No.142481

身も心も狼に 第22話:朝の一時

MiTiさん

どもーっす

今回の話しは、時間的に言うと朝の2~3時間の間の出来事です。
この次からかなりのドタバタが予想されます。

続きを表示

2010-05-11 20:07:42 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3453   閲覧ユーザー数:3098

Side.芙蓉家

 

ルビナスの入学祝行った翌朝。稟はいつも通りの朝を迎えた。

酒も”家族の杯”の一杯だけだったので、

両王家の引越しの挨拶のときのように二日酔いに見舞われることも無かった。

 

「ふぅぁあ…おはよう楓、おじさん」

 

「おはよう、稟君」

 

「お、おはようございます///」

 

幹夫は普通に返したが、楓は恥ずかしそうに返した。

昨晩の最後、ルビナスが稟に何をしたのか、それを思い出してしまったのだろう。

楓の反応に稟も恥ずかしさが込み上げてしまった。

 

「ほら二人とも、赤くなっていないで朝食を食べてしまいなさい。遅刻してしまうぞ?」

 

幹夫の言葉にある程度落ち着きを取り戻し、三人は食べ始める。

が、稟と楓は向かい合って座っている為、楓は顔を上げては昨晩を思い出し顔を赤くして縮こまるを繰り返す。

このままだと本当に遅刻してしまうと、見かねた幹夫は、

強いインパクトを与えたら治まるのではと考え、実行に移る。

 

「ところで稟君?」

 

「はい、なんですか?」

 

「結局ルビナスには何をされたんだい?」

 

「ブッ!?」

 

稟は思わず飲もうとしていたなめこ汁を噴き出してしまった。

横で聞いていた楓はこんな時に何を!?と言った視線を幹夫に、

でも気になります教えてくれますか?という視線を稟に向けていた。

 

「だ、だから…この話は聞かないでくださいって」

 

「何故だい?貞操は守ったんだろう。ならそこまで恥ずかしくなることは無いんじゃないか?」

 

「いや、なんというか…あの時ルビナスかなり酔ってたらしくて、やることが……

 と、とにかく聞かないでください!」

 

「そうか…」

 

これ以上聞いても効果は無いと判断した幹夫は食事を再開。

稟も恥ずかしさを誤魔化すように、楓は気になりますといった視線で稟を見つめ続けながら、

掻っ込むようにしかし上品さを損なわずに、普段の倍以上のスピードで食べていた。

 

その頃、話題となっていたルビナスはと言うと…

 

 

Side.ルビナス家

 

朝、目覚ましのアラーム音にルビナスは目を覚ます。

寝ぼけながらアラームを止め、欠伸をしながらベッドから降り”四本足”で床に立つ。

そこで違和感。確認に足元を、自分の姿を見てルビナスは完全に目を覚ました。

 

普段寝るときは、毛がついて選択が大変だったり、

と言った理由で人間形態で寝るようにしているはずが、今は狼形態。

 

昨晩、何があったかを思い出そうとするが、酒を飲み始めてからの記憶が無く、

いつ自室に戻ってきたかも思い出せない。

が、空白の記憶以上に気になることがあった。

 

狼である自分だからこその嗅覚と味覚に感じるもの。

全身から、今はかすかに漂い残る匂いと、口の中に僅かに残る味。

 

「これって…稟?」

 

自分が愛する稟の味を、稟の匂いを、稟の気配を間違うはずが無い。

なら何故稟を感じるのか?

 

疑問を解く為に話を聞こうと、ルビナスは人間形態になり、制服に着替えてから下の階へ下りる。

洗面所で顔を洗ってからキッチンへ。そこにはハリーとマオがいて、朝食が準備されていた。

何故か赤飯だ。

 

「あら、おはようルビナス」

 

「おはよう」

 

「うん、おはようハリー、マオ。ところで…なんで赤飯?」

 

「何でって…ルビナスの為に決まってるじゃない♪」

 

「私の?」

 

「昨晩は稟君とお楽しみだったのだろう?」

 

と、若干からかうように言われた。

二人は昨晩のことを知っているのだろうと判断し、聞く事にする。

 

「それなんだけど…昨日って最後どうなったの?私酒を飲んでから覚えて無いんだけど…」

 

「そうなのかい?」

 

「うん。それに、何故か全身と口から稟を感じるんだけど…私、稟に何かしたの?」

 

”稟を感じる”宣言を聞いた二人は、即座に肩を寄せ合い、

ルビナスにも聞こえないほどの小声で話し合うことに。

 

「どう思う?」

 

「判断しかねるね…稟君は貞操は守った、と言っていたけど」

 

