No.143654

真恋姫無双 おせっかいが行く 第八話

びっくりさん

最初のページに騙されてはいけません。
これは程立の罠です、それか戯志才の策です。
ギリギリ期日に間に合いました。

正直、予想以上に長くなってしまった・・・。

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2010-05-17 02:07:52 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:21471   閲覧ユーザー数:15972

 

 

「ありがとう。助かったよ」

 

その言葉と共に私こと、真名を音々音の頭撫でるのは、音々が守ろうとした犬を一緒になって助けてくれた男性なのです。頭を撫でられるなぞ、記憶している中で物心ついたくらいの頃にしてもらったかな?というくらい幼い頃ですぞ。まさか、そんなことをされるとは思わなかった音々はびっくりして変な声を出してしまいました。恥ずかしいのです。

 

「ん~、そうするとあまりしないほうがいいかな?」

「いえ・・・嫌ではないので気にしなくて良いのですぞ」

 

思わず返した言葉でしたが、本当に嫌ではなかったのです。今までは役人になる為に必死に勉強してきたから、あまり褒められたことがなかったのです。なので、さっきのは嫌というよりも嬉しさしか感じなかったのです。そして、魚取りからの帰り道も・・・。

 

「はれ?」

 

今から考えると、その日一日はいろいろなことが起こりました。音々は元からそれほど体力があるほうではありません。疲労が限界まで達していたことは簡単に想像できたのです。足から力が抜けて倒れそうになってしまったのです。でも、倒れることはありませんでした。

 

「おっと。今日はいろいろあったから疲れちゃったんだね」

 

優しく音々を支えてくれた人がいたからなのです。今度は驚くことはなかったですぞ。なんとなく、支えてくれると思っていたからです。そう思っていたら、いきなり抱き上げられて肩の上に乗せられてしまいました。肩車というそうです。

なんだか、普段とは違った視点だったので面白かったので、思わずはしゃいでしまったのです。

その後、家につくまで肩車をしてくれました。家についたとき、また優しく頭を撫でて感謝の言葉をもらいました。いないのでなんとなくになるのですが、もし音々に兄いるとしたらこんな感じだろうなと思います。べ、別に兄になって欲しいとか考えていないのですぞ!そこらへんは勘違いして欲しくないのです!音々はそんなお子様じゃないのですぞ!!

 

これは、そんなツンデレ娘を居候させているおせっかいの物語である。

 

 

 

 

 

 

恋の案内で村の入り口まで向かった一刀達が目にしたのは子供を連れた程立と戯志才、それとその子供達の母親らしき女性を背負った趙雲だった。さすがに史実で武官だけあって、趙雲は少し息を乱していたが、深呼吸を2,3回すると呼吸を整えた。対して、程立と戯志才の息は荒くぜぇぜぇと苦しそうに呼吸を行っている。

 

「どうしたんだ?一体?」

「今は、説明している暇はありませぬ。申し訳ないが、この方をお願いします」

「あっ、ちょっと!!」

 

趙雲は一刀に背負っていた女性を預けると来た道を戻るように駆けていく。一刀が待ったをかけようとするも間に合わず、暗闇の中に消えていった。が、そのすぐ後を恋が追っていっていた。気づいたときには恋の姿も暗闇に消えた後であった。

 

「恋まで・・・こうなったら」

 

ピューイ!

 

一刀は指笛を一回吹くと程立達に向き直り語りかける。

 

「とりあえず、一旦家にいこう」

「「わかりました」」

「君達もおいで。ご飯を食べさせてあげるから」

「「「は、はい」」」

 

一刀は趙雲から預かった女性をお姫様抱っこで抱えなおすと家に向かって歩き出す。程立と戯志才、子供達はその後に続いて歩き出した。と、一刀はそこで趙雲、恋が消えていった方をずっと見ている陳宮に気がつく。

 

「呂布殿・・・」

「陳宮ちゃん」

「あっ・・・」

「大丈夫だよ。恋達なら無事に戻ってくるさ。俺達は恋達が戻ってきたときに暖かいご飯を出せるように待っていよう?ね?」

「・・・そうですね」

 

一刀の言葉に納得すると、陳宮も家に向かって歩き出す。もう彼女の中に不安はない。それは恋のことを信じているからだ。それが出来たのは一刀の言葉があったから。恋とは別に一刀への信頼がどんどん強くなっていると感じる陳宮だった。

 

 

 

 

~趙雲サイド~

 

「ふっ・・・ふっ・・・」

 

私は日も暮れかけ、暗闇に支配されてきている道を走る。なにやら後ろから私を追っている気配を感じるが敵意がないので捨て置く。今、しなければならないのはこちらに向かってきているだろう輩の排除だ。

 

「すぅ・・・はぁ・・・ここで、待ちうけよう」

 

森が開け荒野に変わるところで止まり、私は走ってきて乱れた息を整える。前方には数百単位だろう人影が砂煙を上げてこちらに向かっているのが見えた。正確に後を追ってきたとなると、どうやら密偵が私達の後をつけていたのだろう。普段の私ならそんな密偵なぞ簡単に察知して始末するのだが、さすがに、具合の悪い女性を背負った状態ではその女性に気を配らねばならない為、密偵の気配を察知することが出来なかった。事情を知らない白士殿を巻き込んでしまったが、その謝罪は後でたっぷりとするつもりだ。まずは、自分の起こした失態をぬぐいさらねば!

