彼の覚醒を促したのは、花のものと思う生命力溢れる香りだった。
自分の生活圏では縁遠い・・・まぁ「散歩」で気がついたら山中とかは珍しくないのだが・・・・・・土のにおいを伴ったそれに誘われ目を開こうとし・・・
その視界が白く焼かれ、顔をしかめた。
どうやら太陽を直視してしまったらしい。
「って外かよ?!」
お約束の「見知らぬ天井だ」も言えず、自身が判断した結論にワンテンポ遅れてツッコみ、がばりと彼はその半身を起こした。
やっと馴れた目はいくらかの残像を残し、緑とも紫とも知れぬ歪なカタマリを映し出すが、それでも周囲を確認するのは役立ってくれたらしい。
もっとも、香りである程度の予見はあったのだが・・・・・・
「天国・・・・って割りにゃ、こぢんまりとしてるよな」
庭、という表現が一番見合っているようにも思えた。
学校の校庭ほどでも、その手入れされた木々と奥にある柵が、この場所の印象をそうと形付ける。
それにしても、東京辺りの地価を考えればとんでもない広さとはいえるが、知人宅にはもっと広いところもある。
ここほど、花の支配下にはないのだが。
色とりどりに香る、小さな花園。
彼は自分を責めるように、そっと呟いた。
「場違いだ」
小さなこの楽園の主は直に姿を見せた。
もっとも、主と判断したのは彼個人のそれに過ぎないが。
彼の周囲にはいなかった・・・・あえて近いと言うなら(元)貧乏神憑きの少女だろうか・・・酷く気の小さそうな、厚手の実豚やコートにみをつつんだ、幼い印象のある少女だ。
なんとなく、対象外。
彼女は怯えきった様子で、遠巻きに彼を見ていた。
「いえ」なのだろう。小さな、そういう意味では彼女の印象にぴったりなログハウス風、な小屋。
その、扉の隙間から。
「あ、えーと」
彼は迷ったが、それでも立ち上がり、そちらに向かってみた。
微妙な距離での見詰め合いは、正直苦痛だったのだ。
だが彼女はそんな積極的なコミュニケーションの手前の行動だけで怖がってしまい、慌ててその戸にできていたわずかばかりの隙間(つながり)すら拒絶しようとし・・・
ぶべっ
派手な音を立てて転んだ彼の様に、結局その手を止めた。
「ってーぇえ」
「だ、だいじょうぶですか」
印象どおりのまるで消えてしまいそうな声で、少女が声をかけてきた。
無意識に駆けつけようとすらしたのだろう。
戸の隙間は、さっきよりも僅かながら大きい。
何もないところでこけた彼は、本当に嬉しそうな顔でそう声を掛けてくれた少女に笑った。
「よかった」
「え?」
「優しい子だったからさ。
オレは、横島忠夫。GSなんだけど・・・・・ここ、どこかな?」
「じーえす?えっと、私はマリエル・・・
ここは、私の、花園です」
・・・・・・・・・・・
なんか、データあさってたらでてきた(笑
Tweet |
|
|
2
|
1
|
追加するフォルダを選択
横島忠夫ファルガイア紀行verその2
「WILD/WEST/WIND」 が動ならこっちは静
横島忠夫が迷い込んだ、たったひとりの少女が護る「秘密の花園」。
ほのぼの路線。どこの「彼女」かは・・・まぁこれから?