継い姫†無双本編がだらだら進行中のため、番外編です。
季節ネタのため、継い姫†無双本編(継い姫†無双 5)よりも時系列は進み、みんなフランチェスカに通ってます。
フランチェスカに通ってるとこ出ないのであまり関係はありませんが。
scene-乙女神宮
「ハァハァ……」
北郷一刀は逃げていた。
「鬼だ……いや、鬼は俺だけどみんなの方が鬼だ!」
本日は節分。
福豆のオマケについてきた紙製の鬼の面をつけた一刀は神社内をひたすら逃げ回っていた。
話は遡る。
「豆まき? こんな寒いのに?」
「いや、植えるんじゃなくて、外にまいて厄除けする行事なんだ。鬼は外、福は内って。このお面は鬼役のための物」
華琳たちとの買い物中、目についた鬼面付きの福豆。
一刀はさらに説明を続ける。
「乙女神宮じゃやんないのかな?」
「師匠はなんにも言ってなかったよ。豆ぶつけて鬼を追い払うより、退治した方が豆ももったいなくないもん」
季衣が言いながら、買い物籠に菓子を追加していく。
「まあ、みんななら鬼退治くらいできそうな気もするけどさ、祭り……とはちょっと違うけどイベントなんだよ。俺が生まれた浅草の
「ふむ。面白そうね」
華琳は福豆の袋を買い物籠に入れ始めた。
「うん、みんなでやろうよ」
「そうね。楽しみだわ」
一刀はこの時気づくべきだった。
華琳が購入した福豆が異常な量だったことに。
話を逃走中の一刀に戻す。
「なんでみんなあんなにマジなんだよ……」
御神木にもたれながら息を整える一刀。
よく見ると彼の顔や手には痣ができていた。
服を脱いだらもっと他にもできているかもしれない。
「痛ツ……豆に殺されたんじゃ洒落にもならん」
痣の全てが鬼役の一刀が豆をぶつけられた時にできたものだった。
「ホントに鬼が倒れるまでやるんじゃないだろうな?」
背中を嫌な汗が流れていくのがわかる。
ビシッ!
すぐ側の地面が爆ぜる。
見てみると豆が埋まっていた。
「! ど、どこからだ?」
ビシッ! ビシッ!
とっさに両手で顔を庇う。
「ぐっ! しかし一度に飛んでくる豆の量が少ない……ということは秋蘭か!」
「ふむ。やはり矢のようには上手くいかないようだ」
弓を手にした秋蘭。矢のかわりに豆を弦につがえる。
「気づかれたか」
一刀は建物の影へ隠れてしまった。
「ここまでのようだ……さて、姉者はどうしたかな?」
scene-社務所裏
「鬼は外~ッ!」
「見つかったか!」
クジ引きでもう一人の鬼役となった春蘭もまた逃げていた。
本当は当たりを引いてしまったのは璃々だったのだが、それでは忍びないと春蘭が鬼役となった。
自分を怖がらない璃々を春蘭は可愛がっているのだった。
「ありがとう、春蘭お姉ちゃん」
そう言われてたいしたことではない、と笑ったのだが。
「春蘭さま、覚悟!」
「鬼は外なの~」
春蘭を発見したのは北郷隊の三人だった。
凪、沙和が豆を掴んで力いっぱいぶつけてくる。
「はっ!」
凪のは氣がこもっているのか当たると物凄く痛い。
沙和のはそれほどでもないが、両手で間断なく豆をまいてくる。二刀流ならではの動きなのだろうか?
