No.141039

真・恋姫無双二次創作 ~盲目の御遣い~ 拠点其之伍 藍里√『嫉妬』

投稿21作品目になります。
いつものように感想、質問、
『ここはこうしたらいいんじゃねえの?』的な事があれば遠慮なくコメントして下さい。
では、どうぞ。

2010-05-05 16:59:36 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:17845   閲覧ユーザー数:13967

 

それは、白夜と藍里が正式に主従となった『あの日』の事。

 

黄色い三連星(=三馬鹿)を退け、『天の御遣い』であると名乗りを上げた後、疲労がピークに達した白夜は眠りについてしまった。

 

その後、祭と藍里の二人は念の為にと白夜を城へと連れ帰った後、城勤めの医者に容体を診てもらった。

 

『単なる疲労ですな。一晩安静にしていれば問題ないでしょう』

 

医者の言葉に二人は胸を撫で下ろし、祭は藍里に後を任せて部屋を出て行った。

 

とっくに日は沈み、行燈にゆらゆらと揺れる炎が照らす人影は二つ。

 

寝台の上の白夜の傍らに、藍里はそっと佇んでいた。

 

眠っている彼を、少し顔を近づけて覗きこんでみた。

 

あの騒ぎの直後は優れていなかった顔色も今はほぼ回復しており、安らかに寝息を立てている。

 

まるで無邪気な子供のようであった。

 

「ふふっ・・・・とても年上の方には見えませんね」

 

そっと頬を突いてみた。

 

ふにふにと感触が指に伝わる。

 

むぅ、と声を漏らして、ほんのちょっぴり顔を逸らした。

 

「・・・・も、もう一回だけ」

 

例えるならば、エアパッキン。

 

商品の梱包等に使われる、規則正しく並んだ小さなビニールの膨らみを一度プチプチ潰しだすと、止まらなくなる人は少なくないだろう。

 

彼女が感じているのは、それに近かった。

 

ふに。

 

むぅ。

 

ころん。

 

「・・・・・・・・もう一回だけ」

 

ふに。

 

むぅ。

 

ころん。

 

「・・・・・・・・・・・・もう一回だけ」

 

ふに。

 

むぅ。

 

ころん。

 

(きゃ~~~~~~~~~~っ!!可愛過ぎですよ白夜様~~~~~~~~~~っ!!)

 

心がブレイクダンスである。

 

起こしてしまうのは不味いのは解っている。

 

が、

 

『もう一回くらいなら』

 

一度そう思い出したら、最早歯止めが効かなくなっていた。

 

もう一度そ~っと人差し指を頬に近付けようとして、

 

 

 

「・・・・・・・・誰ですか?」

 

 

 

逸らされていた顔がゆっくりとこちらに向き、

 

 

 

「・・・・藍里さん?」

 

 

 

その声で我に返り、

 

 

 

「ふわ・・・・・ふわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!!!!!」

 

 

 

顔が一瞬にて完熟イチゴと化し、

 

 

 

「・・・・・・・ふきゅう」

 

 

 

「え、えぇっ!?藍里さんっ!?」

 

 

 

藍里は頭からボンっと湯気を放出しながらパタリと倒れるのであった。

 

 

 

 

数分後。

 

「済みませんでした・・・・」

 

藍里は寝台の横の椅子に座り、相変わらず完熟イチゴのまま縮こまっていた。

 

「別に良いですよ、それくらい。・・・・まぁ、男としては可愛いと思われるのはどうかなぁとは思いますけどね」

 

上半身だけを起こして苦笑混じりに頬を掻く白夜に、藍里は益々縮こまる。

 

そして、その後。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

顔の赤みこそ大分引いたものの、藍里は何も言葉を発せられずにいた。

 

無論、先程の件が恥ずかしいというのも理由の一つではあるが、

 

(何を話せば良いのか解りませんよぅ・・・・)

 

それが最大の要因であった。

 

男性恐怖症であった事からも容易に想像がつくだろうが、藍里はそういった経験は皆無なのである。

 

あまりにも濃密であったとはいえ、共に過ごした時間は合計でも一日に満たない。

 

今日と言う日で解った事と言えば、

 

 

 

――――――――私に、『遠慮』なんてしないで下さい。

 

 

 

(あ・・・・・・・・)

 

 

思い出した。

 

 

強張りが抜けた。

 

