ロマーノとマフィア 1
今回の世界会議は、イタリアで開かれた。会議と言っても名ばかりで、たいていはイギリスとアメリカの喧嘩で始まりドイツの怒鳴り声で終わる。
いつもなら弟に任せる会議にロマーノも参加している。自国で会議があっても滅多に参加しない彼だ。久しぶりの参加なのだが、やる気はないのか、さっきからペン回しをしている。
そんなロマーノを微笑みながら、スペインは見ていた。
「まったく遅いです」
「……なにやってんだ?」
「貴方を迎えに参りましたが、それが何か?」
会議はいつも通りまとまらないまま終わった。ロマーノを食事に誘おうと探していたスペイン。見つけたときには、ロマーノがスーツを着た男と話していた。男嫌いなロマーノが、少し嫌な顔はしているが、普通に話している所をみると、それなりに親しい人物なのだろう。近くに行き、ようやくスペインは、その人物が誰だか分かった。前に会ったときとは、ずいぶん雰囲気が変わっている。
「珍しいなぁ。こんな所でなにしとるん? 一瞬、誰だか分からんかったわ」
「おや、スペインさん。お久しぶりです」
「おう、久しぶりやな」
「本当なら、昼食を誘いたい所なのですが、なにぶん急いでいるものでして。さぁ、行きましょうか、ロマーノ君」
男がロマーノの腕を掴み引っ張ろうとするが、反対側の腕をスペインが抱きしめているので動くことが出来ない。
「……スペイン、離せ」
「せやかて、俺と昼飯食いに行く約束したやん」
「こっちは、仕事!」
腕に力を入れてスペインを振り払う。もう片方の方は、軽く腕を振るうと、離した。
「……夜は居るから」
「なら、美味しいパスタ作っとくから、はよ帰ってきてな」
小さく呟いたロマーノの言葉に、スペインは、綻ぶような笑みを浮かべた。そのまま、いってらっしゃいのキスを頬にした。
「バカスペイン!」
「トマトみたいやで」
真っ赤な顔を隠すように、ロマーノはスペインを思いきり殴り、逃げ出すかのように走りだす。
「それでは、失礼します」
「はよ、行き」
綺麗に一礼して、歩き始める男。
スペインもどこかに行こうとしたとき、聞き覚えがある声に呼び止められた。
「どうしたん、イタちゃん?」
慌ててスペインの方に走ってくるイタリア。何か言っているようだが、聞き取ることが出来ない。
「落ち着き。そんなに慌てて」
「いま! 兄ちゃんと一緒に居たのって、マフィアでしょ!? なんで、一緒に行かせちゃうの!?」
「何でって、アレ、ロマーノの仕事相手やで?」
「ヴェ、それだけじゃ、分かんないよ。でも、怪我したり怖い思いしたりしないの?」
「ないない。ありえへんで。あいつは、ちょっと変態さんやけど、ロマーノに対しては、めちゃくちゃ良い奴やから」
「そうなの?」
「イタちゃんは、マフィアに会わへんの?」
「うん。マフィアのことは全部、兄ちゃんがやってる」
「へーそうなん」
確かにいきなりヴェネチアーノにマフィアと対等に話し合い尚且つ自分達に有利に持って来るのは、至難の技かもしれない。その分、ロマーノは違う。怖がりでヘタレなのは一緒だが、マフィアとは対等に話し合える。殆ど慣れと言っても過言じゃないが。
「そんなら、今度紹介してもらい。ええ奴らばっかやから、怖がる必要ないで」
「ホント? ありがとう、スペイン兄ちゃん。俺、これで安心してお昼に行けるよ。じゃ、バイバイ」
満面な笑みを浮かべて、手を振って少し離れた位置にいるドイツと日本の所に走って行く。今でもこの3人は仲が良い。
「……イタちゃん。俺も誘ってや。寂しいわ」
とある屋敷のとある応接室。そこに、ロマーノと男は居た。
「さぁ、これはどういうことでしょうか?」
テーブルに広げられた書類。ロマーノは、それから目を逸らすように、コーヒーカップに口をつけた。
「どこを見ても正常値の値がないのですが?」
「……なんだよ。コノヤロー」
「早く現実をみてください」
男がロマーノに見るように言ったプリントには、健康診断の結果が書かれている。
しぶしぶ見ると、分かりやすく数値のわきに正常値が書かれている。確かに、どれも以上に高かったり、低かったりしている。
「よし、帰ってシエスタするぞ。それに、スペインがパスタを作って……」
「消えるおつもりなら構いません。ですが、今なら」
「いうな!」
「――を消せば、存続できるかもしれませんよ?」
「お前でもバカ弟に手を出すようなら、許さない! それに、なにも出来ない俺が残ったって仕方がないだろ」
第二次世界大戦が終わった頃から、ロマーノの体調は徐々に悪化し続けている。急に力が入らなくなったり、貧血になったりと様々だ。そのせいで、最近は、何をするのも面倒で仕方がない。
「どうか、ご自愛ください」
「うっせぇ」
「プロイセンのように、消滅は回避出来るかもしれませんし」
本来国では無くなったプロイセンは、消滅するはずだった。だが、ドイツがそれを望まなかった。それにプロイセン自身も。
「どうせ、気まぐれだ」
誰かの気まぐれに決まっている。それが、神なのか他の何かなのかはロマーノには分からなかった。ただ漠然にそう感じた。
あとがき
ロマーノ消失1話目です。
全10話目予定でしたが、力つきたのでやめます。
マフィアは、某マフィア漫画を参考にしています。
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