No.127120

身も心も狼に 第18話:三人目の転校生

MiTiさん

ふっふっふ…大きなテストが二つ終わった~!!
結果何ザ知ったこっちゃねー!
俺は…俺は解放されたー!!

てなわけで、登校します

2010-02-28 01:04:03 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:3915   閲覧ユーザー数:3294

ネリネとシアが転校して来た2日後、その朝。

芙蓉家より稟と楓が、神王邸よりシアが、魔王邸よりネリネが現れ、

合流した四人は共に学園へ向かう。

 

「そういえば、今日ってもう一人転校生が来るんだったよな。うちのクラスに」

 

「本当ならシアさん達と一緒に転校してくる予定でしたけど、

 事情により今日になったとか」

 

「緑葉君曰く「極上だ~!!」って言ってたけど…

 リンちゃん、その人のこと知ってるんだよね?」

 

転校生は魔界出身の女史であり、ネリネの知り合いであることが、

現時点で本人以外のものが知る情報である。

問われたネリネは、言葉を選び考えながらそれに応えていく。

 

「はい。お父様の仕事の部下…というより協力者と言えばよいのでしょうか。

 その娘さんです」

 

「ってことは、ネリネとも関わりがあるんだな。どんな娘だ?」

 

「私自身がお話した機会はそれ程多くは無いのですが…

 とても優しく、お強い方です」

 

そんな感じの会話を続けるうちに、ふとわいた疑問、不安といっても良い、

を楓が口にする。

 

「もしかして…今度も稟君のことが好きで~…ということは…」

 

「いや、シアとネリネは、昔会った事があったけど、

 二人以外で他界に知り合いなんていないぞ?

 ハリーさんとマオさんは大人だし、あそこはルビナス以外に娘さんなんていなかったし…」

 

事情を知るネリネは、稟の言葉に危うく「そのルビナスさんです」と言い出しそうになるが、

本人達とフォーベシイより内緒にしておくようにと言われているので、

自分が知る情報の中から、伝えても良いであろう情報を吟味しながら答えて行く。

 

「楓さんの言うことは間違ってはいませんが、少々違いますね」

 

「と言うと?」

 

「…詳しい話は本人からと言うことで。今は学校へ急ぎましょう」

 

「そだな」

 

転校生の話題はここで打ち切られた。

 

 

それからは、今日の授業の話題へと変わる。

 

「そうだ、楓。今の内にノート返しとくぞ」

 

「あ、はい」

 

「う~…同じ屋根の下に頭の良い人がいる稟君が羨ましいっす」

 

「勉強でしたら…私も教えることが出来ますのに…」

 

シアは自分は苦労し買い物に行く時間を削ってまでしてやっとの思いで完成させたのに、

直ぐ横では苦労半減で完成させた稟を、

ネリネは数少ない稟を助けるという機会を毎回得られるであろう楓に、

それぞれ羨ましそうな視線を向ける。

 

「ははは、まぁまたの機会にな。…っと、ほい楓」

 

「はい…あれ?稟君、これは稟君のノートじゃ」

 

「あ、スマン。同じノート使ってるからつい」

 

「でも、同じこと書いてるなら別にいいんじゃないの?」

 

「…シア。それはつまり、俺が楓のノートを丸写ししてるってことか?」

 

「違うの?」

 

「いくらシアでも問題発言だぞ~。見せて貰って参考にはしても丸写しはしない!

 何なら見てみろ」

 

と言いながら二冊のノートをシアに差し出す。

受け取ったシアは両手のノートを開いて見比べる。

 

「本当だ~。やっぱり書く人が違うと答えも違ってくるんだ」

 

「まぁそうだろ。人が違えば考え方も書き方も変わるしな」

 

「でも、一つも同じところが無いのもすごいよね~」

 

「…何?」

 

参考にするからには、共通点はむしろ多くなるはず。

それが一つも無いのはおかしいと思い、稟は慌ててノートをとり中身を確認する。

 