「…赤飯は早かったかしら?」

 

「いや、今はそれよりルビナスだ。ここは直球で聞いた方がいいね」

 

 

相談し終えた二人は、不思議そうに自分達を見るルビナスに向き直る。

 

「ねぇ、ルビナス。ちょっと変な事聞くけど…今歩きづらいとか無い?」

 

「全然?普通だけど」

 

「下半身、特に股の所とか腰が変な感じしたりとか?」

 

「別になんとも?」

 

「稟君を感じてるってのは?」

 

「私の身体と口の中に少し残ってる稟の匂いと味って意味だけど」

 

「…なるほど」

 

「そういうことね」

 

ルビナスの答えを聞き、同じ答えに行きついた二人は頷きあう。

 

「ルビナス、酒を飲んでから覚えていないって言ったよね?」

 

「ええ」

 

「実はね…言いづらいんだけど、酒を飲んでからルビナスは…発情しちゃったんだ」

 

「……………は?発情!?」

 

「ええ。それから、酔ってるからか発情してるからかは分らないけど、

 稟君を見た途端獣人形態になって速攻で部屋まで攫っていって…襲ったの」

 

「え!わ、私が稟を!?」

 

「うん…別の意味で」

 

「そんな…私が…稟に、って…何、別の意味って?」

 

またしても稟を傷つけてしまったのかと絶望に駆られそうになるが、

気になる単語があり落ち着くことが出来た。

 

「部屋から出てきた稟君の姿を見るに…多分だけど、ルビナスに身体を擦り付けられたり全身を舐めまくられたり、

 つまりはマーキングね」

 

「え…………………んなぁあ!?」

 

「フォーベシイ様達が邪魔しようとしたから、思わずこの家の魔法無効化結界を発動させちゃったんだけど…

 その時、ルビナスの変化も解けてしまったらしくて」

 

「起きたとき狼だったのはそのせいね」

 

二人の話を聞きながら、ルビナスはその光景を想像する。

稟に身体を擦り付けている自分を、稟の身体を嘗め回す自分を…

それを想像したルビナスの反応は…

 

 

「なぁるほど…そういうことだったんだ」

 

意外と冷めていた。この反応に二人は訝しがる。

 

「えっと…ルビナス、それだけか?」

 

「え、何が?」

 

「いや…普通こういう時は、ボンッ!って効果音を出て、頭の上から湯気を噴き出して、

 顔を真っ赤にしながら恥ずかしがるシーンよ?」

 

「えらく具体的だね?マオ」

 

「ちょっと本を読んで勉強したから♪」

 

一体どんな本だ?ハリーとルビナスは同時に同じことを思った。

それはともかく、

 

「と言っても、一緒に暮らしてたときは、それこそ毎日のようにやってたし」

 

「…なん、ですって…」

 

「…マオ?その頃はまだルビナスは子狼だったって知ってるよね?」

 

「っも、もちろんよ!?」

 

「…その慌て様、違う姿を想像してたね?」

 

「な、なんのことかしら!?

 べ、別に人間形態のルビナスと稟君が抱きしめあったり舐めあったりしてるシーンなんて想像して無いわよ!?」

 

「…マオ、慌てすぎ。テンパって口に出てるわよ?」

 

「ッは!?」

 

「もしかして、わざと?」

 

「ちがうわよ…」

 

否定しながらマオは頬を膨らましながら視線をそらした。

年齢的に明らかに合わないはずなのだが、見た目若すぎる彼女がやると外見年齢相応に思えてしまう。

が、この一家にとっては普通のこと。

 

「それよりも…ルビナス、本当に恥ずかしかったりとか思わないの?」

 

「全然?」

 

「…これはこれで問題ありね」

 

「ああ…前々から思ってはいたけど、ルビナス」

 

「何?」

 

「前にも言ったけど…もう少し羞恥心ってものを身につけなさい」

 

元々が狼であるルビナス。喜怒哀楽等の感情は人間以上にあるのだが、羞恥心だけは備わっていなかった。

覚醒してからは、人間形態で生活することが普通になったのだが、羞恥心が欠けている所為で、

他所には見せられない格好で家の中をうろつくことが多々あった。具体的には風呂上りとか…

幸い家の中だけだったので他所に見られることは無かった。

その後、そういった場面に遭遇するたびに、マオはルビナスに羞恥心を身につけろと言ってきたのだが、

そういうのははしたないのだという客観的な所を理解はしたのだが、残念ながら感情面の改善は出来なかったのだ。

そして、それは稟と再会してからも改善されることは無かった。

 

