継い姫†無双本編の番外編です。
本編(継い姫†無双5)よりも時系列は進み、みんなフランチェスカに通ってます。
二月で一番大切な日といえば?
節分?
婚姻聖人処刑日?
否!
断じて否!!
二月で一番大切な日は二月二十二日、猫の日であるのは知っての通り。
さて、この日が猫の日となったのはかの猫拳の使い手、振鋤(ふりすき)の誕生日であるという説が有力である。
振鍬は猫拳を習得する際、モデルとなった猫の本気を見るためにわざと猫を逆撫でしたという。
そしてその猫は必ず黒い尾を持っていた。
相手に実力を発揮させるために挑発することを『黒尾を逆撫でする』と言うのはこれに由来する。
明命書房刊『我輩はお猫様』より。
「はぅあ! お猫様の日?」
「うん。二二二で、ニャンニャンニャンだから猫の日。たしかペットフードの会社が決めたらしいよ」
バレンタインデーの直後、二月の他のイベントはと聞かれた一刀。
少し考えてから答えた。
「そう。それでなにをする日なの?」
「あ、いやただ猫の日ってだけ。節分とかバレンタインみたいになにをするってのはないはずだ」
「一刀。私は二月のイベントを聞いたのよ。ただ猫の日というだけでそれに相応しいと言えるのかしら?」
華琳は微笑みながら一刀を見る。
「うっ……そ、それなら猫の日に相応しいイベントを考えてみればいいんじゃないでしょうか?」
冷や汗を流し、苦し紛れに言った一刀。
それが始まりだった。
「一週間もあればなんとかなんやろ」
真桜が自室でモーター音を響かせ。
「がんばって探してみるの~♪」
「はいっ。きっと見つけるのです!」
沙和と明命が洋服屋を巡り。
「ここをこうした方がいいんじゃないかしら?」
「なるほど」
紫苑と凪が裁縫に勤しむ。
全て華琳と軍師たちの命で動いていた。
「猫の日の歌、ね」
「猫~、猫~♪」
「なんか違うわ」
数え役萬☆姉妹は猫の日に向け、新曲を作成。
「猫の日らしい料理ってどういうのなんですか?」
「猫を素材とするわけにもいくまい?」
「それはめ~なの」
流琉、祭、璃々はその課題に悩んだ。
なお、季衣、鈴々は料理の味見を行い、春蘭、秋蘭、霞は北郷隊の作業を手伝っていた。
scene-漢女塾
そして二月二十二日。
一刀は漢女塾に呼ばれる。
「別に呼ばれなくてもいつも行ってるんだけどな~」
「兄ちゃん、いらっしゃい♪」
「!」
出迎えた季衣に言葉を失う一刀。
「似合う?」
当番の日なのか巫女服の季衣。
その頭上を凝視する。
「猫耳?」
「尻尾もあるよ~♪」
くるりと後ろを向くと、その小ぶりなお尻に尻尾がついていた。
「猫巫女っ!!」
「うん。今日は猫の日だもん。にゃ~♪」
と、片手で猫招きをする季衣。
「あ~っ! ずるいのだ先に見せてるのだ!」
「いらっしゃいませ、お兄ちゃん」
同じく巫女服に猫耳、尻尾の鈴々と璃々がやってきた。
「ただの語呂合わせだと思ってたけど……猫の日っていいかもしんない……」
さんざん一刀に褒められて上機嫌で仕事に向かった子猫巫女たちを見送った後、食堂へ向かう。
「誰がいるかな?」
「ぐはっ!」
「あら、どうしました?」
「おお、北郷やっときおったか」
そこには紫苑と祭がいた。
猫耳と尻尾とそしていつもと違う服を着ていた。
「お、お邪魔してます……じゃなくて、その格好は!?」
「南蛮の子達の服を再現したのですけれど」
「そう言えば、北郷はあやつらの格好を知らぬのだったな」
あまりにもギリギリな猫、というよりは女豹といった感じの二人に一刀は思わず。
「ビバ! 猫の日!」
叫ばずにはいられなかった。
「お、一刀~♪」
