『天の御遣い』と名乗りを上げたあの日を境に、白夜の生活は徐々に変わり始めた。
冥琳に呼び出され、始まったのは『特別授業』。
本格的に白夜の育成が始まったのである。
基本は藍里が、政務の合間に冥琳や穏が白夜の部屋を訪れ、兵法や内政について教鞭を振るう。
白夜は一つの文句も口にせず、むしろ実に真剣な表情でその授業へ打ち込んでいた。
そして、幾許かの月日が流れ、
再び袁術の使者が雪蓮の下へ訪れた。
『黄巾党本隊と決戦、撃破せよ』という無謀な命令を携えて。
荊州本城、玉座の間にて。
「―――――という訳での。今こそ黄巾党を殲滅する時機じゃと思わんかの?」
玉座の上から雪蓮に問うのは金髪小ロールの少女、袁術公路。
「時機はそうでしょうね。だけど、私の兵だけじゃ撃破は無理よ?」
「なんと。最近民達に『英雄』とか祭り上げられておるようじゃが、その期待を裏切る積もりかの?」
袁術は意地の悪い笑みを浮かべるが、雪蓮は軽く肩を落とし、
「そういう事を言ってるんじゃなく。単純に兵数が足りないから無理だって言ってるのよ。黄巾党本隊の兵数はどう少なく見積もってもザッと二十万。対する私の兵はどう多く見積もっても一万が精々。これじゃあ話にもならないわよ」
言って、瞳に僅かばかりの炎を灯して、
「ただ・・・・各地方の呉の旧臣達を呼び寄せても構わないのなら、撃破する事も可能でしょうね・・・・」
「ふむ、ならば認めてやるのじゃ。さっさと呼び寄せて直ぐに出陣せい」
それに気付かぬ袁術は実に簡単に言ってのけた。
「・・・・了解。袁術ちゃんはどうするの?」
「朝廷からの命令じゃ、妾も出るぞよ」
「私達は万全の準備を整えた後、西進して黄巾党の別働隊を撃破するんです。孫策さんはお強いですから北方で黄巾党の本隊と戦って下さいね♪」
袁術の傍らのバスガイド―――――ではなく張勲が補足する。
「無茶を言ってくれるわね・・・・」
ここまで来ると、最早呆れしか出て来ない。
「孫策ほどの将ならば、強い敵の方が良いじゃろ。頑張って名声を得るが良いのじゃ」
「・・・・取り敢えず有難うと言っておくわね」
「うむ、苦しゅうないぞ」
「じゃあこれで通達はお終い?」
「そうですね。後は何時頃出陣するかの報告をお願いしますぅ」
「それは後で伝えるわ」
「解ったのじゃ。他に質問は?」
「無い」
「では下がって良いのじゃ。妾を喜ばせる戦果を期待しておるぞ」
「・・・・ふっ」
小さく不敵な笑みを浮かべて、雪蓮は玉座の間を後にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それではお嬢様、お昼御飯にしましょう♪」
「うむ、食後の蜂蜜はあるのじゃろうな?」
「はい、勿論です♪」
「では早く行くのじゃ!はっちみつ~はっちみつ~♪」
袁術は軽やかな足取りで玉座の間を後にし、
「・・・・・・・・・・・・」
張勲はその小さな背中を穏やかな眼差しで見つめていた。
「舞羽様・・・・紅蓮様・・・・」
俯き呟いたその声は微風にすら掻き消される程に弱々しい。
そこには先程までの陽気な雰囲気など欠片も無く、
まるで何かを祈るように胸の前で両手を合わせ、
沈痛な面持ちで細めた両目をゆっくりと窓の外の空へと向けて、
「いつまで、私は・・・・」
張勲がそう呟いたその時。
「七乃~!何をしておるのじゃ~!?」
自分の真名を呼ぶ幼き主の声に張勲は我に返り、
「は~い!今行きますね、お嬢様~♪」
先程までの痛々しい表情を消し去り、
「御免なさい、孫策さん・・・・・・・・」
その言葉を最後に、玉座の間は静寂に包まれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時と場所は移り、南陽。いつもの中庭にて。
「あっ、孫策様が帰って来ましたよ。お帰りなさ~い♪」
「ただいま。・・・・・・・・」
穏に返答する雪蓮の表情は『不機嫌』そのものであった。
「お帰り。・・・・その顔だと、今回もまた何か無茶を言われたようね」
「黄巾党の本隊を叩け、だって。・・・・無茶を言ってくれるわよ、ホント」
その言葉に冥琳、祭、穏は驚きと呆れを感じざるを得なかった。
「本隊をじゃと?話にならんぞ。本隊の兵数は噂では二十万とも三十万とも聞く。敵う訳がない」
「普通ならそう考えるんだけどね・・・・あの馬鹿二人はそんな事考えてないみたい」
「あ~・・・・あのお二人って正真正銘のお馬鹿さんですもんねぇ」
「全く、迷惑な話じゃな。・・・・それで?策殿はどうするお積もりじゃ?」
「取り敢えず皆を呼び寄せてから考えるわ」
その言葉に、三人は再び驚きと呆れの表情をを見せる。
「・・・・と言う事は、旧臣を集める事に関して袁術が許可を出したのか?」
「ええ。・・・・馬鹿よね、ホント」
「その馬鹿さ加減は有難い。これで軍の増強が出来る」
「ふむ、先を見据えて動くか。時機が来るとお考えか?」
祭のその言葉に、雪蓮の顔が真剣なものに変わる。
