はじめに
この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です。
原作重視、歴史改変反対な方
ご注意ください。
虎牢関が陥落した夜
袁術を除く反董卓連合は本陣に再び一同に介していた
「つまり…帝を再び集中に収めようとした元高官の洛陽急襲を察知した貴女は天の遣いを人知れず洛陽に差し向けたってわけ?」
向いに座る華琳に冷たい視線で問いかける雪蓮
「ええそうよ」
…っ!?この娘ぬけぬけと!
雪蓮の思考を読み、尚も余裕の表情で少女は脚を組み直す
「この戦は帝救出という大義の下に始まった戦…帝の危機を察知したのなら出向かない理由はありません」
華琳の隣に立つ桂花もまた雪蓮の視線を真正面から突き返す
「ですが…」
間に口を挟んだのは悠
「連合の存在を無視して抜け掛けのような真似は関心しませんね…彼方達のとった行動は洛陽を急襲した高官のそれと同じではないですか?」
湯呑の中の茶をゆらゆらと揺らし彼女等には一瞥もせずに問いただす
「そう!それよ!」
ズビシ!と悠を指差し雪蓮もそれに乗る
当の本人はどこ吹く風と茶を啜っている
面白くないですねえ…天の遣いに出し抜かれるなどと
ちらりと覇王の隣に座る青年を盗み見てズズズとわざとらしく音を立てて茶を啜る
「田豊殿の言うとおりだ、高官共が我等がこの地で戦の最中に帝を奪う算段をつけていたのなら連合全体で対処すべきではなかったのか?少なくとも独断で動くべきことではないだろう」
眼鏡の淵を指で押し上げながら冥琳も問いかける
「そう!もっと言ってやんなさい冥琳!」
「雪蓮…少し黙っててくれる?」
こめかみを押さえながら進言すると隣の幼馴染は口を尖らせながらさも面白くないと机をバンバンと叩きだす
「それも禁止」
母親が自分の子に躾をするように言い放つと雪蓮はツーンと横を向き足をブラブラと遊び始めた
そんな孫呉の様子を無視して再び桂花が語りだす
「奴らの計画漏れを悟られぬようにするには我が軍が単独で動いた方が都合が良かったのよ…袁家の軍師様?」
(むう、昼間の事を根に持ってますね桂花)
悠の視線にフンと鼻を鳴らす桂花
そんな彼女の様子に
「事は帝の御身に係る事です、失敗していれば一大事だったのですよ」
はわわと目をグルグルさせながら朱里が桂花に食いかかる
その横で雪蓮は口パクで「そーだそーだ!」と同調し…冥琳に脚を踏まれて涙目になっていた
(あげ足を取りに行きますか諸葛亮…ですがそれは意味がないです)
「それは仮定の話でしょう?事実我が軍は帝救出を成し遂げているわ」
顎で促しながら華琳は朱里を睨みつけ
睨まれた朱里は唯はわわと辺りに助けを求めるように見回していた
(そう既に揺ぎ無い結果が出てしまっている…何を言ったところで敗者の妬みでしかないですね)
と、突然に悠の隣に座っていた麗羽が立ち上がり
「終わった事にグダグダと時間を割いても仕方がありませんわ!問題なのはこの後如何にして帝都を復興させるか?ですわ!」
反董卓連合総大将の発言におおおと周りの者達から声が上がる
(おお…これは意外なところから助けの船が出ましたね、帝の身柄を確保するためにここは巧く取引を…)
悠、冥琳、朱里の瞳の奥がきらりと輝く…が
「さしあたってはこの私!袁本初の下に帝を奉り洛陽を復興させてみせましてよ!」
160キロの剛速球がストライクど真ん中に決まり
『ゲームセット!』
試合終了のサイレンの音が悠の頭に響き渡った
(姫、『庇護』を付けるのを忘れています…終わった)
満面の笑みの麗羽と華琳を見て
悠は生まれてから最大のため息を吐いた
「孫策、貴女の『次の戦い』…連合参加の諸侯は一切干渉しないことを誓わせるわ」
華琳の勝ち誇った顔に苦虫を潰したような表情の雪蓮
「劉備、貴女には天下無双の武を…精々飼いならして御覧なさい」
匿っていることを見透かされた軍師二人が驚いて目を見開き、桃香もまた息を飲む
「麗羽、貴女の処にはこの戦の最大の首級を…良かったわね?」
