今日が修行の最終日、おっさんは最後に腕試しと言って、春蘭と関羽の時と同じように二対一で戦うことになった。もちろん、真剣を使うわけにはいかないので、今までどおり木刀だ。
春蘭達に勝ったおっさんの下で修行した俺達だ。しかし、良いところまでいけるだろうと慢心したのが悪かった。
「うぼああああああああああああっ!」
「蒼介ぇぇぇぇっ!?」
すぐに俺はおっさんの斬撃によって、あっさりと星になっていった。その後、一刀も同じことになったのは言うまでもない。
「はぁ・・・はぁ・・・だ、だめだぁ~・・・全く隙がねぇ・・・」
「これじゃ、何度やったって同じだよ・・・」
「そりゃそうだ。たかが一ヶ月足らずで、俺が負けるわけがないだろ?ハッハッハ!」
高笑いを決める龍玄。笑えなくしてやろうかと思ってたが、これ以上腕が動きそうないから勘弁してやるよ、ちくしょう!
「ま、そう悔しがるな。今のお前達なら多分、関羽や夏侯惇達と互角に渡り合えるだろうよ。それぐらいあれば十分だ。」
「えっ!?ホントですか!」
「ああ。だからと言って、日々の鍛錬は忘れるんじゃないぞ?強さに限度はないんだからな。」
「「「はいっ!(おうっ!)」」
「いい返事だ。・・・さてそろそろ迎えが来ると思うんだが・・・」
そう言って俺達はキョロキョロと周りを見渡してみると、右の草陰からガサガサと音が鳴った。
「お、来た来た。おーい!こっちだぞー!」
草陰から出てきたのは、二つのピンク色のサボテンがトレードマークの少女だった。
「季衣か!久しぶりだな~!」
「あっ!兄ちゃんだ、久っしぶりー!元気だった?」
季衣こと許緒は一刀を見つけると、勢いよく飛び込んできた。
「わぷっ。ほらほら、そんなにくっつくと話しにくいだろ。・・・ほら、この通り元気だぞ。」
「良かった~♪華琳さまったら、兄ちゃんがいない間少し元気がなかったんだよね。」
「あの華琳が?そうか、心配させちまったな・・・」
一刀は少し寂しげな目をしながら、許緒の髪をそっと撫で上げる。・・・くそ、一刀のくせに見せ付けてくれるじゃねえか。
「さて・・・愛紗達もそろそろ来る頃かもな。」
俺は期待に胸を膨らませながら、みんなが来るのを待ち続けていると、後ろの方から誰かがこっちに歩いてくる足音が聞こえてきた。
「おお、来たか!さあ、みんな俺の胸に飛び込んで来い!」
俺はバッと両腕を広げて、受け止める準備をする。・・・さあ、来い!
兵士E「はい?お呼びでしょうか。」
・・・・・・・・・・・
兵士かよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!
俺はその場で身体を地面に突っ伏した。
「あの・・・どうかなされましたか・・・?」
「いや・・・いいんだ。気にしないでくれ・・・」
「は、はぁ・・・」
兵士は蒼介の暗い反応に、どう返事していいか分からないんでいた。
「それで、愛紗達はどうしたんだ?」
「それが・・・先々日に西涼の太守から同盟の誘いがありまして・・・」
「西涼から?そんなところからどうして?」
「現在、西涼では五胡による襲撃を受けており、勢力的に五胡が優勢たっておりまして、それで西涼太守馬騰から同盟要請が来たという次第です。」
「で、人の良い桃香のことだから即決だったんだろ?」
「はい。その通りでございます。」
「なるほどな・・・」
桃香なら、そんな状況にいる人達がいると聞いたら黙って見てるわけがないよな・・・あいつらしいよ。
「・・・分かった。すぐに向かう。」
「はい、分かりました!」
「それじゃおっさん、俺は用事があるから行くぜ。」
「ちょっと待て蒼介!武器もなしに戦場に行く気かい?」
「あ・・・」
そうだった。身体を鍛えたのはいいが、戦う武器がなきゃ意味がない。
「・・・ったくよ。ほら餞別だ。ありがたく受け取れ。」
