ギィィィン!
「はぁっ!」
「おぉぉぉぉっ!」
許昌城の広い庭で2人の少女が己の武の誇りをかけて長剣と青龍偃月刀が剣戟を交える。長剣を持つ少女は春蘭こと夏候惇。一方、青龍偃月刀を操る少女は愛紗こと関羽。
ガキィィン!
ヒュッ!
ブゥゥン!
春蘭の切り上げる軌跡を愛紗が防ぎ、愛紗の突きを春蘭が飛びのいて回避し、反撃とばかりに切り込んでくる春蘭の刃を愛紗も飛びのいてかわす―――
2人の主君として、彼女らの戦いを眺める華琳と舞人はポツリとつぶやいた。
「・・・なぁ華琳。ふと思ったんだが」
「なに?舞人」
「春蘭の奴、愛紗を殺そうとしてないか?」
確かにさきほどから春蘭の攻撃には、どこか歪な感情―――主に嫉妬とか―――が含まれており、本気で挑んでいるにもかかわらず急所を外している愛紗と違って春蘭の攻撃はすべて急所を狙っていた。
「奇遇ね、私もそう見えるわよ・・・全く春蘭には気をつけてもらいたいわね」
華琳は腕組みをし、真面目さ満点の顔で呟いた。
「愛紗を調教する前に、あの綺麗な肢体に傷でもついたらどうするのよ」
「・・・」
(一時的でも)主君として家臣の貞操を守るべく、舞人は2人を止める為に動き出した。
漢軍に仕える事になった愛紗は、みんなと真名を交わし合って親交を深めた。その中でも仲が良くなったのは霞と淡雪だ。霞とは遠乗りをする仲で、淡雪とはお互い切磋琢磨し合う仲だ。しかし、春蘭は敬愛する華琳が執心している愛紗をあまりよく思っていなかった。これは春蘭とは犬猿の仲である桂花にも言えることだが、2人は愛紗に対して嫉妬しているのだった。2人曰く
「華琳様の閨に誘われているにもかかわらず、拒否するとは・・・!私が代わりたいくらいなのに!」
「そうよ!私だって華琳様に毎晩でも抱かれたいのに!」
しかしそんな事を言われても、極めてノーマルな愛紗はそんな趣味はないので2人の怒りに困惑しているのだが・・・
呉の孫家は沈黙を保ち、劉備は益州に去って劉璋と戦闘を開始、涼州は鎮西都督に任ぜられた秋蘭によって抑えられた魏と漢の連立政権の領内は平穏が保たれていた。
しかし―――幽州警護の任を請け負っていた連立政権の与党・鮑信によって発せられた使者によって新たなる戦火が開かれた。
「幽州北部で黄巾党の残党どもが袁術を総帥に擁して兵を挙げました!」
孫家のかつての主であった袁術率いる反乱軍『仲』との戦いであった―――
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煉獄編の第一話です。
ガッツリ風邪ひいて頭痛いっす・・・
今回は特に短いですが、タイトル通り序章という事で目を瞑っていただければ嬉しいです。