 

「さぁ、来い!」

「・・・あれを倒すの?」

「そうですが、貴殿は確か・・・呂布殿?」

「ん・・・手伝う」

「かたじけない」

 

敵影を見つけて気合を入れた私の横で、さきほどから感じてた気配がとまる。それはさきほど白士殿と一緒に紹介された呂布殿だった。彼女は一目見ただけでわかる。かなりの腕前を持つ武人だということが。そんな御仁が手伝ってくれるというのだ。これほど心強いものはあるまい。

 

「では、呂布殿は左軍を」

「・・・わかった」

「御武運を」

「そっちも・・・気をつけて」

 

私達はお互いの武器を軽く当てあうと敵影に向かって駆け出した。

 

「さぁ、来るがいい!常山の昇り竜、趙子竜が槍の冴。とくと見せてやる!」

「呂布・・・奉先。邪魔する奴は斬る!」

 

私と呂布殿の短い時間だが、圧倒的に不利な人数の戦いが始まるのだった。そのときは気づかなかった。私には呂布殿以外にも援軍がいたことを。

 

 

 

~敵陣内~

 

「報告!前方に少女二人の姿を確認。一人はさきほどの三人の一人でありますが、もう一人は違います。赤い髪の少女です」

「ふむ・・・しかし、たった二人だ。恐れることはあるまい!そのまま突撃。それからは好きにするといい」

「了解。楽しませてもらいますよ」

 

「お前ら。前にいる女は好きにしていいらしい。せいぜい楽しめ。突撃!!」

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 

 

 

~恋サイド~

 

「どうやら、我らが二人なのを知って油断してるみたいだな」

「関係ない・・・全部、潰す」

「違いない。では、後悔させてやりましょう」

「(コク)」

 

恋と趙雲は敵に向かって今までよりも速く走った。恋、気配を感じてからずっと思ってた。こいつらの中に、あの子をいじめた奴がいるって。さっき、おしおきしたのに・・・でも、やっぱり許せない。しかも、今度は一刀の村にまで来た。一刀は優しい人。恋がお腹すいてるときに、にくまん買ってくれた。他の人は冷たい目で見てたのに・・・。一刀は優しくしてくれた。それに、一緒にあの子を助けてくれた。だから、恩返し。あの子をいじめたこと、一刀の村にまできたこと、許せない。今度はさっきみたいに甘くない。

 

「お前ら・・・邪魔。斬る!」

 

 

 

 

 

実際はただ、趙雲達を追ってきただけで、ここが一刀の村だと知って来たわけで恋の勘違いなのだが。恋の怒りと趙雲の義理により、戦闘が始まって数分。数では圧倒的に有利に立っていた恋曰く犬を苛めていた奴らーここでは役人軍にしておくーは恐怖に慄く。目の前にはたった二人と侮っていた少女。が、いざ蓋を開けてみれば化け物じみた実力を持った猛者であった。

 

「さっきまでの勢いが感じられんな。だが、手加減はせぬぞ!」

 

白い着物に赤い槍を持った少女、趙雲は正確無比の槍裁きで相手の急所を確実に捉える。その槍はまるでマシンガンのように次々と突きを見まう。

 

「邪魔するな」

 

対照的に赤い髪の方天戟を持った少女、呂布はその豪腕で縦横無尽に戟を振り回しているようで確実に敵を捉え、一度に数人を切り裂いていた。

 

「なんなのだ、一体?あいつらは本当に我らと同じ人間なのか?」

 

自分の兵が次々とやられていく中で、件の役人は恋達の実力に恐怖していた。もう、兵が半数以上も倒され、役人のところにくるのは時間の問題。役人の力では恋達に一瞬で斬られてしまうだろう。では、どうするか?