発泡酒とグラスを手に霞が現れる。
二人の姿にばかり目がいって気づかなかったが、紫苑も祭も飲酒中だった。
「璃々ちゃんに巫女の仕事させといて酒盛りって……」
「璃々がみんなに見せるって張り切ってのう。だが儂らはこの格好ではのう」
「た、たしかにその格好は」
他の男どもには勿体無い、そう思う一刀。
「さすがに寒いですわ。南蛮は暖かいからこの格好でいいのでしょう」
「うむ。年寄りには堪える。熱燗追加じゃ!」
「って、寒いから!? 恥ずかしいとかは?」
一刀のツッコミも酔っ払いにはあっさりスルーされた。
「な~一刀~、どや、ウチの猫姿は?」
「う~ん、悪くないけど、霞のは見たことある気がするし」
今までと違ってやや冷静な一刀。
「おお、お兄さんさすがなのです。ですから霞ちゃんには耳と尻尾の具合を調整するモデルになってもらったのですよ~」
「いらっしゃいませ、一刀殿」
菓子袋を手に風と稟もやってくる。
「おおっ! 風と稟はフランチェスカの制服に猫耳か! わかってるじゃないかっ!!」
一刀のテンションが再び上がる。
「ちっ、ウチもそうすりゃ良かったんか」
霞がイジケて酒をあおる。
「もう飲んでるんですか?」
流琉が熱燗を盆に載せて現れる。
「いらっしゃい兄様。ど、どうですか?」
徳利を祭に渡すと赤い顔をして一刀に聞いた。
「いい! エプロン猫。帰ってきてから着替える時間が無かったのか制服の上にエプロンというのもポイント高い! そしてエプロンの後姿に尻尾。見事すぎる!!」
一刀の力説に流琉はますます赤くなり、霞は飲むペースを上げる。
「霞はほら、猫が当たり前で別に似合ってないわけじゃないから」
「……」
一刀が霞を慰め始めたとき、明かりが消えた。
「停電?」
「でもこの時間まだ外は明るいんじゃ?」
「あ、カーテン閉まってる」
突如、暗闇に音楽が流れ始めた。
そして歌声も。
「……見~つめる猫目♪」
「あれ? この歌、天和?」
一刀がその歌い手に気づく。
「……じゃ、これってあいつらが考えとった猫の日の歌なんか?」
飲みながら霞も暗闇の中を見回す。
「……あ~やしく猫目♪」
「しかも思いっきりパクリっぽいし」
「そうなんですか? 暗くしたのも演出なのかな?」
流琉がそう言った途端、スポットライトとそれに照らされた三人の人影が。
「数え役萬☆姉妹……じゃない?」
「凪、真桜、沙和?」
そう、北郷隊の三人だった。
「どや隊長? ウチのこさえたにゃんこイヤーとにゃんこテールは?」
真桜が言いながら手に持ったリモコンを操作、食堂に明かりがともる。
「猫耳と尻尾じゃダメなのか? って、お前らその格好は!」
「猫目といったらこれなの~♪」
ブイサインをしている沙和の横で真っ赤な凪。
「か、身体の線がハッキリですぎて……」
三人はレオタードに猫耳、尻尾、という姿だった。
「いい! ……いいんだけど、ちょっといいか?」
「?」
「”猫目”は、猫耳と尻尾はつけてない」
一刀の言葉にが~んと落ち込む三人。
特に凪はこんなに恥ずかしい格好したのにと、霞といっしょになってイジケ酒に入るのだった。
「似合う! 似合うから機嫌なおせってば」
一刀は必死にフォローする。
「当たり前なのです。お猫様に似合わない服などないのです!」
「!」
声の方向を向いて、一刀は本日何度目になるかわからなくなった硬直をした。
「お猫様のお耳と尻尾はあった方がいいのです! みなさんとてもよくお似合いなのです♪」
「明命?」
「はぅあ! ス、スミマセン、つい……」
一刀の様子にあまりにも力がこもっていたのに気づいて明命は謝った。
