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身も心も狼に 第19話:転校初日・前編

MiTiさん

卒業~しても変わらな~いよ 約束を交わしたあ~のひと~♪
っと、つい先日専門学校を無事卒業しました。
まぁ、その関係で忙しく読む暇はあれど書く暇がなく長く空ける事に…

まだまだ消えるつもりはありませんのでこれからもヨロシクです!

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2010-04-01 00:25:01 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:3677   閲覧ユーザー数:3251

一限終了を告げるチャイム、それは、クラスの男子にとっての開戦の合図でもあった。

 

結局、転校生ルビナスへの質問タイムとなる筈だったその時間は、

稟とルビナスのラブコメタイムとなり、その光景によるクラス全員の硬直で半分以上が過ぎ、

残りの時間も席替えの時間で消えてしまった。

 

土見ラバーズ一人追加確定ということで、稟へ向けられる男子と一部女子の、

殺気(男子のみ)と嫉妬と羨望の視線が今まで以上と予想、と言うより確定してるので…

 

稟の席は一番後、窓からの狙撃と扉からの奇襲(過去実際あった)を想定し真ん中辺り。

それでも向けられてくる視線から守る為、周囲を土見ラバーズと麻弓で固めた。

 

そんなハーレム配置に男子全員が「異議有り!#」と叫ぶが、

 

「貴様等ー、つっちーに嫉妬の視線を送らないでいられるかー?」

 

「ならば殺気を込めた視線を!#」

 

「阿呆か!# 男共の意見は却下だ」

 

というやり取りの下、半強制的に稟の席が決定。

稟は稟で、ルビナス達女子に守り固められるのは情けなく感じるも、

 

「稟君が(視線で)苦しむ姿…見ていられません…」と、楓に涙目でせがまれ、

 

「私も、稟君がイヤな思いするなら…解禁するっす!」と、

シアがどこからともなく出した校長室のソファーをぶん回し、

 

「稟様を害する存在は…私が…」と、ネリネが目に見えるほどの紫電を放出し、

 

「稟を苦しめるなら…潰しちゃう?」と、ルビナスが目が据わった笑みを浮かべながら、

教室全体に響き渡る程に関節を鳴らしながら握り拳を作るものだから、

このままではこのクラスだけ女子クラスになりそうなので、結局稟も折れた。

 

ラバーズ達の配置は公平にジャンケンで決められ結果、

 

   シア 麻弓 ネリネ

   楓  稟  ルビナス   という配置になった。

 

ついでにクラス全員の席替えが行われ(因みに樹は一番前の右端)、

全員が机と椅子を移動し終えた頃には一限は後十数秒だった。

 

「もうこんな時間か…とりあえずルビナスのことはつっちーに任せる。

 ルビナスへの質問は休み時間に行え。騒ぎすぎて他に迷惑かけないように。では、解散!」

 

告げながら撫子は背を向け扉へと歩き、教室から退室すると同時にチャイムが鳴り…

クラス全員が動き出した。

 

 

「土見ぃ!覚g「前世の頃かr「ルビナスさん!土見君!二人t「奥義!解k「土見く~ん♪ふたr「

 稟様に手をd「稟君!お、お二人n「稟~♪学園案内してもらっていい?」

 

「あ、ああ」

 

稟に襲い掛かろうとするものをシアとネリネが撃退し、それ以外がルビナスに色々聞こうとし、

楓と麻弓が家族と言うよりバカップルともいえる恋人同士の様なやり取りをしていた二人を追求しようとし、

それら全てを意に介さずルビナスは稟に嬉々揚々と稟に近寄り、

そんなルビナスを稟はいろんな意味でスゲー…と感じていた。

 

「あ~、ルビナス。案内は昼休みにしよう。流石に今は皆が逃がしてくれそうに無いし…」

 

「ん~、そうね。教室の外もなんかうるさいし…」

 