 

俯かせていた顔を上げる。

 

 

視線に気付き、こちらを向いて微笑んでくれた。

 

 

そうだ。

 

 

この二日間で散々痛感したではないか。

 

 

『この人は今までの自分の物差しでは測れない人だ』と。

 

 

昼間に祭様も言っていたではないか。

 

 

『一方通行では、本当の信頼は築けない』と。

 

 

何より、この人は明かしてくれたではないか。

 

 

あまりにも壮絶な、心の『傷』を。

 

 

ならば、自分が話すべきは、

 

 

「あの・・・・白夜様」

 

 

「はい?」

 

 

「昨日、私に教えて下さいましたよね・・・・御自分の事」

 

 

「・・・・ええ」

 

 

「私も、お話しておきたい事があるんです・・・・私の事」

 

 

「・・・・解りました。聞きましょう」

 

 

「有難う御座います。あまり、気分の良い内容ではありませんけどね・・・・」

 

 

姿勢を正す白夜に、藍里はゆっくりと話し始めた。

 

 

心の奥が、ずきりと疼いた気がした。

 

 

 

 

昼間にも少しお話しましたけど、私には妹がいるんです。

 

 

―――――諸葛亮孔明さん、ですよね。

 

 

はい。妹は昔から気は弱いけど、とても良い子でした。勉強熱心で、『知りたい』と思い出したら物凄い速さで吸収していくんです。まるで頭の中に書き写しでもしているかのように。

 

 

―――――それは凄いですねぇ・・・・稀にそういう人がいるとは聞いた事がありますけど。

 

 

私も姉として誇らしかったです。『この子は凄い才能の持ち主だ』って。あの子が無邪気な瞳で『教えて』なんて言って来た時はもう本当に嬉しくて。・・・・でも、それはいつまでも続きませんでした。

 

 

―――――と、いうと?

 

 

私も昔は水鏡先生の女学院に通っていたんです。そして、数年後に妹も私に続いて女学院に。それからでした・・・・私の中で、とある感情が芽生え始めたのは。

 

 

―――――とある、感情・・・・

 

 

 

 

 

 

『嫉妬』、です。

 

 

 

 

 

―――――っ!!

 

 

知識を得るのに最適な環境が整った途端に、妹の才能は開花しました。まるで今までの知的欲求を満たすかのように次々に知識を吸収していき、あっという間に女学院の筆頭に上り詰めました。そして私は、そんな妹に対して、『姉』として力になりたいと思っている自分と・・・・・・・・同じ『人間』として妬ましいと思っている自分がいる事に気が付いたんです。

 

 

―――――・・・・・・・・。

 

 

『私の妹はこんなに凄い子なんだ』って、胸を張って言える。姉として、家族として、こんなに嬉しい事は無かった。

でも・・・・それと同時に、悔しかったんです。

私が何年も掛けて未だに辿りつけない場所に、あの子はいとも簡単に立ってしまった。

比べられた事もありました。『妹さんはあんなに凄いのに、どうして貴女は~~』って。そして、言われる度に思ってしまうんです。『どうして私じゃなくてあの子なんだろう?』って。『どうして私には出来ないんだろう?』って。

 

 

 

 

 

 

 

『どうして――――――私はあの子の姉に産まれてきてしまったんだろう?』って。

 

 

 

 

 

 

 

――――――・・・・・・・・藍里さん。

 

 

その後です、孫呉に文官として士官したのは。あの子の側にいるのが段々辛くなってきてしまって、卒業と同時に逃げるように・・・・。あはは・・・・おかしいですよね、こんなの。姉が、妹に・・・・家族に『嫉妬』なんて。醜いにも程がありますよね。

 

 

――――――藍里さん。

 

 

良いんです、笑っちゃって下さい。私なんて、笑われて当然なんです。だから思いっきり――――――

 

 

――――――藍里さんっ!!!!

 

 

っ!?

 

 

――――――・・・・醜くなんて、ありませんよ。それは人間である限り誰もが抱く普通の感情です。藍里さんは、その対象が偶々妹さんだっただけです。

 

 

・・・・そう、でしょうか?

 

 

――――――そうですよ。それに・・・・それを言うなら、私だって。

 

 

・・・・白夜様?

 

 

――――――私だって、何度も思いましたよ。『何でこんな目なんだろう?』って。『何で僕だけなんだろう?』って。『何で・・・・僕は生きてるんだろう?』って。

 

 

っ!?

