No.134768

真・逆行†無双 一章『天の御遣い』

テスタさん

間幕に続いて一章その1です。

2010-04-06 18:36:14 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:8940   閲覧ユーザー数:7314

 

 

「どうしてっ……どうしてこんなことになるのよぉ!」

 

走る。走る。

 

日が高い日中、林の中を一人の少女が走る。

 

「馬も逃げちゃったし、他の人はみんな殺された……くっ、私はこんな所で死ぬわけにはいかないんだからっ!!」

 

見れば慌てて走ったせいだろう、所々擦り傷が出来ている。

 

それでも少女は走る。

己が目的を果たすために。

 

「曹操様に会うまではっ――きゃっ!?」

 

だが、少女は地面の出っ張りにつまづき転げてしまう。

それに連動して被っていたネコミミの形のフードが取れてしまった。

 

「うぅ……なんで私がこんな目にぃ〜。

…………え?」

 

その時だ。

顔を上げた視線の先。

木に囲まれた場所だというのに分かるほどの上空。

そこから一つの光が見えた。

 

「何あれ?流れ星……こんな時間から?」

 

その光ははるか天なら降り注ぐようにここからそう遠くない所に落ちた。

 

まぁ、それでも歩きだと時間はかかる所にだが。

 

それをしばらく呆然と見ていた少女は自分が追われていることを思い出し、慌てて起き上が――

 

「へへっ、やっと追いついたぜお嬢ちゃん」

 

「ひっ!」

 

――ろうとしたが、後ろから声をかけられ少女は思わず悲鳴を上げる。

 

そして恐る恐る振り返ると……

 

「へへっ」

 

「がははっ」

 

「ぐへへっ」

 

「女……はぁはぁ」

 

そこには汚らしい格好の武器を持った5人の男たちが少女を見下していた。

 

「アニキ、この女以外は皆殺しに、食料に金目の物も全部奪いやしたぜ」

 

「おう、ご苦労だったな。

で、あとはこのお嬢ちゃんだけなんだが……」

 

「あ、アニキ……殺す前に少しぐらい楽しんでもいいだろ?

最近は女を抱くなんて出来てなかったし」

 

「そうだな、じゃあこのお嬢ちゃんは俺たちがたっぷり楽しんでから殺すか」

 

「「「「おうさ!」」」」

 

そう頷きあい、男たちは一斉に少女へと向き直る。

 

「ひぃっ……い、いやぁ……」

 

男たちの会話でこれから自分に行われるだろう行為を想像してしまい、

少女は両肩を抱き尻を地につけたまま後ずさる。

 

もう逃げることも出来ないでいた。

腰が抜けてしまったのだ、恐怖によって。

 

「まぁそう怖がるなよお嬢ちゃん。

大人しくしてりゃ優しくしてやるからよ〜。

終わった後は保証しねぇがなぁ」

 

そう言いリーダー格であろう男が少女の肩に手を置く。

が、それを少女は精一杯の力で叩いた。

 

「さ、触らないで汚らわしい!

あんたみたいな男に触られたら妊娠しちゃうじゃない!!バカっ」

 

それは、男という生き物が心底嫌いな少女だからこそ無意識に出た言葉。

 

恐怖よりも強い嫌悪感が出させた言葉。

だがそれがダメだった。

 

先ほどまでニタついていた男たちの顔は怒りに歪んだ顔へと変貌していた。

 

「てめぇ……」

 

「な、何よ!

それよりその汚い顔を近づ――あぅっ!?」

 

少女は一瞬、何をされたか分からなかった。

だが次第に熱くなる頬に、自分が何をされたのか理解した。

 

少女は目の前の男に殴らたのだ。

 

「ぁ……え?」

 

「調子にのりやがってよぉ!

優しくしてやろうと思ったが止めだ!!

野郎共、遠慮はいらねぇ!犯しつくせ!!」

 

男の号令と共に、周りの男たちは一斉に少女へと襲いかかった!

