〝黄巾の乱終幕 そして・・・〟
華琳達と共同戦線をしてから半年が過ぎていった。
この半年の間桃香達は勉強の連続だった、軍の動かし方、兵の戦い方など華琳達から学ぶことは多く
良い所や悪い所など試行錯誤しながら桃香達は強くなっていった。
時には行動を共にしたり、別々に動いたりと周辺の黄巾党達を討伐・鎮圧していた。
そんな時、別行動をしていた華琳達から知らせがきた。
この時代では貴重な手紙で送られてきて、内容は
『黄巾の乱の主犯である張角、張宝、張梁の三人を討ち取った。
これにより黄巾党本隊は壊滅、乱は終焉に向かうであろう。』
というものだった。
この手紙を読んだとき桃香達・兵達は手を取り喜び合った、俺もその一人この乱がやっと終わったことにみんなと一緒に喜び合った。
だが、この手紙よく見ると下の方に追伸と書いてあり
『追伸・相談があるので一刀はこちらの軍に来るように
この一行だけ読んだら桃香達は怒ると思うから、書いておくけど
相談が終わったらちゃんと一刀を返すので安心するように。
・・・・・・・今はね』
と書いてあった。
その追伸部分を読みを終わり、桃香達の顔を見たときは戦慄した。
みんなからは以前愛紗が出した黒いオーラのようなものが体から迸っていた。
「ご主人様行っちゃ駄目だからね!」
「お兄ちゃん、行っては駄目なのだ!」
などみんなから反対されたが、わざわざ貴重な紙で送られてきたことから、大事なことだと判断した俺は、みんなに無理を言って、なんとか本当になんとか了承してくれた。
・・・・・・これからしばらく無理は言えないな(哀)
そして俺は華琳達のいるところへ向かった。
馬はあいかわらずうまく乗れずヒィヒィ言いながら乗っていき、何日か経ち華琳達の陣と合流することができた。
「あ、隊長!」
「お、凪か。元気してたか?別行動してからしばらく会ってなかったから心配してたんだぞ」
「あ、ありがとうございます!心配してくださって・・・。でもこの通り自分は元気です。真桜や沙和もあいかわらず元気なので、安心してください。」
「そっかぁ、それはなによりだな。所で相談ってなんなんだ?」
「えっと、それは・・・華琳様の方から説明がありますのでご案内します」
「わかった」
そうして歩いていく俺と凪。
途中で警備兵達や華琳の親衛隊の人たちに会い、
「お元気でしたか、隊長。よかったです」
「お久しぶりです、隊長」
などなど挨拶を交わしていった。
「隊長はみんなから慕われてたんですよ、ふふっ、知ってましたか?」
と凪が笑顔で言ってくる。
たった一ヶ月ちょっとしか居なかった俺にここまで挨拶してくれるなんて思ってなかったので
目がウルウルしてきたが、ここは我慢と思いグッと堪える。
(クッ、涙を堪えるのってツレーーー!そしてお前ら大好きだーーーー!)
心の中で大絶叫、心の中心で愛を叫ぶぜ!