簡単である。この場から一秒でも早く逃げるのだ。懸命な判断である。逃げ切れたなら・・・。

 

「!?逃げ出した!!」

「何!!くっ・・・ええい。邪魔だ!」

 

役人が逃走したのを恋も趙雲も瞬時に理解したが、敵兵が邪魔で追うことが出来ない。彼女ら二人は焦った。一番の首謀者を逃がせばまた襲撃されてしまうからだ。趙雲には関係ない一刀が自分達のせいで襲われることに責任を感じて、恋は自分に優しくしてくれた一刀が襲われることの怒りと犬をいじめた奴が性懲りもなく襲ってきた怒りで。役人を絶対に逃がさないと思っていただけに、今の状況はよろしくなかった。そんな恋達の様子を見て役人は逃げられると確信したが、予想外の相手からの襲撃を受けて思惑が頓挫するのである。

 

「全く、たった二人しかいないのに生け捕りにも出来んのか。まぁ、その役立たずも障害物程度にはなるか」

 

必要最低限のものを持ち、まさに逃走しようとしたその時だ。

 

プス♪

 

役人の首筋に鋭い痛みが走った。まるで、針を何も考えずに刺されたように。

 

「痛っ!な、なんだ?今の痛みは?」

 

痛みを感じた首筋に手をやると、そこは晴れ上がっている感触があった。そして、ブゥウウウウンという昆虫の羽音が。役人は少し目線を上に持っていくと。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」

 

数十匹からなるスズメバチの群が役人を見下ろすように飛んでいた。実はこの役人、虫が大の苦手だったりする。それが目の前に群れているのだから、悲鳴を上げても仕方がないだろう。まぁ、虫が平気でも目の前にスズメバチがいたら驚くのは当然だが。

そのスズメバチの活躍で役人はその場から動けなくなるのだった。

 

 

 

 

 

 

「はい!はい!はい!」

 

ドスドスドスドス!

 

「せい!」

 

ドスドスドスドス!

 

「はぁああああああああああああああ!」

 

ドスドスドスドス!

 

趙雲は高速で槍を操り敵兵の急所を確実に突いていく。趙雲の周りには先頭不能の兵士の山が出来上がりつつあった。

一方、恋の方は・・・。

 

「邪魔・・・」

 

趙雲のような高速の突きとは反対に、その一撃一撃が強力な破壊力を持った斬撃の連続である。手数から言うと間違いなく趙雲の方が勝っているのだが、敵兵を倒した数を見ると圧倒的に恋が勝っていた。なぜなら・・・。

 

「どけ・・・」

 

「「「「「ぎゃあああああ」」」」」

「「「「「ぐあっ」」」」」

「「「「「助けてくれ~」」」」」

 

恋の振るうその一振りで数人の人間が斬られているからだ。趙雲は一人一突きなのに対して、恋は一振り数人。趙雲が恋に倒した人数で勝とうとすると、恋の数倍の手数を出さなければ絶対に数で勝ることはないのである。

そんな両者は、戦っている最中でも互いの戦況を認識できていた。

 

「呂布殿・・・なんという強さだ。私でも、敵うかどうか・・・」

「趙雲・・・早い。それに、一つ一つが正確」

 

そして、お互いに実力を認めていた。時間があれば手合わせを願いたいと思う趙雲だったが、今は敵の殲滅が優先である。しばし願望を抑え、敵の殲滅に集中するのであった。

片や恋はというと、ひたすらに前進を進めていたのである。恋の直感が役人はこっちだといっているのだ。方天画戟を振り回しつつ、その直感に従って前進する恋。彼女の通った後には痛みにもがき呻いている敵兵が何十人も横たわっていたのである。

 

「邪魔するな!」

 

ズバァアア!

 

「ぐあああ」

「見つけた・・・」

 

前進し続けていた恋の目にようやくターゲットの役人の姿が映る。自然と武器を持つ手に力が入り、恋の走る速度が上がっていくのだった。

 

 

 

「ひぃいい」

 

蜂の群に睨まれ、動くに動けなくなっている役人。そんな彼の後ろに新たな影が。

 

「誰だ?って、出たぁあああ!!」

 

後ろを振り向いた彼の目に飛び込んだ姿は、さきほど自分をボッコボコに叩きのめした少女だった為、認識するなり大きな悲鳴を上げるのであった。

 

「見つけた・・・蜂さん?」

 

やはり、先に到着したのは恋であった。ターゲットを見つけた恋の武器を持つ手に力が入るが、視界に入ってきたものに驚いて力が抜けてしまう。その視界に入ったもの、それは村の入り口にいるはずのスズメバチである。

 

「もしかして、見張っててくれた?」

 

ブゥウウウウウン

 

「ありがとう」

 

じっと蜂を見つめる恋は感謝の言葉を送る。なんとなく、自分の言っていることが正しいと思ったからだ。だから、感謝する。見張っててくれた蜂に、そして蜂をここまでくるように言ってくれた優しい人に。

 