言いながらルビナスは稟に向きながら、彼の机に寄りかかる。

普通なら馴れ馴れしい等と見られるかもしれないが、当の二人はまるでそれが自然であるかのよう。

女子が男子の机に寄りかかるなどと言う行為は、しかし、ルビナスがやるとクールなイメージが際立つ。

見惚れるものはいても咎めるものは出てこなかった。

因みに、自分の席に戻らないのは、戻った瞬間机と机の間でさえも、

人の壁に遮られて、稟に近付くことが出来なくなると予想してのことだ。実際虎視眈々と狙う視線がちらほら。

 

「もう、ルビナスさん。いくらなんでもあの行為は行き過ぎなのではありませんか?」

 

暫くすると、親衛隊と男子を撃退し終えたシアとネリネが戻ってきて、

二人が寄ってくると自然と楓と麻弓も加わって来た。

樹は早々にエビフライにされて参加不可。

 

「う~ん、と言われても…私としては特に変わったことしたつもりは無いんだけど」

 

「ほほう、と言うことは…土見君とルビナスちゃんは普段からあ~んな風に、

 ラブラブしてると?あ、私麻弓=タイム、麻弓って呼んで。よろしく♪」

 

「稟から話は聞いてる、よろしくね。麻弓、私のことは好きに呼んでいいわ。

 で、普段からとしてると言うより…してたって言ったほうがいいのかも」

 

「どゆこと?」

 

「ちょっと事情がね…」

 

と、どこか影のさした笑みで返した。

会話が少々途切れた所に、話しかけづらそうにしながらも楓が入ってくる。

 

「あ、あの~…」

 

「ん、何楓?」

 

「私が知ってるルビナスという名前…私が知ってる娘が同じ名前なんですけど…

 もしかして同一…なんですか?」

 

「ええ。楓が考えてるルビナスよ」

 

導き出した答に肯定で返されるが、楓もいまいち信じられずにいた。

 

「ねぇねぇ、ルビナスちゃんってリンちゃんと知り合いってことだったけど…

 稟君やカエちゃんとも知り合いなの?呼び捨てだし」

 

「呼び捨てなのは性格の事もあるけど…麻弓を除いて私達5人は皆子供の頃に会ってるわ」

 

「え?」

 

「稟と楓は一時期一緒に暮らしてたし。

 …あ、そういえば楓」

 

「は、はい!?」

 

突然の呼びかけに、楓は慌てて反応する。

 

「もう仲直りしたんだってね?」

 

「…あ」

 

なんのことか、なにを仲直りしたのか。

一緒に暮らしていた故に、事情を知るルビナスの質問に、

楓はいつのなんのことかを直ぐに察した。

 

「もう、あんなこと…しないわよね?」

 

「はい。あれは私の一方的な誤解…今の私がいられるのは稟君のお陰です。

 今は稟君に尽くすことこそが私の喜びです」

 

「フ~ン…変わったわね。別に稟も楓の為にやってたことだから気にしないけど、これなら安心かな。

 これからも昔みたにに…稟と私、楓と桜が一緒だったときみたいに仲良くしよ」

 

「は、はい!」

 

微笑みながら告げるルビナスに、楓は若干涙を浮かべながらも晴れ晴れとした笑顔で返した。

本人達しか知りえない深刻な事情であったが、二人の笑顔を見、稟は解決できたと安心し笑みを浮かべる。

 

 

それから、暗くなった空気を解消しようと話題を変える。

 

「それよりも、疑ってるわけじゃないんだがルビナスがルビナスだって証明できることって、

 何か無いもんかね?」

 

稟の疑問に少し考えながら答える。

 

「証明するのはいつでも出来るんだけど…あまり人目に付くのもね」

 

「あい。余り不用意に知られていいことでは…」

 

「何々?ルビナスちゃんって何か分けありなわけ?」

 

「ちょっとね…これに関しては、昼食べながらにでも話そうか」

 

「そだな。で、誰には話す?」

 

聞く限りでは、あまり知らしめて良いことでは無いらしく、

ならば信用のおける者、信頼できる者が良いと考える。

 