「どうしました?隊長」
前を歩いていた凪がついて来ない俺を見て、首を傾げていた。
どうやら感動のあまり足が止まっていたようだ。
「あ、ああ。ごめん、今行く」
早足で凪の所まで行き、少し歩いていると天幕があり中に華琳達が居た。
「隊長をお連れしました、華琳様」
「ご苦労様、凪」
「はっ!」
凪は一礼をし、一歩下がる。
「久しぶりね、一刀」
「ああ、久しぶりだな華琳。みんなも元気そうだな、よかったよ」
俺はここにいる主要人物たちを見て言う。ここに居るのは秋蘭、春蘭、桂花、季衣、真桜、沙和だ。
「ふん!当然だ、私はいつでもどこでも元気なのだ」
「そうね、馬鹿は病気にならないって言うし」
「何だと!?」
「ねぇ秋蘭様、なんで馬鹿は病気にならないの?」
「それはだな、季衣ちょっと耳を貸せ《ごにょごにょ》、つまりそういうことだ、わかったか?」
「はい、わかりました秋蘭様」
「隊長もあいかわらず元気そうでなによりやわー」
「そうなのー沙和達も心配してたのー、特に凪ちゃんがね、隊長のこと・・・・」
「わああ!?それ以上言うな、沙和!?」
うんうん、いつものみんなだ。
みんなが元気なのを確認するように目を配らせていくと、知らない人物が三人こっちを見ていた。
「なぁ華琳、その女の子達は誰なんだ?」
気になったので華琳に聞いてみた。
「相談というのはこの子達の事なのよ、一刀。紹介するわ天和、地和、人和よ」
いや・・・あの・・・真名っぽい名前で言われても・・・
「華琳、それって真名なんじゃないのか?だとしたら真名で紹介されても困るんだが」
「いいのよ今読んだ名前で呼べば、だってもう一つの名前の方を言ったら大変なことになるから」
「大変な事??」
「・・・そうね、一刀には教えといてあげるわ。この子達のもう一つの名前は、張角、張宝、張梁
この名前を言えばもうわかるわよね」
「張角・・・って、ええぇぇえええぇ!?」
こ、この女の子達があの張三姉妹!?・・・似顔絵とぜんぜん違うじゃん!!いや待て、それよりもなんで生きているんだ!?
華琳の手紙じゃ討ち取ったって・・・・ま、まさか・・・
「ふふっ、気づいたようね一刀、そう討ち取ったなんて嘘よ。この子達は私の覇道に協力することにな ったから生かす事にしたのよ。ちなみに各諸侯にも張三姉妹は死んだことになっているからそのつもりでいるように」
やっぱりか・・・華琳はあいかわらずだな・・・利用できるものは利用するか・・・
「協力ね・・・んで、俺に相談って何なんだ?」
「それはね、この子達三人を組み合わせた名前が思いつかなくて困ってたのよ」
「・・・・・・は?」
クミアワセ?組み合わせ?
「華琳、さっぱりわからないんだが・・・」
「あなた前に私に言っていたでしょう、天界にはなにやら〝あいどる〟とやらが居て大勢の人達を
魅了しているって」
「あ、ああ」
そういえば話したな、華琳に天界のことを教えろといわれたときだっけか・・・
「そこでこの子達をあいどるにして、大勢の人達を魅了してもらい私の軍に加えることを思いついたの よ、だけどその三人組の名前が思いつかなくて困っているのよ、張三姉妹と名乗らせるわけにはいか ないし、一刀いいのないかしら?」
なるほどね、協力ってそういうことか。
確かに張三姉妹は歌を歌っては宗教じみた集まりをやっているとこの半年の間に、いろいろと報告があったからな、その割にはあまり顔とかは知られてなかったし
「んーそうだな・・・その前に三人と話がしたいんだがいいか?」
「ええ、いいわよ。三人ともちょっとこっちに来てくれるかしら」
それを聞いて三姉妹はこちらに歩いてくる。ちなみに天幕の外で話をしていて、中は春蘭や桂花などががやがやと騒いでいる、普段の華琳なら怒るところだろうが乱が終わった事で気分がいいのだろうか
こっちの事で頭がいっぱいなのか、わからないが何も言わなかった。
「なんですか曹操様?」
ショートカットでクールそうな眼鏡っ子、人和が華琳に尋ねる。
「《じぃ~~~・・・》」
ロングヘアで巨乳の天然癒し系っぽい天和がこっちを見ていた
「こいつ誰?」
ポニーテイルで生意気な小悪魔系っぽい地和はこっちに指を指してきた。
なにこの個性豊な人たちは・・・天然癒し、小悪魔、眼鏡っ子。い、いけるこの子達なら歌で天下を取れるのも夢じゃないぜー!俺がきっちり育ててみせる!!
