真・恋姫†無双 星と共に 第3章(春蘭・秋蘭拠点1)
ある日の事であった。
「北郷一刀!」
部屋にいた一刀の下に春蘭が怒鳴りこむようにやって来た。春蘭だけでなく秋蘭も…。
「どうしたんだ? 二人とも……」
「そのような事、貴様が知る必要はない!」
「うむ。大人しく、我々に付いてきてもらおう。悪いようにするつもりはないが……逆らえば、分かっているな?」
この二人の強さは一刀も重々理解していた。
「分かった。付いて行こう」
そして一刀は何故か引っ立てられるかのように歩かされた。
三人は街に出た。一刀にとっては少し驚きであった。
「どうした」
「いや、何で街なんだろうなと思ってな」
「なんだろうなって、買い物に来たに決まっているだろう。普通、今までの流れで分からんか?」
「はあ?」
「言葉が通じなかったか? 買い物だと言ったのだ、買い物と。分かるか? 言葉は通じるのだろう? か、い、も、の!」
「分かってるけどさ……」
「……秋蘭。私は何か間違っていたのか?」
「いや、ごく普通だと思ったが……?」
「ほら! 秋蘭が普通だと言うなら、私は間違っておらん! おかしいのは貴様の方だ!」
「………」
一刀はこの世界でも春蘭と秋蘭は変わらないものだと思った。
「貴様がどこの国に住んでいたのかはどうでも良いが、我が国には我が国のしきたりがあるのだ! 貴様も華琳様に拾われた身ならば、その流儀に慣れてもらおうか!」
「それは構わないけど…、買い物に誘うぐらいで殺気みたいなものは出さないでくれよな」
「…別に、殺気など出してはおらん!」
「だったら怒鳴るようにはやめてくれよな」
「単に貴様が嫌いなだけだ!」
(やっぱ変わんねえな)
一刀は頭をかく。
「とりあえず何を買いに行くんだ?」
そして一刀は二人の買い物に付き合わされた。
最初は鍛冶屋で武器を見て、その次は露店で馬具を流し見。次は乾物屋で保存食を見ての軍用の備品を見ていた。
三人で歩いていると……。
「おお、秋蘭。あんなところにあったぞ!」
「ほほぅ。これはなかなか……」
「………ここは………」
三人が次に行ったのは服屋であった。
「どう見る? 似合うか?」
春蘭が秋蘭に服を見てもらう。
「なあ、一つ良いか?」
「なんだ」
「これ、春蘭が着るのか?」
「な……………っ!」
「ふむ。それも悪くないな……」
「しっ! しししししっ! 秋蘭まで……っ!」
(と言うことは違うのか……)
「お客様の着られる大きさの物、お出ししましょうか?」
「あるのか?」
「ええ、もちろん」
「ふふっ、どうする? 出してもらおうか、姉者」
「くぅぅっ! 秋蘭まで馬鹿にして……っ!」
「ふむ、私も見てみたいものだな」
そこに星がやって来た。
「星か……。何でここに?」
「私も服を見たくてな……。それよりも春蘭、お主は自分の服を買いに来たのではないのか?」
「ち……っ! 違うに決まっているだろう! 馬鹿か貴様は! 私の服など、別にどうでもよいわ!」
「どうでも良いとは思わぬが……。昔は私もあまり着る服はどうでもいいと思っていたがな……」
星は一刀の方を見る。今星が着ている服は一刀が選んでくれた服なのだ。
「星の言うことも一理あるな。姉者ももう少し洒落た服を着て欲しいのだが……」
「まあとりあえず、誰の服なんだ?」
「この服は、華琳様のだっ!」
「華琳の……?」
「うむ。この服が華琳様に似合うかどうか、たまには男の視点からの意見が聞きたくてな」
「華琳の服ね……」
一刀は思う。自分の知っている華琳はかなりの男嫌いであることを……。
そんな華琳の服を男である自分が選ぶのはどうかと考える。
「私はそんなものは必要ないと言ったのだぞ。だが、秋蘭がどうしてもと言うから……だな!」
