「あれ? 誰か来てるのかな?」
放課後、部室に行くと何やらわいわいと騒いでいる声が聞こえてきた。
いつもとはちょっと違う雰囲気。
(誰か、遊びに来てる?)
皆が取り囲んでる輪の中を背伸びして見てみる。
ぴょこぴょこ動く緑色の髪が中心に見えた――ということは……。
「ランタ、どうしたの?」
そう声をかけると、皆の視線が私の方を向いた。
ええっと、そんな一斉に振り向かれても、反応に困るんだけど。
「噂をすれば、ね」
「本当ですねー。待ち人来るです」
訳知り顔で頷くミシェルとルカ。
――何なの、一体?
「一体、ランタ囲んで何やってたの?」
「ええっとですね。ランタさんが私たちに差し入れを持ってきてくれたんですよ」
言われてみれば、ランタの手にはケーキの箱。
甘くていい香りがしていた。
「ランタ、いつもありがとうね」
「ううん、いいよ。そんなお礼言って貰う程のモノじゃないし」
「そんなことないですよ! このケーキ、本当に美味しいですから!!」
いきなり話に乱入してきたルカに目を丸くする。
妙に言葉に力の入ってるルカに迫力負けしそうになる。
「ランタのチョコレートケーキ、美味しいわよ。食べなきゃ、後悔すること確実ね」
後ずさりしそうなところにさらにミシェルが追い討ち。
ちょっと、一体全体この微妙な空気は何なのよ!!
「二人とも、そんな無理強いしなくてもいいってば! アルトが困ってるし……」
「あわわ、ごめんなさい」
「あら、ちょっとやり過ぎたかしら」
たじたじになっているところにランタが助け舟を出してくれた。
おかげでルカもミシェルも引き下がってくれた。
……た、助かった。
「でも、本当にランタさん、お菓子も上手ですごいです」
「確かに、そうよね。ランタ、本当にすごいわよ」
「えへへ。二人とも、ありがとうございます」
二人に褒められて、照れ笑いするランタ。
うん、確かにランタは料理が上手いし、せっかく持って来てくれた差し入れなんだから、私も貰おうかな?
「ねえ、ランタ。私もケーキ貰っていい?」
「うん! モチロン、どうぞ」
ちょっと行儀が悪いかもと思いつつ、ランタが差し出してくれたケーキを手で受け取る。
そのまま一口齧ってみた。
甘くてしっとりした食感でルカが力説するのが納得できるくらい美味しかった。
「ホント、美味しいね。ランタ、すごい」
「ホントに? よかった……」
私の反応を見て、ランタがほっと胸を撫で下ろしたみたいだった。
貰った残りもありがたく頂く。
うん、こんな美味しいケーキを作れるなんて、本当にランタってすごいかも。
「アルト、負けてらんないわねー」
「え?」
感心してるとミシェルが肩に凭れ掛かってきてにやりと笑った。
――負けてられないって、何のことかさっぱり分からないんだけど。
「皆でバレンタインのチョコ作るの。ここは女の意地でランタに負けてられないわよ」
「ミシェル、勝ち負けじゃないでしょ!」
にやにやしながら、良く分からない挑発してくる。
女の意地って、一体、どういう意味なんだか……。
「ねえ、アルト。チョコ作るの?」
「え? うん、ルカたちと一緒にバレンタインのね」
「そうなんだ……」
「?」
ミシェルの言葉を聞いて、遠慮がちにランタが聞いてきた。
頷くと何か言いたげな雰囲気だったけど、躊躇ってるみたいで何も言わなかった。
「ねえ、ランタ。もしよければ、一緒にチョコ作らない?」
「え?」
そんなランタにミシェルがそう提案した。
誘われるなんて思っても見なかったみたいでランタは目を丸くする。
「ボクもですか?」
「ケーキ作り、私たちに教えてくれると嬉しいなあ」
「はい! ボクでよければ、喜んで」
ミシェルがお願いと言わんばかりにウインクしてみせる。
そのお願いにランタはぱあっと顔を明るくして、元気よく頷いた。
「うふふ。アルト、ランタも協力してくれるんだから、ちゃんと渡しなさいよー」
「何でそうなるの!」
和やかな空気になったところでいきなりミシェルが話を振って来た。
――一体、どこをどうしたらそういう展開になるんだか。
いろいろ理解不能なまま、バレンタインのチョコレート作りの計画が進んで行った。
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マクロスFの二次創作小説です(シェリ♂×アル♀)。バレンタインデーを題材にしたパラレル性転換二次小説になります。