No.1117320

【獣機特警K-9IIG】摘み取られた美貌(前編)【交流】

古淵工機さん

2023-03-27 22:07:58 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:371   閲覧ユーザー数:356

某日深夜……ラミナ市内某所。

ミハエル・アインリヒトはその路上に転がる死体を眺めていた。

 

「……これで15人目か……」

被害にあったのはトナカイ型ファンガーの女性のようだ。

激しく抵抗したためか着衣は乱れ、体毛が散乱している。

 

「しかし妙だな。この前の14人目までといい、奇麗に頭を切り落とされてやがる……」

 

そう。

連続殺人事件には不可解な法則性があった。

 

まず狙われているのは10代から40代までの女性であること。

次にファンガーないしはテラナーであること。

そして……現場に残された遺体は胴体だけで、頭部が見つからないのである。

 

 

翌日、ラミナ警察署会議室。壇上に立つのはエルザ・アインリヒト。

「……以上が事件の概要だ」

「妙ですね。きれいに頭だけ持ち去られているというのがまた」

「しかも狙われているのは若い女性ばかりときた」

おぞましい事件にざわつく警官。

 

その時、生活警備課のミウ・カワグチが手を上げた。

「ところで、被害者と犯人の関係については?」

「いや、そのあたりも洗ってみたんだが接点も面識もなかったそうだ」

「つまり通り魔的な……?」

考え込むミウ。その隣のテムナがさらに質問をぶつける。

「にしてもおかしないですか?通り魔にしても普通はグサー刺して終わりのはずですやん……わざわざ首斬るんはどないなコトですか?」

「それもそうだな……とにかくこれ以上被害が出る前に犯人を逮捕しなければならん。徹底的に捜査を進めてくれ」

 

同時刻、ラミナ市内のとある路地。

女子大生だろうか、一人のテラナーの女性が歩いている。

「ふぅ……バイトが長引いてくたくただわ……今日はまっすぐ帰らないと……」

やや小走り気味に家路を急ぐ彼女。

すると突然背後から何者かが襲い掛かった!

 

「っ……!!」

鼻と口をふさがれ息ができない女の首元に超音波カッターが突きつけられようとしている!

絶体絶命、まさにその時だ!!

 

「警察だ!そこで何をしている!!」

駆けつけたのは幻獣部隊隊長の淵野辺霧香だ!

突然の怒号にひるんだのか、慌てて逃げ出す犯人。

 

「……おい!大丈夫か?」

「は、はい……」

あまりに突然の出来事にショックのあまり座り込む女子大生に声をかけるキリカ。

そこにさらに近づく影。

 

「隊長!何かあったんですか!?」

駆けつけたのはルネ・シャルダンとお供の幻獣・ぐり之進。

「この子が例の犯人に襲われていたんだ。ホシは道なりに走って逃げてった!白衣をまとっていた!すぐ追ってくれ!!」

「わかりました!追うよぐり之進!!」

「ガッテンだ!!」

 

犯人の走っていった方角に向けて高高度を飛行するぐり之進。

その背中にはルネが乗る。

 

「白衣のホシか。あれで間違いないかルネ?」

「夜道で白衣とは悪目立ちしすぎね。……あ、ほっとしたのか歩き出したわ」

「まさか空から見はられてるとは思うまいになァ……」

 

犯人の足取りをつかんだところで、ルネは通信を入れる。

「……こちらルネ。ホシが歩き始めました。我々が追跡していることには気が付かない模様」

『よし、特殊カメラでズーム撮影をしてみてくれ。それからホシをしばらく尾行してみるんだ。気づかれないようにね』

「というと?」

『アジトらしきものが見つかればホシの目的もわかろうってものさね』

「……待ってください、ホシが古びた洋館に入っていきます」

『よし、すぐに座標データを送ってくれ』

「了解!」

 

白衣の犯人が入っていった洋館。

はたしてそこが犯人の隠れ家なのだろうか?

その頃。

洋館の筋向いにある廃倉庫の中に、夜会服にシルクハットの男が一人。

「……白衣のヤギ型ファンガー……医者にしては荷物が大きすぎるような」

もう読者の皆さんはご存じであろう。この男こそ怪盗ノワールその人である。

 

「はて、あの洋館……たしか元は診療所だったのが十数年前に廃業となって以来引き取り手もなく廃れているはず。そこを根城にするとは……少し探りを入れてみるとしましょう」

 

ノワールは音もなく洋館に忍び寄る。

「ふふふ……仕事柄、気づかれぬように忍び寄るのは得意中の得意でしてね。さて……」

 

窓際に何かを仕掛け、去っていくノワール。

しばらくすると、仕掛けられていた何かが動き始める。

ノワールが仕掛けたのはネズミ型のカメラドローンである!

廃倉庫の陰で携帯モニターをチェックするノワール。

「……驚きましたね。まさか地下室を作っていたとは。洋館はカモフラージュというところでしょうか?」

 

気づかれないようにこっそりとドローンを操作し、様子をうかがう。

ふと、モニターは信じられない映像を映し出していた!

 

「……こ、これは……!」

その映像を目の当たりにしたノワールの表情がこわばる。

 

「……なんということだ……!あまりにもおぞましい。……とても正気とは思えませんね……」

映し出されたのは作業台の上に乗せられた女の首。

そして棚に置かれた女の首、首、首……。そして、飾り棚に飾られたこれまた女の首……。

 

「一体何のために……ん?」

と、地下室の扉が開けられ白衣を着たヤギ型ファンガーが部屋に入ってくる。

しかしどうも様子がおかしい。体形は女のようだが……なんと自分の頭を持つや否や、そのまま取り外してしまった!!

 

「……先入観とは恐ろしいですね。ファンガーとばかり思っていましたが……よもやロボットとは」

そして飾り棚に置かれている首を持ち、しばらく撫でまわしたかと思うと、それをそのまま自分の身体に取り付けたのだ!

取り付けられた首は……「15人目の被害者」の顔。トナカイ型ファンガーの女性の顔だったのである!!

 

「これは……!決定的瞬間見たり!……気づかれぬうちにドローンを引き上げるとしましょう」

 

不可解な連続殺人事件。果たしてこの事件の真相はいかに!?

待て次回!

 

 


 
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