・・・・・・・何やってるんだろう、俺は。
「一刀何をしているの?早く挨拶しなさい」
「あ、ああ。すまん。えっと、俺の名前は北郷一刀。真名は無いから好きなように呼んでくれ」
俺が自己紹介を終えると、
「北郷一刀・・・ああ、あなたが最近噂の天の御遣いね。」
「ええ!?こいつが黄巾兵達が言っていた〝化け物御遣い〟なの!?ちぃ、こわーい」
「へぇ~、君かっこいいね~」
ば、化け物・・・戦場ではあれだったけど、面と向かって言われるときつい・・・グスン
「それで一刀、話と言うのは何?」
「・・・ああ、君達に聞きたいんだがなんでこんな乱を起こしたんだ?、見たところこの天下を狙ってるわけじゃなさそうだし」
「ああ、その話。その話なら曹操様にも話したけど、別に起こしたくて起こしたんじゃない」
「そうよ、集まりで姉さんが『わたし、大陸のみんなに愛されたいのー』とか何とか言ったら周りのみんなが勘違いしちゃって・・・」
「えー。それだったら、ちーちゃんも『大陸、獲るわよっ!』とか言ってたじゃない」
「そ、それは歌で獲るわよって意味で・・・」
・・・えーと、つまり勘違いから起きた乱だったと・・・・ははは、マジ?
そのたった一言二言の勘違いで乱が起きて、たくさんの人達が死んでいったっていうのかよ・・・
分かってる、この子達は何もしてはいない。でもきっかけを作ったのはこの子達なんじゃないのか?
いや、でもこの子達がきっかけを作らずとも、いつかはこうなっていたのかも知れない。
俺がこの世界に来たときには、すでにもうその兆候が見え始めていたから。だけど・・・
そんな考えが頭の中をグルグルと周り、俺は気持ち悪くなっていた。
「わ、悪い華琳。おれちょっと席外すわ。名前は後で考えるから・・・」
「か、一刀?」
俺は走り出した。呼び止められようが、何されようが止まらない勢いで走っていった。
そして俺は華琳の軍から少し離れた地面の上でただ空を眺め、突っ立っていた。
あのままあそこに居たら、俺は確実にあの三人を許すことができなくなってしまいそうで
刀を抜きそうな、自分がひどく嫌だった。
「はぁ・・・少し落ち着いてきたな」
その言葉が出たのは、ここに突っ立ってしばらくした後だった。
その後に俺は桃香から返してもらっていた和道十文字を鞘から抜き、
「眼・耳・鼻・舌・身・意・・・、人の六根に好・悪・平!! またおのおのに浄と染・・・・・・・!!一世三十六煩悩。」
昔じいちゃんに教えてもらった言霊を唱えながら、さらに気持ちを落ち着かしていく。
「一刀流〝三十六〟・・・・!!〝煩悩鳳〟!!」
刀を持った左腕を右手で支えるようにして構えてから、一気に刀を振り抜くことで前方に螺旋状に回転する斬撃を空へ向かって飛ばす。
「ふぅーーー・・・・・・・よし!」
割り切ろう。起こってしまったことを幾ら言っても、もうどうしようもないんだ。
だったら今生きている俺達が、死んでいった人たちの分まで楽しく生きなきゃどうすんだ。
これからも、戦いはまだ続くかもしれない・・・けど、
「すべてを終わらすために、戦いを終わらせるために俺は戦う」
そう言葉にすることで、これから先のつらいことや悲しいことに耐えられるように・・・
「終わったようね一刀。待ちくたびれたわよ」
「え?」
おれが振り返ると、そこには華琳達や張三姉妹が近くまで来ていた。
「あの・・・すいません・・・いつからそこに?」
「最初からいたわよ。あなた急に走り出すんだもの、びっくりして後を追っちゃったじゃない」
「華琳様居るところに、私ありだ」
「何言ってるのよ!?華琳様の常にお側に居るのはこの私よ!?」
「もうやめろ二人共、華琳様の御前なのだぞ」
「でもさっきは大丈夫だったじゃないですか、秋蘭様。きっと今回も大丈夫ですよ」
「季衣は気楽でよいな・・・」
「なんかあっちは大変そうやで、それにしても隊長。さっきの言葉なかなかよかったで」
「はい!自分は感激しました、隊長。あなたのような隊長を持ててよかったです。」
「沙和もね、感動して見直しちゃったのー」
うわーー!すごく恥ずかしい!?