ふふっと笑う華琳に「そんな物より帝をよこせ」と食ってかかる麗羽だが
(まあ…妥当なところでしょうね)
もはや何も無いよりもマシだと投げ出す悠…それにしても
(最大の首級…ね)
牢に閉じ込めている少女の姿を思い出し眼を瞑る
月の光が差し込む牢の中
少女は一人膝を抱えて虚空を見つめていた
「詠ちゃん…霞さん」
曹操傘下に組み込まれていった二人
「恋さん…ねねちゃん」
戦が終わると同時に姿を消したと聞かされた
「…華雄さん」
彼女は死んだのだと…牢に入る前に言い渡された
彼女の家族はバラバラになり
彼女は…一人になった
「…劉協」
わたしの…赤ちゃん
「それでは此度の軍備増強の件…田豊さんに一任しますわ」
檀上からの声に悠は臣下の礼をとり
「必ずや…」
踵を返し玉の間を後にした
「悠の旦那ぁ!」
部屋を出てすぐにかけられた声に悠は振り向き
「足はもう大丈夫ですか?」
駆け寄ってきた猪々子の足下に視線を移す
「見ての通り!完治しまくりさ!」
にっしっしと白い歯を見せ猪々子は笑う
彼女の笑顔に悠も苦笑し
「期待してますよ猪々子…次の相手は中々に骨が折れる相手ですから」
「ということは徴兵の件は通ったのですか?」
猪々子の後を遅れてついてきた斗詩が悠を見上げる
「軍備増強まるっとです」
苦笑とともに溜息をはく悠
半年前と真逆の事をしていることに自虐の念が絶えない
「まずは北方を押さえます…相手は世間に並みの人と噂される公孫瓚ですが油断はなりませんね」
その為に軍備増強と兵の補充を申し出たのだ
「ほんとにアニキ抜きでやるのか?」
猪々子の不安そうな声に悠は彼女の肩に手を置き
「まだ…戻れる状況ではないそうです」
空を見上げ流れる雲に目を細める
遠くで梟の鳴き声が聞こえる
比呂は部屋に一人、蝋燭の明かりを頼りに悠からの手紙を読んでいた
「…北伐に動くか」
各諸侯が勢力拡大に取り掛かる中、袁家もまた自勢力の真下にいる曹操との決着をつけるために準備を進めていた…後背の憂いを無くすために公孫瓚を討つことも
曹操が帝を保護したものの事実天座は空白の状態…各諸侯が再び覇を唱えんと動くか
現状に思考を落とし、考えに更ける…と
「比呂さん…まだ起きていますか?」
扉の向こうからの声に比呂は手紙をたたみ
「月…どうした?」
自室の扉を開けると月が不安そうな瞳で此方を見上げていた
「劉協がお乳をもどしちゃって…」
そういって腕の中の『人形』に視線を落とす月
「今朝も飲んでくれなかったし…病気じゃないかと思って」
優しく腕を揺すり『人形』をあやす月
「どれどれ…」
比呂は『人形』の額に手を置き
「熱は無いみたいだが…念のため朝になったら街の医者を連れてこよう」
月の肩を抱き部屋の中に招き入れる
「とりあえず今日はもう遅い…俺も一緒に寝てあげるからお休み」
布団を捲り月と『人形』を寝かしつける
「…はい」
そう返事をした月は『人形』を優しく擦りながら
~♪
~~♪
子守唄を歌い始めた
比呂は蝋燭の灯を吹き消すと一緒の布団に入り
「お休み月…『劉協』」
そういって月の髪を一房手に取り口付をする
「くすぐったいです♪ふふ…お休みなさい」
やがてすうすうと寝息を立て始めた月
比呂は
窓から見える天高く昇る月を見上げていた
優しい月の光が窓から部屋に差し込む…と
一筋の雲が月の上を滑るように通り、月の光を遮って逝く
その様子を横になりながら比呂は見上げていた
今は…月を陰らすお前の存在が疎ましい
目の前に揺れる髪を一房掴み…眼を閉じた
董卓の乱編~完
あとがき
ここまでお読み頂き有難う御座います
ねこじゃらしです
ちょいと端折り気味な気もしますが
これで董卓の乱編はお終いです。
例によっていろいろあとがきで書こうともおもっていたのですが
…ねむい
それでは次の講釈で
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第33話です。
アイス食いたい