一刀が硬直したのは別の理由だったが。
「ブラボー! おお……猫耳が似合う衣装のトップスリーに間違いなく入るであろうその服を着てるなんて! ブルマでありながら上は体操着ではなく、セーラー! さすがだ!!」
「はぅわ!? あ、ありがとうございます」
一刀のテンションを急激に上げたセーラー赤ブルマ明命。
「明命のその服は華琳さまの注文なのだ」
「ええい、うらやましい」
秋蘭と春蘭が体育着猫で現れた。
ちなみに二人は紺のブルマだ。
「おそるべし華琳……そして、なんというサプライズ。二人までもがブルマ猫とは。これも華琳の注文か?」
「ああ。名前は平仮名で書けと厳命された」
しゅうらんと書かれた胸を指差す。
「おそるべし華琳……」
「明命、華琳さまがお待ちよ。早く行きなさい」
明命を呼びにきた桂花。
猫の日だからいつもの猫耳頭巾と思いきや、頭巾ではなく帽子に猫耳がついていた。
その帽子の色は黄色。服は水色のスモック。
それはまるで……。
「園児猫……」
一刀のその言葉に桂花は真っ赤になって怒る。
「な、なんと言われようと華琳さまがお選びになった服なんだから!」
「そ、そうか……」
一刀は再び「おそるべし華琳」と思ったが声には出さなかった。
「でも明命、そんな格好で行ったらそれこそ華琳に……」
「華琳さまがお望みなの。明命も嫌がってないし……華琳さまとの閨を嫌がるわけないでしょう!」
それこそ猫のようにフーッ、フーッと威嚇しながら桂花は言った。
「ちょ、ちょっと待て明命。いいのか?」
「お猫様と寝れるのです! 嫌なわけがないのです!」
一刀の質問に即答する明命。
「お猫様じゃなくて華琳だろ? くわれちゃうぞ?」
「とても美しいお猫様なのです!」
先程の一刀のようなテンションの明命。
「華琳も猫やってんの?」
「うむ。それはもう可憐な猫だ」
春蘭も言った後にとろけた表情になる。
「すげえ見たい」
「残念ね。明命とお楽しみになられるからあんたがお姿を見ることはないわ。さ、行くわよ明命」
明命と去ろうとする桂花。
「待てってば」
止めようと、桂花のカボチャパンツから生えた尻尾をむんずと掴む一刀。
「あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そう声を上げて桂花はへたりこんだ。
「え?」
「さっすが隊長やな~」
「どういうことだ?」
説明しよう! とばかりによってきた真桜に聞く。
「隊長、気づかなかったんか? にゃんこテールは二種類用意したんや」
「二種類?」
「せや。ノーマルなんはただくっつくだけの飾り、対してもう片方は自在に動くんや♪」
自分の尻尾をくねくねと動かして説明する真桜。
「そういや、明命や他の何人かのも動くな」
明命のブルマ、いや尻尾を見ながら一刀は理解した。
「名づけて! にゃんこテールスーパーお菊ちゃん仕様や!」
一刀はその名で気づく。
「お菊ちゃん?」
「ノーマルなんとちがって、装着者の思い通りに動かすためにな」
「みなまで言わんでいい」
真桜の説明を途中で止める。
「いけず~」
「そうか、それで桂花が……」
視線の先の桂花は真っ赤な顔でぐったりとしていた。
「一刀~、明命ちゃんまで開発済みだったの~?」
いつのまにか側にきていた天和が一刀に聞く。
「一刀はやっぱりそっちの方が好きなの?」
地和も一刀に詰め寄った。
「明命、あんま痛がらずに入ったで。な~んでやろな~?」
「さ、さあ、なんでだろな? き、きっと、お猫様のおかげじゃ……」
「にゃんこテールスーパーお菊ちゃん仕様を着用してるんのやつは、み~んな隊長仕込みやで。あ、桂花はちゃうか。……ま、一番初めはたぶんウチやろけどな♪」