 

「い、いやあぁぁぁ!!!!」

 

「へへっ、叫んでも誰もこねぇよ!」

 

「なんたってお前が一緒にいた奴らは全員俺たちが殺したんだからなぁ!!」

 

言葉と共に少女の衣服は取られていく。

上着ははだけ、ズボンは脱がされ下着が見えていた。

 

「やだぁ!……やだあぁぁ!!」

 

どれだけ叫ぼうとも助けなどは来ず、男たちは止まらない。

 

服もほとんど脱がされ、もう駄目だと少女は抵抗しながらも諦めかけた――

 

――その時だった。

 

「げばぁっ!!」

 

「はっ!?」

 

「チビ!?」

 

「な、なんだぁ!?」

 

男たちの一人が悲鳴を上げたのが聞こえ、次に他の男たちの動揺した声があがる。

 

目を瞑っていた少女は何があったか確かめるためにゆっくりと目を開ける。

 

そこには――

 

「ヒヒン!」

 

「…………」

 

逃げたはずの自分の馬と、その馬に乗る見たこともない光る服を着た一人の少年の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………………は?」

 

俺の口から気の抜けた声が出る。

でも仕方ないだろう。

というかあまりのことに呆然として自然とでてしまった。

 

「あれ?……俺、今確か」

 

そう、俺はつい数秒前までフランチェスカ学園の男子寮へと続く道を歩いてた筈だ。

 

それが月を見上げた後視線を戻すと一面の荒野に変わっていた。

 

それに俺がいた時間は夜。

月が見える夜だったっていうのに、何故か日は昇っている。

 

「……一体どういうことだ?」

 

俺は気を失ったり、眠ったわけじゃない。

本当に一瞬の内に情景が変わっていた。

確かに視線を戻す直前目の前が光ったけど、それで気を失ったりはしていない。

 

「まさか瞬間移動しちゃったとか?……んなバカな。

そうだっ携帯……は圏外か」

 

口では否定しながらも、頭ではその可能性を否定出来ないでいた。

 

何よりおかしいのが俺の心だ。

 

急に情景が変わって驚いたものの、俺には見知らぬ場所にいるっていう不安があまりなかった。

 

それどころか、ひどく懐かしい気持ちにさえなっている。

 

「俺……どうしちゃったんだ?」

 

そんな疑問を浮かべつつ、改めて周りを見渡す。

 

あたり一面の荒野。

まれに林が見えるが、それも一部。

どうするか?……ん?

 

「これは……!」

 

俺は少し離れた所に落ちていたそれを拾う。

 

間違いない、これは……。

 

「『一天』に『地刀』……」

 

そう呼ばれる、北郷家に祭られていた家宝だった。

 

同時にまるで用意されていたように刀をさすベルトも落ちていた。

 

「なんでこれが此処に……?」

 

考えても答えはでない……。

 

本当にどうするか?

 

「……って、どうするもこうするも、此処に居てもしょうがないよな」

 

とりあえず人を探そう。

出来れば街があれば一番だけど、まずはそれからだ。

 

刀を入れる鞄もないので、ベルトを巻き二つの刀を腰にさす。

 

「よし、行くか」

 

そう言って歩きだそうとした時だ。

 

「ん?……何か……来る!?」

 

視線の先。

そっちから砂煙を上げながら何かが近づいていた。

 

その何かはあっという間にこっちまで来て――

 

「ヒヒーン!!」

 

俺の前で止まった。

 

「馬?」

 

そう、近づいていた何かは一頭の馬だった。

 

「なんで馬が……」

 

「ヒヒン!」

 

と、驚いている俺をよそに馬は俺に向けて背を下ろした。

 

まるで俺に乗れと言っているように。

 

「……乗れって言ってるのか?」

 

「ブルル!」

 

返事に答えるように鳴く馬。

気がつけば馬は俺の顔を真っ直ぐ見ていた。

 

「…………」

 

どこにいるか何も分からない状況。

迂闊な行動はやめておいたほうがいいに決まってる。

 

なのに……俺はその馬に乗ることを選択した。

 

「ヒヒーン!!」

 

俺が乗ったことが嬉しいように一鳴きし、馬は何処かへと駆け出した。

 

さぁ、何処へ連れて行ってくれるのか……。

 

それからまた不思議なことに、馬に乗るのは――しかも鐙もない――初めてなのに、問題なく乗れていた。

 

揺れは強い筈なんだけど、まるで乗ったことがあるみたいに体の動かしかたが分かったんだ。

 

