敵の後背で落ち合った幽と麗が走り抜け様、方天画戟を打ち合わせる。
「後曲は死体のやまで踏ん張りが利かない死地にした、後は・・・」
「御主人様の出番というわけですわね」
ニヤリと獣・・・否、魔物のような笑みを浮かべて、自分の指揮する陰隊に最小半径で速力を落とさず反転する様に指示する幽。
「ドジ踏んだらケツぶんむくぞ麗」
同じく陽隊に同様の指示を下しながら、微笑み返す麗
「幽さんが躓いたら、椅子として使って差し上げます。
真直ぐで丁度いいでしょうから」
軽く肩をすくめ、自分の真直ぐでは無い部分を揺らしてみせる。
「上等だ、夏侯淵は任せた・・・アタシはあっちの三人平らげる」
言い様、馬首を廻らせ戦場を見渡し馬の腹を蹴る幽。
『魔王』様が動いた
なら中央の敵は『魔王』様に釘付けだ。
後曲の敵を潰して、予備兵力を食いちぎったお陰で、こっちに警戒している・・・そんなんで『魔王の軍』の御大将『魔王』様をとめられんのかい
目の前に急速に展開する敵の部隊を見て、へぇー、と珍しく賞賛の声を上げる。
その展開速度は、幽が予想していたよりも速く、正確で、整然として美しい。
でもね、そいつはおキレイすぎだ・・・穴は無いが・・・
「敵右翼に突撃、敵の本陣まで貫き通す勢いで行け」
中央なんて攻めてやんないよ、アタシは。
幽さんもやりますね、こっちを囮にして敵の予備部隊を一気に潰した。
そして何より、あの弓の一斉射で敵将を夏侯淵と断定してきた。
「秋蘭さんとは、知らない仲でなし・・・手の内も、読めるというもの。
敵左翼を殲滅します。
二列縦隊、蛇行突撃、方向転換の瞬間を重ねないようになさい」
・・・馬を手足のように操る、涼州騎兵でなければ出来ないことを命じる麗。
なぜならば、彼らにしか出来ないのならば・・・敵は一度もどんな攻撃を受けた事が無いという事だから。
舞台を緋色に染め、お姫様役の秋蘭さんにも・・・その中で横たわってもらいます。
『魔王の軍』の演目には、悲劇しかありませんもの・・・
微笑む麗が蛇行する隊の中央を突き進む。
「舞います、御主人様」
そう言って麗の手がぱちりと留め金を外した。
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本日二つ目のGW企画
どなたか一人でも面白いと思っていただけたら僥倖です