真桜が自慢げにそう言い。
「中で出すのが大好きな一刀さんがこっちでは避妊しなければいけない。となると……そういうわけね」
ノーマルな尻尾の人和がそうまとめた。
「と、とにかく! 明命! 正気を取り戻すんだ」
「無理ですね~。たった一つの方法以外は」
風がそう言って猫耳を取り出す。
「お兄さんも猫になればいいのですよ」
「俺が?」
「それなら明命ちゃんもお兄さんに戻ってくるのです。霞ちゃん、お願いなのです」
風から猫耳を受け取った霞はさっと、一刀に猫耳を装着させた。
「ほれ明命、一刀猫やで~」
「はぅあ! 一刀様お猫様!?」
言われてじいいいいっと一刀を見つめる明命。
「おや? 寄ってきませんね~」
「やっぱ尻尾もないとあかんちゃう?」
霞が風を見るが。
「尻尾は余計に用意してないのですよ。真桜ちゃんは?」
「よう聞いてくれた! こんなことあろうかと! もう一本余計に用意しといたんや。しかも、にゃんこテールスーパーお菊ちゃん仕様の方や!」
「ぶっ!」
焦る一刀。
「ほほ~う。北郷よ、明命の貞操と自分の貞操、どちらを選ぶのじゃ?」
にやにやと祭が聞いてきた。
「あらあら、一刀さん、初めてなんですか?」
紫苑も楽しそうに見ている。
「一刀殿の処女喪失……ぶ~~~~~~~っ!」
そっちの妄想もオッケーだったのか稟が鼻血のアーチを描いた。
「姉者、どうする?」
「華琳さまを呼んだほうがいいか?」
春蘭と秋蘭は相談しつつも一刀を両脇から捕獲していた。
「さ~隊長、観念しぃ。な~にすぐに気持ちよぅなるねんで!」
「アッーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「って、ない! ウチのにゃんこテールスーパーお菊ちゃん仕様がのうなっとる!」
慌てて鞄を調べる真桜。
「どこいったんや……」
「ただいま~っ!」
「お腹すいたのだ~」
そこへ季衣たちが巫女の仕事を終えて帰ってきた。
「あれ? もういいのか?」
いまだ春蘭と秋蘭に捕獲されたままの一刀が聞く。
「きょうはもうおしまいだって~」
「卑弥呼、なんか急用ができたとか言ってたのだ」
璃々と鈴々が早仕舞いと告げ。
「あ、師匠、今日の晩御飯いらないって。だぁりんに会いに行くって尻尾揺らして出かけたよ~」
季衣が急用の中身を説明した。
「た、助かった……」
一刀は卑弥呼に感謝しようとして、猫耳尻尾装備の神主が思い浮かんでげんなりするのだった。
なお、明命を止めようと一刀は華琳の部屋までついていき、スクール水着に猫耳、尻尾装備の華琳を見て暴走。
暴走の中身は諸事情により割愛するが、華琳の尻尾はお菊ちゃん仕様ではなかったが二本尻尾であり、「ツインテールか~っ!」と一刀が叫んだことだけは追記しておく。
<あとがき>
本当は猫の日当日に投稿しようと思ってたんですけれど、パソコンを修理に出すことになり、いつ返ってくるかわからないので今、投稿します。
月曜回収しにくるらしいので、それ以後はしばらく投稿もコメントへの返事もできません。すみません。
バレンタインデーネタは間に合えば投稿したいです。
こちらの方が先に上がっている理由は、2月2日だと勘違いしていたからなのは秘密です。
あと1P目のはあくまでネタです。フィクションです。
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継い姫†無双番外編です。
この次期だと春蘭たちが3年生だったら大変だとかは思いますが、そこは考えない方向で。