「姉者も、華琳様がより魅力的になるなら、その方がよかろう?」
「そ、それはそうだが……男などの目から見れば、華琳様はどんなお姿をしていても魅力的だろう!」
「だから、より、と言ったのだ」
「ぐぅぅ……」
「それで俺にか……」
「そうだ。華琳様の服を選ぶなど……男としてこんな名誉な事はそうそうないぞ? 光栄に思えよ」
「確かにそうかもな……」
「まあ確かに華琳の服を選ぶのは男としては光栄であるな」
「で、北郷は男としてどう見る?」
一刀は春蘭が手に取っている服を見る。その服はとてもフリフリの可愛らしいものであった。
「おい! 言っておくが、華琳様のお姿をその嫌らしい妄想まみれの脳味噌で想像したら、今すぐ叩き斬ってやるからな!」
「とは言っても、それをしないと感想も意見も出ないぞ」
「……何だと? それは、叩き斬られても文句は言わんと、そう言う事と取って良いのか?」
「おいおい、何て理不尽な……(まあ春蘭らしいけど……)。この服を華琳が着たところを想像せずに、華琳が着たらどうなるかの意見を言えば良いんだな?」
「なんだそれは。意味が分からんぞ! 私は理解しきれんからと言って、適当な事を言っているのではないだろうな!」
「………」
春蘭の頭に思わず一刀は頭をかく。
(相変わらずですな)
(まあ春蘭は春蘭だってよく分かるけどな)
一刀と星はこっそりと話す。
「まあまあ。姉者の事は放って置いて良いから、忌憚のない意見を聞かせてくれるか? 北郷」
「秋蘭……」
「店員さん」
一刀が店員を呼ぶ。
「はい、なんでしょう」
「さっき、春蘭用の大きさもあるって言ってたけど……。まさかそれって、お母さんとお揃い……」
「馬鹿者っ! それ以上は口にするなっ!」
「ふがふがふがっ!」
「華琳様とて、外に出かけられることもあるのだ。もし聞かれていたら、貴様の首と胴が離れるだけではない。一族郎党皆殺しとて……!」
「そう言われても、俺の一族はここには居ないぞ」
一刀の関係者と言っても星しかいない。
「ほほぅ。ならば、首と胴が離れるのは構わんと言うのか?」
「そんなわけないだろ。まあ何かあったら……」
一刀は拳銃の一つを取り出す。
「俺は抵抗する」
「北郷。忌憚の無い意見を聞かせろと言ったのはこちらだが……その件に関しては、それ以上は言わない方が身の為だぞ」
「……仕方ねえ。気を付ける。でも華琳の服なら、俺じゃなくて華琳本人を連れてくればいいのに……」
「それでは意味が無いだろう!」
「そうなのか?」
「うむ。華琳様はお忙しい身。買い物に出る暇も、それほど取れるわけではない」
「だから我々が華琳様の代わりとなって、華琳様により似合う服がないかどうか探して回っているのだ!」
「なるほど。それで華琳が買い物に出た時にそう言う服を勧めると言うわけだな」
「その通りだ。さりげなく、だがな」
「華琳、そう言う気遣いされるのって、好きじゃないだろう」
「聡い華琳様のことだ。勘付いてはいるのだろうがな、未だ気付かぬ振りをしていて下さる」
「やっぱり大変だな、華琳の家臣ってのも」
「ふふっ。こちらも華琳様のためならばこそ。愉しくこそあれ、苦になどならんよ」
「よし。店主、それを一着貰うとしよう」
「まいどありがとうございます」
「?」
「今日は下見じゃないのか?」
「こんな店頭で見ただけで、本当に華琳様に似合うかどうか分かるものか。ならば。実際に試してみるしかあるまい」
「……いいのか秋蘭?」
「私に聞けよ!」
「……その服はだな。華琳様の身代わり用なのだ」
「身代わり……どういうことだ?」
「華琳に影武者でもいるのか?」
「馬鹿か貴様は! 華琳様に代われる者などいるはずなかろう!」
「姉者は黙っていてくれ。話がややこしくなる」
「……しゅうらぁん」