そう言っておっさんが手渡してきたのは、大きさが俺の身長と同じくらいある大剣だった。
「そいつはお前らが修行している間に鍛え上げていた剣だ。ちなみに、剣の名前は葬る刃と書いて‘葬刃,(そうじん)だ。」
「葬刃・・・」
剣の柄を握り締めると、手に吸い付くように馴染んでくる。まるで身体の一部にあるような一体感だ。
「あと、一刀の分もあるぞ。」
「えっ?俺のもあるんですか!」
「もちろん・・・ほらよっ。」
おっさんが一刀に渡したのは、一見シンプルな形をした剣だ。
「おっと・・・って軽っ!?これホントに剣なんですか?」
「ああ。お前さんは修行の中で、足の速さと剣速が一段と際立っていたからな。それを邪魔しないように軽くして作ってある。そして名前も、速さにちなんで‘紫電一閃,(しでんいっせん)って言う。」
「紫電一閃・・・」
剣の柄を握り締めた一刀も、俺と同じ感覚なんだろう。顔を見てすぐに分かった。
「いいか?お前さん達もこれで一人の武人なったわけだが・・・ひとつだけ言っておくぞ。どんな状況に立たされようが、惑わされようが・・・自分の意志、決意を貫き通せ。それが武人ってもんだ。」
龍玄はまるで二人を息子に言い聞かせるように言った。そして俺達は、
「「はいっ!」」
言われたことを深く胸に刻み込み、勢いよく返事をする。
「よし・・・!そんじゃ、急いでみんなの所に向かうぞ!」
「御意!」
そして俺は、戦場にいるみんなの所へと馬を急がせていった。
「俺達も急いで帰るとするか。」
「あっ・・・」
ぎゅるるるるるるるるるる~・・・。
こっちは季衣が勢いよく腹の根で返事をする。
「ははっ!途中で肉まんでも買って行くか?」
「うんっ!」
一刀と季衣も、別の意味で馬を急がせていった。
そしてこの人は、
「さて・・・また暇になったことだし、一人旅の続きでもするとしますか。・・・~♪」
鼻唄を歌いながら、ゆっくりとした足取りで龍玄は五台山を降りていった。
西涼の大地に多くの雄たけびが響き渡る。その中に四人の少女が苦しくも奮闘している姿が見える。
「くそっ・・・!このままではキリがないぞっ!」
「にゃー!斬っても斬っても数が減らないのだっ!」
「関羽、張飛もう少しだ!もう少し・・・耐えてくれ・・・!」
そう呼びかけるのは、後ろ髪を一本に纏め上げ、白銀の槍を振るう少女だ。
「しかし、馬超殿っ!この人数であの数はきびしいぞ!」
そう、彼女の名前は錦馬超。そしてもう一人、
「そうですよ、お姉さま!さすがにこれはキツイってば!」
馬超とは対照的な性格をしている馬岱。かの猛将とまで言われた彼女らでも、この数は難しい。
「(ちくしょう・・・!こんな時に奇跡ってのは起こるもんだろ・・・!)」
馬超が小さな確率の奇跡を心の中で祈っていると、空から声がしてきた。
「な、なんだぁ!?」
「こ、この声はまさか!?」
愛紗が察した通り、その声の主は、
「うらああああああああああああああああああっ!!」
空中で葬刃を大きく振りかぶり、猛々しい雄たけびを上げている蒼介だった。
そして、振りかぶられた刃が地面へと叩きつけられる。
ズシンっ!と大きな音をたつと同時に、近くいた多くの敵兵士は綺麗に勢いよく吹き飛んでいった。
「よっと・・・ただいま。」
※どうもお米です。なんか主人公がチート級になるってよくある話ですよね。こんなありきたりな話ですが、読んでくださってどうもありがとうございます。さて、馬超と馬岱が登場したこの話。やっとキターーーーーーーーって方がいてくれると書いている私も書いた甲斐があるというものです。それでは次回、失礼します~。
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第二十六話目となります。今回から恋姫達も再び登場です。
最近は暑いですが、負けずに書いていきたいと思います。