「俺・楓・シア・ネリネと亜沙先輩とカレハ先輩にも知らせるか。

 勘が鋭い所あるからいずれはばれるだろうし」

 

「ねね、私は?」

 

「麻弓は………「何でそこで言い淀むのよ?」…誰にも言いふらさないって誓えるか?」

 

「失礼ねー。これでも私は友情に熱いのよ、そんなことするわけがないでしょ」

 

「だな、後は「当然、俺様も聞いていいよね!」…何時復活した?」

 

「っふ、愚問だね。あの程度、俺様なら簡単に「なら今度は魔法でエビフライで」

 ま、待った!何の対策もなしにそれは流石に無理…って今はそれ所でなくて…

 俺も美女を売るようなことは決してしないと誓えるし、

 それに、何かあったときは色々助けることも出来るけど」

 

「…まぁ、そうだな。ルビナスいいか?」

 

「…確か、このメガネって女の敵だって聞いてたんだけど。

 つまり、楓やネリネ、シアや私の敵、それに稟も目の敵にしてるとか…」

 

「んな!?ご、誤解だ!最後はともかく俺は全女性の「稟に関しては否定しないんだ…」…あ~いゃ」

 

ルビナスの言葉に、醸し出すオーラに呑まれて樹は硬直していた。

浮かべているのは微笑、ひたすら微笑。だが瞳は閉じられ何を思っているかは窺えない。

と、思っていると徐にルビナスが樹の額に手を近づけ…握った。

 

「稟の敵は…私が潰すからね(ニッコリ」(ギリギリギリギリ

 

「あ…あぁ…ぁぁああ…び、美女のアイアンクローも…これはこれで快~感ーー!!」(バタ

 

謎の雄叫びを上げながら、ルビナスが手を放した瞬間樹は床に伏せた。

転がしてみてみると、白目をむきながらも光悦とした表情をしていた。

 

「で、どうするの?」

 

「あ~、こんなやつでも俺の悪友でもあるからな。

 それに、なんだかんだで役に立つときもあるし、一応女性に関しては信用も出来るし」

 

「そ。それじゃ後は…」

 

「撫子先生にも知らせておいた方がいいと思いますけど」

 

「だな。話に誘うついでにどこか手頃な教室使わせてもらうか」

 

昼休みの予定を立て終えたところでチャイムが鳴り二限が始まった。

 

 

樹は授業開始から10分白目気絶から回復せず、立ち直った瞬間古典的な廊下に立ってろ!を食らった…

 

 

席の配置に少々違和感を覚えられたのと、結局始終樹が授業に参加できなかった以外、

特に問題なく2限終了。そのチャイムがなた直後…

 

「「土見稟!今日こそ引d「ルビナスさん、是非土m「ルビナスさん!ちょっとi「

 稟君はわt「稟様に害n「…スゴイ人気ですね…」

 

「う~ん、そんなに転校生って珍しいものなの?」

 

「それもあるが、一番の理由はルビナスが美人だからだろ」

 

1限終了時は廊下に見物人は大勢いるも、ルビナスに詰め寄るのはクラス内だけだったが、

今度は他クラスの親衛隊までもが押しかけて来、変わらず二人の王女に撃退されていく。

慣れというのは恐ろしく、稟にルビナス、それに楓までもが、

どこか呆れた感じでその光景を眺めていた。

 

「元が元だから、自分が美人とか言われてもピンと来ないけど…」

 

「けど?」

 

「やっぱり稟にそういわれるのは嬉しいかな♪」

 

別段照れることなく、ストレートに笑顔と共に返され若干驚く。

その言葉、稟に言われてという言葉は、

聞くものにとっては稟以外の男に興味無しとも取れてしまう為、

聞いていた男子は殺気と嫉妬を強めるが、そお発生源はことごとく王女達に狩られていく。

 

そんな中二人の乱入者が現れる。

 

「ハッロー稟ちゃん♪遊びに来たわよー」

「おはようございます、稟さん」

 

入ってきたのは亜沙とカレハ。二人は稟達に詰め寄ろうとしていた面々をすり抜け、

あっという間に稟の近くまでたどり着く。

 

