No.141318

真・恋姫†無双 董卓軍√ 第四話

アボリアさん

董卓IF√第四作目です
戦闘描写が難しくグダグダな感じになってしまいましたが楽しんでいただけると幸いです
ちなみにこの作品に出てくるモブ武将(徐栄など)は殆どが男武将なのであしからず
あと誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告していただけるとうれしいです

2010-05-06 21:45:43 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:19809   閲覧ユーザー数:14662

「頭!奴等またかかってきやがりましたぜ!」

 

「なんだ?今度はあの化け物が前線にいねえじゃねえか」

 

今まで先陣を切っていた猪女が今度は後方で指揮をしていた

 

「さっきも急に退いていきやがったし、なんかあったんじゃないですかね?」

 

先程の戦闘ではもう少しで奴を囲めたものを後続の部隊が来たと思ったらさっさと退いていったのだった

まあいい、どんな理由であれ奴が来ないなら勝ち目がある…と野盗の頭は考える

 

「それならそれでかまわねえ。あいつがいねえなら数ではこっちが勝ってんだ…野郎ども!叩き潰してやるぞ!」

 

「「「うおぉーーーー!!」」」

 

そういって全軍で突撃していった

 

 

 

「よし来たな」

 

華雄は一人呟く

前方には自分がいない事で調子に乗った賊どもがこちらに突撃をしてくるのが見て取れた

 

「華雄隊!敵をいなしつつ退くぞ!」

 

そういって賊に背を向ける…本当ならこんな屑共に背を向けるなど屈辱以外のなにものでもなく、今直ぐにでも蹴散らしてやりたいところだ

だが自分は先ほどの戦闘で董卓様と北郷を危険な目に遭わせている、あのような失態は繰り返せない

今は北郷の策を成功させるために我慢だ、と自分に言い聞かせ撤退に専念した

「なんだ?奴等もう退いていきやがるぞ」

 

太守の軍は自分から仕掛けてきたと思ったら自分達が迎え撃つとすぐに取って返していった

よく見ると兵の数も千に満たないほどの数で、俺たちには敵わないと見たのかも知れない…だがこちらからしたら好機には違いなかった

 

「どうやら俺らにびびりやがったようだなぁ…かまうこたねえ!追って皆殺しだぁ!」

 

 

 

「どうやら華雄はうまく敵を釣れたみたいだな」

 

「一刀殿、いかがいたそうか?」

 

隊を率いる徐栄さんが聞いてくる…そういえば彼らには詳しいことは話してなかったな

 

「別の場所で伏せている詠…賈詡の隊が合図を出す。その合図とともに俺達も打って出るからいつ合図がきてもいいように準備を頼めるかな?」

 

「は!承知いたした!」

 

「さて、そろそろだと思うんだけど…」

 

俺は緊張で破裂しそうなほど脈打つ胸を押さえつつ詠からの合図を待った

 

 

 

「華雄のやつうまくやったじゃない。さすがのあいつも反省してるみたいね…いくわよ、張繍!一刀の隊に合図を!」

 

「はっ!」

 

バァーン!バァーン!バァーーン!

 

「これよりわが隊は華雄隊、北郷隊と共に敵部隊を包囲、殲滅する!かかれ!」

 

「「「おぉーーーー!」」」

 

 

 

待ち望んだ賈詡からの合図の銅鑼が鳴る

 

「やっと来たな!!華雄隊転進!やつらを一人残らず叩き潰すぞ!」

 

「「「おぉー!」」」

 

先ほどまでの屈辱を返すため、雄叫びとともに先陣に立ち、賊に突撃した

「か、頭ぁ!奴が、あのバケモンが先頭に立って転進してきました!」

 

どこからか銅鑼が鳴り、そちらに気をとられているといつの間に出てきたのかあの猪女が先頭に立ってこちらへ向かってきていた

 

「なにい!くそ、こうなったら残り全員で奴を囲んで袋叩きに…」

 

なんせこちらは相手の四倍以上の数があるのだ

このまま数に任せて押しつぶせばいくらあの化物でもどうしようもないはずだ

だったのだが……

 

「頭!右の方から伏兵が!横槍を衝かれて大被害です!」

 

見ると急に別の方向から攻撃を受けたせいで仲間がなす術も無くやられていた

 

「な、ちっくしょう伏兵か!こうなったら一旦退くぞ!!体勢を立て直せば…」

 

「後方にも伏兵が!いつの間にか包囲されています!」

 

「な、何だって…」

 