 

「う~ん…やっぱり狼だったからかな?ど~もわかんないのよね」

 

「恥ずかしがることなく稟君と接せるって、まぁアドバンテージと言えなくも無いけど」

 

「あ、でも稟以外には身体とか見せるつもり無いし、自分から触れ合うことは無いわ。

 稟に手を出す奴に関しては別の意味でこっちから手を出すけど」

 

「うん。それは当然だ」

 

「まぁ、羞恥心が無くてもその点だけは良しとしましょう。

 …でも、羞恥心、というより恥らう姿って結構重要だったりするのよね~」

 

「どういうこと?」

 

「男の子って言うのはね、女性の恥らう姿に興奮するものなのよ。

 具体的には…ルビナス、今から私が想像するから思考読んでみなさい」

 

「?わかった」

 

ルビナスの、相手の表層心理思考を読む精神魔法。

その応用的な使い方として、相手が思い浮かべるイメージを読む、と言うより見ることが出来るのだ。

思い浮かべるイメージを言葉で伝えづらいときにこの力が役立つのだ。

 

それはともかく、マオがイメージしたのは…

 

①服を買って試着したとき、稟が似合っていると絶賛し、

 それをルビナスが恥ずかしがり、その恥らう姿を見て稟も頬を赤くするシーン

 

②風呂に入ろうと脱衣中に稟が入ってきてしまい、慌てて素肌を隠すルビナスと扉を閉める稟。

 扉の向こう側で稟は網膜に焼き付いてしまったルビナスの艶姿を思い出して顔を赤らめるシーン

 

③露出度の高い水着を着て海に行き、稟の視線はルビナスのセクシーな水着姿に引き寄せられ、

 視線を感じ恥らうルビナスと、その恥らう姿に視線をそらそうとするがどうしても引き寄せられてしまう、というシーン

 

④ベッドの中で稟がルビナスに―――――して、ルビナスが~~~~~~せて、

 それをみて稟が+++++++なシーン

 

etc…

 

と、次々と羞恥心からルビナスが恥じらい、それを見て稟が興奮するシーンのイメージを想像しては、ルビナスに見せていく。

 

明確な映像として見せられたそれらは、同じ女性ならば例外を除いてその女性に共感するだろう。

かく言うマオも、少女時代にこういった漫画や映画などに触れていなかった為に、

少々?遅くはあるが、自分が読書鑑賞してきた話に興味を持ち、はまって行ってしまったのだ。

 

が、ルビナスはその例外に当たる。

それは、再三述べているが、彼女には羞恥心と言うものが欠落してしまっているのだ。

自分が恥らうイメージを見せられても、自身はそんな自分を想像できないでいた。

 

だが、何故か鮮明にイメージされた稟の赤面する姿、鮮明過ぎて自分の想像上でもその光景がイメージできた。

自分を見て赤面する稟、それはつまり、稟が自分を見てくれて、自分を想ってくれているということ。

そう判断したルビナスは、少し考えてマオに頼むことにした。

 

「マオ…私に”羞恥心”を身につけて!!」

 

「っ!?…中々に難しいことを言うわねルビナス…でも、愛しい娘の幸せのため…

 やって見せましょう!!」

 

「うん!お願い!!」

 

背と瞳の中に炎を上げて手を取り合う二人を、ハリーは、

”な~んか間違って無いかな?”といった視線で見守るのであった…

 

 

 

 

「とりあえず、今は時間が無いわね。早くご飯食べちゃいましょう?」

 

「ええ」

 

 

side.out

 

朝食を食べ終え、芙蓉家から稟と楓が、神王家からシアが、魔王家からネリネが出てくる。

そして数秒して、通りの角からルビナスが姿を見せ、全員が揃った所で学園へと向かう。

 

揃って早々、ラバーズから”昨晩何があったか気になります。教えてくれませんか?”と、

赤面しながらの視線を向けられ、思わず頬をかいてその話題から話をそらそうとする稟。

 

そんな稟を見て、これも一種の恥じらいなのね…と考えながら、

とりあえず、ここは助けてあげることにしようと考え、ふと思いついた話題を挙げる。

 

「それにしても…ちょっと不便ね」

 

「ん?なにがだ?」

 

「シア・ネリネ・楓と稟の家の玄関って三軒とも同じ方向にあるけど、

 私の家って裏側にあるじゃない?」

 

「ああ」

 

「だから、稟達と一緒に登校するとなると、必然的に回り込まなくちゃ行けないのよね」

 

「あ~、確かに」

 

「でも、こればかりは改善のしようは…」

 