それは間違いなく稟のノートだ。

最初から最後まで使い切ったために、取り替えてから課題を書いた新しいノート。

…ではなく、字で埋め尽くされた古いノート。

 

「あっちゃ~、やっちまった…まぁ事情を話せば…」

 

「でも、確か今日忘れたら追加課題を出されるといっていたような…」

 

「マジか…それはいやだな。楓、チョット取に帰るわ」

 

「でも、もう時間が…」

 

「走れば間に合うって。楓達は先に行っててくれ」

 

「…わかりました」

 

「それじゃ稟君。また後でね!」

 

「ああ」

 

言いながら稟は来た道を走って戻り、楓達はバーベナへと歩を進める。

 

その現場を複数の視線が見ていたことは、誰も気付かなかった…

 

 

稟達が学園へ向かう少し前。

話題となっていた転校生ことルビナスと、その両親ハリーとマオの三人は、

稟達よりも早く家を出、学園に向かっていた。

 

ハリーはスーツ姿、マオは私服姿、そしてルビナスは人間形態でバーベナの制服を着て。

 

「似合ってるわよ、ルビナス」

 

「ありがとう、マオ」

 

「それにしても…そのスカート短すぎないか?」

 

「大丈夫よ。これ穿いてるから問題なし」

 

言いながらルビナスはスカートを捲り上げ中を見せる。

 

「こ~ら!はしたないわよ、ルビナス」

 

「あ、ゴメン」

 

未だ羞恥心が足りてないルビナスをマオが注意する。

人型時の外見に反して活発な性格のルビナスは、

走ったりしても大丈夫なようにとスパッツを穿いていた。

見られても大丈夫とアピールするが、これはこれでと言う男もいる。

真横にいるハリーも少し顔を赤らめながら目をそらしている。

 

「稟、驚くかな?」

 

「と言うより、あなたがルビナスだってことが信じられないかもね」

 

「でも稟君はどこか鋭い所があるからね。最初信じられなくても直ぐに分ってくれるだろう」

 

「うん」

 

 

 

学園に近付くにつれて生徒の数は増えていき、三人に向けられる視線も増えてくる。

一人が制服を着て、その横に恐らく保護者が一緒であることから、

制服を着ている彼女、ルビナスが転校生であることが窺える。

 

ただでさえ転校生と言うのは目立つのに、それが誰もが認めるであろう極上の美女であり、

しかも、若作り過ぎる容姿のハリーとマオが一緒にいる為、

いつの間にか、三人は現時点で登校している全生徒の視線を集めていた。

 

 

向けられる視線に気付くも、それを意に介さず三人は職員室へと向かう。

 

職員室に入って直ぐ、教員達からも注目を浴びるが、

それも気にせず、ルビナスたちは目的の人物を探す。

 

見つけるよりも早く、自分達を呼ぶように上げられ振られた手を見つけ、

三人はそこへ進む。

 

「来たか。転校生のルビナスだな?私が担任の紅薔薇撫子だ」

 

「ルビナスです。よろしくお願いします」

 

「ルビナスの義父のハリエンです」

 

「義母のマオランです。これからよろしくお願いします」

 

「よろしく。三人はネリネ…魔王家と知り合いと言うことですが」

 

「はい、私達はフォーベシイ様の仕事の…部下と言ったところでしょうか」

 

「そうですか。それで…お二人も生徒達に顔合わせを?」

 

何故か不安げに聞いてくることを不思議に思いながらも、二人は普通に否定する。

 

「いえ。私達はこれからお世話になる先生に挨拶に来ただけなので、

 直ぐに帰るつもりですが」

 

「そうですか…」

 

「…あの~、何かあったんですか?」

 

あからさまに安心されたので聞かずにはいられなかった。

 

「あぁ、実は転校初日に両王も挨拶にこられたのですが…その時に少々…」

 

「…あ~、何となく分りました。何というか…ご迷惑をおかけしました」

 

「いえ、そちらが謝ることでは無いので」

 

言いながら、撫子は安心していた。

両王の知り合いと言うことで、まさかこの二人も?