「へぇ~、君が今学校中で噂の転校所為か~」

 

「お話どおり美しい方ですわね」

 

近寄った二人は一目ルビナスを見てそう評価する。

 

「えっと…亜沙先輩とカレハ先輩であってる?」

 

「あれ?私達自己紹介したっけ?」

 

「や、稟から話を聞いてたから」

 

「そなんだ。まぁ改めて…時雨亜沙。稟ちゃんとはバーベナに来る前から先輩後輩の間柄、よろしくね♪」

 

「カレハと申します。稟さんとは亜沙ちゃんを通して親しくなりました」

 

「ルビナスよ、よろしく。稟とは昔一緒に住んでたけど、一寸事情があって別れて、数日前に稟の許に帰ってきたの」

 

「へぇ~、そこで迷わず帰ってきたって言うんだ」

 

「それが?」

 

「ううん、なんとも感動的な話だな~って…稟ちゃんたら果報者ね~、っこのー♪」

 

いつものノリで、亜沙は腕を振り上げる。

これは張られるか?と稟は若干構える。が…

 

 

ピト…

 

いつもならビターン!という音と共に背中を赤くさせるのだが、予想に反して、音も威力も弱かった。

叩かれるはずであった稟の背中を見ると…

 

亜沙が手を振りかぶった状態で固まっていた。ここはまだいい。

問題があるとすれば、亜沙の手と稟の背中に挟まれる位置に手を差し込んでいるルビナスがいることだ。

 

ルビナスが何をしたかというと、亜沙のビンタの威力・衝撃などを受け流し打ち消したのだ。

人は高い所から落ちてくるものを受け止める時、触れた瞬間身体重心全体を下げる。

これは受け止めることで発生する負荷を軽減する為のものだ。

そのままの状態で受けた場合、受け止める方も止められる方にも何かしら負荷がかかる。

武術などでも、自分から跳んでダメージを軽減させる行動があるが、ルビナスが行ったのもこれに似たようなものだ。

 

触れた感触しか感じられないほどの力を込めて振られる手に接触し、

徐々に力を加えて行くことでビンタの威力を軽減相殺していき、

最終的には、それこそ触れている感触しか残らないほど。

 

「ねぇ…亜沙…」

 

止められたことに驚いていると、止めた本人であるルビナスに呼びかけられ、

ふとそちらを向いてみると、笑顔の中に僅かに怒りを含めていた。

 

「今…稟のこと、叩こうとした?傷つけようとした?」

 

亜沙を含め、ルビナスから発せられる威圧感に誰もが言葉を発せずにいる。

そんなルビナスに一瞬驚くも、いち早く我に帰った稟が止めに入る。

 

「あ~、ルビナス。今のは亜沙先輩のスキンシップみたいなものだから。

 親衛隊連中みたいな殺意のある奴じゃないから」

 

「…そなの?」

 

稟の性格、他人を優先し自分は疎かにすることを知っているので、また庇っているのかと思ってしまい、

周りにいるものに聞いてみたところ、全員が稟の言葉を肯定し、亜沙本人もそんな意思は無いと主張。

 

「そういうことなら…因みに、この中でスキンシップに叩いたりしてくる人は?」

 

「ん~…亜沙先輩以外はいないな。あ、麻弓は何というか情報戦で来るな」

 

「ちょっと~、土見君ひどいこといわないでよー」

 

「事実だろ…何回「この写真をばら撒かれたくなかったら~」って言われたことか…」

 

「いや~アハハ。ま、まぁn「つまり…稟の敵?」っちょ、私はそんなつもりは無いわよ!」

 

「なら良し!」

 

「っほ…」

 

麻弓はホッとした、心底ホッとした。

朝から見たルビナスは、何事にも動じず常に落ち着いており、

樹へのアイアンクローや亜沙のビンタの阻止など、只者ではないのは一目瞭然。

そんなルビナスに敵視されたとなっては…この時、麻弓含めて、

近くにいた者たち(女子が大半)は稟に害を成す様な行為はしないと心に誓った。

(女子は)元々なかったが…

 

 

3時限終了と共に、稟は撫子に空き室使用の交渉に出、稟がいなければチャンス!