「また懲りずにきた・・・今度は手加減しない」

「へ?ちょっと、待ってください。私はあなた様がここにおられることなんて知りませんでしたよ!本当です!」

「言い訳は見苦しい」

「本当ですって、信じ・・・ぎゃああああああああああああああ!!」

 

哀れ、本当のことを言ったはずなのに、信じてもらえず恋のおしおきをくらう役人であった。

 

「ここか!!」

 

勢いよく登場したのは趙雲である。彼女も並み居る兵を突いては捨てここまでやってきたのだ。そこで彼女が目にしたのは体中に痣や腫れを作り、すんごい形相で気絶している役人とそれを冷たい目で見下ろしている恋の姿であった。

 

「少し遅れてしまったか・・・」

「趙雲?」

「左様。少々遅刻してしまいました」

「ううん。大丈夫・・・趙雲もやっとく?」

 

恋は武器で倒れている役人を指す。趙雲としても思うことがないわけでもないが、さすがに今の姿を見てしまうとこれ以上は哀れで追撃をかけるのも気の毒だと思ってしまう。

しかし、何もやらないのも嫌だと思い出した結論は。本来行おうとしていた仕打ちの2割程度に抑えるということであった。

 

「では、少しだけ」

 

というわけで、脛を槍で数回殴打するだけで勘弁してあげるのであった。それでも、かなりの苦痛を伴っているのだが。

 

「さて、後始末をするか・・・」

 

目的を果たした趙雲と恋。恋は蜂にお礼を言い、戻っていくのを見送った。趙雲は恋と二人で倒した兵の中で比較的軽傷な兵を探し出し、二度とここらへんに近づくな、近づいたら今度は生きて帰れると思うなよ、と脅した後。怪我した兵を街に連れていくように言い聞かせる。運べないなら援護を呼べとアドバイスも送り。

 

「ただし、ここであったことを漏らすなよ?漏らせば・・・わかっているな?行けぃ!!」

「ひぃいいい!!」

 

兵を見送った趙雲はこれでやっと終わったのだと肩の力を抜き、恋を促して一刀の待つ家へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り、恋達が役人の兵と戦いを始めた頃。一刀達は今回のことについて事情を聞きたかったのだが、まず話すよりも一緒にいた子達について対処していた。

 

「この子達・・・それに、その女性もあまり食べ物を食べていないな」

「そうですな。明らかにやつれていますぞ」

「そうなんですよ。この女性は栄養失調で具合も悪いんです~」

「とりあえず、寝かせてあげて下さい」

 

家にくるまでの間に息を整えた二人の言葉により、女性を布団に寝かせることにした。一刀は女性を抱き上げているので、陳宮に布団を敷いてもらい、その上に女性を寝かせる。その周りに子供達が心配したようで寄ってきていた。そんな子達に一刀は優しく語り掛ける。

 

「ちょっと疲れちゃったみたいだね。この人は君達のお母さんかい?」

「「「(コクッ)」」」

「そっか。とりあえず、今は休むこと。君達も疲れただろ?ちょっと待ってて。甘い水を持ってきてあげるから」

 

一刀はそういうと、一旦台所へ行き三人の子供達とその母親、それから程立達の分の蜂蜜水をお盆に乗せてもってきた。

 

「はい。おいしいよ」

 

子供達に渡す。最初は戸惑ってなかなか飲もうとしなかった子供達だが、程立達飲んでいるのを見て恐る恐る飲み始める。一口飲んだところで。

 

「おいしい・・・」

 

とさきほど戸惑っていたのが嘘のようにごくごくと飲み始めたのだった。

 

「おかわり!」

「私も!」

「わたしも!」

 

どうやら気に入ってくれたらしい。おかわりまで要求するようになったのだから。一刀は笑顔でおかわりを持ってくる。

 

「慌てなくても誰もとらないから、ね?」

「「「うん!!」」」

 

一刀は忠告をしたが、聞いてもらえなかった。子供達に渡した瞬間。また勢い良く飲み始めたのだから。苦笑を浮かべる一刀だが、喜んでもらえたようなので嬉しく思うのだった。

 

「飲めますか?」

「すいません。こんな良くしてもらえるなんて・・・コホッ、なんてお礼をいったらいいか」

 

子供達の母親の背中を支えながら上半身だけ起こさせると蜂蜜水を差し出す。母親はそれを若干震えている手の両方で持ちながら、ゆっくりと少しづつ飲み込んでいった。

 

「おいしい・・・」

「今は、体をゆっくりと休めて下さい。後で食べ物も持ってきますので」

「そこまでしてもらっても・・・恥ずかしながら、私にはお金が・・・」

「お金を取るつもりはないですよ。今は体の具合を良くすることを考えてください」

「ありがとうございます」

 