後ろを見るとさらに別の隊が自分達の退路を完全に塞いでいた……

 

 

 

三方から囲まれて逃げ場を失った野盗、その包囲をさらに狭める

これが俺の提案した策…九州の島津家が得意としていた釣野伏せだった

そこから華雄を筆頭とした本隊が逃げられなくなった敵の大部分を撃破

敵は固まって追撃していたため、多くの兵が動けず幽兵となり、更に詠が作っておいた包囲の穴からなんとか抜け出そうと一箇所に敵が密集…結果押し合いになり圧死者が続出、さらに自分の首を絞める形となった

 

数時間後、董卓軍は撤退時の僅かな損害だけで敵を全滅させた

その後董卓軍は守った村で歓迎されていた

皆勝利に酔いしれ、もはや宴会同然になっていたのだが、俺は気分が優れずに皆の輪から外れた所にいた

 

「終わったんだな…」

 

いまだに震えの止まらない手をギュッと握り締めて一人呟く…自分で言ってまた暗澹とした気持ちになった

 

「えぇ、戦は終わったんですよ。一刀さん」

 

ふと振り向くといつからそこにいたのだろうか、隣に月が来ていた

 

「月、こんなところでどうしたんだ?君は宴の主役だろ?」

 

「一刀さんこそ、こんな所に一人でいて、どうしたんですか?」

 

精一杯の笑顔で聞くと、優しい瞳で問いかけられた

この子の事だ、多分浮かない顔をしている俺を遠目で見つけて心配して来てくれたんだろう

強がる元気も無かった俺は正直に話した

 

「…月、今日、俺は人を殺したんだ」

 

「はい」

 

「俺の出した策では敵だけでなく味方だって何人も死んだ」

 

「はい」

 

「それでも奴等を倒さなきゃ村がひどい目に遭う、だから戦わなきゃ、殺し合わなきゃいけない…そんなの辛くないか?ましてやキミみたいな女の子がそんな責任を背負うなんて…苦しくないのか?」

 

問いかける俺に月は真摯な声で答える

 

「…辛くないといえば嘘になります。苦しくて逃げだしたくなった事もあります…でも、それでも守りたいものがありますから」

 

「守りたい、もの?」

 

「…ほら、ここにも」

 

月の促す方をみると四、五歳くらいの小さな女の子がいた

 

「おにいちゃんとおねいちゃん、とーたくぐんのひと?」

 

いきなり聞かれて少しどもる俺にかわりそうだよっと月が応えた

それを聞くと女の子は顔をぱっと明るくして

 

「おにいちゃん、おねいちゃん。むらのみんなとわたしのかぞくをまもってくれてありがとう」

そういって笑った

自分たちを助けてくれてありがとうと

こんな俺に笑いかけてくれた

 

「じゃあね、おにいちゃんたち」

 

それだけがどうしても言いたかったのか言うなりすぐに走り去ってしまう女の子…その子の背中をみつめながら月が続ける

 

「私はあの子達の笑顔を、いえ大陸の皆の笑顔を守りたいんです。そのためなら辛くても我慢できます。苦しくても頑張れるんです」

 

 

そういって微笑む月

 

その姿が眩しくて

 

辛さなんか微塵も感じさせず

 

でも彼女の願いは途方もないもので

 

きっとこの小さな体で抱えきれないほどの想いを背負っていて

 

だから、だからこそ俺は

 

彼女を支えてあげたい、助けてあげたいと思った

 

 

「…実を言うと最初君の所で働くのを決めた時、半ば仕方なくって気持ちだったんだ」

 

「え?」

 

急な話にどうしたのかと俺を見る月

だが俺は止まらず喋り続ける

 

「俺の世界じゃ董卓って言うと残虐非道を形にした人だったらしいし、いくら君が違うからってこの先どうなるのか不安だった。だけど…君の気持ちを聞いて決心した」

 

月に向き直って言う

 

「俺はただの一般人で、天の御使いなんて大層な者かどうかもわからない。それでも…君を守りたい、君の願いを支えたいと思った。だから改めて、本心から、俺に君を支える手伝いをさせてくれないか、月」

 

そういって月に手を伸ばす

彼女は俺の手をしっかりと握って

 

「…はい。よろしくお願いします一刀さん」

 

そういって今日一番の笑顔を見せてくれた

 

その笑顔は空に浮かぶ本物の月のように、儚げで美しく、それでいて芯を持った、なによりも優しい笑顔だった…

 


 
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