とクラスの男子がルビナスにアタックをかけようとするも、

本人は、それらを意に介さず稟についていき、隣を歩く。

 

その動作はとても自然で、まるでそれが、稟の隣にルビナスがいることがとても自然に感じられ、

男子の誰もがなにも出来ず、ただ稟に向けて殺気と嫉妬を込めた視線を向けることしか出来なかった。

 

普段なら、そんな視線を受けたら生存本能が働きダッシュで逃げているところだが、

隣にルビナスがいることで心強さと安心感を得ることが出来、

稟はルビナスと共にノンビリと職員室に向かえた。

 

 

職員室に到着し扉を開けようとしたところ、扉がってに開き、

中から撫子が現れた。

 

「ん?つっちーにルビナスか。どうした、何か問題でも起きたのか?」

 

転校初日から職員室にまで来るような事でも起きたのかと思い問うが、

それに対しては稟とルビナスは問題ないと告げる。

 

「実は一寸お願いがありまして…紅女子は今日昼飯ってどうします?」

 

「昼食?今日は弁当を作ってきてあるから、授業が終わったら職員室で食べるつもりだが」

 

「それじゃぁ…今日は一緒に食べませんか?」

 

「なんだ、わざわざ一緒に食べるのに誘いに来たのか?」

 

「いや、それはついでで…出来ればどっか空いてる教室を使わせてもらいたいんですが」

 

稟の要望に撫子は首を傾げる。一緒に食事を取るならば屋上や食堂、教室などでも良いはず。

なのに空いている教室と来た。

そんな撫子の疑問にはルビナスが答えた。

 

「実は私のことでちょっと話しておきたいことがありまして。

 でも、出来ればあまり大勢には知られたくないんです」

 

「ルビナスのこと?」

 

「はい。私の出生についてなんですけど、おじ様…

 魔王様も関わってくることなので」

 

「ム…それは聞いておかないとな。 わかった、なら二階の小会議室で良いな。

 今日は特に委員会も無いし、誰も使う予定はなかったはずだ。

 何人くらい来るんだ?」

 

「えっと…俺とルビナス、紅女子、楓たち三人と麻弓、亜沙先輩とカレハ先輩。あとついでに樹です」

 

「意外と多いな。まぁ10人くらい入れるだろう。

 私は授業が終わったら一度職員室に戻ってから行く子とになるから、先に行っててくれ」

 

「「ハイ」」

 

「っと、そろそろ時間だな。それじゃ、後は昼休みに」

 

そうして三人は別れた。

 

 

昼休み、稟達は各々の弁当を持って小会議室へ向かう。

ルビナスに近付き話しかけようと妨害してきた者たちは、撫子に呼ばれていると言って除けて行った。

ちなみに、樹は他クラスの女性とに弁当を貰いに行くといったので一緒にいない。

途中、亜沙とカレハも合流し、改めて向かう。

 

授業が早く済んだのか、小会議室の前には既に撫子と、何故か樹が先に到着していた。

まぁ、特に問題ないだろうと判断して、皆入っていく。

 

室内の机の配置は、部屋の中心を囲むように長机が一辺二台ずつ四角形に並べられており、

各机に3つずつ椅子が配置されている。

席順はルビナス・稟・撫子・楓・シア・ネリネ・空・樹・空・麻弓・カレハ・亜沙という順番だった。

特に考えることなく座ったが、程度の差はあれど女子たちの共通の考えは『樹の隣も向かいもイヤ』だ。

 

まずは昼食を済ませようと言うことに成り、各々弁当を開く。

作ってきた組は撫子・楓・シア・カレハ・亜差で、作ってもらった組はルビナス・稟・ネリネ・樹・麻弓である。

 