一刀は母親が蜂蜜水を飲み干すまで背中を支えていた。やがて、蜂蜜水を飲み干した母親は疲れていたのかそのまま眠ってしまった。とそれにつられるように子供達も母親を囲むように周りで眠ってしまう。

一刀は子供達に風邪を引かないよう毛布をかけてあげると、ようやくこの親子達について話してもらえる時間が出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

「さて、話してもらおうかな」

「その前にまず謝罪させてください」

「謝罪って何に?」

「あなたを巻き込んでしまったことですよ~。私達がこの村にこなければこんなことにはならなかったんですから~」

「いや、そもそも何が起こっているのかさっぱりわからないから。いきなり趙雲さんにあの人をお願いって渡されただけだし・・・ちゃんと、一から説明してくれるかな?」

「それもそうですね。わかりました」

 

そもそも事の発端は、程立達が街に入ってすぐに起こった。何故かわからないが、ボロボロになっていた男の前に二人の幼い女の子が横切って行こうとしたことから始まった。姉を追いかける妹。微笑ましい光景である。が、遅れていた妹とボロボロの男がぶつかってしまったのだ。横から衝撃を受けた妹は倒れてしまう。それに気づいた姉は慌てて妹を助け起こすが、その二人に向かって怒声が振ってくるのだった。

 

「こんの薄汚いガキどもめ!!ちょろちょろと俺の服が汚れたわ!!」

 

この男、実はさきほど恋にのされた役人である。恋にのされたイライラが合わさり、怒りが最高潮に達していたときにぶつかった為、その怒りは自分よりも弱い女の子に向かって吐き出されたのだ。しかし、思い出して欲しい。今の役人は明らかにボロボロである。普通なら生地の良い服をまとって小奇麗なのだが、今回は恋によって服もボロボロ、体は痣とこぶだらけという有様。とても、役人には見えない。むしろ、庶民以下にしか見えない。そんなときに子供の純粋な言葉が事態を悪いほうへと持っていってしまうのだ。

 

「うるさい!おじさんは元から汚いじゃない!ちょっとくらい汚れたって変わらないよ!!」

 

これは姉の台詞である。妹が横から蹴られた形なので、彼女は怒っていた。それゆえの言葉である。だが、言った相手が悪かった。彼女は身なりから自分と対等な立場の相手と勘違いしてしまっていたのだ。

 

「ガキ・・・庶民のくせに役人である私に口答えするとは・・・おい!」

 

男はちょうど見つけた男が自分の関係者だった為、簡単な指示を出す。

 

「あいつらを連れて来い。全員だ」

「ぜ、全員ですかい?」

「そうだ。とっとと行け!」

「へ、へい」

 

命令された男は自分の聞き間違いかと驚いてしまった。しかし、役人の言葉に聞き間違えではないとわかり慌てて去っていく。命令を遂行するために。

 

「くくくっ、てめぇは俺様を怒らせた。貴様だけじゃない。家族共々皆殺しだ」

「やれるもんならやってみなさいよ!」

「その言葉、後悔することになるぜ」

 

少女は先ほどの男達のやりとりから自分の勘違いにうっすらと気づくのだが、彼女の性格が後に引くことを許さなかった。さらに言い返してしまい、もう回避不可能のところまできてしまった。

 

「連れてきましたぜ」

「ご苦労・・・さて、お嬢ちゃんよ。これでも、俺が汚い庶民とでも言うかい?」

 

男の後ろには数百人になろうかという兵達が並んでいる。男の庶民だと侮った子供に馬鹿にされてしまった怒りと、さきほど恋にやられてしまった経験により、男の持っている私兵を全て連れてきたのだ。兵達の姿を見た姉妹は完全に理解した。目の前にいる男が庶民ではないことを。兵達がきたことにより余裕が生まれた役人の嫌みったらしい口調にも反応できず、震えるしかなかった。

 

「さぁ・・・どうする?地面に額こすり付けて無様に土下座でもするか?」

「くっ・・・」

「お、おねえちゃん?」

「仕方ないの・・・相手は役人様なんだから。逆らえないわ」

 

姉である少女は、悔しさに口をかみ締めながらも土下座して地面に額をつけていった。

 

「む、無知で汚い私が・・・役人様に無礼を働いてしまい・・・すいませんでした」

「馬鹿が、許すわけないだろ?」

「がふっ!?」

「お、おねえちゃん!?」

 

役人は土下座している少女の背中を踏みつけた。蹴られた衝撃で一瞬、息を詰まらせ声すらも出せず苦しみ悶える少女。役人はそれにかまわず踏みつけた足を捻り少女に苦痛を与え続ける。こんなことをしていて気づかれないはずはなく、周りには人が多くいたが誰も役人に恐怖して少女を助ける者はいない。このまま、少女が嬲られ続けるのを見るしかないと周りの人が思ったが、その人垣の中から一人の少年が飛び出し・・・。