どこか穴があったら入りたいくらい恥ずかしい!?葛藤している姿を見られるなんて・・・
そうしてウンウンと悶えていると、三姉妹が俺の前まで来る。
「ん?」
「「「ごめんなさい!!!」」」
「え?」
「だからその、無自覚とはいえ、あんな無責任な事言ってしまって」
「あなたがすごく苦しんでるのを見て、私たちすごく考えたの」
「ちぃ達だって、悪かったんだからこれからは、私たちの歌で今生きている
人たちを幸せにするために頑張るって」
「「「だから、許してとは言わないけど、あなたにわかってほしい」」」
真っ直ぐに俺の瞳を見て、言ってくる。
この言葉は嘘じゃないと、そう言っているかのような目だった。
「一刀、返事は?」
「・・・・・・」
俺は深く息を吸い込んで、
「・・・ああ、わかってるよ。もう俺の中で君達を恨んだり憎んだりしてないから
俺にも君達の歌を聞かせて幸せにしてくれよな」
晴れた気持ちで、三人に向かい合い笑顔で答えた。
「「「!!!???」」」
「へぇ~・・・やっぱり君・・・じゃなかった一刀かっこいいね」
「な、なによ姉さん、こんなのがいいの?」
「ちぃ姉さん、顔真っ赤」
「そういう人和だって、真っ赤じゃない」
「こ、これは・・・その・・・《チラッ》」
「なに、一刀の方チラ見してるのよ。見てるこっちが、は、恥ずかしくなるじゃない」
あ、あれ?さっきまでのシリアスな空気はどこへ?な、なにか変な事言ったか?
「一刀・・・あなた・・・《プルプル》何してるのよ!?」
「え?ええ?えええええぇえぇぇぇ!?俺何もしてませんけど!?なぁみんな・・・ど、どうしてみんな目を背けるんだよ・・・こうなったら桂花でもいいから答えてくれよ!?」
「でもって何よ!?この孕ませ無責任男!!こっち見るんじゃないわよ!あんたが全部悪いに決まってるでしょう!」
くそっ!こいつに助けを求めた俺が馬鹿だった。だったら、
「秋蘭――――」
はもうすでに居なかった。というか俺と華琳と桂花と三姉妹しかこの場には居なかった。
「華琳、なんかしらないがすまん――――《チャキィ》」
首にはすでに絶が押し当てられていた。
「覚悟はいい?一刀?」
「よくありませんです・・・」
「そんなこと知ったことではないわ!」
「だったら聞くなよーーーー!!」
俺と華琳の命を懸けた鬼ごっこが始まってしまった。
逃走中・・・
壮絶な鬼ごっこからしばらくして、夜。
俺は帰る準備をしていた。鬼ごっこが終わった後、軽い集まりがありそこで考えていた、張三姉妹の
グループ名を発表することにした。
『数え役萬☆姉妹』という名前にした。
名前が決まったときに、天和に抱きつかれ大変だった。
あの胸についている御山が二つ背中に押し付けられ、煩悩と戦う俺。
それを背負いながら、今度は春蘭に追い掛け回され逃げる俺。
最後は華琳に説教される俺。
しすたあーずって何?と季衣や秋蘭に聞かれ、答えたり。久しぶりに凪達とご飯を食べたり。
といろんなことをしていたら、華琳達の城から連絡が来て、都から使者が来るので早急にお戻りくださいとのことだった、
そして華琳、春蘭、秋蘭、季衣、桂花達はある程度の兵を連れて先に城に帰ることになった。
「それじゃあな、華琳。元気でいろよ、みんなも元気でな!」
「これから敵になる相手に対しての言葉じゃないわね」
「これからだろ、ならまだ仲間ってわけだ。だからこの言葉はあってると思うぞ」
「そう・・・ね。それじゃ一刀元気で」
「おう」
それを最後に振り返ることなく、馬に乗っていく華琳達。そして見えなくなっていった。
この陣に残っているのは少数の兵達と張三姉妹と凪達と俺だけだった。
「さてと、こんなもんでいいかな・・・」
荷物を馬に付け、準備が完了した。
「気をつけてお帰りくださいね、隊長」
「ああ、ありがとう」
今この場所にいるのは凪だけだった。真桜・沙和は張三姉妹の相手をしていた。兵達も華琳達に追いつくため陣をテキパキと片付けている。
「・・・あ、あの!」
凪が何かを決意したように俺を呼ぶ。
「・・・なんだ?」
「行く前に自分と手合わせしてくださいませんか?」
「・・・・・わかった」
「ありがとうございます!」
俺は凪から何かを感じ取り、手合わせを了承する。
俺と凪は陣から少し陣から離れたところで構えあっている。
「では、隊長・・・・・行きます!!」
「ああ、来い!」
俺の構えは天月を正眼の構えで持っている。
凪の武器はナックル付き手甲〝閻王〟手甲なのでリーチは短いがそれを氣で補う戦いをするオールマイティ型
なので俺はまずは仕掛けず、待ちの体勢をとる。
「はあああ!」
すると凪は練功し練った氣を足から地面に叩き突け、一歩で間合いを詰めてきた。
「くっ!?」
(なんてゆるやかですばやい氣の流れなんだ!?)