 

 

――――――藍里さんは、醜くなんてありません。むしろそんな感情を抱いて尚、『妹さんを妬みたくない』と悩んでいるじゃないですか。

 

 

あ・・・・あぁ・・・・・

 

 

 

 

――――――貴女は、とても優しい人ですよ。

 

 

 

 

あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

 

 

 

 

 

 

怖かった。

 

 

こんな自分を知ったら、この人は自分を軽蔑するのではないかと思った。

 

 

嬉しかった。

 

 

こんな自分を、この人は何の躊躇いも無く受け入れてくれた。

 

 

限界だった。

 

 

これ以上、内側から溢れ出ようとするのを止められなかった。

 

 

拭っても、拭っても、止まらなかった。

 

 

ふいに、優しい暖かさに包まれた。

 

 

滲む視界は真っ白で、

 

 

それがこの人の上着だと気付いて、

 

 

自分は抱きしめられてるんだって解って、

 

 

私はびしょ濡れの顔を押しつけて、

 

 

その人の胸で、思いっきり泣いた。

 

 

 

その後。

 

「・・・・余程、思いつめていたんでしょうね」

 

泣き疲れたのだろう、藍里は白夜の隣で安らかな寝息を立てていた。

 

ゆっくり頭を撫でてやると擽ったそうに笑みを浮かべる。

 

「んぅ・・・・朱里ちゃん・・・・」

 

妹さんの真名だろうか、その声には負の感情など欠片も含まれていない。

 

ただ妹を想う、優しい姉の顔であった。

 

「・・・・貴女が私の付き人で、本当に良かった」

 

自然と口から零れた言葉。

 

それは、紛れもない本心。

 

「お休みなさい、藍里さん」

 

呟き、横になって布団を被る。

 

そして白夜もまた、深い眠りへと落ちて行った。

 

 

 

 

翌朝。

 

 

 

起きぬけに至近距離で眠る白夜を見た藍里がまたもや完熟イチゴとなったのは言うまでも無い。

 

 

 

「ふわわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!!!!」

 

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

只今帰ってまいりました~♪

 

いやぁ、5日間とはいえ全くネットが出来ないというのは中々に面倒ですね・・・・

 

しかも摂取カロリーが普段の比じゃないwwwww

 

『もう食えない』と思うのはいつも帰省した時か飲み会の時ですね。

 

まぁ、今回はパソコンは健康でしたので今回の執筆が出来た訳ですがね。

 

 

で、

 

 

今回は藍里の拠点でした。いかがでしたか?

 

何やら予想以上に彼女を気に入ってくれている方が多いようで俺自身非常に驚いております。

 

さて。

 

今回の彼女の心中、共感出来た方は少なくないと思います。

 

俺が実際にそうですから。

 

親。兄弟。友人。

 

対象は誰でも構いません。

 

嫉妬、一度は感じた事があるでしょう?

 

『何で俺はアイツじゃないんだろう?』

 

『何でいつも俺ばかりが?』

 

『七つの大罪』とは良く言ったものだと思います。

 

相手が身近であればあるほど、自分との違いがあればあるほど、その感情は大きくなる。

 

これはきっと、蓮華と雪蓮の間にもあるだろうなぁと俺は思っております。

 

別に嫉妬自体は否定されるべきものではないと思うのです。

 

適度な欲求は自身を跳躍させるのに非常に良い影響を与えますしね。

 

境界線は『それが歪んでいるかいないか』ただそれだけ。

 

 

 

 

―――――あなたは、歪んでいませんか?

 

 

 

 

・・・・何か俺っぽくないなwwwww

 

 

閑話休題

 

 

帰省中に曾祖母に会って来まして、その時の事を衝動に駆られて書いてみました。

 

暇なら『<次の作品へ』をクリックしてみて下さい。

 

タイトルも未定なのでコメントなんかで『これがいいんじゃね?』的な事を書いてくれると採用するかもです。

 

それでは、次の更新でお会いしましょう。

 

でわでわノシ

 

 

 

 

 

・・・・『ワ○ピース』とか『ア○シールド』しかなかった弟の本棚に『To○oveる』や『ク○ーンズブレイド』が並んでいるのを見て『ああ、こいつも成長したんだなぁ』と思いました。


 
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