No.148752

真・恋姫†無双~破界演義~ 序章・始マル外史

FALANDIAさん

ついにあの道士が登場。
緑○さんは今日も元気です。

とうとう外史が始まりました。
一刀の女たらし無双は?

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2010-06-07 14:57:55 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2172   閲覧ユーザー数:1977

「はぁ…。」

 

 

一刀は及川から湊瑠の失踪を知らされてから、資料館の件は一人で行ってくれるように告げて、

着替えもそこそこに、新調した鉄棒入り竹刀二本を引っ掴んで部屋から飛び出した。

学園の内から外まで、あらゆる場所を日が暮れるまで探してまわったものの、見つけられなかった。

それはそうだ。既に一週間は経過している。

仮にどこかに出かけたとして、もはや近場には居るまい。

ただ出かけたのか、何かを目的に学園を去ったのか、それは定かではないけれど。

 

 

「何処にいったんだよ、先輩…。」

 

 

湊瑠を見つけられなかった事に、落ち込む一刀。

いや、落ち込んでいるのは、湊瑠が自分に知らせる事無く去ってしまったからか。

 

ここで、少しこの物語の主人公達の関係を説明する。

一刀と湊瑠は、九州に居る、一刀の祖父が開いている道場の同門だ。

兄弟子である湊瑠は、よく一刀の組手の相手をしてくれていた。

師範の孫である一刀に遠慮してか、まともに相手をしてくれない他の兄弟弟子達とは違い、

湊瑠だけは、情け容赦もなく一刀を叩きのめした。

遠慮もなく正面から自分の相手をしてくれた湊瑠に、一刀はよく懐いた。

葎は、同じ道場にこそ居たが、同門ではなく、客人のような位置づけだった。

武者修行の一環、ということで、よく一刀の祖父と組手をしては、互角に打ち合っていた。

そんなこともあって、一刀にとって葎と湊瑠は憧れの対象であり、いつか越えるべき目標なのだった。

 

では、物語に戻ろう。

一刀は肩を落とし、学園内の並木道を歩いていた。

暗くなっては、湊瑠を探すのは難しいと判断し、学園に帰ってきたのだ。

 

 

「はぁ…。……ん?」

 

 

正面。

並木道の向こうから誰かが歩いてくる。

洗練された歩き方であったため、一刀の興味を引いた。

何物かは、手に何やら丸く平たいものを持っていた。

 

 

(あれは…、資料館の銅鏡じゃないか。あの男子、なんで持ち出し…ん?)

 

 

自分は何故、そんな事を知っている?

今日は湊瑠を探すのに駆けずりまわっていて、及川と資料館には行かなかったではないか。

それなのに、何故あの男が持っている物が、銅鏡で、しかも資料室の物だとわかるのか。

そもそも、暗くて輪郭しか見えていなかったのに、迷うことなく 男だ と思った?

これでは、まるで自分が――

 

こ の 場 面 を 知 っ て い る み た い じゃ な い か 。

 

歩いてきた男が、一刀の顔を見て舌打ち、怒りを露わにした。

 

 

「チッ。また貴様か北郷!何度俺の邪魔をすれば気が済むんだ!」

 

 

言うなり、一刀の側頭に向かって鋭い蹴りを放つ。

弾かれた様に顔を引き、スレスレで一刀は蹴りを回避する。

腰にさしていた二刀竹刀を抜き放ちながら、一刀は訝しむ。

 

 

(コイツ、俺を知ってる…?俺も…こいつを知っている気がする…。なんで…?)

 

 

一刀は連続して繰り出される蹴りを、時に見切って回避し、時に竹刀で捌きながら考える。

 

 

「この時代に随分と凶悪な得物をつかってるな。

 だが、考え事をしながら俺を相手出来るとでも思っているのか。舐めるな!」

 

「…っく!?」

 

 

頭、首、金的、と神速の三連撃を慌てて回避する一刀。

 

 

「って、お前!男としてそこを狙うのはどうかと思うんだぁ僕!!」

 

「うるさい黙れしゃべるなそして死ね。」

 

 

嗚呼!?この人、コミュニケーションとれない類の人だよ!と嘆く一刀。

と、そこに――

 

「― 静(セイ)ッ!」

 

「ぬっ!?」

 

 

横から割り込んできた一閃を、のけぞるように男が回避、距離をとる。

 

 

「へぇ。今のを避ける、か。なかなかやるみたいだね。」

 

「…なんだ貴様は。」

 

 

現れたのは、葎である。

右手に鍔のない杖のような刀を油断なく構えている。

 

 

「ちっ。状況は不利だな。なんとか離脱を―」

 

「そうは行かねェんだよ。」

 

 

かは、という笑い声の後に、

 

かしゃん

 

という、儚い音が響いた。

 

 

「な、何!?」

 

 

男の持っていた銅鏡が、いつの間にか砕けていた。

足元には軍用のナイフが突き立っている。

上から投げられたようだ。

上を見上げると、木の上に寝そべるような体勢でニヤニヤしている湊瑠の姿があった。

と、周囲に光が溢れはじめる。

 

 

「ちっ。またこの展開か!貴様ら覚悟していろ!必ず葬ってやるからな!!」

 

 

銅鏡を抱えていた男が、真っ先に光に飲み込まれる。

葎は、少々驚いたような表情をしてはいるものの、まだ落ち着いている。

一刀は、広がり続ける光よりも、湊瑠のことを気にしていた。

木の上に寝そべっている湊瑠を見上げて声をあげるが、もはや一刀自身にもその声は聞こえない。

そんな、焦ったような表情の一刀を湊瑠は見返し―

 

 

「サァ、外史(ガイシ)ノ始マリダ。 抜カルナヨ?」

 

 

と、何故かはっきりと聞こえる声で言った。

そして光は遂に三人を飲み込み―

 

ここで、一刀の意識は途絶えた。

 


 
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