作ってきた組は流石と言うべきか、若干撫子のは他と比べると劣っているかもだが本当に僅か、

皆栄養バランスなどを考慮に入れつつも色鮮やかで食欲をそそられるものである。

 

後者、親に作ってもらったのがルビナス・ネリネ・麻弓で、ルビナスは肉が多め、

ネリネのは肉魚野菜バランス良くデザインもかなりこっており(フォーベシイ作)、

麻弓のは他と比べると普通レベルの弁当だ。

稟のは楓が作っている為量が増えただけで中身は一緒。

樹のは…元はハート型だったんだろうが、揺れなどでずれた所為で形が崩れ、

丁度ハートが半分にひび割れた形の模様がでかでかとある弁当。

 

揃って「いただきます」と言ってから、皆いつもより速いペースで平らげる。

全員が食べ終わってから、食後のお茶を飲み一息入れてからルビナスが話し始める。

 

「それじゃ話してもいい?」

 

「ああ」

 

稟と他全員に了承を取って、ルビナスは部屋の中心に立つ。

 

「まず皆に言っておくわ。私は…人間じゃないわ」

 

「…え(は)?」(稟・ネリネ・楓以外

 

「…ま、いきなりそう言っても信じられないだろうし。実際見てもらう方がいいか」

 

皆が呆ける中、ルビナスは片手を胸の前で握った。すると突然、ルビナスの身体が光った。

突然のことに皆目を瞑るが、光は一瞬で収まる。

収まったのを感じて再び目を開き、眼前の光景に驚愕する。

 

瞬きする直前までルビナスがいた場所に、白銀の巨狼が鎮座していた。

 

 

皆が驚きを隠せずにいた。知っていたネリネ、狼であると確信していた稟と楓も、

初めて見る変化のシーンを目の当たりにして驚いていた。

そして、ルビナスの狼の姿に驚愕していた全員は、

 

「フゥ…これが私の狼の姿よ」

 

人語を話したことで更に驚く。が、これで終わりではない。

皆が狼の姿を見たのを確認したルビナスは、徐に目を閉じ、再び身体が光る。

 

次に現れたのは、半身が獣半身が人の、獣人形態のルビナスだ。

 

「そしてこれが私、ワーウルフの真の姿…これこそが私の正体よ」

 

ゆったりとその場で一回転し、その姿を全員に見せる。

 

上半身は鳩尾より上、首より下が全て毛皮で覆われ、

指は五本に、その先には第二間接程の長さの鋭い爪が伸び、

それ以外のところからは人間のような素肌が。

 

下半身は全体が毛皮で覆われた人間の足の形で、

こちらも五本の指に、太く鋭い爪がついている。

後腰からは太く大きな尻尾が生えている。

 

首から上に触れると、そこに毛皮は無く、

人間の素肌が、目が、鼻が、唇があり、

即頭上部には獣の耳が生え、

後ろに手を伸ばすと、膝まで届く長い髪があった。

 

一同はその姿にいろんな意味で驚愕していた。

ある者は空想上・架空の生物であると思っていた存在が目の前にいることにある種の憧憬を込めて、

ある者は未知の生物に対する警戒を込めて。

 

誰もが言葉を発せずにいる中、樹が発言した。

 

「一つ質問していいかい?」

 

「ええ。なに?」

 

「…今は服を着ていないようだけど、もしかして人間の姿に戻ったらはだげるごばるぶはぁあ!!??」

 

意を決して発した疑問は、不埒なことを考えたことに対する罰として、

多方向から飛んできた魔力弾と椅子とロープと教室移動の為に持っていた教科書入りカバンと次のクラスの出席簿を受け、

あっけなく意識を手放した。

 

最後に、椅子ごと倒れ付した樹に対して、稟はその顔面に渾身の拳を叩き込んだ

 

 

「それで…実際どうなんだ?」

 

打撃によって熱を持った手を振りながら稟が問いかける。

稟の場合は邪な考えなどなく、純粋に心配してくれているのだと分るので樹のような仕打ちは無い。

 

「それに関してはおじ様…魔王様からこのブレスレットを貰ってるから」

 