 

「その汚い足をどけろ!」

「ぐはっ!」

 

役人の腹部に強烈なとび蹴りを放ったのだ。後ろに吹っ飛んで倒れる役人には見向きもしないで、少年は少女を助け起こす。

 

「お、お兄ちゃん?」

「逃げるぞ。二人とも!!」

 

彼は姉妹の兄だった。妹を助け起こした少年はそのまま逃走を図る。

 

「奴らを追え!絶対に許さん。奴ら一族殺してしまえ!」

「はっ!」

 

役人の命令で、兵達が少年達を追って動き出す。

逃走といっても子供と大人の追いかけっこである。体力、身体能力共に大人に軍配が上がるのは必然。よほどの高齢相手でないと子供に勝ち目はない。必死に逃げる子供達だが、努力もむなしく追いつかれてしまう。

 

 

 

 

「残念でした」

「ちょ~っとオイタが過ぎたようだな」

 

少年の顔が悔しげに歪む。妹二人は泣きそうになってしまった。ニヤニヤと笑いながら兵達が少年達に手をかけようとしたとき。少年達に救いの手が差し伸べられた。

 

「それはあの男の方であろう?」

「「はっ?」」

 

兵達は横から聞きなれない声が聞こえた為、目線をズラすと・・・。

 

「えい♪」

 

ファサァ・・・

 

「「「「「ぐああああああ!目が、目が~~~!!!!」」」」」

 

突然、砂が広範囲にまかれ兵達の無防備だった目に入る。さすがに全員にはかからなかったが、前方にいた兵達全員にかかったので後方の兵達は前に進むことが出来ない。

 

「さぁ、この隙に逃げますよ」

「助けてくれるの?」

「そうですよ~。だから、今は逃げるのです」

「足止めできる時間も長くない故、行くぞ」

 

少年達を助けたのは趙雲、程立、戯志才の三人だった。

彼女らに導かれ、少年達は兵達から逃げることが出来たのだった。少年達の案内の元、見つからないように注意しながら少年達の家へ到着した。

 

「「「ただいま」」」

「コホッ・・・あら?おかえりなさい」

 

中には布団に横になって顔色の悪い女性が笑みを浮かべて子供達を迎える。女性は子供の後ろにいた趙雲達に気づき「どちら様かしら?」と少し不安気な顔になって問いかけてきたが、役人に殺されそうになったところを助けたなどと言えるはずもなく・・・子供達と一緒に遊んで仲良くなったということにしたのである。

 

「そうでしたか・・・それは、ありがとうございました。私がこんな姿でなんのおかまいも出来ませんし、何もないところですがお寛ぎになっていって下さい」

「はい・・・よければ、あなたの診察をさせてもらえませんか?多少ですが、私も医学の知識を持っていますので」

「そうですか?ですが、私には診察を受けるだけの手持ちが・・・」

「いえ、お金は結構です。私が診たいので診るだけですので」

 

そういって戯志才は女性の診察を始めるのであった。一方、趙雲と程立は子供達と話をしていた。どうやら、この子達の父親は病でなくなったらしい。それ以来、母親である戯志才の診察を受けている女性が女手一つで育ててくれていたが、それも一月前から体調を崩してしまい、今は長男が稼ぎに出て細々と暮らしているのだとか。それでも、長男もまだ幼いので職につけるはずもなく、お手伝い程度しか出来ないので稼ぎも少なく日々の生活は大変らしい。それでも、家族全員励ましあって生活してきたと。

 

 

 

 

「わたしとおねえちゃんでかじをやってるんだよ!」

「妹と二人で頑張ってます」

「そうですか~。偉いですね~」

「俺ももっと大きければ稼げるんだけど・・・」

「その気持ちは立派だが、決して焦るなよ。焦りは失敗を呼び込みやすい」

 

そんな風に和やかな話をしている最中に異変は起こった。最初に気づいたのはやはり趙雲である。彼女は何かに気づき、鼻をひくひくさせ始めた。

 

「・・・漕げた匂いがする」

 

その言葉に程立と戯志才が反応し、同じく匂いを探る。結果。趙雲の言った通り焦げ臭い匂いが感じられた。その上、家の温度が高くなったように感じられたのだ。その証拠に子供達の肌に先ほどまでなかった汗が浮かび始めていた。運動をしたわけではないのに汗が浮かぶのはおかしい。ここで、三人の頭に一つの可能性が浮かぶ。いや、可能性というか確信である。

 

「あなた達。今から大事な物を持って!」

「「「「え?」」」」

「急ぐのです!」

「揺れますが、少しの間我慢してくだされ」

 

