No.1126805

【サイバ】戦士じゃないヒーロー【交流】

Dr.Nさん

2023-08-06 10:54:14 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:278   閲覧ユーザー数:256

雪天小学校3年1組、社会科の時間。

黒板には、<レポートの宿題:わが街のヒーロー・ヒロイン>の文字が書かれている。

 

マイカ先生「ということで、皆さんには夏休みの宿題として、<わが街のヒーロー・ヒロイン>というレポートを書いて提出してもらいます」

唯「正義のスーパーヒロインならネタに事欠かないわよね」

和美「だね。このクラスにも何人かいるし」

雪歩「なんたって俺たちもそうだしなw」

マイカ先生「いいえ、今回はそれじゃないの」

唯「えっ?」

マイカ先生「今回は正義のスーパーヒーロー、ヒロインじゃなくて、敢えてそうじゃない普通の人について書いてもらいます。これは、アマネ市長が市内の全小学校に出した宿題なの。優秀作品には何かご褒美が出るそうよ」

唯「やったあ! あたし、断然張り切っちゃう!」

マイカ先生「では、みなさんのレポート楽しみにしてますね」

子供たち『はーい!』

放課後、帰り道のいつもの三人。

 

唯「正義のスーパーヒーロー、ヒロインじゃないヒーロー、ヒロインって誰だろ?」

和美「うーん、正義のスーパーヒロインだったらいくらでも思いつくんだけどねー」

雪歩「ヒーロー、ヒロイン、ヒーロー、ヒロイン…スポーツマン、アスリートとか?」

唯「それ!」

和美「いいわね! 雪歩、あんたたまには冴えてるじゃない!」

雪歩「たまにはは余計だ!」

唯「そうと決まれば、誰を取材する?」

そして、夏休みに入ったばかりの7月某日、ステーキハウス『エアーズ・ロック』。

カンガルー型セリアンスロゥピィのリタが経営する店である。

 

唯、和美、雪歩「ごめんくださーい!」

リタ「いらっしゃいませ! おや、かわいいお客さんたちだ。水持ってっから、好きな席に座って待っててくれ」

唯「いえ、今日は食べに来たんじゃないんです」

リタ「?」

和美「実は、夏休みの宿題で──」

 

リタ「なるほどね。そういうことだったら喜んで協力しようじゃないか」

唯、和美、雪歩「ありがとうございます!」

唯「では早速。リタさんって、昔オーストラリアにいたんですよね」

リタ「ああそうさ。あたしはオーストラリアはメルボルンの出身だよ」

唯「そのオーストラリアにいた時、キックボクシングの学生チャンピオンだったって話は本当ですか?」

リタ「ハハハハハ、どこでそんな話を聞いたんだい?」

和美「レポートを書くにあたって、色々と調べさせていただきましたw」

雪歩「で、本当のところどうなんだ?」

リタ「本当さ。こうやってね(シュッシュッシュッ!)、パンチパンチパンチ! キックキックキック! パンチとキックのフルコンボ!! そしてノックアウト!!」

唯、和美、雪歩「おおーっ!」

リタ「男子学生のチャンピオンもあたしには叶わなかったさw テレビの取材も何度か受けたことがあるよ」

唯、和美、雪歩「すごーい!(すげえ!)」

唯「もっと詳しくお話聞かせて下さい!」

唯、和美、雪歩「ありがとうございました!」

リタ「どういたしまして!」

 

唯「これでいいレポートが書けそうね」

和美「うん!」

雪歩「家に帰ったら、早速執筆開始だぜ!」

その翌朝、ステーキハウス『エアーズ・ロック』。

 

リタ「お待たせいたしました。厚切りオージービーフステーキでございます」

豚男「うむ。ウィ~ヒック!」

リタ「ごゆっくりどうぞ」

厨房。仕込み中のリタ。

 

リタ「あのお客、こんな朝から酒の臭いプンプンさせちゃって、一体どんな生活してるんだろうねえ。おっと、お客さんのプライベートに突っ込んじゃダメだよね。仕事仕事!」

 

ガタン。

 

リタ「ん?」

リタ「どうかしましたかお客さん? あ、食い逃げ!」

 

リタが厨房の中からホールを見た瞬間、豚男は出口から姿を消した。

 

リタ「待てーっ!! クソッ、間に合わないか!」

 

ドンッ!

 

伊織「いったあーい!」

豚男「いってえな! ウィ~ヒック!」

伊織「ごめんなさい。ってお前は!」

豚男「げ、ヤバっ! ウィ~ヒック!」

リタ「伊織さん!? 大丈夫ですか?」

伊織「なあーに、これぐらい平気さ」

リタ「そんな血相を変えて、何かあったんですか?」

伊織「いやね、あたしの店で食い逃げがあってね。SNSに上げるのか知らないが、この男が酒臭い息吐きながらラーメンの写真を撮って、豚みたいに汚く食い散らしてたのさ。それでもお客はお客、我慢して笑顔で応対してたけど、ちょっと目を離した隙にダッシュで逃げちゃって、そいつを追ってたんだ。しまった、見失った!と思ったら、ここで偶然ぶつかって」

リタ「ふーん、なるほどねえ。ウチとおんなじだ」

伊織「あんたのとこもかい」

リタ「ええ。じゃあいっちょ」

伊織「やりますか」

リタ、伊織「とりゃあーーーっ!!!」

 

ドカッ!! ドカッ!! ボカッ!! ボカッ!!

ドカアーーーーーッ!!!

 

豚男「ぎゃああああ! ウィ~ヒック!」

 

・・・・・・

フィーア@TVニュース『食い逃げの現行犯で逮捕されたのは、H町の作業員、吐瀉豚容疑者です。吐容疑者は、「朝から酒を呑みつつ男とヤッて激しくエネルギーを消耗した。ラーメンだけでは足らなかったので2軒めも行った」と犯行を認めているとのことです』

 

唯、和美、雪歩「うわ」

唯「男とヤッたってどういうことだアッー!」

和美「そんなことあたしに聞くなアッー!」

雪歩「考えたくもねえなアッー!」

唯「それにしても、リタさんたち凄いわね!」

和美「これはレポートに書き加えないと!」

雪歩「だな!」

そして夏休みも終わり、秋の声も聞こえてきた頃。

ステーキハウス『エアーズ・ロック』。

 

唯、和美、雪歩「リタさーん!」

リタ「おや、いらっしゃい!」

唯「夏休みにお話したレポートの宿題、あたしたちがグランプリを獲りました!」

和美「これがその表彰状です!」

リタ「本当だ! こいつは凄えや!」

雪歩「それで、賞品にこの市内共通お食事券をもらったんだけど、この店で使える?」

リタ「もちろん使えるさ。お祝いにとびっきりのステーキを焼いてあげよう。好きな席に座って待っててくれ」

唯、和美、雪歩「はーい!」

 

 

=END=

 

 

 


 
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