「それは?」

 

「簡単に言うと服を仕舞っておける魔道具で、狼形態か獣人形態になる時自動で服が収納されて、

 人間形態になったらまた自動的に着られるアイテムよ」

 

「ほう、便利な道具だな」

 

「元々はスパイ用に作られたらしいけどね…じゃ、戻るわ」

 

言うと、またしてもルビナスが一瞬光、それが晴れると制服を着たルビナスが立っていた。

説明を受けていたとしても、やはり初めて見ることに驚かずにはいられなかった。

 

「…なるほど。子供の頃、俺達の言葉を理解してたのもこれが理由か」

 

「そういうこと」

 

「って、土見君はそのことなんも不思議に思わなかったわけ?」

 

「ああ。ルビナスとは子供のころも家族として接してたからな。

 狼だとかペットだとかじゃなく、ルビナスって言う家族の一員として」

 

迷いなく言い切る稟に皆感心し、ルビナスは改めて言われ感動した。

この場に集まったメンバーには誰も稟のことを変に思うものはいなかった。

 

 

 

「それじゃおじ様との関係についてなんだけど、曰くワーウルフって絶滅種らしくて。

 そのワーウルフは魔族の人たちとは違った魔法を持ってるの。

 そのうちの一つがさっき見せた肉体変化。

 一つが肉体強化、それから相手の表層心理を読むこと。」

 

「前二つは想像できますけど、最後のは?」

 

「分りやすく言うと、相手が言おうとしてることとかを理解できるの。

 私がその人と話したいと望んだら動物、人間、外人区別なくこの力が働く。

 子供の頃稟達の言葉が分ったのもこの力のお陰よ。

 しかも無意識無自覚の内に発動してるから私自身に負担も無し」

 

「へぇ~。便利な魔法ね」

 

「でも、私がこの力を持ってるから、私がワーウルフだから目を付けられちゃって」

 

「…誰に?」

 

先ほどまでの雰囲気から一転し、どこか辛そうに話すルビナスに、

あっていない間に何かあったのだと察した稟は真剣な表情で聞く。

 

それからルビナスは語っていく。

 

自身がワーウルフであることの発覚、無条件で表層心理を読む力の応用による記憶の改竄を行いながらの拷問、

拷問現場の目撃、報告、フォーベシイの手引きによる研究所からの脱出。

フォーベシイが逃亡先に用意した魔王妃の出身村での生活、そこに出現した失敗作、覚醒と撃退。

そして人間界に行く事が決定し門をくぐろうとしたところで、再び失敗作の襲撃、そして…

 

「…襲撃してきた失敗作で傷ついて力を失った私は、不安定になった門に引き込まれて、

 次に気が付いたときには人間界にいて、そこで稟に助けてもらったの」

 

 

話の内容はルビナスの辛体験が殆どであったが、後半になるにつれ悪良半々、

最後は稟と再会できたと言うハッピーエンドの壮絶な物語を聞き皆ホゥっと吐息を漏らしていた。

 

「…なんていうか、すっごいドラマチックっす!」

 

全員を代表してシアが感想を述べた。同じ感想なので、皆その感想に頷いている。

 

かなり長い時間話していたようで、その後少し話すと予鈴がなったために、

ルビナスがワーウルフであることは絶対に言いふらすことはしないと誓い合ってこの場はお開きとなった。

 

 

~あとがき~

 

第19話『転校初日・前編』いかがでしたでしょうか?

 

うぅ…文才の無い自分が恨めしい…

 

特に、ルビナスの変化に驚くシーン。もう少し他の表現できなかったものか。

 

驚くだの驚愕だの連呼しまくっちゃって…

 

前編ではまだ親衛隊は出来ていませんが、それでもこの人気。やり過ぎましたかね?

 

これで親衛隊が結成されてしまったら、稟は更に危険なことに…

 

 

まぁ、ルビナスがいるから大丈夫でしょう。

 

 

さて、次回『転校初日・後編』昼休みは終わってからの話です。

 

では、また次回。


 
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