そして真桜は二人に豆を補給していた。
「ウチが急遽開発した豆補給機や! 隊長に禁止されてもうた投豆器からの転用改造品やけど、この運用法なら問題ないやろ」
「……くっ、華琳さまの豆ならいくらでもこの身に受けるというのに……はっ! 華琳さまのお豆!?」
春蘭が被弾しつつもトリップしてる時、偶然にも似たような妄想に辿り着いた者がいた。
「……豆をつ、摘まないで……しゃ、しゃぶるのですか? ……」
薄ら笑いを浮かべた眼鏡巫女が血の海に倒れていた。
「やれやれ、今年一年の無病息災の意味もあると聞きましたが、これでは稟ちゃんの鼻血癖は治りそうにありませんね~。ほら、とんとんしますよ~。福は~~う血!」
プスッ……プスッ。
「ん、どうした真桜?」
「豆が無くなったの~。弾切れなの~?」
豆が手元に届かなくなり、振り返る凪と沙和。
「……あかん。限界や~!」
二人が見たのは煙を吹いて放置されている豆補給機とダッシュで逃げる途中の真桜の姿だった。
すぐに二人も真桜の後を追う。
「ん? どうした、もう終わりか? あの程度ではわたしは倒れぬぞ。は~はっはっはっはっはっ!」
高笑いする春蘭のすぐ側で豆補給機が爆発したのだった……。
scene-参道
「へっへっへ。見つけたで一刀!」
「げっ! 霞!」
「応! 鬼は外や!」
容赦なく豆をぶつける霞。
「痛い痛い!」
必死に一刀は逃げるが霞からは逃げられなかった。
「鬼は~外ッ!」
「痛い痛い!」
突然豆をまく手を止める霞。
「ん~、なんやものごっつウチが虐めてるみたいなんやけど?」
「実際そう」
「え? そうなん? 一刀は豆をぶつけられると嬉しい違うん?」
「どんな性癖だよ。鬼だって辛いから退散するんだ」
そう言われ、むう、と考える霞。
「やめや、やめ! なんや思ってたんと違うわ」
「どんなのだと思ってたんだよ?」
ホッとしながら霞に聞く。
「鬼の一刀が襲ってくるからウチが豆をまいて退治するんや」
「俺が襲う?」
「せや。あ、襲ういうてもアッチやないで。いくら種馬言うても、豆のかわりに種まいたらあかん」
霞の勘違いにはたと気づく一刀。
「もしかしてみんなもそう思ってるのか?」
「たぶんそうなんやない? それにしても戦争寺の行事言うからもっとこうお互いがぶつかり合う思たんに違うんか」
「戦争寺?」
「一刀の生まれたとこん近くなんやろ?」
今度連れてけ、と予定を考える霞。
「違う、浅草寺! 戦争じゃなくて浅草だ」
やっとこうなった原因を知った一刀だった。
「はあ。こりゃみんなの誤解とかないと大変だ……」
scene-手水舎
「酷い目にあった……」
やや煤けた春蘭が顔を洗おうと彷徨っていると、突然豆が飛んできた。
「どこだ?」
辺りを見回すが姿は見えない。
しかし。
ビシビシビシビシッ!
「くっ! ……心臓を狙うか。これが豆でなかったら……」
襲っている相手の技量を悟り、走り出す春蘭。
ビシビシビシビシッ!
執拗に胸に豆が飛んでくる。
「逃がしません!」
春蘭を襲っていたのは明命だった。
「ちっ。あいつじゃないのが残念だけれど仕方がないわね。落とし穴まで追い詰めるわよ!」
猫耳軍師のサポートもついていた。
二人は声を合わせる。
「巨乳は~外ッ! 巨乳は~外ッ!!」
scene-漢女塾厨房
「そろそろ天和たちのコンサート、アンコールも終るころかしらね?」
時計を見る華琳。
一刀に聞いた浅草寺に芸能人がくる、で対抗意識がわいたのか数え役萬☆姉妹もここ乙女神宮で節分ライブを開催していた。
歌声や音楽、客の声援などで豆まきの戦闘音や真桜の作品の爆発音が隠れていたので、近所への配慮としてはちょうどよかったのかもしれない。
「兄様、無事だといいけど……」
海苔を並べながら豆まきしてる者たちを思い浮かべる流琉。
「なに、豆じゃ。当たっても死にはすまい」
「一刀さんなら大丈夫ですわ」
「お母さんお酒くさい……」
ポリポリぐびぐびと、炒り豆を肴に飲酒中の祭と紫苑。
「ニュースで浅草寺のをやっていたけれど、思っていたのと違ったわね……あれなら怪我もしないでしょう。璃々、酔っ払いはほっといていいわ。巻くのやってみる?」
華琳がテーブルに届くよう、璃々を椅子に乗せる。
「うん。ありがとう華琳お姉ちゃん♪」
華琳が海苔の上にご飯と具を乗せ、璃々といっしょに巻き始める。
「璃々ちゃん上手」
できあがった恵方巻きがこの後、酔っ払い二人のエロトークのネタにされてしまうことを知るよしもない三人であった。
scene-参道
「兄ちゃん、見つけたよ~っ!」
「お兄ちゃん、見つけたのだ~っ!」
元気な声とともに季衣と鈴々が一刀の元へかけてくる。
すぐさま一刀は逃げ出した。
「逃げちゃダメだよ、兄ちゃん」
「鬼は追い払われていいの! って、豆まいてこないのか?」
「……全部食べちゃったのだ」
「お前ら、いい子ッ!!」
踵を返した一刀は二人にかけより、抱きしめ、なでなでの嵐。
「え? えへへへへ♪」
「なんだかよくわからないけど、鈴々はいい子なのだ♪」
<あとがき>
たまには季節ネタを。
前置きにもかきましたが、もう少し継い姫†無双本編が進んでからの話です。
また季節ネタやることがあったらやっぱりナンバリングはしないかも。
あと、風の掛け声は誤字じゃなくてネタですが、あまり面白くないかも。
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継い姫†無双番外編で節分ネタです。