No.114894

追姫†無双 5

こひさん

対姫†無双の続編5話目です。
タイトルの『追』は『つい』です。
やっと出発です。

2009-12-28 02:35:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4892   閲覧ユーザー数:4057

scene-謁見の間

 

 

「よく来てくれたわ、桃香、雪蓮」

「はい。華琳さん」

「あたり前よ。こんな面白そうなこと見逃せないわよね~♪」

 三国の王が歓談する。

 

「そうね。楽しみだわ」

「楽しみなのって、天の世界? それとも北郷さんに会えること?」

「さあ、どちらかしら?」

 桃香の質問にクールに決めた華琳であったが。

「野暮は言いっこなしよ、桃香」

「そうだったね。やっと会えるんだもんね。聞くまでもないよね~♪」

「そうそう。愛しの天の御遣い様との再会でしょ。会った途端に熱い抱擁と、口付けぐらいは当然よね♪」

「ええ~っ! いいなぁ~華琳さん」

 華琳をネタに二人は盛り上がる。

「あなた達ねえ」

 耐え切れずに、……というか、照れ隠しに華琳が怒ろうとするが。

 

「……再会の喜びのあまり口付けだけでは飽き足らず、人目があるのにもかまわずに一刀殿は華琳さまを押し倒して……ぶ~~~~~~っ!」

 軍師の噴出した鼻血によって桃香と雪蓮のテンションは下げられるのだった。

 

 

「トントンしますね~。稟ちゃん、今からとばしすぎるとお兄さんと会った時に持たないですよ~」

「……まあ、一刀と会うのを楽しみにしてる子が多いのはたしかよ」

 風が手当てするのを見ながら、華琳がそう二人に話した。

 

「う~ん、会ってみたくなるわねその男に。ねえ冥琳、やっぱりわたしも」

「駄目よ」

 雪蓮が全て言う前に冥琳が止めた。

「はぁ~~~~~~~~。華琳、明命のことお願いね」

「わかってるわ。でも、本当にいいの? 帰ってこられないかもしれないわよ」

 明命が同行したいということは、流琉からすでに聞いている。だが本人の覚悟を確認してからと華琳は思い、聞いた。

「はいっ! 危険は承知の上です」

「ならいいわ。同行を許可しましょう」

 

 

「華琳さん、鈴々ちゃんと紫苑さんと璃々ちゃんのことをお願いします」

 今度は桃香が自国からの同行者を華琳に頼む。

「私からも頼む。紫苑はしっかりしているが鈴々はまだ不安が残る。よろしく頼む」

 そう愛紗も頭を下げた。

「心配性ね。いえ、過保護と言うべきかしら? そんなに心配なら愛紗、あなたも一緒でもいいのよ。むしろそうしなさい♪」

「それはできない。私にも役目がありますから」

 誘いを仕事を理由に断られたが、華琳もそれは予想していた。

「残念ね。鈴々と紫苑の事情は聞いたわ。なんとかできるかはわからないけれど、三人のことはこの曹孟徳にまかせなさい」

「お願いします」

 

 

 

 

scene-儀式の間

 

 

 城内に用意された部屋に旅立つ予定の皆が揃う。

 その姿はほぼ統一されたものだった。

 

「これを着ないと駄目なのでしょうか?」

 赤面しながら聞いたのは明命。

「うん。ボクと流琉の時は魂だけだったけど、たぶん兄ちゃんのところにはボクたちがいないから今度は身体ごと行くことになると思うよ~」

「わたしたちの兄様のところへ行けなかったのは、魂だけだと無理だったのもあるかも知れません」

「それでね~、天だとこっちの服って変だから、あんまり変じゃない服、沙和ちゃんに用意してもらったんだよ~」

 着替えてもらった理由を季衣と流琉が説明する。

「隊長がぐっじょぶって喜んだ凪ちゃんの服といっしょなの~」

 沙和が用意したのは凪の勝負服。一刀が制服と間違えたそれに紫苑と璃々を除く皆が着替えていた。

 

「でも、このような履き物は恥ずかしくて……」

 ミニスカートを気にする明命。

「褌ん方が恥ずかしい違う?」

「いや、慣れの問題だ。わたしだっていまだに……」

 そうフォローしたはずの凪を見て明命が驚愕する。

「敵!」

「……そ、そんな……」

「うん。明命ちゃんは同士でよかったよ!」

「明命さん、歓迎します」

 貧乳部隊は明命を新たな隊員として認めたようだった。

 

 

 

「それじゃ、輪になってみんな手をつないでよ」

 季衣の指示に従って、輪が形成されていく。

「はぐれないように、しっかりつないで下さい」

 流琉は鈴々と璃々を両隣に手をつなぎながら声をかける。

 

「ほら、手を出しなさい」

 華琳は、隣の明命をそう促す。

「よ、よろしくお願いします」

 明命はおずおずと華琳の手を握った。

「ふふっ。もっとしっかりつかまないと駄目よ♪」

「は、はいっ!」

 