と、不安に思っていたが、予想に反して二人ともまともであった為に。

 

「それとつっちー…あ、失礼。土見稟との関係は?」

 

「え?何故ですか」

 

「その…魔王様の方からルビナスは土見稟と関係があると窺いまして」

 

納得したルビナスはどこか誇らしげに答える。

 

「稟は、私の家族です」

 

「ん?ルビナスは魔族なんじゃ」

 

「昔魔界で起こった事故で、私は人間界に飛ばされて…

 右も左も、何もわからずにいた私を、稟が救ってくれて、それから家族に」

 

「ほう。だが、何故今になって登校を?」

 

「稟がまだ小学生の頃、故郷の魔界に行く機会があって、

 そこで別れて、先日再会しました」

 

「そうなのか…なら、これからの学園生活、会えなかった稟との時間を、

 一緒に勉学に励んで取り戻すと良い」

 

「はい!」

 

挨拶を終え、撫子はルビナスに学園の軽い説明を行い、ハリーとマオは帰路に着く。

退室する際、二つある扉の内、二人が出た方とは別の扉の前にあった、

廊下を埋め尽くさんばかりの見物人男子生徒の群れに驚き、

もしかしてLLLが出来てしまうのでは?と考えるが、

稟君とルビナスなら大丈夫だろうと結論付け、気にしないことにした。

 

 

教室内の人口密度が徐々に増して行き、後数分でHRを告げる鐘がなろうとする中、

楓たちのクラスの教室では、稟を含む数人の男子が未だ来ていなかった。

 

「稟君間に合うのかな~?」

 

「何事もなかったら、もう来ていてもおかしくないはずですけど…」

 

「何かあったのでしょうか…」

 

樹と麻弓含め、クラス中が転校生の話題で盛り上がる中、

楓・シア・ネリネの三人は稟のことを心配していた。

後一分弱で鐘がなろうと言うとき、楓の胸が震えた。

 

「稟君!?」

 

直ぐ様振動の元、携帯を取り出して開く。

耳に宛がわないのは、来たのがメールだからだ。

 

「稟君はなんて!?」

 

シアとネリネも、楓の携帯の液晶画面を覗き込む。

 

[ 差出人:稟君

  件名:(無し)

   添付:(無し)

  本文:

  親衛隊に追われ送れる

             ]

 

と、シンプルなものだった。”遅れる”を”送れる”と間違ったままの所を見るに、

それだけ焦っているのだと分る。

 

「「「稟君(様)!?」」」

 

助けに行かねば、と思い立つも、無常にも時間は過ぎていて、

チャイムと同時に担任の撫子が入ってきた。

 

「よーし、全員速やかに席に着けー!

 特に裏から出ようとしているそこの三人!!」

 

三人同時に飛び出し、取っ手に手を伸ばし開け放とうとした所で動きを止めた。

 

「せ、先生。り、稟君が…」

 

「ん?そう言えばつっちーがいないな。他にも男子が何人か」

 

「先ほど連絡がありまして…親衛隊の人に追われているそうです」

 

「…ハァ~、またか。まぁ、大丈夫だろう。

 HRや一時限をサボってまで行こうと考える奴はそんなに多くは無いだろうからな。

 三人とも、今はつっちーを信じて大人しくHRと授業を受けろ。

 今私が言うことはそれだけだ」

 

「「「…はい」」

 

 

「さて…つっちーと他男子数名がいないが、今は放置しておく。

 で、全員知れ渡っているが、早速転校生を紹介する。

 無駄に騒ぐものはタイヤ引きグラウンド20周だからな!」

 

「オッス」(男子全員)

 

「ハァ~、言うだけ無駄だったか…後一つ言っておく。特に緑葉!」

 

「ハァイ!何でしょう♪!」

 

「…いつもなら自重しろ、と言う所だが…今回は違う」

 

「?」

 

「緑葉含む男供に言えることは…諦めろ」

 

「は?」(男子全員)

 

「まぁ、詳しくは本人に聞け。入ってきなさい」

 

撫子の言葉に入り口の扉が開かれる。

 

このタイミングではまだクラッカーは鳴らない。開かれただけでは、

扉の向こうにいるものは死角となって見えない。

 

2日前、”美”ではあるが”女”ではなく”男”が入り、

彼等に対してクラッカーを鳴らしてしまったが、

今度は誤るまいと、緊張した面持ちで入り口を見張る。

 

そしてついに、転校生が入ってくる。

 

 

「ゥウォォオオオーーーーー!!」(男全

パァンパパァン!ヒューーーーヒューーー!!