「漢王朝の統治能力は最早無いも同然。そして都合良く起こった黄巾党の乱。・・・・その先に割拠の時代が来るのは明白でしょ?」
「同意だ。では直ぐに使者を出し、各地に散っている旧臣達を呼び寄せよう」
「興覇ちゃんに周泰ちゃん。孫権様に尚香様にも連絡しないといけませんねぇ~」
「尚香は駄目よ、まだ連絡しないで。・・・・これから先は賭けになるからね」
「尚香様さえ残っていれば、孫家の血が絶える事も無い、か。儂は賛成じゃな」
「ふむ・・・・では尚香様には今しばらく待機しておいてもらおう」
「うん、お願い」
「出陣はいつにする?」
「全ての準備が整うまでは出陣しないわ。袁術にも伝えてあるから、暫くは何も言ってこないでしょう」
「それは有難いですねぇ~。では私は使者の選定と兵站の準備に取り掛かりますね」
「では軍編成に関しては儂がやろう。策殿と公謹には軍略の決定を頼もうかの」
「了解。部隊の合流は行軍の途中で行うから、その積もりでいなさい」
「解ったわ。ならば軍の編成が終わり次第、出陣しましょう」
今後の方針が大まかに決定する。
そして雪蓮は顔を引き締めて、
「ええ。・・・・いよいよ独立に向けて動き出せる。皆・・・・私に力を貸して頂戴」
三人の返答は決まっていた。
「当然だ」
「うむ」
「はい♪」
頼もしい肯定の言葉が胸に響く。
(私には・・・・こんなに頼りになる仲間達がいる)
思わず深まる笑顔で三人の顔を見回して、
ふと、とある事に気付いた。
「・・・・あれ?そう言えば、白夜は?」
「ああ、白夜さんでしたらお部屋で藍里ちゃんとお勉強中ですよ~」
「・・・・勉強?」
目を点にする雪蓮に、冥琳は楽しそうな笑みを浮かべる。
「北条は実に教えがいがあってな。態度は実に真面目だし、文句の一つも言わん」
「それどころか授業が終わる度に『有難う御座います』って言ってくれますからね~。教える側としてはこんなに嬉しい事はないですよ~」
「しかも一度教えた事を何度も何度も繰り返して確実に自分のものにする。教えていて実に面白い。何処かの誰かとは大違いだ。・・・・なぁ、雪蓮?」
「あ、あはは・・・・そうなんだ。そ、それで、白夜はどうなの?」
急に矛先を向けられ僅かに冷や汗を流しながら乾いた笑い声を洩らす。
先程までの堂々たる風格を漂わせていた孫呉の王と同一人物とは到底思えない。
何とか話題を逸らそうと苦し紛れの質問をすると、冥琳は元々そこまでこの件でいじる積もりは無かったのか、呆れともとれる小さな溜息を一つ吐いて、
「完全に軍師向きだな。知識の応用力、回転の早さ、共に申し分無い。後は経験次第だろう」
「そう・・・・白夜は、何か言ってた?」
「『もう躊躇いません』だそうだ」
「・・・・そっか」
雪蓮は思い出していた。
先日聞いた、彼の『決意』を。
(頑張ってね、白夜・・・・)
見上げた空は、雲一つ無く快晴。
まるで祝福するかのように、柔らかな風が桜色の髪をふわりと撫でた。
建業。
「蓮華様、少々よろしいでしょうか?」
「あら、思春?どうかしたの?」
「はい、実は――――」
―――――歯車は、ゆっくりと回り始めた。
後書きです、ハイ。
書き終えて思った事。
白夜が出てねぇwwwww
さて、取り敢えずここまで完成したのでうpしました。
いつも以上に駄文になっている希ガスwwwww
いや~、大学始まると一気に忙しくなりましたね~・・・・
明日からサークルもありますし、レポートもそこそこ大変そうです。
ああ、憂鬱だ・・・・( ;)
なのでそんな時間の合間を縫ってちょびっとずつ執筆しております。
どうか気長にお待ち下さいませ。
で、今回ですが、正にタイトル通りであります。
色々と気になる事もあるでしょうが、あまり書くとネタバレになってしまいそうなので控えておきますね・・・・
こりゃ土日はフルスロットルだな。
閑話休題
巷で噂の『二字女体化してやったー』を試してみた。
『jo-ji』での結果
→制服+ミニスカートでジト目で厨二病で金髪セミロングのツインテールで狐耳+狐尾で素直クールな感じ
本名での結果
→割烹着でつり目で茶髪ロングのツインテールでエロエロで素直クールな感じ
・・・・俺はどのみちツインテールの素直クールなのね。
ちなみに。
『houjou byakuya』での結果
→セーラー服+スパッツでノーマルな目で青髪のセミロングのサイドポニーでZUN帽で妹属性な感じ
・・・・・・普通に可愛くね?
では、次の更新でお会いしましょう。
でわでわノシ
・・・・・・・・もう4月だというのに寒いったらありゃしない。
(追伸)
更新情報にも書きましたが、まさかの動画第二弾を投稿してしまいました。
URL:http://www.nicovideo.jp/watch/sm10357810
暇つぶしにでも覗いてやって下さい。
・・・・何か近いうちに物凄い事やるかもです。
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では、どうぞ。