 その様子を春蘭と桂花は歯噛みしながら見つめていた。

「羨ましい……ギリギリ」

「妬ましい……ググググ」

 不運にもその二人と手をつないでいる霞。

 居心地悪いこの状況を脱出すべく、まだ手をつないでない少女に声をかけた。

「なあ、季衣はええん? そんなとこおらんとこっちきて手えつなぎ」

 

「ううん、ボクはここじゃないとダメなんだよ」

「そうなのか? はぐれるのではないか?」

 春蘭も輪の中心にいる季衣を心配する。

「ボクならはぐれたとしても流琉を見つけられるからだいじょうぶですよ、春蘭さま」

「そうか。ならばよい」

 

 

「みんなそのままでいてね」

 季衣は足元に寝ていたパネルを起こしていく。

「兄ちゃんのこと、思い出しやすいようにコレ見てよ!」

 数枚のパネルを立てると季衣の姿はそれに隠れてしまった。

「あれは隊長!?」

 驚愕の声を上げたのは凪。

「せや。こんなこともあろうかとウチのかめらで撮ったもんや。しかも、厳選したやつやで~!」

 そう真桜が説明したパネルは大きく引き伸ばされた一刀の写真だった。

 写真の中には食事中や着替え中、寝顔等までが混じっていた。

「わたし、あの絵ほし~!」

 大きな声を上げたのは天和。張三姉妹ももちろんこの場に参上している。

 

 

「そろそろ、いい?」

 季衣の言葉に皆を見回した華琳が答える。

「いいわ。始めて」

「はい。鈴々さん、紫苑さん、璃々ちゃん、明命さんは隣の人のつないだ手をしっかりと感じていて下さい」

「応なのだ!」

 流琉の指示に鈴々が力強く了解する。

「わかりました。璃々、お母さんからはぐれないでね」

「うん」

 紫苑と璃々の親子はよりいっそう手を強くつなぎ。

「聞いた? しっかりと私を感じなさい明命」

「はぅわ!?」

 明命は華琳にドキドキさせられてしまうのだった。

 

「他のみんなは手だけじゃなくて、兄ちゃんのこと想って~!」

 季衣が大きな声で促した。

 

 

「兄ちゃんの顔を!」

 そう言われ、皆が写真を見る。

 稟の立ち位置からは幸運にも露出の多い写真が見えなかったので、鼻血で倒れることは避けられた。

 

「兄様の声を!」

 皆、自分の名を呼ぶ優しい声を思い出す。

 

「兄ちゃんの温もりを!」

 ある者は自分を撫でる手を思い出す。

 ある者は抱きしめられた腕を思い出す。

 ある者は熱い口付けを思い出す。

 そして、それ以上のことを思い出し鼻血発射寸前に陥ってしまった稟は必死に堪えようとしていた。

 

「季衣!」

 稟の状態に焦った流琉の声により、季衣は足元から布に包まれていた銅鏡を取り出し、高く高くかかげた。

 

「兄ちゃん!」

 その叫びと同時に鏡は大きく輝く。

 光は部屋中を包んでいった。

 

 

 

 

scene-部屋の外

 

 

「まだかしら?」

 雪蓮が部屋の中を気にする。

「なにしてるんだろうね?」

 桃香も気になってしょうがない。

 

 二人は何度も扉を開けて覗こうとして叱られていた。

「落ち着け。まだ話し声が聞こえている」

 冥琳がそう諭す。

 

「でもさ~」

 雪蓮がなにか言おうとした時、扉の隙間から強い光が漏れた。

 

 

 

「ぶ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」

 

 

 

「な、なに今の?」

「すごい光が……あと、稟ちゃんの”あの”声が聞こえた気が……」

 桃香と雪蓮が興奮気味に向き合って話す。

 

「なにかあったのでしょうか?」

 愛紗が扉に耳を当てて中の様子を窺う。

「どう?」

「何も聞こえません」

 

「もういいわよね?」

 待ちきれなくなった雪蓮に、冥琳が華琳とした約束を持ち出す。

「待ちなさい。声がしなくなってから百まで数えて開ける段取りよ」

「もう、華琳もそんなとこで慎重にならなくてもいいのに」

 ブツクサ言いながらも数え始める蜀呉の王二人。

 

「……百! いい、開けるわよ!」

 言いながらもすでに扉は雪蓮によって開けられていた。

 

 

「誰もいない」

 部屋に入った者が見たのは、鏡を中心に立てられた写真と。

 

「ひっ」

 桃香が怯えた血溜まりと。

 

「あ、宝譿落ちてる」

 手をつないでいなかったためか、置いてかれた謎の生命体(?)の姿だけだった。

 

 

 

<あとがき>

 続きが気になると、ありがたいコメントを頂いたのでなんとか急いでみました。

 宝譿は今まで喋らせたことがなかったのに気づいたので、オチとしての活躍となりました。

 

 

 


 
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