 

入ってきたのが、バーベナの女子用の制服を着た女子であると確認した途端、

教室に鳴り響くクラッカーの音と、男共の咆哮。

 

そんな男共に呆れるのも一寸のこと、クラスの女子も入室して来た転校生の女子に目を奪われた。

 

その女生徒は、

 

膝まで届く長く艶やかな自然に整った白銀の髪を揺らしながら、

 

吸い込まれてしまうかのような蒼穹の瞳でクラス中を見つめ、

 

クラッカーの音や男共の咆哮に臆することも驚くこともなく、

 

とても自然で魅力的な微笑みを浮かべながら、

 

流れるような動きで黒板の前まで歩いていく。

 

正面から彼女の姿を見て、誰もがその肢体に目を奪われる。

 

女子にしては、いや、男子と比べてもかなりの長身であり、

 

横に立つ撫子をも抜いている。

 

プロポーションは3サイズのみを見れば撫子に僅かに劣るも、

 

それでも、このクラスの女子全員に勝っているのは一目瞭然。

 

男子の欲情の、女子の羨望の、両者の驚愕の視線を受け(男子のは受け流す)ながら、

 

黒板の前に立つ美少女は言葉を発する。

 

「初めまして。先日魔界から越してきたルビナスです。よろしく」

 

 

「YOOOOROOOOSWIIIIKOUHHHH!!」

 

再び男共の咆哮が響き渡った。余りの大声に女子が耳を塞ぎたくなるほどだ。

が、それを受けるルビナスはそれに動じた様子も無く、

いや、微笑に苦笑が混ざっている所を見るに多少動じてはいるらしいが、

それでも微笑を絶やさないのは凄い所だ。

 

「男子共、一先ず落ち着け…と言うより黙れ!#」(バァン!

 

一喝と共に撫子は教卓を叩きつける。

流石の男子も一瞬で黙りこくる。目は依然爛々としていたが…

それを見て、撫子は深~く溜息をつきながらいう。

 

「まぁ、男子全員タイヤ引きグラウンド20周はもう確定として…

 このままでは授業に影響する。なので、一時限は特別にルビナスへの質問時間とする。

 幸い私の授業だ。異論は無いな?」

 

「賛成です!」(男全

 

「お前等には聞いていない!で、ルビナス。良いか?」

 

「はい。でも先生はいいんですか?授業潰しちゃって」

 

「構わん。むしろ不純な気持ちでろくに頭には入れられない授業をやるよりましだ。

 じゃぁ早速、最初の質「あ」 ん?どうし」

 

言葉を遮られ、何事か聞こうとしたところで、扉がかなりの勢いで開かれた。

 

「スイマセン紅女史!遅れまし…」

 

入ってきたのは、ノートを回収し家を出て再び学園に向かっている途中、

本人にとって迷惑でしかない好意を寄せる親衛隊連中の襲撃を受け、

それらの猛攻を必死でかわし逃げ延びて来た土見稟だった。

 

息を整える為に下を向き、少々回復し顔を上げた所で、

稟は固まった。

 

目の前にいるのは自分の知らない美少女。

だが…何故か自分は彼女を知っている。そんな不思議な感じがする。

 

言い表せない感覚に稟が戸惑う中、件の少女は、

浮かべる微笑を歓喜の笑みへと変えたかと思うと、

 

「稟!」

 

軽やかに跳躍して、首に手を回して抱きついた。

 