立地条件、建築構造から仕方が無いと楓は言う。

暫く考え込んで、ルビナスはとんでもないことを言い出した。

 

「う~ん…いっその事繋げられないかしら?」

 

「え?繋げるって、なにを…まさか、稟様とルビナスさんの家を…ですか?」

 

「ええ」

 

まさかと思ったネリネの考えに、ルビナスは肯定してしまった。

立地的に言えば可能なことではある。芙蓉宅とルビナス宅は豪邸二軒に挟まれている形で広さなどはほぼ一緒。

二軒の間にあるものと言えば庭と植木くらいだ。

 

「で、でも…稟君はどう思いますか?」

 

二軒をつなげる。稟君の意見に楓は従うつもりで、賛成か反対かを聞いてみることにする。

が、稟の回答は楓の予想外のものだった。

 

「う~ん…おじさん達に頼んだら直ぐにでもできちゃうんじゃないか?」

 

と、賛成反対を通り越して、賛成の先まで行ってしまっていた。

考える間も無く、反射的にと言っていいほどに出てきた言葉は、

稟自身もルビナスが傍にいることを望んでいることを物語っている。

 

 

「あっ…すまん楓、家主でも無いのにそんなこと勝手に決めて言い分けないよな」

 

と、三人の驚愕の視線を感じて謝ってきたが、稟は見当違いのことを謝って来た。

その謝り方からも、一緒にいることを望んでいることが窺える。

 

「い、いえ…私は稟君が望むなら…」

 

稟の謝罪の言葉に、楓はいつものように返してしまった。

心の奥底では”稟君と一つ屋根の下二人きりというアドバンテージが…”と思っていたが、

何時しか身についてしまった稟Love精神から、稟の要望を優先しそう答えていた。

ちなみに、表層に出ていなかった為、ルビナスにはその思惑を読まれずに済んだ。

 

それから、芙蓉家の家主である幹夫に確認を取った所意外とすんなりOKが出てしまった。

稟が芙蓉家に来て一緒に暮らすようになってから数年、我が息子同然のように育ててきたが、

稟からなにかを欲しがるなどの要望は殆ど皆無であった。

そんな息子の初めてかもしれない要望、幹夫は喜んで了承するのであった。

まぁ本心としては”楓をください!お義父さん!!”と言うのを切望していたりしたが…

 

ルビナスの方も、このことをハリーとマオに伝えると即OKが出た。

OK宣言の直ぐ後、今から工事を頼むわね、とマオに言われ、

どれくらいかかるかと聞いたところ、帰ったらもう完了してるだろうと言われた。

いくらなんでも早すぎるのではと思うが、両隣の豪邸も、

学校から帰ってきたら空き地になっており、次の日には建っていた。

それを考えると、家と家をつなげるリフォームくらい、それこそ数時間で終わってしまうなと思った。

 

 

こうして、芙蓉宅およびルビナス宅のリフォームが決定してしまった。

 

 

第22話『朝の一時』いかがでしたでしょうか?

 

二つの家のリフォーム、最初はどうしようかかなり悩んでいましたが、結局繋げちゃう事にしました。

 

選択肢としては…

 

①両宅を隔てる壁に扉を作る

 

②毎朝壁ルビナスが壁を跳び越えて稟の許に行き、共に芙蓉宅玄関をくぐって登校

 

③二宅をつなげる

 

④いっそのこと芙蓉宅・ルビナス宅・神王邸・魔王邸全部くっつけちゃう

 

がありました。まぁ、④に関しては論外ぽかったですが…

 

因みに、元からあった部屋の配置で、稟の部屋の窓を開けたら目の前にはルビナスの部屋の窓って感じになってます。

 

ルビナスの身体能力なら一っ跳びで稟の部屋に飛び込めます。

 

二宅が繋がることで、間に屋根が出来て、時々間の屋根に二人より沿って語らうなんてシーンがこれで実現可能に。

 

結構あこがれてたんですよね~、屋根上語らいシチュに。

 

 

マオさんの”ルビナス羞恥心身につけさせる計画”については…自分でも分りませんwww

 

 

さて、ではこの辺で。

 

次回、第23話『その名はLLL』、早いと思う方もいるかもですが、サイドポニーの放送部が参戦します!

 

お楽しみに。

 

 

・・・あっと、忘れる所でした。

 

ハリー・マオ・ルビナスの魔族名のアイデア、募集します!!

 

…まぁ、本編にはあんまり影響ないっすが、あったら便利なので。

 

決定しましたらこの三人は以後(ルビナス・ハリエン・マオラン)=???になるわけです。


 
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