No.148564

真・恋姫†無双~破界演義~ 導入部・枯渇荒野

FALANDIAさん

この話で、導入部は終了となります。
次の話から、物語の序章に突入となります。
お楽しみいただければ幸いです。

P.S. 及川ならきとこれくらいやってのける筈・・・(笑

2010-06-06 20:48:47 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2226   閲覧ユーザー数:2037

View:一刀

 

 

(―――変な夢を見た。)

 

 

暗い。

ただ暗くて、何も無くて。

そして、ひどく寂しい。

無明の空間で、俺はそんな感慨を抱いた。

 

 

(ここは…、どこだろう?)

 

(誰か…、いないのか。)

 

(あんなに…、笑顔があふれていたのに。)

 

 

―――思考に雑音(ノイズ)。

 

 

(…誰の?)

 

(笑顔…。思い出せない。)

 

 

そう。思い出せない。

なぜなら、まだ―――

 

 

 経 験 し て い な い の だ か ら 。

 

 

(…!?)

 

 

なんだ。

なんだ、この曖昧な記憶。虚ろな感情は?

ひどく、心が寒い。

まるで、何もかも失って、途方も無く長い時間が過ぎて、

精神の全てが磨耗してしまったような、心の荒野。

そう思った瞬間、暗い世界に、不毛の荒野が広がった。

 

いつの間にか自分の正面、数歩先に人が立っていた。

影のような(顔が見えない)、襤褸襤褸(ぼろぼろ)になった外套を纏い、

幾つもの武器(剣・槍・戟・斧・矢。数え切れない。)が突き刺さったまま立つ姿。

外套の隙間から見えている身につけた服は…フランチェスカの制服に似ている。

 

 

(…ハジマル…)

 

 

突然、影が喋った。

その声は、ひどく果敢無い細さで、

どこかで…、聞いたような気がする声だ。

 

 

(…ハジマル…)

 

 

影が繰り返す。

 

 

(始まるって、何が…。)

 

(…ガイシ(外史)…ガ…ハジマル…)

 

 

外史?

なんのことだろう。

 

 

(外史って、何だ。)

 

(…ハジマル…)

 

 

影は繰り返す。

投げかけた質問に答えられなかったことに、少し苛立つ。

と、少しだけ視界がひらけた。

 

 

(外史(ガイシ)…オ前へノ試練ダ。)

 

 

顔は未だに見えない、その影の口元。

引きつったように、張ったように動くソレは…。

 

 ホ ウ タ イ じゃ な い か ?

 

(獅子神先輩…?)

 

(北郷一刀…)

 

 

かふ、と。

笑うように、影が黒い液体を口から吐き出す。

 

 

(!! 獅子神先輩!)

 

 

轟、と。

景色がいきなり前へ流れ出す。

いや、違う。俺が後ろに引っ張られているんだ。

影から、強烈な勢いで引き離されていく。

 

 

(獅子神先輩…。獅子神先輩!!…獅しっ!)

 

 

影の口元が、裂けたように、狂ったように。

ニィ、と吊り上がる。

暗くて見えないその眼窩が深紅に妖しく光り…――

 

 

( 抜 カ ル ナ ヨ ? )

 

(義兄さん!!)

 

「…っは!?」

 

「ぅおわ!?びっくりした!」

 

 

周囲を見渡す。

ここは寮の部屋のようだ。

何故か居る、シ○ーの姿勢で硬直したままの及川の顎をとりあえず踵で蹴り上げる。

YES!!と、意味不明な台詞を吐きながら宙に浮いた及川に、

腹、胸の順でワンツーを打ち込んだ後、胴回し後蹴りでエリアルフィニッシュ。

吹き飛んでいく及川の顔は、満足気だった。

 

 

「で、人の部屋で何してんだ貴様。輪廻を断ち切るぞ。」

 

「ナチュラルに来世まで殺しにかかるカズピーに感動を禁じえへんな・・・。

 忘れとるようやな。今日は宿題で資料館に行く日やで。約束しとったやろ?」

 

「あ…。」

 

 

普通に忘れていた俺である。

 

 

「あー…すまん。完っ全に忘れてた。」

 

「なんや、うなされとったようやし、疲れてんのと違うか?」

 

「オウ、待てコラ。なんでうなされてたとか知ってんだよ。」

 

 

コンマ1秒でスリーパーホールドをかけて尋問に移る。

そんな俺に、及川は――

 

 

「やさしくしてね?(ポッ」

 

 

脇腹に両側から貫き手を突き込んだあと、その場でジャンプドロップキック。

ありがとうございますっ!と叫びながら、及川が窓を突き破って飛び出していく。

ガラスが散乱してしまった部屋を見ながら俺は決意する。

 

 

(後で及川に掃除させよう。窓ガラスの修繕費もアイツ持ちだな。)

 

 

一度頷いて、顔を右に移すと――

 

 

「ところでカズピー。」

 

「ッッッゥをぉ!?」

 

 

いつの間にか、及川が立っていた。

バクバク鳴り止まない心臓に「しゃしゃしゃ、ステイ、ステイだぞぅ?」と、

錯乱気味に沈静指示を出していた俺に、及川が爆弾を投下する。

 

 

「獅子神先輩が先週の練習試合から寮の部屋に帰ってへんらしいのやけど、何か知らんか?」

 

 

 

 

 


 
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