親子はわけのわからぬまま、三人の指示に従う。趙雲は母親を背負い、家の裏から外へ出る。その後を子供達と程立が続く。そこで親子は初めて家に起こっていた異変に気づいた。

 

「い、家が・・・」

「燃えてる!」

 

そう、親子の家が燃えているのだ。親子は大きなショックを受けていた。そこに・・・。

 

「おい!見つけたぞ!さっきのガキどもだ!!」

「「「!?」」」

「まずいですね。撤退しましょう」

 

兵達に見つかってしまい驚く親子。もっとも事情を知っている子供達はともかく母親は事情を知らないので困惑している様子だったが。戯志才の言葉により、一行は逃走を開始。

一行を発見した兵が仲間に知らせている時間もあった為、しばらく道をじぐざぐに走ると再び兵達から姿をくらますことが出来たのだが、これも時間稼ぎにしかならないだろう。その短い時間で趙雲達三人はこれからの方針を話し合う。

 

「どうしましょうか?この街だと危ないですよ」

「この街以外のところか。我らの手持ちではこの人数で生活するには厳しいぞ」

「仕官するにも、この辺に有力な諸侯がいませんし・・・」

「この人数を少ない路銀で面倒を見てもらえて、尚且つこの街以外に住んでいる人ですか~・・・私達の知り合いにそんな人は・・・」

 

「「「心当たりなら一人だけ・・・」」」

 

程立の言葉は途中で途切れ、三人の頭は同時に一人の人物を脳裏に浮かべる。

 

「おい!いたぞ!!こっちだ」

「っち。考えてる暇はないようだ」

「ですね。とりあえず、向かいましょうか」

「駄目なら、そこでまた考えましょう~」

 

というわけで三人は親子を引き連れ、または背負い脳裏に思い浮かべた人物の村へと向かうのであった。

 

 

 

「というわけです」

「なるほどね。それで俺のとこに来たと・・・」

「はい。無理は承知でお願いします。どうかこの「いいよ」え?」

「だから、この親子を預かってくれっていうんでしょ?承諾したよ」

「あ、あの・・・その答えは願ってもないことなのですが、そんなあっさりと承諾できるものですか?」

 

断られることも覚悟していた戯志才だったが、一刀が予想以上に即答で承諾してくれたので、逆に不安になってしまった。彼女も程立もまだまだ一刀のおせっかいを理解するには時間が足りないようである。

 

「ん?できるよ。話を聞いた限りじゃ、この親子は相当いい人達じゃないか。そんな人が困ってるなら是非助けたいと思うね。君も同じ立場ならそうしただろう?」

 

戯志才はそこで悩んだ。もし、自分の立場なら助けたいと思うが、財政的に余裕があった場合だ。余裕がなければ自分は断ってしまうだろう。他の人を紹介するなど出来ることはやるだろうが。一刀の財政がどうかはわからないが、そんなに余裕があるようには見えない。それなのに、親子を預かると即答した一刀に答えを出すことが出来なくなる戯志才であった。

 

 

 

「・・・ただいま」

「今、戻りました」

「おかえり。良かった。無事だったみたいだね。お腹すいたでしょ?ご飯用意してあるから食べよ?」

 

恋と趙雲が戻ってきた。そこで、一刀は料理を温め治す為に火を起こし、陳宮に親子を起こしてくるように頼んだ。程立と戯志才は趙雲に親子を一刀に預かってもらうことについて話、恋は怪我をしている犬の様子を見に行った。その日の夕飯は今までで一番賑やかだったかもしれない。

 

「おいし~!おにいさん。おかわりしていい?」

「ああ、いいよ。はい。慌てずに食べてね」

「ありがとう!」

「こんなにご飯食べたの久しぶりだ!」

「私も!おいしいくて・・・ああ、幸せ」

「あの・・・食事までなんとお礼をしたらいいのか」

「いいんですよ。ささ、遠慮せずに」

「私達までご馳走になってしまいましたね」

「白士殿は・・・器が大きいですな」

「私は器が大きいだけじゃない気がしますけどね~」

 

 

 

 

 

その日、程立は夢を見た。

 

「ここは?草も何も生えていない・・・荒れ果てた荒野みたいですね~」

 

暗い中、ぼんやりと自分の周りのことを認識出来るだけの世界。周りが闇に覆われているのに草もない荒れた荒野だとわかるのは夢であるからだ。

そんな程立の前に一匹の蜂が現れる。

 

「蜂ですか?お願いですから刺さないで下さいね~」

 