ちなみに後で分かったことだけど、この馬は雌だった。

 

いや、なんか言わないといけない気がして……。

 

 

 

 

 

 

 

「うっ!?」

 

その光景に俺は顔を歪めてしまった。

当然だ。人が死んでいたんだから。

 

「なんだこれ……?どうしてこんな……」

 

馬から降りて確認するが、倒れている人全員が死んでいた。

しかもただ死んでいるんじゃない。

切り刻まれたり、殴られたり……つまりは殺されていた。

 

「ぅぷっ」

 

血の匂いと残酷な光景に思わず吐きかける。

こんな光景を見て我慢できた自分に驚いたりもした。

 

周りには人以外にも数頭の馬の死体もあった。

恐らく死んでいる人たちの荷物を乗せていたんだろうが荒らされた後を見ると、何も残ってないだろう。

 

「なんだよ……まるで盗賊にでもあったみたいじゃないか」

 

今の時代にそんな……と思いながらも気になることがあった。

 

こな人たちの着ている服が凄く古いのだ。

まるで大昔にあったような服……。

 

と、

 

「ヒヒン!」

 

馬の声に視線を移すと、馬は近くにある林の方へと向いていた。

 

「林に何かあるのか……?」

 

ある考えが浮かぶ。

この人たちが本当に盗賊に襲われたとしたら。

この馬は盗賊から助けを呼ぶために逃げていたとしたら。

その馬が林を見ているってことは……

 

「まだ生きている人がいて、盗賊から逃げている!?」

 

「ヒヒーン!!」

 

正解だ!と言わんばかりの鳴き声に呼応するように、急いで馬に乗る。

 

そして馬と俺は林の中へと入っていった。

 

 

 

 

走る。走る。

 

馬は林の中だというのに、荒野以上に速く走っている。

 

俺も何かあるか見逃さないように目を凝らす。

そして――

 

「――っ!!」

 

――数人の男たちに犯されそうになっている女の子を見つけた。

 

女の子の顔が見える。

その顔を見た瞬間、心が何故か締め付けられ。

腫れた頬と目に浮かぶ涙を見た瞬間、怒りが溢れ出た。

 

許さない!!

 

「げばぁっ!!」

 

俺と同じように怒っていたんだろう。

馬はその太い足で、今まさに襲いかかろうとしていた男を蹴り飛ばした。

 

「な、何者だてめぇ!!」

 

「よくもチビを!」

 

「許さねぇ!」

 

男の仲間が騒ぐのを無視して馬から降りる。

 

それから男たちを睨みつけた!

 

……許さない?

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

少年の言葉を聞きながらこの時、不覚にも少女は思ってしまった。

 

今し方現れた少年を、

光る服を纏った少年を。

 

少女が以前までいた場所で、ある噂が流れた。

 

『蒼天を切り裂いて、天より飛来する一筋の流星。

その流星は光の衣を纏いし天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静す』

 

先ほど見えた流星。

光る服を着た少年。

何より自分の危機に現れたことが、少女にそれを思わせた。

 

「天の御遣い……」

 

 

 

 

 

これが始まり。

 

少年の二度目になる外史での物語の――

 

全ての始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

あとがき。

 

ここまで読んでくれてありがとうございます。

というわけで一章の始まりです。

どうだったでしょうか?楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

ではコメントを返していきたいと思います。

 

conquerorさん>ありがとうございます。なるべく速い更新を目指していきますね。

 

M2さん>廃校になったのはフランチェスカではなく一刀が以前まで通っていた学校ですよ。

確か春恋の設定が主人公の学校が廃校になりフランチェスカに編入する。といった話だったので、それを使わせてもらいました。

 

aoirannさん>読みやすいといってもらえると嬉しいですね。

これからも読みやすい作品になるよう頑張っていきます。

 

村主さん>一章で大体一刀の方針が決まります。楽しみにしてくれると嬉しいです。

 

BookWarmさん>まさかの失態すいませんでした。言い方もキツイとは思いませんでしたよ。

当たり前のことだと思うので。よかったらまた見て下さいね。

 

支援してくれた方、コメントくれた方、何よりこの作品を見てくれた方。

本当にありがとうございます。書く力になりました!

 

では皆さんまた次回に。

 

 


 
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