ってくれて、預けてくれたんだ」
「はあ・・・」
呆気にとられる、稟と風。
「それで、趙雲さんは?」
「私はこの二人を兗州まで送ってから、また旅に出るつもりです」
「惜しいな。出来ればその武、うちで振るって欲しかったんだが」
白蓮が残念そうに言う。
「それは光栄ですな。・・・まあ、私としては、公孫賛殿より、そちらの御仁が気にはなりますが」
一刀を見る趙雲。
「俺?俺に仕えたって、たいしたことは出来ないよ?」
「ふふ。まあ、そういうことにしておきましょうか」
趙雲たちを見送った一刀たちは、そのまま、幽州へと帰還した。
その三日後、今度は涼州へ戻る華雄を、みんなで見送っていた、その時だった。
幽州の牧、劉虞から送られてきた早馬の知らせで、隣接する併州が賊徒に制圧されたと聞かされた。
小さいとはいえ、州一つを制圧する規模の賊である。
一刀たちはすぐさま、賊徒鎮圧に乗りだした。
最後にもう一働きさせてもらう、と華雄も協力してくれることになり、翌日、白蓮と一刀率いる三万の軍勢が北平を出立した。
その途中で劉虞率いる二万と合流し、総勢五万が、併州に入った。
だが、
「なんか、抵抗らしい抵抗もなく、ここまで来ちゃったんだけど」
桃香の言うとおり、併州に入ってから、ここ、州都に至るまで、賊軍は全く現れなかった。
「周辺に斥候を放ってるから、状況はすぐにわかると思う。けど問題は・・・」
「ああ、城に立つ旗だな。・・・なぜ、ここにあの旗がある」
一刀たちの視界に映る、城に立てられた旗には、信じられない文字が書かれていた。
黒地に赤でかかれたその文字は、「徐」。
「義兄上、あの旗と字をご存知で?」
愛紗が一刀に問う。
「ああ、よーく、ね」
「・・・あれ、輝里(かがり)ちゃんの旗だよね?」
「間違いない。・・・徐庶元直だ」
併州城の城門前。
その上に立つ人物に、一刀が声をかける。
「輝里!!これはどういうことだ!!」
「・・・見てわからない?この城は私が貰ったの」
その人物、青い装束をまとう、黒髪の女性が、一刀に答える。
「輝里よ!!賊を率いて城を乗っ取るなど、気でもふれたのか!!」
今度は白蓮が、徐庶に対して叫ぶ。
「・・・私は正気よ。・・・白蓮、いえ、公孫賛伯珪、そして劉翔北辰。ならびに全ての幽州の軍に告げる。この城に住む者たちの命が惜しくば、そこにいる劉虞の首を差し出しなさい。返答の期限は日没まで。いいわね?」
それだけ言って引っ込む徐庶。
「輝里!!おい待て!!」
「・・・劉虞どの、何か心当たりは?」
「な、何じゃその目は。わしは何もしとらんぞ!!あんな女、見たこともない!!」
あからさまに狼狽する劉虞。
「・・・どちらにせよ、何か対策を立てないとな。相手はあの輝里だ。生半可な手じゃ通用しない」
「斥候が戻ってきたら、すぐに軍議を開く。愛紗、陣を」
「は!!」
走り去る愛紗。
「さて、その前に」
くるりと、劉虞のほうを向く一刀。
「洗いざらいしゃべってもらいますよ?劉虞殿?」
冷徹な顔を劉虞に向ける一刀。
「あ、いや、その、じゃな」
おろおろとする劉虞。
日はいまだ中天にあった。
あとがき
さて、時間がなくて短いですが、六話の投稿です。
風と稟はやっぱり華琳のところに行かせることにしました。
星はもう少し後で、仲間に入る予定です。
で、賊徒討伐に来たはずなのに、とんでもないのと再会した一刀たち。
果たしてその真意とは。
劉虞との因縁とは一体?
第七話で、またお会いしましょう。
それでは。
ご意見ご感想、お待ちしております。
Tweet |
|
|
131
|
11
|
追加するフォルダを選択
刀香譚、六話です。
黄巾の乱が終結し、幽州へと戻った一刀たち。
そこにもたらされた一報。
続きを表示