 

「え!?」

「なっ!?」(稟以外

 

突然の行動に教室内にいた全員の表情が例外なく驚愕に染まり、

稟は一瞬何が起こったかを認識できなかった。

 

頬や首、肩に伝わる暖かい人肌の感触、間近にいることで漂ってくる女性特有の香り、

身体にかかる人の重圧に、やっと自分の状況、自分が抱きつかれていることを認識する。

 

「え?え?ち、ち、ちょっと待っ」

 

「やっと…やっとここまで来れたよ…」

 

「いや、ちょっと待ってくれ!?き、君は…」

 

「こら~、ルビナス…いくら家族だからと言ってその行動は問題だぞ~」

 

驚き混乱する稟を他所に、撫子がどこか納得したような呆れた声で嗜める。

それを聞いても、頭に入っていかなかったのか、ルビナスは抱きつくことをやめなかったが、

稟は撫子の言葉に捨て置けぬ名前があった。

 

「待て、ルビナスって…」

 

稟の疑問の声に、抱きついていたルビナスがやっと身を離す。

 

「そうだった。稟はこの姿初めてだったっけ?」

 

「この姿って…」

 

言っている意味が分らず、それを知る為に、稟は改めてその姿を見る。

楓やシア、ネリネにも劣らぬその美貌は一度見たら忘れることは無いだろうが、

自分は見たことが無いはず。

 

が、窓から差し入る日の光や天井から降る電光を受けて輝く白銀の髪と蒼穹の瞳。

そして、ルビナスと言う名前。

まさかとは思うが、それ以外考え付かない。

 

「もしかして…本当に、ルビナスなのか?」

 

「ええ。ハリーとマオの義娘の、そして…稟の家族のルビナスよ」

 

「…マジかよ」

 

未だ信じられないところがあるが、稟は彼女が、自分が知るルビナスであると感じてはいた。

 

稟の様子から完全に信じ切れてないのだと感じたルビナスは、

少し考えてから、二人しか知らないであろうことを告げる。

 

「そう言えば…もう腕は大丈夫?」

 

不安げに聞かれ、稟は彼女がルビナスであると言うことの確信を強める。

腕の傷は、直ぐに手当てが施された為、傷自体は間も無く直されたので、

そのことを知るものは数人しかいない。

病院の医師、楓、幹夫、発見者のハリーとマオ、そして噛み付いたルビナスと噛み付かれた稟。

 

「ああ。もう痛むことも無いし、完治したよ」

 

「…ごめんなさい。分らなかったとは言え、私…稟に、あんあことを…」

 

「良いって。何かあってあんな状況になってたんだろうし。俺は全然気にして無いよ」

 

「…稟」

 

「それよりも、また会えた事の方が…帰ってきてくれたことのほうが俺にとっては嬉しかったからな」

 

「…ありがとう」

 

言いながら寄りかかってきたルビナスを稟は受け止め、

自分と同じ高さにある頭を撫でて安心させてやった。

 

 

「…それで、いい加減話を進めて良いか?#」

 

何時しか形成されていた、ルビナスと稟の二人だけの空間は、

若干怒りを孕んだ撫子の引きつった笑みから発せられる冷ややかな言葉に崩された。

 

ルビナスは稟から離れなくてはならず少し残念そうにするだけだったが、

稟は改めて自分達に向けられる視線に気付き、ゾッとする。

 

樹を含む男子は全員殺気と嫉妬を込めた射抜くような視線を向け、

女子は美男美女が織り成すロマンチックなやり取りに羨望の視線を向け、

麻弓は一眼レフカメラで顔が隠れていた為表情が見えず、

楓・シア・ネリネは涙を流す寸前の表情で見つめていた。

そして真横にいる撫子はジト目のまま告げる。

 

「転校生のルビナスに免じて今は見逃してやるから、

 つっちーはさっさと席に着け」

 

「わかりまし「ちょっと待って」?」

 

指示通り席に戻ろうとしたところで、ルビナスに腕をつかまれ引き止められる。

 