勢いに乗った拳を、刀の側面で受け止め、そのまま押される。
「うおお!」
それを足に力を入れ、押しとどめる。
すると、押していた拳を開き掌を地面に置き、片手逆立ちの一回転状態からかかと落としが迫ってきた。
「なっ!?」
その攻撃を刀を上段に持って行き受け止める。
(くそっ、押されてる!?)
押されそうになるが持ちこたえていると、今度は
地面についた掌から氣を発し、その勢いで足にあった刀を踏み台にし、俺の頭上を飛んでいく。
そして、後ろに回りこまれ、振り返ろうとしたが、凪の拳が俺の背中にヒットし前方に吹き飛ばされていく。
「がっ!?」
だが俺はヒットの瞬間前方に飛び出し、衝撃を和らげる。
そして、体勢を立て直し、凪に構えようとした時には、すでに氣弾がこちらに向かってきていた。
「くそっ!?」
氣弾を刀で受け止めるが、すごい威力なので俺は刀を寝かせ、上空へと反らす。
「ふぅ・・・強いな、凪」
「・・・隊長、先ほどは手合わせといいましたが、すいません。本気でお願いします」
「・・・どうして本気なんだ?」
「私は殺し合いではなく、試合で一人の武人としてあなたに勝ちたい。
この先、敵対したときに出会えば殺しあうことだってあるかもしれない
だから、その前に自分はあなたに・・・・北郷一刀に勝ちたい!」
「・・・・・・・・わかった」
俺は天月を鞘にしまい、鞘ごとベルトから抜き、左手で鞘を持ち右手は柄に手を添えるように置く。
「なんの真似ですか?隊長、私は本気でとお願いしたはずです」
「凪、俺は本気さ。今からやるのは一撃必殺の技でな、これを防げたり避けたりできれば
凪の勝ちだ、放ったあとは隙だらけだからな。」
「・・・そうですか、わかりました」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺達は無言のまま、相手の動きを探るように氣を体に充実させていった。
「・・・ハアッ!!」
凪が行けると思ったのだろう、氣を地面に叩き付けこちらに向かってくる。
それと同時くらいに俺は、
「天叢流抜刀術〝天の川〟」
神速の抜刀術から飛び出た剣先には氣が纏ってあり、鞘の中で溜めた氣を飛ばす。
夜空を横切るように雲状の光の斬撃が凪を襲う。
「っ!?」
とっさに凪は両腕に氣を集中させ、目の前に腕をクロスさせガードしようとする。
「な!?割れた!?」
飛んできた光の斬撃は凪の前方で三方向に割れ、凪に向かっていく。
斬撃は凪の両サイドから襲ってくるが、両腕を広げ二つの斬撃を防ぐ。
「くぅううぅう!?」
(なんという威力!?――――だが、負けたくない!)