春蘭は秋蘭に言われてしおれるような声を出す。
「身代わりと言っても、人形だがな」
「人形……」
「華琳様そっくりに作った等身大の人形に、候補に挙がった服を着せてみて、本当に似合うかどうかさらに確めているのだ」
「なるほど。ではその服はその着せ替え華琳様人形の服と言うことか?」
「ふん。ようやく理解したか」
「一つ良いか?」
「なんだ。人形とはいえ華琳様のお姿ゆえ、着せ替えの現場には立ち会わせられんぞ?」
「それは少しショックだが……その人形は誰が作ったんだ?」
「私だっ!」
春蘭が先ほどのしおれた声とは逆の元気な声を出す。
「春蘭が!?」
一刀はものすごく驚いた顔をする。
それは星もそうであった。
「なんだ、その嫌そうな表情は」
「驚いてる顔なんだけどな……」
「なぜ驚く。私が作ったと言っては不服か?」
「不服じゃないさ。ただ春蘭が作るとは思ってなかったからさ」
最低でも前の世界の春蘭はそんなことをしてはいなかった。まあしてなかっただけかもしれないが……。
「私が言うのもなんだが……凄いぞ」
「凄いのか……」
「さて。ここでの用事は済んだ、次に行くぞ、次!」
「うむ」
「やれやれ……」
そして一刀達は日が沈むまで色々な服屋を回った。その数は恐らく五十軒ほど。
「いまいちだったな、今日は」
「うむ。めぼしい収穫は無かったな」
二人はそうは言うが、二人が買った服の数はかなりのものであり、一刀の両手はその服の買い物袋でいっぱいであった。おまけに背中にも服の荷物がある。
(星の時は……こんな数は買わなかったな)
星の現代での服選びの際は多かった時でも10くらいであった。
「だが、市井の服も質が落ちたな。この程度では華琳様のお眼鏡にかなうことは難しかろう」
「そうだな……。やはり、国を大きくして腕の良い職人を多く招くしかないか……」
「そのためには俺の警備隊がもっと治安を良くしないとな」
「ええい、そんな時間があるものか! 華琳様はこの一瞬も、気高く優雅に成長しておられるのだぞ! 今この時を美しく着飾れる服を手に入れるためには、今をなんとかせねばならんのだ!」
「……ふむ。確かに」
「そこは納得か」
「北郷。別に私は、姉者の言うことに全て反論したいわけではないぞ?」
「……そうだな」
「それに北郷、お主としても、華琳様のより愛らしい姿が目に出来るのだ。悪い話ではあるまい?」
「……否定できないな。それは……。まあ一つ格言を言っておこう」
「格言?」
「なんだそれは?」
「無い物は作れだ」
「無い物は!」
「作れ!」
「そのままではないか!」
「その通りだ」
「ん……? 北郷。お前、案なら出せるのか?」
「服の柄くらいならな」
「ならば、それを教えてもらおうか。具体的な形が指示できるなら、今いる職人達で何とか出来るやもしれん」
「なるほど。それは妙案だな」
そして一刀は春蘭と秋蘭に連れられて夜も歩きまわされることになった。
おまけ
作者「はい、第3章」
一刀「早!」
作者「既に第15章まで書いてあるのだ」
一刀「多いな!」
作者「まあ拠点話で長いだけだ。書くのが少しめんどくさくなったから前まで書いてたのをアレンジした本編を先に書いてからまた拠点話を書こうと思っている」
一刀「長いな…」
作者「それに最近俺は他ごとしててな…」
一刀「なんだよ?」
作者「遊んでるんだよな」
一刀「ちゃんと用事はしろ!」
作者「そうなんだけどな…。それでは! もしかしたら今日の夕方から夜にかけてまた投稿するかもです!」
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この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。