普通なら言葉の通じない蜂には無駄なことであるが、これは夢である。何が起こっても不思議ではないのだ。蜂は程立の言葉が通じたのか、その場から離れていく。内心、ホッと安堵した程立だったが、少し離れると止まり、また動き出したと思ったら止まる、といった不思議な動きをしている蜂を見ていたら、なんだか蜂がついてこいと言っているように感じてきた。

 

「良く考えたら・・・これは夢ですからね~。刺されても痛くないですし。行って見ましょう~」

 

というわけで、好奇心に負けた程立は蜂の後を追いかけるのだった。

しばらく蜂の後を追った程立だったが、景色は常に暗闇である。どこか変わっているかとあたりを見回しても変化は見当たらない。そして、ふと前も見たとき蜂の姿が消えていることに気づく。目印を失くした程立はその場で立ち止まる。そこでようやく変化が訪れるのだった。

 

「おお!」

 

まず起こったのは、地面から草が生えてきたことだ。さっきまで荒野だったところから、急速に植物が生え、成長をし始める。草、木、花などすでに荒野だった面影はどこにもない。自然豊かな地へと変貌を遂げる。

次に訪れたのはどこから現れたのか、動物の姿が見え始めたのだ。最初は犬、猫など・・・時がたつに連れ、鳥、牛、馬とどんどん種類も数も増えていく。その光景に程立は見入った。最後に訪れたのはあたり一面を覆いつくす白い光だった。

眩しくて思わず目を閉じてしまったが、わかってしまう。自分が白い光に包まれていることを。そして、それはまるで幼いころに親に抱いてもらったときのような暖かさと安らぎを与えてくれていることに。自分が天に上っているような感覚になったところで彼女は目を覚ますのだった。

 

「・・・目を覚ましてしまいましたか」

 

夢の内容ははっきりと覚えている。でも、何を意味しているのかわからない。しばらく考え込んでしまう程立の鼻に、いい香りが匂って来る。ふと視線を向けると、一刀が囲炉裏で作業しているのが目に入った。

 

「おはようなのです」

「おはよう。程立ちゃん、よく眠れたかな?」

 

朝食を作っていたらしい一刀に挨拶をする程立。その挨拶に一刀も笑顔で返す。その笑顔を見たら、唐突に夢の内容が思い出され・・・最後に感じた白い光と一刀が重なって見えた。

 

「どうしたの?」

「いえ、なんでもないですよ~」

 

夢と重なったことで動揺し、動きがとまってしまったらしい。一刀の声でようやく気づきなんでもない風を装う。

 

「これは・・・調べないといけないですね~」

 

このとき彼女の顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

ようやく、投稿です。

今回は予想以上に長くなってしまった・・・。

 

本当なら、今回で趙雲達の話を終わらせるはずだったんですけどね。

親子の話が予想以上に長くなりまして・・・。

これだけ話を膨らませて、実は親子ってそんなに重要なキャラではなかったり。

 

さて、今回は程立の夢で終わりました。

これは後に再び話題となります。

詳しくはそのときに書きますので、今回は流して下さい。

 

冒頭での陳宮の話で、今回はメインかと思わせて実は全く今回出番のなかったというオチ。

実はこれにも意味があるんですが、もうバレバレですよねw

なので、書きません。

答えは次回の話を読めばわかりますので。

 

 

さて、ここで作者の小話でも二つ。

 

以前、私は三国志Ⅸをやっていると書きました。

今もやってますw

 

ですが、状況が変わりました。

実は一回クリアして今、二回目ですw

 

一回目は、黄忠、厳顔、黄蓋の連射でごり押ししました。

もう、熟練度がすごいことになって、相手が弓術をつかってきたらほとんどの確立でガードできるくらいにwwwすごかった。

 

現在はシナリオもIFのハムさんが大勢力のシナリオで、新野から始めてまして。

頑張ってますw

気づいたら、ハムさんの領地が北海のみになっていたり、上の半数ほとんどが袁紹の勢力に支配されていたりと大変ですが・・・。

 

配下に明命、詠、凛、桂花、紀霊、荀ユウと有名どころが結構いましてw

面白くなってますw

 

 

二つ目は、最近新しい話のネタが思いつきました。

でも、これを書いているので書くのは出来ません・・・私は不器用で同時に書こうとするとどちらも中途半端になってしまいますので・・・これぞ、二兎を追うもの一兎も得ずです。

 

ちなみに思いついたネタが、一刀が主人公で。

 

1、最初に会った人が雛里だった場合・・・

2、最初に会った人が司馬徽だった場合・・・

 

の二つです。こんな√面白くないかな?って。まだ、細かいところは考えてないのでアレですけど。まぁ、まだ書く気はないですが、気分転換ですね。

 

 

長くなりましたが、次回予告。

次回、ついにみんな大好きあの人が登場しますw

さて誰のことかわかりますか?

わかった人、すごいwww


 
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