「稟、その怪我どうしたの?」

 

「怪我って?」

 

「ここ。首の所」

 

指摘されてやっと首に怪我していたことに気付く。

怪我と言っても殆ど痛みは無く、精々ちょっと痒く感じる程度であったが、

その新しい傷は触れてみると若干指に血が着いた。

少し考え、いつ付いたかは直ぐに思い至った。

 

「ああ、さっき親衛隊から逃げてるとき、隠れてやり過ごすのに木に突っ込んだからな。

 多分そのときだろ」

 

「大丈夫なの?」

 

「そんな大した事無いって。こんなもん舐めときゃ直るだろ」

 

「うん、そうね」

 

同意しながら近付いてきたルビナスは、次いで、稟を含め全員が驚愕する行動をとった。

 

 

楓なら、何故か常備している救急セットで手当てするだろう…

シアやネリネなら治癒魔法をかけてくるだろう…

撫子なら、こちらも大した事無いだろうと見て稟と同じように放っておくだろう…

 

そのどれでもなく、稟の言葉を肯定したルビナスは、言葉通りのことをした。

首にある傷に舌を這わせて、稟の首を…舐めた。

 

「んぬぁああ!?」(全

 

全員の驚愕の声を聞いたルビナスは慌てて身を離しながら謝る。

 

「ゴメン、つい前と同じようにしちゃった。いつもこうしてたから、つい」

 

自覚なしの爆弾発言のオンパレード。

ルビナスとしては、驚かせちゃった…としか考えていないのだが…

その爆弾発言は、クラス全員に多大なダメージを与えていた。

 

土見ラバーズこと楓・シア・ネリネは座ったまま、驚愕したまま気絶し、

麻弓は頭は動いていなかったが染み付いた習慣により絶えずシャッターを切り続け、

樹はまともな思考が出来ていない為喋れなかったので無線機でモールス信号で各所に連絡を取り、

家族と聞いていたため、ある程度他より進んでいると予想していた撫子も、

流石に首筋レロリは予想外過ぎたのか思考が硬直してしまい、

他の男子女子はただただ驚愕していた。

頭の中では”前と同じように”と”いつもこうしてた”と言う言葉と、

首筋レロリのシーンがリフレインし続けていた。

 

稟は舐められた首を押さえながら数秒あたふたしていたが、

彼女がルビナスであるならと一応納得し、深呼吸して落ち着いてから指摘する。

 

「あ~…ルビナス。今の言葉、100%誤解を招くから。もう少し言葉を考えてくれ…」

 

「え?…………………………ぁあ!?」

 

「自覚…全く無かったんだな…」

 

 

 

 

結局、転校生への質問タイムとなる筈だった一時限目は、

そのほとんどを驚愕による硬直で占め、立ち直った頃には既にあと十数分で終わる頃になっており、

残りの時間は、今後の稟に向けられる視線を考慮して、急遽行った席替えによって終わった。

 

 

~あとがき~

 

第18話『三人目の転校生』いかがでしたでしょうか?

 

ついにバーベナに投下されました!ルビナスと言う名の爆弾が!!www

 

ルビナスがいう前と言うのは、昔…つまり狼であった頃のことです。

 

楓に嘘をつき、虐待を受け傷ついたとき、

 

確かに傷を舐めて治そうとしていましたが、あくまで狼の状態で。

 

が…人間ってのは見た目にいろいろ支配されちゃう生き物。

 

なのでついつい、若かりし頃のルビナス(人間の姿)が、

 

稟が怪我するたびに傷レロリしてるのだと勘違いしちゃうわけですなwww

 

あながち間違ってはいないのですが…あくまで狼の姿で、です!

 

今後も学園生活にて、狼の時の感覚のまま行動し、

 

爆弾発言や爆弾リアクションを取ることがwww

 

今後の土見稟の運命やいかに!?

 

 

次回、第19話『転校初日・前編』

 

タイトル通り、ルビナスのバーベナでの1日目(昼休みまで)です。


 
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