「はああああああ!!」
両サイドの斬撃をかき消し、最後の前方から来る斬撃を防ごうとするが、
「くっ!腕が上がらない!?――――当たる!?」
と思い目を瞑るが、斬撃は凪の横ギリギリを通り過ぎていった。
「・・・隊長、ふざけているのですか!!なぜ、当てなかったのです!?」
「・・・別にふざけてないさ、だがこれは試合だ。もう戦えないやつに攻撃するようなことはしない」
「自分が二つの攻撃を防いだら、腕が使えなくなることを計算していたんですか?」
「まぁ半分はな、もう半分は運だった。あの斬撃を防いで腕が動かせるなら俺の負けだった。」
「・・・ふふっ、そうですか。《フラッ・・・バタンッ》」
「凪!?お、おい!?大丈夫か!?ちょっとやりすぎちまったか!?」
「いえ少し疲れただけですよ。気持ちいい疲れです。」
「・・・そっか、なら膝枕してやるな」
「《かぁぁ~~~・・・》いえっ!?そんなことしていただくには!?」
そういうとガバッと起きてきたので、ちょっと強引に俺の膝に寝転ばした。
「いいから休んどけって、これ隊長命令ね」
ポカンと最初していた凪だったが、少ししたら微笑みながら膝枕されていた。
「ふふっ、やはりあなたが隊長でよかった」
「そうか、ありがとうな」
そういって頭をやさしく撫でていく。
そうしてしばらくしていると、整った寝息が聞こえてきた。
「寝ちまったか。・・・おやすみ凪」
「うう・・・たい・・・ちょ・・・す・です」
「ん?なんか言ったか凪?」
「すぅー・・・すぅー・・・」
「なんだ、寝言か。・・・さてとこのままで居たい所ではあるけど
こんな所で寝ていたら風邪引いちゃうからな、運ぶか」
そうして俺は凪を背負い、真桜達のところへ連れて行った。
夜空が燦然と輝く中、俺と凪の試合は終わった。
「それじゃ凪を頼むな」
「あいよ、確かに頼まれたで隊長」
「それにしてもさっきからの爆音は二人の戦いの音だったんだねー」
「そうよ、こんな夜中にドッカンドッカンちょっとは考えなさいよね」
「うっ・・・すまん。夢中で気がつかなかった」
「気にしなくていいよ~一刀ぉ、お姉ちゃん見ていて楽しかったもの」
「あ、天和姉さん!?」
え?見ていたって・・・
「ええ!?お前ら近くに居たのかよ!?」
「それは・・・まぁあんだけどんぱちやっとったら気になるしな・・・」
「へへーごめんなのーたいちょ♪」
「・・・まぁいいけどさ・・・さてと本当にそろそろ行かないとな」
そういうと真桜達の天幕から外に出る。
「なんやもう行くんかいな、今日はここに泊まってけばええやろ」
「悪いな、あんまり遅くなるとまた怒られるからな帰らなきゃ」
「ええ~一刀行っちゃうの?やだやだやだ、一緒がいいよ」
「ごめんな、天和。こればっかりはどうしようもないんだ」
子供をあやすように頭を撫でていく。
「ちぃ達の歌聴きたいって言ってたくせに・・・一刀のバカ」
「それを言われると困る・・・」
「でもいつかは聴いてくれるんでしょう?一刀さん」
「ああ、それはもちろん約束だ。かならず聴くよ」
俺は馬に乗り、最後に全員の顔を見て、
「みんな元気でな、平和になってみんなと一緒に居られたらバカ騒ぎをしよう」
「「「うん《はい、おう》なのー」」」
そうして俺は馬を奔らせた。
平和な世でみんなと一緒に居られるようにと願いながら・・・
「華琳様、北郷に太平要術の事を言わなくてよろしかったのですか?」
「いいのよ、多分もう灰になったのだから、わざわざ探す必要も無いでしょう」
「わかりました」
「そんなことより早く城に帰るわよ!」
「「「はっ!」」」
その上空で二人の女と男が会話していた。
「やっと必要な分だけの力が集まったか、この太平要術に」
「・・・・・ふん、手間取りやがって」
「お黙り!竜人の分際で私に逆らうんじゃないよ!」
「・・・・・ちっ!いつか殺してやる」
「ああ、もうすぐです。もうすぐであなたの封印を解く事ができます
待ってて下さい。〝夢幻〟様」
絶対的な悪が少しずつ胎動し始めていた―――――。
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